世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

スウェーデン発・SDGs達成のために「共通の尺度」を作る果敢な試み

Photo by Pedro Henrique Santos on Unsplash

2030年まであと、たったの7年半

いよいよ、世界的クリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2022まであと1週間。ということでこのブログで去年の受賞作をこれまでずーっと取り上げてきたのですが、ラストに紹介するのはこちらのアイデアになります。

カンヌライオンズ2020/2021のその名もズバリ「SDGs部門」のグランプリ受賞作、スウェーデンのテクノロジー企業Doconomyによる「2030 Calculator(2030年計算機)」という取り組みです。

SDGsの目標達成年は2030年。なんとあと7年半しかありません。7年半といえば、私がこのブログを始めてから来月で8年目になりますから、それよりもやや短い時間しか我々にはもう残されていない、ということになります。

本当に「あっという間」の時間でしかない残りの7年半で、私たちは何ができるのか?客観的に考えてみても、もはやつべこべいう前に、トライ&エラーの繰り返しで正解を手繰り寄せる「パワープレーモード」にこれから入っていくしかないのかな…と思います。

今回はの取り組みは、そんなパワープレーを華麗に実施した事例として知っておくと良いのかな、と思います。それでは以下の紹介ムービーをご覧ください。

「2030 Calculator:2030年計算機」

www.youtube.com

【雑和訳】ナレーション:私たちは炭素の排出量を2030年までに今の半分に抑えなければなりません。そして、個人の炭素排出量の60%はそれぞれの消費活動に紐づいています。

/ 画面上の文字「我々は子供たちに引き継ぐことのできない方法で生活水準を引き上げてしまった」by ジョー・ロム(物理学者・気候の専門家)/

ナレーション:私たちは消費がこの星に与える影響を理解しなければなりません。そして、環境に与えるインパクトの低い商品を選ぶことは、私たち一人ひとりが日々の暮らしの中でとりうる、最も重要なアクションのひとつです。

しかしそのためには、さまざまなブランドに炭素排出量を示すラベル表示を促す必要があります。

しかし、自らの商品が排出する炭素の量を計算することは各ブランドにとって困難で、コストのかかるものです。

そして中小規模のブランドの多くが自社商品が与える環境への負荷について透明性を確保したいと考えているのに、そのためのリソースが足りない、というのは深刻な問題です。

 Doconomyはスウェーデンにある、地球環境へのインパクトを考えるテックカンパニーで、消費活動によって発生する消費者の炭素排出量を減らすためのデジタルサービスを提供しています。

その基本方針のもと、Doconomyは「2030年計算機」を発表しました。これは、どんな商品にも対応してその炭素排出量を計算するツールで、これによりブランドは計算のための時間を数週間から数分にまで短縮することができ、さらにそのための予算も数千ドルからゼロにまで削減できます。

2030年計算機はオープンプラットフォームで、これを使うブランドは自社の排出に関するデータを提供することで、競合他社が同じデータや方法論を活用することを可能にします。

/ 画面上の文字「2030年計算機によって、Doconomyは誰もが参加できる環境運動の場を作った」by グレッグ・バッチビンダー(Emeco CEO兼オーナー)/

なぜなら気候変動という大きな問題の前では、どのブランドも競合他社と壁を作っている場合ではないからです。

/ 画面上の文字「2030年計算機は、自社の商品が環境に与えているインパクトを開示しなければならない企業にとって最適な透明性を与えてくれる試みだ」by オールバーズ/

結果、より多くの企業が「つくる責任、つかう責任」が問われる時代の流れをさらに促すべく、自分たちの商品の炭素排出量をこの計算機で算出するようになりました。

気になるテックカンパニーDoconomy

いかがでしたでしょうか?実は「2030年計算機」を作ったこのDoconomyという会社、このブログで紹介するのは今回が二回目になります。

wsc.hatenablog.com

↑これがが第一回目の記事になります(記事のタイトルが今見ると恥ずかしくて困ってしまうのですが、それはさておき…)。この記事ではDoconomyが開発し、当時もかなりの話題を呼んでいた「買ったものの炭素排出量がわかるクレジットカード」を紹介しています。

これらの取り組みを通じて一貫して、カーボンフットプリントという概念の啓蒙と普及に努めるDoconomyですが、時は待ってくれません。

2030年というSDGsのタイムリミットに向けて彼らは今後、さらにどのようなサービスとアイデアでこの難題に取り組んでいくのでしょうか?Doconomyの今後には引き続き、目を光らせていきたいな、と思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!