世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

スウェーデン発・SDGs達成のために「共通の尺度」を作る果敢な試み

Photo by Pedro Henrique Santos on Unsplash

 

2030年まであと、たったの7年半

いよいよ、世界的クリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2022まであと1週間。ということでこのブログで去年の受賞作をこれまでずーっと取り上げてきたのですが、ラストに紹介するのはこちらのアイデアになります。

カンヌライオンズ2020/2021のその名もズバリ「SDGs部門」のグランプリ受賞作、スウェーデンのテクノロジー企業Doconomyによる「2030 Calculator(2030年計算機)」という取り組みです。

SDGsの目標達成年は2030年。なんとあと7年半しかありません。7年半といえば、私がこのブログを始めてから来月で8年目になりますから、それよりもやや短い時間しか我々にはもう残されていない、ということになります。

本当に「あっという間」の時間でしかない残りの7年半で、私たちは何ができるのか?客観的に考えてみても、もはやつべこべいう前に、トライ&エラーの繰り返しで正解を手繰り寄せる「パワープレーモード」にこれから入っていくしかないのかな…と思います。

今回はの取り組みは、そんなパワープレーを華麗に実施した事例として知っておくと良いのかな、と思います。それでは以下の紹介ムービーをご覧ください。

「2030 Calculator:2030年計算機」

www.youtube.com

【雑和訳】ナレーション:私たちは炭素の排出量を2030年までに今の半分に抑えなければなりません。そして、個人の炭素排出量の60%はそれぞれの消費活動に紐づいています。

/ 画面上の文字「我々は子供たちに引き継ぐことのできない方法で生活水準を引き上げてしまった」by ジョー・ロム(物理学者・気候の専門家)/

ナレーション:私たちは消費がこの星に与える影響を理解しなければなりません。そして、環境に与えるインパクトの低い商品を選ぶことは、私たち一人ひとりが日々の暮らしの中でとりうる、最も重要なアクションのひとつです。

しかしそのためには、さまざまなブランドに炭素排出量を示すラベル表示を促す必要があります。

しかし、自らの商品が排出する炭素の量を計算することは各ブランドにとって困難で、コストのかかるものです。

そして中小規模のブランドの多くが自社商品が与える環境への負荷について透明性を確保したいと考えているのに、そのためのリソースが足りない、というのは深刻な問題です。

 Doconomyはスウェーデンにある、地球環境へのインパクトを考えるテックカンパニーで、消費活動によって発生する消費者の炭素排出量を減らすためのデジタルサービスを提供しています。

その基本方針のもと、Doconomyは「2030年計算機」を発表しました。これは、どんな商品にも対応してその炭素排出量を計算するツールで、これによりブランドは計算のための時間を数週間から数分にまで短縮することができ、さらにそのための予算も数千ドルからゼロにまで削減できます。

2030年計算機はオープンプラットフォームで、これを使うブランドは自社の排出に関するデータを提供することで、競合他社が同じデータや方法論を活用することを可能にします。

/ 画面上の文字「2030年計算機によって、Doconomyは誰もが参加できる環境運動の場を作った」by グレッグ・バッチビンダー(Emeco CEO兼オーナー)/

なぜなら気候変動という大きな問題の前では、どのブランドも競合他社と壁を作っている場合ではないからです。

/ 画面上の文字「2030年計算機は、自社の商品が環境に与えているインパクトを開示しなければならない企業にとって最適な透明性を与えてくれる試みだ」by オールバーズ/

結果、より多くの企業が「つくる責任、つかう責任」が問われる時代の流れをさらに促すべく、自分たちの商品の炭素排出量をこの計算機で算出するようになりました。

気になるテックカンパニーDoconomy

いかがでしたでしょうか?実は「2030年計算機」を作ったこのDoconomyという会社、このブログで紹介するのは今回が二回目になります。

wsc.hatenablog.com

↑これがが第一回目の記事になります(記事のタイトルが今見ると恥ずかしくて困ってしまうのですが、それはさておき…)。この記事ではDoconomyが開発し、当時もかなりの話題を呼んでいた「買ったものの炭素排出量がわかるクレジットカード」を紹介しています。

