世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

政府の弾圧により、廃刊に追い込まれた新聞が蘇る【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのBank Phromが撮影した写真

🏷️ 今年もよろしくお願いいたします

 最近生活のリズムや、世界に対する考え方に変化があり、今年は更新頻度も少し抑え目に、シンプルに、のんびりと更新していこうと思います。

 今回ご紹介するのは「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2023のプリント&パブリッシング部門でグランプリを獲得したレバノンの新聞社による取り組みになります。

 こちらの新聞社は、前年のカンヌでも以下の取り組みで高く評価されていましたね!

wsc.hatenablog.com

それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「Newspapers inside the Newspaper Edition / 新聞の中の新聞」

youtu.be

【雑和訳】文字要素: 中東のメディアは、世界の中でも最も敵対的な環境に置かれているとランクづけされている - 国境なき記者団 / ナレーション:レバノンでは政治的抑圧と政府の堕落、それに伴う経済的カオスが立ちあがろうとする人々の声を抑圧し続けている …ジャーナリストを殺害したり、出版を禁止するなどの手段を通じて / そして、出版による言論の火は消え失せ、二度と戻らないように思われた / アンナハール新聞は、出版による言論の自由を守るため、そして、自らの言論を貫いたために暗殺された編集長ジブラン・トゥエイニの死後1年を讃えるために、とても印象的な活動を行なった / タイトル:”新聞の中の新聞” / ナレーション:その日、いつものアンナハール新聞の中に、ここ数年の間に政府の弾圧により廃刊を余儀なくされた新聞紙6紙がプリントされた / (当日の新聞の各面にプリントされた、廃刊を余儀なくされた新聞の1面と、その廃刊年が映し出される) / 文字要素:合わせて7紙が、ひとつの新聞に / ナレーション:各面では、過去に廃刊となってしまったそれぞれの新聞が復活 / そこに記された言葉はすべて、かつてその新聞を主導していたジャーナリストたちの手によって書かれた / 恐れることなく、書きたいことを書く自由 / 全てのページで、かつて存在した新聞のオリジナルなレイアウトと、そのアイデンティティが再現された / 復活した新聞は印刷物としてだけでなく、オンラインや、ソーシャルメディアでも公開された / そして、レバノン中の人々により再び読まれることとなった / 国会議員たちでさえも、このキャンペーンについて発言した / 議員のコメント「この新聞はレバノンをより良い方向に導く上で助けとなるでしょう」/ TVの討論者「これらの新聞は言論の弾圧に対抗する戦士ですね」/ 活動家「この新聞の出版は言論の自由を得るための戦いのひとつです。自由がなければ、正義も成り立たないのですから」/ 文字要素:13万ドル相当のアーンド・メディア / 新聞は売り切れ / ツイッターにもトレンド入り / ナレーション:弾圧に対するアンナハール新聞のメッセージは明快だ / メディアは決して沈黙しない / (アンナハール新聞のロゴが入る )

 

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また次回お会いしましょう!

 

アフリカ最大の遊牧民たちの文化を守るため、マイクロソフトが文字を開発【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのJames Wisemanが撮影した写真

🏷️ こんな時代こそ、多様性をお祝いして今年を締めたい

 このブログは、主にカンヌライオンズなど、西側で評価されたアイデアを紹介することに主眼があります。が、ここ最近の世界的な出来事で、世界のほんの一部(のモノの見方)で評価されたものを、あたかも全世界が評価しているかのように紹介することが正しいのか少し悩んでしまい、ブログの更新を休んでおりました。

 しかしブログ・マスト・ゴー・オン。今回はそんなこともあり、世界の多様性を祝うような、晴れやかなアイデアでこの一年を締めくくりたいと思います。

 ちなみにこちら「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2023のデザイン部門と、クリエイティビティ・ビジネス・トランスフォーメーション部門でWグランプリを獲得するなど、高い評価を獲得したキャンペーンとなります。それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「ADLAM - An Alphabet to Preserve a Culture / ADLAM - 文化を保つためのアルファベット(文字体系)」

