世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

少しのポリシー変更で国中の女性を大いに勇気づけた、ペルーの銀行によるキャンペーン【カンヌ2022より】

UnsplashのEduardo Collazosが撮影した写真

うっかり紹介しそびれていた、2022の良作をご紹介

さて、6月です。春先までに「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2022の主な受賞作はあらかたご紹介してしまったと思い、ここ2ヶ月は知っておいて損はない2010年代の受賞作をしばらく取り上げてまいりました。

ところがどっこい、2022の受賞作の中から、メキシコの金融機関による受賞作(後述)と混同して紹介しそびれていたペルーの金融機関によるナイスな取り組みを思い出しましたので、今回はそちらを紹介させていただきます。

ちなみにこちら、世界的クリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2022にて「ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門」の金賞などを受賞したキャンペーンになります。それでは早速、その解説ムービーをご覧ください。

「Emancipation Loan / 解放ローン」

vimeo.com

【雑和訳】ナレーション:ペルーは、世界有数の男性的マッチョ・メンタリティが重んじられる社会。ここでは、何百万人もの既婚女性が、あらゆる階級で未だに男性たちに経済的依存をしています。そしてその背景には、正されるべき金融の慣行があるのです /

ニュースキャスター「金融システムに組み入れられている女性の割合は、10人中たったの1人です」/

ナレーション:男性にとって優位なポリシーにより、女性がローンを組もうとしても、必須の条件としてすべての銀行に夫のサインが要求されます / なので、夫が妻の金融状況をコントロール下に置きたい場合は、サインを拒否するだけでそれが可能になってしまうのです /

これは、性差別主義者による最も暴力的な支配の形のひとつといえるでしょう /

ペルーにおける世界最大の国内銀行mibancoは、この金融的慣習にあらがうことを決意。国のポリシーを破り、ペルーの銀行の歴史にかつてない風穴を開けました / 紹介しましょう「解放ローン」/

私たちは、自らのポリシーを変更 / 国内すべての既婚女性を、独身女性とみなして対応することにしたのです / この小さな変更により、夫のサインは必要ではなくなりました / (ローンの申請に必要なのは)女性1人のサインだけ /

小さな変更ですが、これは何百万人ものペルーの女性たちの可能性を、大きく広げるものです / ビジネスを広げ、/ 自分のお金をで稼ぎ、 / そして、人生をやり直すための /  

この取り組みに対して、国中の人々は即座に反応 / (様々なメディアの好意的な見出しが入る) /

グロリア・モンテネグロ前女性担当相「私はMibancoが女性の経済的自立を促した取り組みに敬意を表します」/

文字要素:女性のローン申請+180% / 融資されたローンの価値2億1,200万ペルー ソル / 4,500メディアインプレッション /

ナレーション:そして今、私たちは国中の銀行にこの取り組みへの参加を呼びかけました / 私たちが見るように、ペルーの女性たちを見てください / パワフルで、独立していて、そして自由な彼女たちを /

なぜなら経済的な独立なしに、真の自由は訪れ得ないのですから / 「解放ローン」Mibanco

性別による金融格差を解決する対照的な2つの取り組み

いかがでしたでしょうか?そして、本文の冒頭に書いた「私が混同した」メキシコの金融機関による受賞作はこちらになります↓

wsc.hatenablog.com

メキシコの事例のように「デジタルだからこそ可能になったソリューション」を開発し、実行するのも素晴らしいと思いますし、今回のペルーのアイデアのように、「たとえアナログでも少しのチャレンジで大きな成果を生み出す試み」を経営陣ぐるみで決断し、実行するのも等しく素晴らしいことだと思います。

大事なのは、性別による金融格差を是正する方法は一つだけではない、ということ。そして同じことはもちろん、この世の中のあらゆる問題にもいえると思います。

無限の可能性から状況に応じて文脈を編み上げ、制約の中からできることを導き、本質的な課題解決のための方法を実行する。そして世の中を少しずつでもより良いものへと前進させる。

そして、そのエンジンとなるものがいつだってアイデア。なんてったってアイデアです。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!