これらの取り組みを通じて一貫して、カーボンフットプリントという概念の啓蒙と普及に努めるDoconomyですが、時は待ってくれません。

2030年というSDGsのタイムリミットに向けて彼らは今後、さらにどのようなサービスとアイデアでこの難題に取り組んでいくのでしょうか?Doconomyの今後には引き続き、目を光らせていきたいな、と思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

コロナ下の中南米にて、たくさんの商店主を救ったビール会社による試み

Photo by Kai Pilger on Unsplash

沈黙の2年間を振り返ってみる

いよいよ、世界的クリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2022まであと2週間。ということでこのブログでは今週と来週のあと2回、昨年の受賞作のご紹介を続けてまいります。

今回ご紹介するのは昨年のカンヌライオンズ2020/2021でクリエイティブeコマース部門のグランプリを獲得した、南米コロンビア発〜中南米9カ国へと広がったアイデアです。

この2年間、世界中のほとんどの人たちは新型コロナウイルスによってひっそりと暮らすことを余儀なくされてきました。その過程ではさまざまな試行錯誤がありましたが、パンデミックから1年のうちに有効なワクチンを開発して世界中に供給させ、2年半の間に日常を取り戻しつつある人類の叡智には、本当に目を見張るものがあると思います。

そしてその叡智は、何もワクチンを開発する科学者たちだけのものではありません。何の専門知識もない私たちだって、日々の暮らしで身の回りの困っている人々の状況を思いやり、彼らのためにソリューションを考え、実行することで人類の叡智の1ページに名を連ねることができるのです。

今回はそんなことを感じさせてくれる、世界的ビール会社アンハイザー・ブッシュ・インベブによるとってもシンプル、かつ素敵なアイデアです。

2年前の今頃、そして1年前の今頃。ご自身がどんな暮らしをしていたか、周りの人々とどのように力を合わせて苦境を乗り越えていったか、などなどを思い出しながらぜひ、以下の紹介ムービーをご覧ください。

「Tienda Cerca:ご近所ショッピング」

www.youtube.com

【雑和訳】ニュースキャスター「今年、COVID-19のパンデミックはたくさんの産業に大きな打撃を与えています」/ ナレーション:2020年、世界中で何百万ものビジネス活動が停止を余儀なくされました。そしてコロンビアでは、通りの角にあるような、小さな商店の経営が何百万もの家族の主な収入源となっています。

ABInBev(ビール会社アンハイザー・ブッシュ・インベブラテンアメリカの小売における最も大切なパートナーである彼らは、(コロナにより)深刻なダメージを被っていたのです。/ 文字スーパー:これらの商店は、コロンビアの小売市場の52%を占める /

店主A「お店を閉めるのはこの12年間で初めてです」/ 文字スーパー: 隔離期間中、これらの商店の23%が休業に追い込まれた / 店主B「こんなこと、誰も予測してなかったよ。もはやなすすべなく、店を閉めるしかないんだ」店主B「一体どうしたらいいんだい?」/

ナレーション:彼らが単独ではビジネスを続けられなくなってしまった時、私たちは彼らを繋ぎ、最もパワフルなオンラインストアを創りました。ABInBev提供、Tienda Cerca(ご近所ショッピング)。

国内で最も巨大で、究極にローカル化されたeコマースストアとして、私たちはあらゆる街角の、あらゆるブロック、あらゆるご近所の商店をデジタル化。/ 文字スーパー: サービス開始の第1週で、6万店以上の商店が登録 /

ナレーション:私たちはこれらの情報を、購入者の位置がわかるTienda Cerca.coにリンク。1クリックでWhatsAppを通じて、人々が各地の商店に直接オーダーできる仕組みを確立しました。

わずか60日の間に、私たちのウェブサイトは1,000万回以上の訪問回数を記録。登録した商店の内、実に70%が売上の上昇を示しました。(120万USドルに相当)/

司会者「メキシコへの愛と連帯の名の下、そしてメキシコのために…」/ ナレーション:9カ国(コロンビア、エルサルバドルパナマ、ペルー、メキシコ、エクアドルホンジュラスパラグアイドミニカ共和国)がこの取り組みを採用、合わせて40万以上の商店と、それを生業としている100万以上の家族を繋ぎました。/