youtu.be

【雑和訳】文字要素: アルファベット(以下文字体系)は文化を保護できるのか? / イブラヒマ・アンド・アブドゥライと、マイクロソフトによるプロジェクト / ナレーション:西アフリカのフラニ族の人たちは世界最大の遊牧民族です / 彼らの母国語プラー語は、常に話し言葉で用いられ、文字体系を持ちませんでした。他の言語の文字体系を使うことを余儀なくされ、識字率を押し下げる一方、彼らの言語が持つ意味やニュアンスは、その伝統や物語、歌と共に消滅の危機にありました / ふたりの若い兄弟、イブラヒマとアブドゥライ・バリーは、この状況を看過できませんでした / そして一文字一文字、彼らのための文字体系を創りあげたのです / しかしそれは手書きのもので、現代のデジタル社会では、その用途は限られたものでした / タイトル:ADLaM - 文化を保つためのアルファベット(文字体系)/ イブラヒマ「私たちは目を閉じて、自分たちの言葉の音から、形を作っていきました」/ アブドゥライ「私たちがADLaMを作っても、それを使われるものにするには、コンピューターで使えるようにしなければなりません」/ ナレーション: バリー兄弟とのパートナーシップにより、私たちはその文字体系をエンコード。ついに、フラニ族の人々は自身のコンピューターに、自身の言語で文字を打ち込めるようになったのです / マイクロソフトの主任マネージャー アンドリュー・グラス氏「コンピューター上で自身の言語を使えるようになることは不可欠なことです。それができなければ、私たちが生きているこの世界から自身を遮断してしまうことになります」/ ナレーション:しかし、デジタル社会が進化を続ける中、この文字体系をより読みやすく、打ち込みやすいものにするための大きな改編が必要でした / アブドゥライ「文字の形が最終形に定着するまでには、何百年もの年月がかかります。しかしマイクロソフトはそのプロセスを大幅にスピードアップしてくれました」/ ナレーション:タイポフェイスの専門家たちとの協業を通じて文字の形は改訂され、より新しく、最適化されたバージョンとなりました / そして、私たちはそれを、世界中のコンピューターで使えるものとしたのです / アンドリュー・グラス氏「私たちは、ADLaMをMicrosoft365で対応可能にしたことは、フラニの人たちや、その文化の保護においてとてつもなく重要なことになると考えました」/ ナレーション:そして、フラニのコミュニティはそれを歓迎しました / 彼らのビジネスや、コミュニケーション、そして次世代への教育のために。フラニの文化を永遠に保つために / フラニの女性 オモウ・オウマロウ氏「私たちの文化は風前の灯でした。しかしこのADLaMがあれば、書き文字として(フラニの文化は)永遠に残ることでしょう」/ ロゴ:マイクロソフト

🏷️ 人類が次なる破壊から逃れるために

いかがでしたでしょうか?

ここ数年、私たちはニュース映像で、世界中の人々の素晴らしい文化が瓦礫の山とともに傷つけられていく様子を目の当たりにしています。そして、それぞれの暴力沙汰に対し、自分たちは応援するか、非難するかの二択を迫られているような気がします。

しかし残念ながら、この二択に囚われているうちは、そこには瓦礫の山しか残りません。

なぜそんなことになってしまっているのでしょうか?なぜならそこにはアイデアがないからです。どうしても解決できない問題を解決する。そこにはやはり、悪い大人たちの煽動を耐え抜く人類の叡智の結集、アイデアの力が必要です。

…ということで、なぜ私がこのブログを続けているかの理由を匂わせつつ、今年を締めたいと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来年!

 

全盲の男性が夢のスポーツキャスターに!あらゆる人の社会参加を広げるテクノロジー【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのMarius Christensenが撮影した写真

🏷️ 1,000万人以上が見つめるNBAの全米ライブ中継で実現

 イノベーションには2つの方法があると思います。まずはクラファンなどで小規模〜実験的に開発し、徐々に実現していくもの。もう一つは、国家や企業などの大きな資金を使い、最初から明確な目標の下、フルスイングしていくものです。もちろん両方ともプロ・コンがあり、鶏卵の関係性でもあるのですが、今回はビールブランドのミケロブ・ウルトラがよりインクルーシブな社会実現のために、またスローガンの「It's only worth it if you enjoy it.(喜びがなくちゃ意味がない)」を具現化する取り組みとして、生まれつき全盲の男性をパートナーに、後者のスタンスで取り組んだ素晴らしい取り組みについてご紹介します。

