今年紹介したキャンペーンが示す、5つの「未来の兆し」
今年は今回合わせて44回、このブログに記事を更新させていただきました。毎週更新を志すこのブログ、今年はワクチンの副反応やコロナ感染、そして3年ぶりの旅行などで何度か穴を開けてしまいましたが、アクセス数の変化に喜びもせず、穴を開けても落ち込みもせず、淡々と更新していくという、ブログを続けるための良い「サボりかた」を学べた気がします。
そして、今年最後のブログでは、今年皆様にご紹介したアイデアから見えてきた、5つの「未来の兆し」を紹介させていただきます。
今年の記事へのリンクをバリバリ貼ってまいりますので、ざっと見て興味のあるものを”つまみ食い”するイメージで来年への備えとしていただけると幸いです。
未来の兆し1:変節を恐れない企業・ブランド
未来の兆し2:技術によるマイノリティの権利回復
また、デジタルテクノロジーの活用により、これまで伝えられず、そして顧みられてこなかったマイノリティたちの声が世界に届き始めています。
こちらは今年、大英博物館にうやうやしく飾られている展示物の背景にある、かつての植民地支配の事実をARフィルターを活用して訴えた「The Unfiltered History Tour」についての記事です。
また、黒人の肌を美しく表現することにこれまで力を入れてこなかったことを反省し、彼・彼女たちの肌も綺麗に映す「Real Tone(リアル・トーン)」エンジンの搭載を決めたGoogleの取り組みについて触れた、以下の記事も参考になると思います(記事の真ん中あたりの「Lizzo in Real Tone(あるがままの色のLizzo)」をご覧ください)。
また、罹患する人が比較的少ないために、なかなか対策や理解が進まない難病の人たちへの支援を促すべく、その難病のつらさを3Dプリンタ技術で可視化させた以下のキャンペーンも見事でした。
未来の兆し3:権威への抵抗もよりダイレクトに
「兆し2」と連動して、一般の市民たちの声も、権威や為政者たちに届きやすくなっています。そして、声だけでなく、デジタル環境の進化は人々により直接的な「アクション」を取る機会を創り出しています。
以下の記事はロシアによるウクライナ侵攻に対し、ウクライナ市民たちが自国の歴史や文化を守るための行動を可能にした素晴らしいデジタル・ムーヴメントについてです。
また、必要以上に高額な政府のウェブサイト開発費に潜む汚職を自らの技術力で暴いた、チェコ共和国で行われたテクノロジストたちによるハッカソンの取り組みも痛快でした。
そして、紙とインクが足りないという、日本では理解し難い理由で選挙を延期しようとしたレバノン政府に対し、自社の紙とインクを供給することで戦った現地の新聞社の取り組みも、紹介後に反響が大きかった記事のひとつでした。
未来の兆し4:インクルーシブな社会への挑戦は続く
そして、引き続き女性や性的マイノリティ(LGBTQ+など)に対する、目に見えたり、見えなかったりする様々な障壁を取り除き、誰もが自信を持って、自分の能力を堂々と発揮できる環境を広げよう、そしてもっとインクルーシブな社会を作っていこう、と今年も世界各地で様々な取り組みが行われました。
特に印象的だったのは女性の避妊用ピル服用が法律で制限されているホンジュラスで、その法律が届かない同国の領海外に人工の島を作り、そこで女性たちのピルの服用を可能にした、というアイデアです。最初見た時、その発想力に度肝を抜かれました。
また、過去の取引履歴や実績がないために銀行から融資を受けにくい、というメキシコの女性にビジネスチャンスを創るべく、彼女たちの近所でのツケのやり取りをデジタルデータベース化して融資を受けられるようにした、という以下のアイデアも感動的でした。
また、フィリピンの乗合バスのデコレーションに描かれた様々な女性蔑視表現を改めさせたこの取り組みも、スケールは小さいながら、その着眼点は素晴らしいと思いました。
性的マイノリティに対する取り組みも様々なものがありました。コロナ下で中止となったブラジルでの大規模プライドパレードをデジタル上で行なったこちらの取り組みや…
同じくブラジルのスタバが行なった、とてもパーソナルで胸を打つこの取り組み。
そして、日本の性的マイノリティが就職で直面する悩みを描いたパンテーンのキャンペーンなど。
かつては私も、性的マイノリティに対しては無知ゆえにステレオタイプで捉えていたことがありました。しかし、上記のような素晴らしい取り組みを知り、学ぶことで徐々に彼らの置かれた立場や気持ちを心から理解できるようになりました。
残念ながらかつての私のような人が、まだまだ世の中にはたくさんいるはずです。来年以降も様々なアイデアが、この社会を少しでもよりインクルーシブなものに進化・発展させていくことを期待していますし、もちろん私も様々な形で微力ながら応援していきたいと思います!
未来の兆し5:モノ作りのパラダイムシフト
そして最後は、私が感動した「モノ」について、紹介させていただきます。
こちらは、「ポイ捨て」という環境的にかなりNGな行為を善行にすり変えてしまったインド発の、イノベーティブな蚊取り線香のアイデアです。
もうひとつ、こちらは世界最大級のパイナップル生産会社Doleによる、サステナビリティ活動の模範解答のような取り組みです。
前者は、「パッケージ=捨てるもの」という思い込みを捨てることでこのようなアイデアに辿り着いてますし、後者は、新素材の普及のために活動していた、食品業界とは全く関係のない人物とのコラボレーションにより、「サステナブルな新素材」という素晴らしいソリューションにたどり着くことができたようです。
技術も社会も、こんなスピードで変革している時代は過去にもありません。暮らしに仕事に、そして全てに。昨日と同じものは何一つないのだという精神で日々新たに、あらゆるプロセスを思い込みなしに見つめ、ゼロから考え直してみるという「熱狂的遊び」の精神がこれからの時代を動かす人たちの核となっていくのだと感じました。
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以上、いかがでしたでしょうか?
この記事を書き始めたときは昨年と同様、「今年のベスト5」を選ぼうと思っていたのですが、今年のアイデアを全部見返した後に感じたのが「あ、もうランクづけとかやってる時代じゃかも…」ということでした。
デジタル技術の発展と普及が今、モノの大小や時間の過去、未来の概念を急速に弱体化させています。私たちが今、足を踏み入れているのはものすごく小さな取り組みが世界を大きく動かしたり、過去の発想を今の技術でトライすることで、いくらでも別の答えが導けてしまう世界です。
そんな時代に一つ一つのアイデアや取り組みの優劣をつけることがどれほどの意味があるのか…と悩みながらまとめた結果が、上の5つの「未来の兆し」です。
どう考えてもカオスなこの時代。タフな世界を泳ぎきるには、クロールの息継ぎのように、週に一度ぐらいは水面から顔を出し、世界の潮流をインプットしておくことが大切だと思います。
そしてそんな時に、この小さなブログの更新が、来年以降もこの世界の、どこかの誰かのお役に立てればと願っています。