店主A「こんな仕組みを授けてくれて、神に感謝です。本当に助かりました」/ 店主B「みんな家で物を受け取りたがるから、これは本当にありがたかったし、おかげでビジネスも回しつづけることができました」/ 消費者「このサービスで子供の学費も払ってますよ」/

文字スーパー:国の希望はテクノロジーにあるのではない。そのテクノロジーを、必要としている人々が使えるようにすることにあるのだ。ABInBev提供、Tienda Cerca(ご近所ショッピング)。

最後にキラーワード、出ました

いかがでしたでしょうか?少し本論からずれてしまいますがこの紹介ムービー、訳していくうちにカンヌライオンズなど、世界のアワードで評価を上げるための要素が本当に良くまとめられているな、と思いました。ナレーションを補強する文字スーパーがいちいち、審査員が評価を上げたくなる情報を入れ込んでいたり・・。

そして最後の「国の希望はテクノロジーにあるのではない。そのテクノロジーを、必要としている人々が使えるようにすることにあるのだ。」という一言。

アワードでどのアイデアにグランプリを授賞するかは、実はそれを選ぶ審査委員長や、審査員たちにとっても、その能力が問われる重要なポイントです。

そう考えた時、まさにこの最後の一言は、審査員がこの作品をグランプリに推す理由を代弁してくれているキラーワードだと思いました。

…などと、今回はちょっと業界風なことを語ってしまい大変恐縮ですが、自分たちが取り組んだことに対するこうした「魅せ方」のうまさも、世の中を巻き込んでいくソーシャルキャンペーンには大切な要素だと思います。

謙遜を美徳とする日本文化を基盤に持つ我々にはどうしても慣れが必要な部分ですが、謙遜すべき場と、魅せるべき場に合わせて自分のコミュニケーションを柔軟に使い分けられたら、日本文化を基盤に持つ人たちの強みや個性は、もっと世界のために活かせるんじゃないかな、と思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

同業者の命を守るために復活した「死んだはずのジャーナリスト」

Photo by The Climate Reality Project on Unsplash

ディープフェイク技術を見事に活用

さて、世界的クリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2022まであと3週間。ということで昨年の受賞作をできるだけ記録に残すべく、今週もご紹介を続けてまいります。

昨年のカンヌライオンズでGrand Prix for Good(ソーシャルグッドな取り組みの中でのグランプリ)を受賞した、メキシコ発のアイデアです。

デジタルデータを活用することで、本物と見紛うリアルなアイコラ動画を作るディープフェイク技術。この技術を使って例えば、過去のスターを蘇らせる…というような取り組みは多いですが、このアイデアはその技術をメキシコ特有の社会的文脈と組み合わせることで、見事にそのインパクトを倍増させています。

ぜひ、以下の紹介ビデオをご覧ください。

「# StillSpeakingUp DeepTruth: #告発は続く/ ディープな真実」

youtu.be

【雑和訳】文字スーパー:ジャーナリスト ハビエル・バルデス 2016年10月 /ハビエル「メキシコの大部分の地域では、違法薬物のカルテルが跋扈しています。もちろん怖いですよ」

文字スーパー:2017年5月 /レポーター「作家でジャーナリストのハビエル・バルデスさんが殺害されました」「世界中あらゆる国の中で、ジャーナリストにとって一番危険な国は、暴力が日常と化しているアフガンでも、イラクでもなく、メキシコです」

文字スーパー:2020年の死者の日ーメキシコで死者が蘇るとされる1日ー /キャスター「ハビエル・バルデスさんが殺害されてから3年経ちました。そして今日、彼は蘇りました」

ハビエル・バルデスさん「アンドレアス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領、2017年の5月15日、私は殺されました。私の出版物を快く思わなかった、誰かの指示によって。…でもとにかく私はご覧の通りここにいて、あなたに話しかけています」

タイトル:# StillSpeakingUp(#告発は続く) 

文字スーパー:恐れを知らず、告発できるメキシコでただ1人のジャーナリスト…それは、死者。 

メキシコ大統領「あなたがたは良いジャーナリストであるだけでなく、とても用心深い人たちのはずです。なぜなら、度を越したら何が起こるか…わかりますよね?何が起こりうるか」 