 ちなみにこちら「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2023のEntertainment for Sports部門でグランプリ、メディア部門で金賞を獲得するなど、かなり高い評価を獲得したキャンペーンとなります。それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「Dreamcaster / 夢のキャスター」

youtu.be

【雑和訳】文字要素:世界では19億人がNBAを見ています / しかし、2億8,400万人はそれを十分に楽しむことができません / 盲目の男性「バスケットボールは動きがとても速いスポーツです。もし見ることができなければ、それを楽しむことはとても困難です」/

文字要素:喜びを全ての人に提供することを志すブランドとして… / (*CMなど、様々なコンテンツでのキャッチフレーズ”喜びがなくちゃ意味がない”が映し出される)/  (ビールブランドの)ミケロブ・ウルトラは、試合に喜びを作り出さなければなりませんでした / どんな人でも体験できる、喜びを / 今回は、一人の人間に注目しました /

冒頭にも出てきた男性「私はキャメロン・ブラックです。私は生まれつき目が見えません。スポーツキャスターになることを、私はずっと夢見てきました」/ タイトル:ミケロブ・ウルトラ提供: Dreamcaster(夢のキャスター)/

文字要素:史上初 / 盲目の人が、NBAの試合をコメント / プライムタイムのTVのライブ中継で /

”新しい言語” / キャメロン・ブラック「1年まるまるかけて、新しい言語の開発をサポートしました」/「私は感覚を研ぎ澄ましました」/ (体に装着したセンサーを体験しながら)「上下にとても早く動くね!」/「一連の新しい技術を開発するために」/

文字要素: 62のサラウンド・サウンドスピーカー / 技術者A「空間音響を活用することで、キャメロンはまるで試合の中心にいるかのような聴覚体験に没入することができます /

文字要素: 1,020の独創的なサウンドの可能性 / ナレーション:新しい言語のボキャブラリーとなる音の数々が、どんなプレーが、どこで起きているのかを伝えます /

文字要素: 触覚活用型フィードバック / 技術者B「私たちが触覚型の言語を開発しました」/ 文字要素: 144の振動のバリエーション / 技術者B「聴覚に加えて、プレーの強烈さや、重要性を強調するためのものです」/

文字要素: 次々と更新される点字情報 / ナレーション: そして、次々と更新される点字情報も、試合の中で圧縮された情報を秒以下のスピードで提供すべくプログラムされました。/ 文字要素:76年分のNBAスタッツ /

ナレーション: これらは全て、データとAIの活用を通じて実現されたのです / スポーツレポーター「キャメロン・ブラックは34歳の生まれつき目が見えない障害を抱えていますが、ミケロブ・ウルトラと特別なテクノロジーにより今晩、彼はキャスターを務めるそうです!」/

キャメロン・ブラック「ミケロブ・ウルトラのスタジオから、私がライブにてゲーム3の模様をお届けします」/「…RJギャレットが決めた!素晴らしい!」/「…ガーランドがトラベリングを取られました。これはまたターンオーバーだ。またもやターンオーバー!」/ 「…キレキレの高いバスが通って決まった、アリウープだ〜〜〜!2回の信号が体にキター!これはすごい!」/

ニューヨークタイムズ ”ゲームチェンジャーだ” / USA "バスケを進化させるテクノロジー" / NBA "スポーツの進化を加速する" / キャメロン・ブラックさん「これがバスケだ!」/

文字要素: 何百万もの視覚障がい者に道を切り拓きました / The Athletic "23−24年シーズンの画期的テクノロジー" / 文字要素アリーナの21,000人が体験 / 1,040万人がライブでTV視聴 / しかも、完全に番組に統合された形で /

スポーツキャスター&SNS上の人々「キャメロン・ブラック」「キャメロン・ブラック」「キャメロン・ブラック!」/「目が見えないのに実況するなんて、他の誰ができるんだい!」/

番組でのキャメロン・ブラック「みんなのためにスポーツエンタメを変える試みです」/ 文字要素: AB-inbev がインクルーシブな社会に向けて行なった投資コミットメント 1億1,500万ドル / キャメロン・ブラックさん「私がキャメロン・ブラックです。以上」/ ブランドロゴ: ミケロブ・ウルトラ

🏷️ 実は凄まじかったに違いないキャメロンさんの努力

いかがでしたでしょうか?

