世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

ダウン症への理解促進と、歴史的事実を結びつけたシャルル・ド・ゴール空港【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのSimon Champagneが撮影した写真

(ちょっぴり良い)歴史的事実は、人の良心を惹きつける

大河ドラマが結構好きです。ひとつの大河だけでなく、何本も違う世界線の大河を見ることで、例えばある大河では信長が承認欲求の塊のように描かれていたかと思うと、別の大河では単なる筋肉の塊のように描かれていたりと、同じ歴史的資料に基づいた創作でも、光の当て方でその姿形はここまで変わるのか、という奥深い面白みがあります。

歴史の教科書に載っているような史実をいろんな形で映し出してくれる大河も好きですが、その一方で、歴史バラエティなどで人々を惹きつけるのは歴史的人物の、教科書には載らないような”ちょっといいエピソード”です。(例えば坂本龍馬の実姉に書いた手紙なんかは実に愛嬌があって、親しみと共に彼への興味が高まったりします。)

さて、今回はフランス20世紀の英雄、シャルル・ド・ゴールのそんな、教科書には載っていない”ちょっと素敵な事実”を活かしてダウン症の人々への理解促進を促した、実に素晴らしい取り組みをご紹介します。

ちなみにこの取り組み、「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2023の非営利団体に贈られるGrand Prix for Goodを獲得、さらにはダイレクト部門、ヘルス&ウェルネス部門、アウトドア部門で金賞を受賞するなど高い評価を受けたアイデアとなります。

それでは早速、以下の紹介ムービーをご覧ください。

「Anne de Gaulle / アン・ド・ゴール」

youtu.be

【雑和訳】ナレーション:世界中の誰もがシャルル・ド・ゴールを知っています。彼は、第二次世界大戦におけるフランスの国民的英雄。アイコンとして彼の名は通りや駅、公共の場、そしてヨーロッパ最大の空港にまで刻まれています。

しかし、アン・ド・ゴールを知っている人はいるのでしょうか?シャルル・ド・ゴールの最愛の娘はダウン症と診断され、彼は彼女のための財団を作っていました。しかし、2022年の12月3日まで、誰も彼女のことを知らなかったのです /

文字要素:アン・ド・ゴール財団提供 / "パリ、アン・ド・ゴール空港” /

アン・ド・ゴール財団会長 ジャン・ヴァンルー氏 「ヨーロッパ最大の空港が改名するのです」/ 「これは本当に力強い、象徴的な活動です」/「ド・ゴール将軍が彼の娘、アンのために道を開いたのです」/

ナレーション:手荷物のタグにも、カートにも、行列にも、搭乗券にも / 入国、出国ターミナルのすべてのディスプレイにも / そして、道路表示にまで /

情報番組の出演者たち「空港のあらゆるところにアン・ド・ゴールの名前が表示されたのです」/「”アン・ド・ゴール空港へようこそ”と、この試みを世界にお披露目したのです」/ 「空の上では、搭乗員が新しい空港名をアナウンスしました」 / 客室乗務員「パリ、アン・ド・ゴール空港へようこそ」/

ナレーション:そして、この卓越した空港の象徴的な表玄関に記された巨大な文字とともに、1週間に渡り、100万人以上の旅行者がアン・ド・ゴール空港を利用しました / (*海外の空港利用者がこの取り組みをシェアしている映像が挿入される) /

ナレーション:そして、(ダウン症なのはアンだけではなく)彼女の後ろには、ゴルチェ、フェリペーン、ロア、リアもいます。私たちは彼ら、財団の居住者たちを空港に迎え入れることにしました / テレビのコメンテーター「体が不自由な方もいましたし、財団のメンターや、シャルル・ド・ゴール空港のスタッフたちも参加していました」/

ナレーション:パブリックスペースでの障がいを持つ人たちへのおもてなしを改善するための取り組み。そして、私たちの気持ちは(フランスの)交通相本人や、何百万もの人々に届きました /

様々なTV番組のキャスターたち「シャルル・ド・ゴール空港がその名前を変えました」 / 「アン・ド・ゴール空港に名前が変わったのです」/  「期間は一週間」/ 「名前は”アン・ド・ゴール空港”です」/「アン・ド・ゴール空港へようこそ!」/「これは、歴史的なイベントです」/

文字要素:13カ国で、200以上の記事化 / トータルリーチは5,000万 / アーンド・メディアでの露出は100万ユーロ超に相当 / 財団のロゴ:アン・ド・ゴール財団 〜 私たちの社会で、障がいのある場所を前進させる〜

公共物とのコラボレーションにも、ストーリーが重要

いかがでしたでしょうか?

あのシャルル・ド・ゴール空港をここまで本格的かつ大々的に改名した、というのは本当に驚きで、表玄関の名前まで変えてしまったことや、さらには交通機関のサインまで変えてしまったところに1財団の想いを超えた、国ぐるみでの本気度が窺われます。

これも今も変わらぬフランス人のド・ゴール将軍への想いと、そんな彼の人柄が窺える、娘とのストーリーの共感性がなせる技なのだろうと思いました。

しかし日本でも、このような”都市のアイコン”とのコラボレーションは結構行われています。

例えば10月1日の「ピンクリボンデー」では、東京タワーをはじめとする、たくさんの街のランドマークがピンク色の照明で彩られています。

こちらも通勤帰りなどに気づきを与える、素晴らしい取り組みだと思います。

例えばこういった取り組みにさらに、今回の企画が持つストーリー性 ー シャルル・ド・ゴール空港の名前の元となったド・ゴール将軍はダウン症の人たちへの偏見なき理解者だった ー  の要素、つまりそれぞれの街のランドマークとピンクリボンをつなげる何らかの興味をひくストーリーが追加されると、さらに多くの人の賛同を得ることができるのではないかなぁ、などと考えたりします。

こんな風に、アイデアの発見だけでなく、すでに行なっていることの「改善」のために海外の取り組みを参考にする。そんな用途にも、このブログを利用いただけますと幸いです。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!