デジタルは(時には落ちるが)役に立つ?
先日、リモートワークには欠かせない人も多いだろうMicrosoftのTeamsが世界的に落ちました。たしか半日余りで復旧したと記憶しているのですが、その日はデジタルがこの世界にもたらしたことの功罪を色々と考えたことを覚えています。
けれど結局、ナイフや火薬と同様、デジタルを功とするのも、罪とするのもすべては我々の意志次第。ということで今回は、デジタル技術の活用でメキシコ社会における女性の社会進出に大いなる”功”をもたらした素晴らしいアイデアをご紹介いたします。
ちなみにこの取り組み、6月下旬に行われた世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にて「クリエイティブ・データ部門」と女性の地位向上に貢献したアイデアを讃える「グラス部門」の2部門でグランプリを獲得しています。続きはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。
「Data Tienda / データのお店」
【雑和訳】ナレーション「メキシコにいる、何百万人もの低所得者層の女性たちにとって、何かを学んだり、ビジネスを始めることは困難です。なぜなら、彼女たちは与信による金融取引から遠ざけられているからです」
「彼女たちの83%が、彼女たちの支払い実績を立証する銀行支払いの履歴*(*つまり与信に足る、銀行口座上の取引履歴)を持っていません」/ 文字要素「メキシコ女性の83%が与信に足る金融履歴を持たない -エル エコノミスタ」/
ナレーション「結果、彼女たちのローンの申請は却下されてしまいます。/ ロザルバさん「ローンを申請したのに、認めてもらえませんでした。銀行との取引実績がなかったので」/文字要素「3,500万人のメキシコ女性が、同国の金融システムから欠落している -フォーブス」/
ナレーション「しかし逆説的なことに、彼女たちのほとんどは、日々の暮らしの中で近所の店にツケ払いをしています。つまり、メキシコ中の何千ものそうしたお店の取引帳簿には、これまでの金融情報センターでは見落とされてきた、(彼女たちなりの)与信による取引履歴がある、といえるのです」
「そこで、金融におけるメキシコ女性のインクルージョンを追求するウィー・キャピタルは、Data Tienda(データのお店)という、メキシコ女性と銀行をつなぐ金融情報センターを立ち上げました。これにより、何百万人ものメキシコ女性が(近所のお店など)小規模な店舗との取引情報をもとに、自らが与信に足ることを銀行に証明できるようになりました」
「サービスの利用も簡単。女性たちは、datatienda.mxに最低5つの、信頼のおけるお店の情報を登録するだけ」「あとはData TiendaがWhatsAppのbot経由で自動的にお店から質的・量的データを収集」「与信の基となる信用スコアを、既存の情報システムよりもより詳細に分析・算出してくれるのです」/
リカルドさん「これは普通の金融情報センターと変わりません。ただ、対象が銀行取引のない女性だ、ということです」「Data Tiendaを通じて、銀行は女性たちの支払い履歴を確認できます。結果、低いリスクマージンで彼女たちに与信ができるようになるのです」/
文字要素「女性の23%が銀行から、マイクロクレジットを受けた -フォーブス」 / ナレーション「結果、これを利用した女性の23%がこれまでに銀行から、自分のビジネスのためにマイクロクレジットを受けることができました。そしてわずか数ヶ月の間に、1万300件の与信につながる履歴が、およそ5万店にのぼるメキシコ中の店主からの情報とともに集計されました」/
メディアの声「何千もの女性が銀行からマイクロクレジットを受けました。Data Tiendaのおかげで」「金融におけるメキシコ女性のインクルージョンを促すために」「人生を変える、支払い履歴の話です」/
ナタリーさん「ローンを2回断られていたのですが、今回は銀行が貸してくれました」/ パトリシアさん「銀行の融資でミシンを買いました」/
ナレーション:私たちは今日も、(金融業界からは見過ごされてきた)女性たちの支払い履歴を回復させています。…彼女たちの人生の物語を変えるために。Data Tienda
デジタル目線で見れば、埋もれた課題はもっとあるはず
いかがでしたでしょうか?このアイデアの素晴らしい点は、人々がアナログ時代から連綿と「それで当然」と無意識ながら甘んじて受け入れてきた状況をデジタルの目線でフラットに見ることで「これ変じゃん」→「こうすればいいじゃん」とあっさり解決してしまったところにあります。
皆さんの周りにもまだまだ、デジタル技術を活用すれば簡単に解決できるのにアナログ時代からの延長でなんとなく受け入れてきた”あまり良くない事柄”はたくさんあると思います。
間もなく夏休みシーズンです。休みの合間に、そんな事柄に思いを巡らせて「自分だったら…」と、クリエイティビティの翼を羽ばたかせてみるのも一興かもしれません。
いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!