クリエイティビティや、それを可能にするテクノロジーを評価する中で、ともすると見過ごされてしまいがちですが、この試みのMVPはやっぱり、どう考えてもキャメロンさんです。

まるでコートの中にいるような立体感ある音響の中で刻々と発信されるサウンドやバイブレーションに感覚を研ぎすまさせ、刻々と情報が供給される点字情報をリアルタイムで処理しながら、臨場感たっぷりな実況を行うという神技は、まるでガンダムのモビルスーツを操作するような、大変複雑なプロセスを体に染み込ませなければ不可能なことだったと思います。

私たちは残念ながらリアルタイムにこの中継を見ることはできませんでしたが、自分の体が強いる能力の限界をぶち破り、夢の実現に取り組むキャメロンさんのガッツと、それに応えるべく努力を続けた開発陣の執念が見事に共鳴した、胸が熱くなる、本当に素晴らしい実況だったのではないかと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

ブラジル政界を揺るがした、政治家の支出開示プラットフォーム【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのKenny Eliasonが撮影した写真

🏷️ 政治家のサイフを国民のスマホにつなげたイノベーション

あなたがある国の政治家だったとします。そして、その権力のおかげであなたは好きなことがなんでもできてしまいます。税金を使って支給される活動費も、どんな用途に使ってもそれが外部にバレることはなく、糾弾されることもありません。

と、そんな”透明さ”に欠ける環境にいたら、どんな政治家でも、あなたでも、私でも、次第に感覚が麻痺し、ついには闇落ちしてしまうのも無理のない話なのかな、と思います。

…ということで今回は、そんな状況に危機感を持ったブラジルのデジタルニュースポータルサイトCongresso em Focoがブラジル国民のスマホに向けて施した、魔法のようにイノベーティブな取り組みをご紹介します。

ちなみにこちら「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2023のデジタルクラフト部門と、モバイル部門で金賞を受賞するなど、高い評価を獲得したキャンペーンとなります。それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「Transparency Card / ”透明な”カード」

youtu.be

【雑和訳】文字要素:ブラジルでは毎年、400億ドルもの金額が政治家の腐敗した支出により失われていますー国連 / ナレーション: 透明性の欠如により、ブラジルの政治家たちは誰にも知られずに公金を使うことができてしまいます / ではもし、自分のお金をトラックするのと同じくらい簡単に、公金の動きが追跡できたらどうなるでしょうか? /

ブラジルのデジタルニュースポータルCongresso em Focoは、Transparency Card("透明な"カード)という、モバイルウォレットを、腐敗に対する道具に変えるカードを創りました / 政治家たちの支出データは法律により公開されています / でも、その情報へのアクセスは政治家たちにより意図的に、極めて複雑な手続きで妨げられています /

我々のシステムは、それらを簡素化しました / 複数の政府のデータベースを分析し… / (文字要素&動画表現:”上院”、"衆議院"、”大統領府”のデータベースをイメージさせる3つの円から、さまざまな個別データへと線が伸びる) / 500人以上の政治家たちの支出データをリアルタイムで、プッシュ型の報告で配信するのです / 

(文字要素&動画表現:スマホ上に次々と政治家の支払い情報が送信され、”航空券”や”ガソリン”、”ホテル”、”スーパーマーケット”、”レストラン”などでの支出情報が送られてくる) /

ナレーション: Appも、ウェブAppも必要なく、使うのはスマホに最初から付いている機能”モバイルウォレット” / 私たちのウェブサイトにアクセスし、あなたが(支出状況を)確認したい政治家を選び、その人たちのカードを(モバイルウォレット上に)追加するだけで / 彼らが納税者から集めたお金を使うたびに、国中の人々がスマホを通じてそれを知ることができるようになったのです /

支払い履歴へのアクセスも他のクレジットカードと同様にとっても簡単 / このイノベーションは、選挙のわずか4週間前、大統領が自分自身の支払データを隠すために秘密保持命令を課した時に稼働を開始 / 何千ものカードがアクティベートされ、何百万もの報告が(プッシュ)配信されました /

そして、政治家たちに説明責任を求めるブラジルの人々を勇気づけたのです / ISAODORAMMRRのツイート ”パブロ・オリバ議員は23,000ドルをプライベートジェットに支払う。何のために?” /

