世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

武力による文化財の破壊に対し、デジタルの力で立ち上がる【カンヌ2022受賞作より】

Photo by Max Kukurudziak on Unsplash

終戦の日を前に、人類の破壊について考える

また、8月15日がやってまいりました。

アフター5に賑わう戦前の銀座の映像を見たことがありますが、そのきらびやかな夜景にふと「もし東京に大空襲がなかったら今の銀座はどうなっているのだろう?」

「今の銀座と似ているのだけれどなんだか違う、もっと明治や大正、はたまた江戸の建物があちこちに点在した、日本文化のルーツを感じられる街になっていたのではないか…」

と思い、ちょっと見てみたいような、ちょっと残念なような、不思議な気持ちになったことを覚えています(もちろん今の銀座も十分素敵な街なのですが)。

そして77年後の世界。今も人類は変わらず、世界各地で自分たちが創ってきた大切なものを破壊し続けています。

創るは一生、壊すは一瞬。壊れたものは、もう2度と帰って来ません。

…でした。これまでは。

今回は、ロシアによる粗暴な破壊に対し、デジタルの力を手に立ち上がったウクライナの人々による、素晴らしいアイデアをご紹介します。

ちなみにこの取り組み、6月下旬に行われた世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にてデジタルクラフト部門でグランプリ、メディア部門でゴールドなどを獲得しています。続きはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「Backup Ukraine / バックアップ・ウクライナ

youtu.be

【雑和訳】文字 ”市庁、ハルキウ、ウクライナ”(実況者のそばで爆撃が行われる)/

文字 ”すべてを一瞬に吹き飛ばしてしまう爆弾から、歴史的文化遺産を守る手立てはない"/

文字 ”ハルキウ”、"チェルニヒウ"、"リヴィウ"、”キエフ”/ メディアの声「我々が目にしているのは、殲滅を画策するプーチンによる…」「ユネスコは事態を深く憂慮し特別セッションを開催、ロシアが完全に(ウクライナを)殲滅する意図があるのではと危惧しています」/

文字 "物理的には守れないものを、どのように守るのか?"/

文字 ”デジタルによる3Dでバックアップする” "バックアップ・ウクライナプロジェクト"/

文字 ”ユネスコと3Dのスタートアップ、Polycamによって始められた” "戦時中においては史上初となるプロジェクト" "ウクライナの人々が持つ2,200万台のスマホが、3Dスキャナー代わりに活用された" "全ての市民に、(復元の元となる)デジタルの元データを保管するクラウドを無期限に解放"/

文字 ”アプリを開いて” "ただ、記録ボタンを押すだけ" "あとはアップロードして" "クラウド上の安全なライブラリにセーブする"/

(世界中のメディアなどでの報道やSNSでの反応などがコラージュされる)/ CNNに取り上げられた市民「私は彫像を永遠に保存するため、スキャンすることにしました」/

文字 "ウクライナで週あたり2,400のダウンロードを記録" "文化財のスキャン数は週あたり44%の伸びを記録"/

"すこぶる歓迎すべきイノベーション- Fast Company" "メタベースへの確かなドア- CNN" "誰もが参加できる- オデッサ・ジャーナル"/ (ユネスコ以下、このプロジェクトに参画した団体名が表示)/ 

女性の声「これらのモニュメントが、私たちのアイデンティティなのです。我々はこれらと共に成長を続けていきます」/

文字 ”歴史を残す。爆弾の届かないところへ”/

ウクライナの女性「私たちはこれを誰にも奪わせません。これは私たちの文化なのです」 

戦中には誇りとなり、復興にも役立つアイデア

いかがでしたでしょうか?この取り組みを見た時に感じたことは、21世紀の戦争では、もう火薬で殺し合い、破壊し合うだけが戦いではないのかもしれないな、ということでした。

スマホを手に取り、身の回りを記録する。そんな庶民ひとりひとりの行為も、不条理な暴力に対抗し、自分たちの文化を守るための立派な活動だと思いましたし、このアイデアの素晴らしさのひとつは、そんな「戦時下での新しい社会への貢献の形」をウクライナの人々のために創出したところにあると思います。

 

…とはいえ古今東西、根本的に戦争は破壊であり、人類全体にとっての敗北です。

一方、アイデアは創造であり、人類の克服、勝利の源なのかな、と思います。

 

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!