ハビエル・バルデスさん「大統領、私は全く恐れませんよ。私を2度殺せる人なんていないのですから」

文字スーパー:私たちはディープフェイク技術をディープな真実のために活用した。そして、ジャーナリストたちを守るための政策に取り組むよう、政府に嘆願したのだ。

文字スーパー:オーガニックなメディア露出 - 3億4,900万インプレッション

メディアの人々「このキャンペーンには本当に体が震えました。革命的な出来事だと思います」「殺害されたジャーナリストは永遠に記憶されるでしょう。我々は正義を追い求め続けなければなりません」

文字スーパー:メディアからのプレッシャーにより、初めて6人の殺人者が有罪判決を受けた。

メディアの人々「これらの(殺害された)ジャーナリストたちは今も声を上げ続けています!」

ハビエル・バルデスのツイート "この捜査は市長が麻薬組織に便宜を図っていることを証明している #告発は続く"

ミロスラヴァ・ブリーチのツイート ”ナルコ・カルテルの違法活動にチワワ市長のファン・コルテスも関与 #告発は続く"

文字スーパー:”#告発は続く”、それは、ジャーナリストが死者のアイデンティティを使うことで、安全に告発ができるプラットフォーム。

ハビエル・バルデスさん「彼らが我々を黙らせようとしても、私は告発し続けます」

文字スーパー:#告発は続く ディープな真実

技術は道具、どう使うかにミソがある

いかがでしたでしょうか?ディープフェイク技術を使って死者を蘇らせる、というのはおそらく誰にでも思いつくようなアイデアなのですが、それをメキシコの人々にとって大事な「死者の日」と絡め合わせることでこのキャンペーンは俄然注目を浴び、メキシコ社会に大きなインパクトを起こすことに成功しました。

(推論ですが日本でいうと「お盆の日にあの人が帰ってきた…」という感覚に近いのかもしれません…?)

技術の進歩のおかげでやれディープフェイクだ、VRだとブームを呼ぶような仕掛けはこの世から尽きることはありませんが、結局技術は道具に過ぎず、それにどんなメッセージや社会的文脈を組み合わせることで無関心な人々を振り向かせるのか?

まさにその部分こそが人類特有のスキル、クリエイティビティの腕の見せ所なのだ、ということを思い出させてくれる、素晴らしいソーシャルキャンペーンでした。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

女の子”らしさ”のおかしさに世界を気づかせた2010年代のベストキャンペーン

Photo by Caroline Hernandez on Unsplash

 

無意識レベルにまで染み込んだ女性への偏見の”可視化”に成功

先日、世界的クリエイティビティの祭典、カンヌライオンズが6月末に行われるのを前にブログの過去記事を眺めていたのですが、本日ご紹介するキャンペーンを今まで取り上げて来なかったことに気づき、慌ててこの記事をまとめています。

女性に関するステレオタイプの押し付けに対する社会の風当たりはここ数年、とても強くなってきていると感じますが、今回は2010年代、その世界的な潮流が形成される過程で、人々にかなりの影響を与えたキャンペーンです。

…と、ここで一旦余談になりますが、2000年代までは、カンヌも男女のステレオタイプに根ざした以下のようなキャンペーンを高く評価していました。


www.youtube.com

これは2006年のムービーです。今見ると完全にアウトですが、この時代と現在との間で、広告におけるステレオタイプの扱い方に対する前提がひっくり返るきっかけの一つとなったのが、これからご紹介する作品となります。

P&Gの生理用品ブランドAlways(日本のウィスパーに相当)によるムービーで、2015年のカンヌライオンズでPR部門のグランプリをはじめ、主要な部門でゴールドを多数獲得しました。それではご覧ください。

「#LIKEAGIRL : #女の子みたいに」

www.youtube.com

【雑和訳】文字スーパー:”女の子みたく動いてみて?”と言われたら、人はどう反応するのか?

監督「やぁ、エリンさん。では、私が今から指示を出すので、頭に浮かんだままにその指示に反応してみてください」「…では、女の子みたいに走ってみてください」被験者のひとり「あら、髪の毛が!」

監督「では、女の子みたいに戦ってみてください」「…では、女の子みたいに投げてみてください」

文字スーパー:私たちは実際の女の子たちに、同じ質問をしてみました。女の子「私はダコタです。10歳です」

監督「では、女の子みたいに走ってみてください」監督「では、女の子みたいに投げてみてください」監督「では、女の子みたいに戦ってみてください」

監督「私が女の子みたいに走って、と言った時どう思いましたか?」女の子「できるだけ早く走って、という意味だと思いました」

文字スーパー:いつから、「女の子みたい」に何かをすることが嘲笑の的になるのだろう?