ナレーション: さらに、他のニュースポータル所属のジャーナリストたちの調査の情報源としても活用されました / これらは極めて重要な選挙の話題として、透明性をブーストさせる追い風となったのです /

ニュースメディアの人A「Congresso em Focoが開発した」/ ニュースメディアの人B「Transparency Card("透明な"カード)」/ 情報番組の人「公金が使われる度に、あなたのスマホに通知が来ることを想像してみてください」/ ニュースメディアの人C「私たちのポケットから出たお金です。私たちには知る権利があるのです」/

ナレーション:そして、新しい大統領が選出された選挙の後、これが起きました / 新大統領「情報アクセス法案を再施行したいと思います」/ 

ナレーション:かくして、すべての隠された支払いが私たちのプラットフォームに掲載されました / ブラジルで新たに選ばれた議員たち全員の情報と共に /

Transparency Card("透明な"カード)は現在も進行中で、進化を続け、世界的にもスケールが可能なプロジェクトなのです /

Contagiousのコメント”政治家をモニターするために、国全体を勇気づけた” / Transparency Card("透明な"カード)、あなたのお金なのだから、あなたには用途を知る権利がある / URL: CARTAODATRANSPARENCIA.COM 

🏷️ スマホの活用=アプリに囚われなかった点が秀逸

いかがでしたでしょうか?

スマホを活用して何かをしようと思うとつい「こんなアプリを作ってこうしよう」と、 アプリありきの発想に縛られてしまいがちですが、このアイデアの素晴らしいところは、すでに多くのスマホにデフォルトで入っている”モバイルウォレット”という機能に着目したところです。

↓ちなみに以下のリンクが、「Transparency Card ("透明な"カード)」の登録ができるサイトになっております。

www.transparencycard.com

もちろん日本の我々がこのツールを取り入れてブラジルの政治家の支払いを確認する必要はありませんし、そもそも日本で活用できるものなのかもわかりません。ただ、サイトとしてどんな構成になっているのか等、ご参考としてご覧いただいてもいいのかな、と思います。

 

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

クルマの安全性は男性優位だった!ボルボが社会の盲点をついた衝撃的なキャンペーン【カンヌ2019受賞作より】

UnsplashのChris Martinが撮影した写真

🏷️ クルマの安全は、男性の体を基準にデザインされていた

長年このブログをやっていると、時折「あれ、なんでこんなすごいアイデアを紹介してこなかったんだろう」と思うことがあります。もちろんその時の仕事の状況や精神状況など、いろいろな要因で紹介しそびれることはあるのですが、何より興味深いのが「当時の自分では、その重要性を感じることができなかった」という現象です。

今回ご紹介するVolvoによる「The E.V.Aイニシアチブ」は自分にとってまさにその現象が起きた取り組みで、コロナ前にこれを見たときは、何か凄そうだけど改めて掘り下げるほどでは…と考えていました。

しかし、コロナ中に以下の本を読んで、この社会に気づかずに組み込まれている性別による不平等を知った後にこの取り組みを見ると、その素晴らしさがストンと腹落ちし、むしろ取り上げないのは怠慢だ、と思うようにすらなりました。

(↓ちなみに”以下の本”はこちらです)

www.kawade.co.jp

ということで今回は、ボルボがコロナ前に始めた「The E.V.Aイニシアチブ」についてご紹介します。大部分のクルマは、男性の体をベースにしたダミー人形で安全性を測って開発されてきたために、女性の安全が蔑ろにされていた・・という出だしから衝撃的です。

こちら「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2019のクリエーティブ・ストラテジー部門でグランプリ、クリエーティブ・データ部門で金賞を獲得するなど、かなり高い評価を獲得したキャンペーンとなります。それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「The E.V.A. Initiative / The E.V.Aイニシアチブ」

youtu.be【雑和訳】ナレーション:女性は、交通事故により負傷をする可能性が76%も高い / そして、死亡する可能性も17%高い / なぜかって? / それは、ほとんどの自動車が男性のダミー人形でクラッシュテストを行なっているから /

