世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

全盲の男性が夢のスポーツキャスターに!あらゆる人の社会参加を広げるテクノロジー【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのMarius Christensenが撮影した写真

🏷️ 1,000万人以上が見つめるNBAの全米ライブ中継で実現

 イノベーションには2つの方法があると思います。まずはクラファンなどで小規模〜実験的に開発し、徐々に実現していくもの。もう一つは、国家や企業などの大きな資金を使い、最初から明確な目標の下、フルスイングしていくものです。もちろん両方ともプロ・コンがあり、鶏卵の関係性でもあるのですが、今回はビールブランドのミケロブ・ウルトラがよりインクルーシブな社会実現のために、またスローガンの「It's only worth it if you enjoy it.(喜びがなくちゃ意味がない)」を具現化する取り組みとして、生まれつき全盲の男性をパートナーに、後者のスタンスで取り組んだ素晴らしい取り組みについてご紹介します。

 ちなみにこちら「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2023のEntertainment for Sports部門でグランプリ、メディア部門で金賞を獲得するなど、かなり高い評価を獲得したキャンペーンとなります。それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「Dreamcaster / 夢のキャスター」

youtu.be

【雑和訳】文字要素:世界では19億人がNBAを見ています / しかし、2億8,400万人はそれを十分に楽しむことができません / 盲目の男性「バスケットボールは動きがとても速いスポーツです。もし見ることができなければ、それを楽しむことはとても困難です」/

文字要素:喜びを全ての人に提供することを志すブランドとして… / (*CMなど、様々なコンテンツでのキャッチフレーズ”喜びがなくちゃ意味がない”が映し出される)/  (ビールブランドの)ミケロブ・ウルトラは、試合に喜びを作り出さなければなりませんでした / どんな人でも体験できる、喜びを / 今回は、一人の人間に注目しました /

冒頭にも出てきた男性「私はキャメロン・ブラックです。私は生まれつき目が見えません。スポーツキャスターになることを、私はずっと夢見てきました」/ タイトル:ミケロブ・ウルトラ提供: Dreamcaster(夢のキャスター)/

文字要素:史上初 / 盲目の人が、NBAの試合をコメント / プライムタイムのTVのライブ中継で /

”新しい言語” / キャメロン・ブラック「1年まるまるかけて、新しい言語の開発をサポートしました」/「私は感覚を研ぎ澄ましました」/ (体に装着したセンサーを体験しながら)「上下にとても早く動くね!」/「一連の新しい技術を開発するために」/

文字要素: 62のサラウンド・サウンドスピーカー / 技術者A「空間音響を活用することで、キャメロンはまるで試合の中心にいるかのような聴覚体験に没入することができます /

文字要素: 1,020の独創的なサウンドの可能性 / ナレーション:新しい言語のボキャブラリーとなる音の数々が、どんなプレーが、どこで起きているのかを伝えます /

文字要素: 触覚活用型フィードバック / 技術者B「私たちが触覚型の言語を開発しました」/ 文字要素: 144の振動のバリエーション / 技術者B「聴覚に加えて、プレーの強烈さや、重要性を強調するためのものです」/

文字要素: 次々と更新される点字情報 / ナレーション: そして、次々と更新される点字情報も、試合の中で圧縮された情報を秒以下のスピードで提供すべくプログラムされました。/ 文字要素:76年分のNBAスタッツ /

ナレーション: これらは全て、データとAIの活用を通じて実現されたのです / スポーツレポーター「キャメロン・ブラックは34歳の生まれつき目が見えない障害を抱えていますが、ミケロブ・ウルトラと特別なテクノロジーにより今晩、彼はキャスターを務めるそうです!」/

キャメロン・ブラック「ミケロブ・ウルトラのスタジオから、私がライブにてゲーム3の模様をお届けします」/「…RJギャレットが決めた!素晴らしい!」/「…ガーランドがトラベリングを取られました。これはまたターンオーバーだ。またもやターンオーバー!」/ 「…キレキレの高いバスが通って決まった、アリウープだ〜〜〜!2回の信号が体にキター!これはすごい!」/

ニューヨークタイムズ ”ゲームチェンジャーだ” / USA "バスケを進化させるテクノロジー" / NBA "スポーツの進化を加速する" / キャメロン・ブラックさん「これがバスケだ!」/

文字要素: 何百万もの視覚障がい者に道を切り拓きました / The Athletic "23−24年シーズンの画期的テクノロジー" / 文字要素アリーナの21,000人が体験 / 1,040万人がライブでTV視聴 / しかも、完全に番組に統合された形で /

スポーツキャスター&SNS上の人々「キャメロン・ブラック」「キャメロン・ブラック」「キャメロン・ブラック!」/「目が見えないのに実況するなんて、他の誰ができるんだい!」/

番組でのキャメロン・ブラック「みんなのためにスポーツエンタメを変える試みです」/ 文字要素: AB-inbev がインクルーシブな社会に向けて行なった投資コミットメント 1億1,500万ドル / キャメロン・ブラックさん「私がキャメロン・ブラックです。以上」/ ブランドロゴ: ミケロブ・ウルトラ

🏷️ 実は凄まじかったに違いないキャメロンさんの努力

いかがでしたでしょうか?

クリエイティビティや、それを可能にするテクノロジーを評価する中で、ともすると見過ごされてしまいがちですが、この試みのMVPはやっぱり、どう考えてもキャメロンさんです。

まるでコートの中にいるような立体感ある音響の中で刻々と発信されるサウンドやバイブレーションに感覚を研ぎすまさせ、刻々と情報が供給される点字情報をリアルタイムで処理しながら、臨場感たっぷりな実況を行うという神技は、まるでガンダムのモビルスーツを操作するような、大変複雑なプロセスを体に染み込ませなければ不可能なことだったと思います。

私たちは残念ながらリアルタイムにこの中継を見ることはできませんでしたが、自分の体が強いる能力の限界をぶち破り、夢の実現に取り組むキャメロンさんのガッツと、それに応えるべく努力を続けた開発陣の執念が見事に共鳴した、胸が熱くなる、本当に素晴らしい実況だったのではないかと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!