監督「つまりあなたは今、あなたの妹を馬鹿にしたのだと思いますか?」少年「まさか!女の子を馬鹿にはしたけど、妹は馬鹿にしないよ」

監督「女の子みたい、っていい事だと思いますか?」 女の子「実際いいことかどうかはよく分からないんだけど、なんだか悪いことのように感じます。なんか、誰かをからかっているのかな、という風に聞こえます

文字スーパー:女の子の自信は、思春期の間に大きく損なわれる。…Alwaysは、この現状を変えたい。

監督「女の子が10歳から12歳の間の繊細な時期に、もし誰かがからかうために”女の子みたい”という言葉を使ったら、どんな影響を彼女たちに与えると思いますか?」

成人女性「確実に彼女たちの自己肯定力を落としてしまうと思います。確実に落ち込むと思いますよ、彼女たち自身があれこれ考え始める時期に「女の子みたいに叩くね」なんて言われたら、自分自身は強いと思っているのに「え?どういうこと?」と思いますよね。それは彼女たちが弱い、と言っているようなものです。実際はそんなことはないのに」

監督「では、”女の子みたいに走るね”とか”女の子みたいに蹴るね”、”女の子みたいに叩くね”、””女の子みたいに泳ぐね”と言われている女の子たちにどんなアドバイスがありますか?」

成人女性「気にしないで、それでいいんだから。もし誰かが”女の子みたいに走るね”とか”女の子みたいに蹴るね”とか”女の子みたいに打つね”と言ってきても絶対に違うし、それはその人たちの方が問題なんだから。だってあなたがそれで点を取れたり、ボールを時間内に奪えたり、先頭にいたりする限りは、そのやり方でいいんだから。そんな人たちの声は気にしないで。むしろ、”ええ、私は女の子みたいに蹴るし、女の子みたいに泳ぐし、女の子みたいに歩くし、朝も女の子みたいに起きるの。だって女の子なんだから。それは全然恥じることじゃないし、どうであれ私はそのやり方を続けるわ”という態度を貫くべきだと思います」

監督「では今また、”女の子みたいに走ってください”と言ったら、走り方を変えますか?」 成人女性「自分らしく走ります」 監督「では、もう一度やってみますか?」 成人女性「はい」

文字スーパー:#女の子みたいに、という言葉の意味を素晴らしいものにしよう。…ALWAYS.COMに参加して、少女たちの自信を称えよう。

成人女性「なぜ”女の子みたく”走ったらレースに勝てない、なんて思うの?」

文字スーパー: ルールを考え直そう。Always

社会と共に変わるのか、社会自体を変えるのか

いかがでしたでしょうか?社会の動きを巧みにとらえて、メッセージを最適化していくのが2000年代までの広告表現だとすると、2010年以降は今回の#LIKEAGIRLに代表されるようにどんどんと、企業やブランドが自ら信じるところに立ち、人々と共に社会自体をより良く変えていくためのアクションや提言を繰り広げていくことにその主流が移って来ています。

この潮流を踏まえて昨今のカンヌライオンズ受賞作を見ると、日本企業の広告表現が苦戦を続けている理由も見えてくると思います。

*ちなみに冒頭にご紹介したAXEの販売元であるユニリーバの名誉のために言うと、同社も2016年、このような性のステレオタイプに基づく広告表現は今後見直すと公表し、最近では同じ商品による「男性の多様性とその素晴らしさ」を謳った印象的な広告を発表しております。以下に関連記事と、リニューアル後のキャンペーン(Find Your Magic)を添付しておきますね!

chiefmarketer.com

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いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

性的マイノリティの人たちに素敵な”サードプレイス”を提供したスタバのキャンペーン

Photo by TR on Unsplash

自分が自分でいられる場所を、もっと多くの人たちへ

気づけば来月は世界的クリエイティビティの祭典、カンヌライオンズが行われます。今年もまた、素晴らしいアイデアの数々を世界は目にすることになると思いますが、その前に今回はこのブログでまだ紹介しきれていなかった昨年のカンヌ(カンヌライオンズ2020/2021)受賞作からひとつ、ご紹介しようと思います。