しかし、ボルボは違います / ボルボは1970年から現実世界での(事故の)データを集めてきました / 衝突時、人体や、性別の区別なしになにが起きているのかを学ぶために… / 私たちは、すべてのクルマが女性にもっと安全なものになるために、これらのデータが活用できるとしたらどうなるだろう、と考えました /

紹介します、”E.V.A(Equal Vehicles for All = あらゆる人に平等な乗り物を )イニチアチブ” / 私たちは、これらのあらゆる調査結果を収集 / デジタルライブラリ上で誰にでも活用できるように公開しました /

デジタルライブラリには43.000件の衝突事故や、7,200人の当事者に関する情報を格納 / これにより初めて、誰もが調査結果をダウンロードできるようになり / これらのデータがどのようにボルボのイノベーティブな安全機構の数々に活かされたのかを知ることができるようになりました /

データをもっと人間らしく感じさせるために、私たちは数字に顔を持たせ(訳註:数字により人体を作り)、この不正義な状況がどのように女性たちにパーソナルな、または直接的な影響を与えているかを伝えました / 文字要素:”妊婦は、首の骨折に見舞われた 年齢-31歳, 速度-時速60キロ, 事故内容-側面衝突 " /  文字要素:”高齢の女性は、致命傷を負った 年齢-72歳, 速度-時速49キロ, 事故内容-正面衝突 " /

ナレーション:E.V.Aはジャーナリストやライバルメーカーが集まるライブストリーミングのイベントでも紹介された / ボルボ・カー・セーフティーセンターのシニア・テクニカルスペシャリスト、ロッタ・ジェイコブセン博士 「このデータは、私たちが(事故の)メカニズムを理解する手助けになりますし、あらゆる人にとって重要なものです。私たちは、同じ自動車業界の他のメーカーたちにも同じような取り組みを行なってほしいと考えています」/

ナレーション:そして、私たちは多種多様なメディアを活用し、グローバルなキャンペーンを行いました / このイニシアチブは瞬く間にミームとなり / そして、交通安全に対する(男女の)平等性についての国際的な議論を巻き起こしました / TVの女性有識者「…彼らはデータを自社のために活用するだけでなく、データや分析結果をウェブサイト上に公開しました。全ての自動車メーカーも見れるわけです。これによって路上における、特に女性の安全性が改善されると思われます」 /

ザ・サンデータイムズ ”ボルボがジェンダーにおける事故時の不平等を少なくする” / デイリーメール紙 "E.V.Aプロジェクト、自動車メーカーのリサーチデータを開放 /

文字要素:ニュース・アウトレット -457, アーンド・メディアリーチ -317,000,000, ソーシャル・メディア・インプレッション -120,000,000, フィルム・ビュー -12,000,000 / データベースのダウンロード数は11,000を超え、今も上昇している /

ナレーション:何より重要なことはこの試みが、すべての車の安全性を向上させている、ということです。…すべての人々の / タイトル:”E.V.Aイニチアチブ” / ロゴ:ボルボ

🏷️ データをシェアする、という企業ならではの”デモ活動”

いかがでしたでしょうか?

クルマの安全性に関する「女性の不平等」を外から訴える場合、通常その活動は消費者団体によるデモなど、間接的なものになりがちです。

そういった外部の声を待つのではなく、ボルボは今回、自分から表玄関に出てきて、さらにデータをさらけ出すことで業界全体の問題を明らかにする、という行動に出ました。

The E.V.Aイニシアチブはある意味、ボルボが自動車業界全体に向けて行なったデモ活動だともいえます。

20世紀から自社のクルマの高い安全性を謳ってきたVolvoならではのアクションだともいえますが、その裏側には1970年代から事故のデータを地道に取り続けていた、という事実があったことも忘れてはいけないと思います。

最後に、解説ムービーでも紹介されていた「数字に顔を持たせたムービー」を以下に置いておきますね。悲しみや怒りから希望へと、ボルボへの共感とともに心が揺り動かされる、美しく、そして見事なムービーです。

youtu.be

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

意外になかった!子供には開けにくく、万人に開けやすいパッケージ【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのMediamodifierが撮影した写真