スターバックスが自宅とオフィスの間で、人々に寛ぎを与える場所(サードプレイス)を提供していることは誰もが知るところですが、ではその場所を、よりインクルーシブな場所にするにはどうしたら良いのか?という切り口から考えられたブラジル発のアイデアです。

彼らの視点は店舗の常識をはるかに超えて、一人ひとりの人生に大きな影響を与える活動になりました。ぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「i am : 本当の私へ」

www.youtube.com

【雑和訳】文字スーパー:自分の体やジェンダーを変えられるとしたら、どんな気分か想像してみてください。…だけど、あなたの名前は変えられません。なぜならあなたの法的に認められた本名を変えるには高額の費用がかかり、そのプロセスを含む、さまざまな部分で官僚的な手続きや偏見が立ちはだかるからです。

コメント1「私はいつも身分証を折って持ち歩いているんです。そうすれば誰にも(自分の見た目と名前の不一致に)気づかれることがないので」コメント2「私は単純にあらゆるところから疎外されています。たくさんのことを諦めなければいけませんでした」

文字スーパー:皆様もご存知の通り、スタバではだれもが自由に、自分が使いたい名前を名乗れます。でも、私たちはこの自由を、お客さまがコーヒーを買ったときだけではなく、身分証明証を出さなければならないような、あらゆる場所に広げたいと考えました。”スターバックス提供/ i amキャンペーン” 。

(性的マイノリティの)人々の中には、(名前を変えるために)公証人事務所に行くことに不安を抱く人がいます。なので私たちは彼・彼女たちをいつも歓迎している場所に招くことにしました。

私たちは、スターバックスを公証人事務所にしたのです。私たちは訪れた人にふさわしいホスピタリティとサポートを備えた、完全無料のサポートを行いました。

結果、サンパウロの年間平均変更数の7倍の数の氏名変更届が出されました。

氏名を変えた人1「え、何が起こるのかしら?」(*名前を変えた人々が、次々と箱の中の名前変更証書を確認していく)氏名を変えた人2「この気持ちは表現できないわ。これが、私の名前よ」氏名を変えた人3「これまではいつも体はここにあるのに、魂が入ってないみたいな感じで…それが今は、心と体が一つになった気がします」氏名を変えた人4「なぜなら自分の名前は王座のようなものであり、王冠のようなものなのですから」氏名を変えた人5「これを見ると少しずつ、自分がたどり着きたい場所、所属するべき場所に近づいていっていると感じます」

文字スーパー:そしてこの取り組みは、さまざまな人々の人生に新たな始まりをもたらしました。

(*スターバックスのロゴが映し出されて終了)

自社店舗を役所に変えて、自分らしく生きたい人たちを応援

いかがでしたでしょうか?

性的マイノリティの人たちへの偏見がまだ根強く残っている今の社会では、彼・彼女たちが自分らしい名前を本名として獲得するためには幾十もの乗り越えなければならない壁があります。

でも、自分らしい名前が法的に認められない状況でスタバで時間を過ごしたとしても、その人たちは心からそのひと時を楽しむことができるのでしょうか?

そして、そんな状況が現にあるのだとしたら、それは自分たちが立ち上がり、手を差し伸べるべきではないのか?

そんな、スターバックスの中の人たちの真摯な思いが伝わる取り組みでした。

ちなみのこのアイデアを見て思い出したのが、同じく性的マイノリティの人たちの名前の問題に着目したマスターカードの以下のキャンペーンです。

wsc.hatenablog.com

また、自社の店舗を公的な用途に活用させた、という意味では、自社の店舗を選挙の投票所に変えてしまった以下の取り組みもすごかったよなぁ、と思い出しました。

wsc.hatenablog.com

どの案も斬新で、実施に漕ぎ着けるまでには関係各位との途轍もない交渉と、粘り強さが必要に違いない取り組みです。

イデアを編み出すだけでなく、それを実現させてしまったその執念に敬意を表したいと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

アリかナシか?マレーシアで賛否を巻き起こした生理用品ブランドのチャレンジ

Photo by Amy Shamblen on Unsplash

去年のカンヌで話題になった、Bodyformがまたやった

皆さん、去年6月に行われた「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズを席巻した”子宮の物語”で話題になったBodyformという生理用品ブランドはご存知でしょうか?

wsc.hatenablog.com

こちら、生理や女性器に関するタブーに挑み、それらを破壊していくことで女性の活躍を応援することで知られる世界的ブランドなのですが、マレーシアではLibresseという名前で展開しています。

イスラム教徒が多く、女性が暮らしていく上で制約を感じることも西洋と比べ多いとされるマレーシア。ここでも彼らは、東南アジア地域の伝統的衣装「ケバヤ」の柄を活用した勇敢な取り組みを行いました。

多様な文化が共存するアジアならではの、各地の伝統や風習に根ざしたソリューションを評価するAdfest2022のLotus Roots部門と、アジア太平洋地域のクリエイティビティの祭典、スパイクスアジアのヘルスケア部門グランプリを相次いで受賞した、今年のアジアを代表するアイデアです。

ぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「VULBA KEBAYA: 女性器のケバヤ」

youtu.be

【雑和訳】「国中で話題になった花だ」(Jinnyboy/ マレーシアのYouTubeクリエイター)「人々を勇気づけてくれる美しくて、ゴージャスな花です」(Sivananthi Thanenthiran/ Arrowおよび国連のエグゼクティブ・ディレクター)

ナレーション:マレーシア社会では女性器について根深い偏見があります。(背景に“マレーシア女性の50%が自身の女性器について決して話さないと答えた”、“3人に1人が自分の女性器の形に引け目を感じている”、“56%が生理について話すなら、いじめられた方がマシだと答えた”などの情報が入る。)

その結果、現実の世界にさまざまな問題を引き起こしています。(背景に“マレーシアは女性器切除を終わらせるべき”、“17歳の高校生がマレーシアのレイプ・カルチャーを暴露”などのニュース記事の見出しが入る。)

私たちはタブーを破壊するために、女性たちに自分たちの性器についてもっと話してもらう必要があると考えました。自分自身の体について自主的に語ることなしに、人生に自立をもたらすことはできないからです。

*このキャンペーンのタイトルが入る→ “Libresse提供 VULVA KEBAYA(女性器のケバヤ)”

私たちはマレーシアの女性たちにかつて、自身が持つ性についてインスパイアを与えた現地のファッション様式“NYONYA KEBAYA”に着目(1920年台のNyonyaケバヤの画像が入る)。地方に住む女性の職人たちとともに、その花の刺繍の中心部に女性器をあしらった新しい様式を創り出しました。(Chrysanthemum、Peony)私たちはインフルエンサーを活用することで、そのファッションをアピール。

インフルエンサー「なぜ私たちは自分の女性器の形に引け目を感じないといけないんですか?」「あなたの女性器はあなたの一部です。個性的でもいいじゃないですか。」

ナレーション:さらに私たちは、そのデザインを(Libresseの)商品パッケージにも反映させました。中には苛立つ人たちもいました。(さまざまな批判の声が入る「信仰深い女性たちが痛烈に批判しています」「女性器の利用は侮辱では?」

ナレーション:そしてこの試みは国中の話題となったのです。

(さまざまな援護の声が入る「品位を損なっているわけでは全くない」、「これは、あなたの女性器がいかに美しいかを讃えているのです」)

この取り組みは、マレーシア国内で最も話題となったキャンペーンとなりました。

論争を巻き起こし…、女性器をテーマにした人々の創作意欲を刺激しました。

このキャンペーンは国中をインスパイアし、古臭いタブーを崩すための大きなきっかけとなったのです。

“Libresse提供 VULVA KEBAYA(女性器のKEBAYA)”

炎上をも計算に入れたブランディングはアリなのか

いかがでしたでしょうか?