🏷️ 今回はすでに世に普及している、素晴らしいアイデアを

先日自宅のソファを手入れしようと海外物の液体ワックスを買ったのですが、そのボトルの蓋を開けようとしたところ、なぜか全く開かない…。調べたところ、子供の誤飲などを防ぐための「セーフティキャップ」だったらしいのですが、そのボトルについていたキャップは、大人でも開けないことで有名なものでした。SNSには同じタイプのキャップについて「私はこう開けた」という自慢のポストがいくつも挙げられていて、それはそれで面白かったのですが、子供に開けさせないために、大人でも開けられないキャップをつけることは流石に本末転倒すぎるのではないか…と考えさせる出来事でした。

今回はそんな私が素晴らしい!と思わず膝を打った、P&Gがヨーロッパ地域の洗剤ブランドのパッケージなどにすでに実際に使い始めている、子供に開けにくく、大人に開けやすいのはもちろん、さらに体に不自由を持つ人たちにも開けやすい革命的なパッケージのアイデアをご紹介します。

こちら「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2023のイノベーション部門で銀賞を獲得したキャンペーンとなります。それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「Making inaccessible accessible / 使いにくいものを使いやすくするる

youtu.be

【雑和訳】ナレーション:これまでで最も素晴らしく、かつ最悪な発明が何かご存知ですか? / それは、セーフティキャップ / これは素晴らしいもので、子どもたちが開けるべきではないものを開けさせないものです /

しかしそれはまた、誰もが開けるのに不便な思いをする、イライラするものでもあります / Xの文字要素:(前略)器用じゃないと開けられないの / ナレーション:…特に老人や、手先の器用さに障害を持つ人たちにとっては / そういった人たちは10億人 /

この現状は受け入れ難いので / 私たちは、不可能なブリーフに挑戦しました / ある人たちにとっては開けられず、それ以外の人たち全てが開けられる容器をどう作るのか? / このブリーフをさらに困難なものとするために、私たちはプラスチックを使わず、完全にリサイクル可能な段ボール紙を使うことに決めました /

不可能を可能にするために、私たちは生物学からヒントを得ました / 大人と子供の違いは? / 手の大きさ / そして、200以上のプロトタイプと、のちに12の特許を生み出す試行錯誤の後、私たちは大人の手でしか開けられない、最初のモックアップを生み出しました /

そして、ほら! /

関節炎で親指が不自由なキャロラインさん「(使用前:)開けてみましょう。ほら、これだけでも親指が痛むのです」→「(新パッケージ使用後:)あ、簡単です。思ったままに開けられます。簡単だわ」 /

パーキンソン病を患うミスバーさん「(使用前:)容器を開けるのが苦手で、なので奥さんに開けてもらって、あとは開けっぱなしにしてもらってます。蓋を開けるような行動になると、手の震えが大きくなってしまって…」→「(新パッケージ使用後:)説明に従えば、こちらの方が私には簡単です。手を置いて、指で押して、持ち上げればいいだけなので。この簡単さは本当に素晴らしいです」/

ナレーション:子供には開けられず、すべての大人が開けられる、シンプルで簡単な商品パッケージ / この革命的で、サステナブルなECOCLIK®︎ボックスは、ヨーロッパのすべての人々が買い求められるものとなっていて、P&Gのさまざまな衣服関連の商品に急速に、拡大して採用され始められている /

7億5千万人にとって開けられなかったものを、開けられるものに変えながら /

ロゴ:アリエール→レノア→ダッシュ→フェアリー→P&G

🏷️ 「すでに実際に役立っている」という気持ちよさ

いかがでしたでしょうか?

ちなみに「ECOCLIC®︎」という名前でヨーロッパに展開されているこちらの容器、以下に、実際のユーザーたちのために公開されている使い方啓蒙ムービーも置いておきますね。

youtu.be

カンヌなどのアワードショーで次々と発表される、夢と希望が膨らむ「プロトタイプ」も良いですが、このように実際に世の中に普及し始めている取り組みを見ると、やっぱりアイデアは市井の人々に役立ってなんぼだよね、という初心に戻れて、とても清々しい気持ちになります。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

都市の洪水時に現れる”落とし穴”への転落を防いだ物理の力【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのJonathan Fordが撮影した写真

🏷️ 日本でも使えそう。アナログなソリューションに注目

ゲリラ豪雨、という言葉が2000年代に入ってから普及した言葉であることをご存知でしょうか?この言葉が流行語大賞のトップ10に入ったのが2008年。つまり、その前にはこの言葉はあまり使われておらず、つまりゲリラ豪雨的な気象現象もあまり起きていなかったのかな…と思われます。