上記紹介ビデオでも「この取り組みの是非をめぐり、マレーシア国中で論争が起きた」と紹介されていますが、2021年9月16日の建国記念日(マレーシア・デイ)に合わせて開始されたこのキャンペーンは、実はその4日後の9月20日、同地イスラム教系団体からの「女性への冒涜である」というクレームを受けてあっさりその取り組みを中止しています↓

malaysia.news.yahoo.com

ブランドの購入者である人々に反感を買うリスクまで見込んだ上で、一企業の商品がブランド活動家のような取り組みをすることについてや、活動を華々しく立ち上げたものの、異論を受けてあっさりとそれを中止してしまうことについてはさまざまな捉え方があると思います。

本ブログの趣旨上、それらの意見の是非を問うことはここではしませんが、イスラム教を国教とするマレーシアでも、ジェンダーに関してこのような取り組みが既に行われている、ということは知っておいて損はないと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

タイの肥料メーカーが農村に起こした「プチ革命」

Photo by Eduardo Prim on Unsplash

 

シンプルだけど役に立つ”広告”をひとつ

昨今はシリアスな課題が多めだったので、今回はひとつ、シンプルだけれどタイの農村でみんなに喜ばれたアイデアをご紹介します。これからの太陽が眩しい季節、日本でも応用できるアイデアかもしれません。…ということで今日は前置きもシンプルに。

こちらも先週〜先々週のアイデアと同じく、多様な文化が共存するアジアならではの、各地の伝統や風習に根ざしたソリューションを評価するAdfest2022のLotus Roots部門を受賞したアイデアです。

「Shelter Signboard: 太陽から身を守る看板」

vimeo.com

【雑和訳】タイトル:タイは米の輸出量が世界で最も多い国の一つで、国中に400万人を超える稲作農家がいます。キャスター「タイは3つのことで知られています。夏と、本当に暑い夏。そして本当にクソ暑い夏です」女性の声「昨日の最高気温は44.6度までいってしまいました」タイトル:農家は、週に80時間も熱射に晒されて働かなければなりません。毎年、水田では熱射病で最高38人もの方がなくなっています。(いくつかのメディアの、このアイデアに対する賞賛が表示される)”TRAモンクット肥料会社提供:太陽から身を守る看板 ー 農家の命を守る、シンプルな解決策”。…シンプルすぎる?(農家「私たちも欲しい」など必要性を感じさせる声が幾つか入る)そんなにシンプルではありません。反射性のあるプリントが太陽光線を跳ね返すことで、農家の体に届く熱を3度から4度、減少させるのです。(学者が同じ内容を繰り返す。)我々はこの看板を国中の農家に配布しました…彼らを守るだけでなく、彼らへの応援メッセージを添えて。”懸命に働いてくれてありがとう!”、”あなたたちのおかげで、私たちが飢えずに済んでいます”、”お米を食べる一口一口が、私たちの誇りです”。農家「TRA モンクットは農家たちへの武器を与えてくれました。壊れにくく、私たちの全身を太陽から守ってくれるのです」キャスター「熱波に対抗する、素晴らしい方法だと思います」(メディア費用ゼロで、1000万バーツ以上の効果を発揮。2万枚以上の看板が配布された)我々の看板がきっかけとなり、各地の農家の人々が、オリジナルバージョンの看板を創作しました。そして、このアイデアはこの年の代表的な「命を救うハック」となったのです。農家「この看板は我々を太陽と雨から守ってくれます」そして政府までもが、我々のイノベーションをサポートしました。キャスター「Loei地方の知事が訪問し、農家が彼の背中に看板をつけました」”TRAモンクット肥料会社提供:太陽から身を守る看板 ” ー農家の背中を支えるのは、私たち。

枯れた技術の水平思考

いかがでしたでしょうか?

普段からイノベーティブなアイデアマーケティングキャンペーンを見慣れていると、今回のアイデアはシンプルすぎて懐かしい…ぐらいの感覚に陥りますが、逆にいうと世界は広く、逆に我々の方が頭でっかちになりすぎているのかもしれない、というリスクについても自覚しておく必要があるのかな、と思います。

どんなに技術が進んでも、暑すぎれば人は死に、ご飯を食べなければ人は死にます。今の世界、デジタル世界に振り切ることが必要な場面は増える一方ですが、そんな時にも今回のアイデアのような「超アナログな引き出し」を持っておくと、逆にイノベーションの呼び水になるのかな、と考えます。

以下はそんな思考の流れから思い出した、任天堂横井軍平さんによる「枯れた技術の水平思考」という考え方です。(昔、会社の研修でとある素敵な方から教わりました。ありがとうございます!)この記事のおまけとしてリンクを張り、今回の記事をお開きにしたいと思います。

dic.pixiv.net

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!