地球温暖化に伴う気候変動により、日本でも地域を問わず、洪水に見舞われている回数が増えているように感じます。

ということで今回は「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2023の受賞作から、インドのムンバイで行われた、都市部の洪水に伴う人命への危険を大いに減らした超アナログ(←いい意味で)なアイデアをご紹介します。

こちら、カンヌライオンズ2023のブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門でショートリストを獲得したキャンペーンとなります。それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「The Responsible Manhole / 反応するマンホール

vimeo.com

【雑和訳】文字要素:見えない敵。それは、12時間にひとりのペースで命を奪う  - The Times of India紙 / それは洪水時、蓋の外れたマンホール /

ナレーション:ムンバイの人々は、洪水の時も職場に行かないといけません / さらに悪いことに、ムンバイの下水システムは作られてから150年経っているのです / 地元の人々は良かれと思い、マンホールの蓋を無理やり外すことがあります / また、ロックされたマンホールの蓋がガスバーナーを使い、盗まれることもあります /

TVの司会者 "過去5年間に、300人以上のムンバイ市民が蓋の外れたマンホールに落ち、命を落としているのです" /

ナレーション:被害者の多くはバイカーや歩行者 / そこでインドの業界第3位の二輪車メーカー、TVSとムンバイ市公社はバイカーや歩行者を助けるために力を合わせました / 紹介します、”反応するマンホール” /

モーターなどを必要としない、低コストのデバイスを開発 / 活用したのはシンプルな浮力の原理 / 文字要素:1セット20ドル / ナレーション:このデバイスはマンホールの蓋が外れた場合、最大5フィートまで上昇するように設定されていて / 通行者はLEDライトと警告音で危険に気づくことができるのです /

ハザードマッピングの手法を使い、洪水の発生しやすいエリアを特定、このデバイスは町中に設置されました / 市の担当者にリアルタイムでアラートを発する、特別なアプリも開発 / マンホールの蓋が外れている通知が来るとすぐに、担当チームを現場に派遣することができます /

このデバイスが設置された2022年以来、数えきれない人命が救われました /

TVSモーターカンパニー ゼネラルマネジャー パラブ・ロイ氏「このプロジェクトのフェーズ2はすでにバンガロールで始められていて、さらに国内各地、5つの街からこのプロジェクトへの興味の声が寄せられています」/

ナレーション:IIT(Indian Institute of Technology) Jodhpurもフェーズ2のスケーラビリティを向上させるべく、開発協力を実施 / IIT Jodhpurテクノロジー&イノベーションセンター ヴィグネシュ・モハン氏「このデバイスは老朽化した公共施設の課題に向きあったもので、命を救うために未来のエンジニアを活用する、という活動にはうってつけの事例だと思います」/

ナレーション:デバイスのスペックはオープンソースとして、全世界あらゆる都市に向けて公開されています /

この反応するマンホールの設置は、”見えない敵”に対し、多くの命を救っているのです

🏷️ アナログとデジタルのリーズナブルな融合

いかがでしたでしょうか?

重くなると下がる。軽くなると上がる。熱すると溶ける。温度を下げると凍る…などの現象はこの地球に生きているすべての人にとって共通の現象です。

これらを活用した仕組みや取り組みは俗に「アナログなアイデア」だと見なされることが多いのですが、その最大の長所はユニバーサルであることです。そしてこの世界共通の「浮力」を活用した今回のアイデアはまさにアナログそのものであり、日本を含む世界のあらゆる地域て活用・応用できるアイデアだと思います。

このアイデアがさらにいいな、と思ったのは、そんなアナログのアイデアにデジタルアプリを組み合わせることで、問題が発生した時にすぐに修復に向かえる、という機能を付け加えたところです。

アナログとデジタルの地味だけれど、リーズナブルな融合。とても実用的で、幅広い社会で実装できそうなところが本当にいいなぁ、と思いました。

二輪車メーカーのTVSさんは良い鉱脈を見つけたと思います。これをベースにこれからも継続的に「道路の安全」を向上させる取り組みを続けていくと良いブランドが築き上げられていきそうだな、と思いました。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!