世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

果物の廃棄部分を見事にアップサイクルしたDoleの取組み【カンヌ2022より】

UnsplashPineapple Supply Co.が撮影した写真

リサイクルから、アップサイクルへ

思えば6月末に開かれた世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022から既に3ヶ月が経ちました。あらゆる受賞作がインフレ的に評価される祭りの喧騒から離れ、落ち着いて受賞作の数々を見てみると改めて、今後の社会が進むべき方向性が見えてくる感じがします。

ということで今回は、ただ一度使ったものをリサイクルするだけではなく、これまで何の疑問も持たずに廃棄されてきた物に価値をつけて活用するという「アップサイクル」を、世界一のパイナップル生産業者として行ったDoleの取り組みをご紹介します。

ちなみにこの取り組み、カンヌライオンズ2022のクリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション部門でグランプリを獲得するなど、大変高い評価を得たアイデアです。詳しくはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「Pinatex / ピナテックス

youtu.be

【雑和訳】文字: 石油業界に次いで、皮革業界は最も(環境に)有害な産業のひとつである by UNIDO / パイナップルの葉は皮革に対するグリーンな解決策になりうるのか?  by Fast Company /

フィリピン、南コタバト / ナレーション「フィリピンでは毎年、250万トンのパイナップルが栽培される」/「その実が世界中の人々の口へと運ばれるのに対して、その葉は廃棄されている」/「1トンのパイナップルが栽培されるごとに、3トンの葉が無駄になり」/ 「それが腐るがままに放置された場合、二酸化炭素に比べて20倍有害なメタンガスが排出されるのだ」/

「この状況を変えるべく、世界最大のパイナップル生産者のひとつであるDoleは、ananasanamとパートナーシップを結び、ヴィーガンで残虐性ゼロ、かつサステナブルな皮革の代替素材pinatexを製造した」/ 「これは、使われなければ廃棄されていたパイナップルの葉の繊維から作られたものだ」/ 

ananasanam創設者 カルメン・ヒジョサさん「もしpinatexを皮革と比べた場合、pinatexは環境にずっと良い実績を見せています」/「水も使いませんし、土壌も使わず、肥料も一切使いません」/

ナレーション「他のいわゆる”ヴィーガンな”皮革はプラスチックをベースとしていて、環境的に有害であるのに対し、pinatexはクローズなループの中でサステナブルに生み出される生地である」/「廃棄を逃れたパイナップルの葉がpinatexになった後、余った葉のバイオマスは、自然な肥料へと転換される」/

「pinatexはファッション業界に、真のエコ・フレンドリーな選択肢として提供された」/「今では、80を超える国の200以上のブランドが、よりサステナブルな存在となるべくpinatexを採用している」/ 「ヒューゴボスH&M、そしてハッピーなパイナップルスニーカーを作っているnikeもその中のひとつだ」/

Dole Sunshine Companyのチーフ・イノベーション・オフィサー ララ・ラムディン博士「pinatexにおけるDole - ananasanam間のパートナーシップは我々の廃棄物の再活用における、最高の選択でした」/「これは、農家が廃棄物を収入のチャンスに変えるのを手助けしつつサーキュラリティを実現する、という私たちの目標に向けての第一歩なのです」/

ナレーション「pinatexは、2025年までに自分たちの農場からネットゼロを実現すべく、Doleが進行中の活動の一環だ」/「廃棄物をアップサイクルすることで、我々は食品業界を超えて変革を促しているのだ。…ファッションブランドに、皮革に対する真のグリーンな解答を与えつつ」/

文字:Dole X ananasanam - pinatex

もはや内輪の解決策では間に合わない

いかがでしたでしょうか?この取り組みが特に高く評価されたのは、世界最大のパイナップル生産業者であるDoleが自らその廃棄物をアップサイクルさせ、その結果として生産されたpinatexを自社内だけでなく、業界の垣根を超えてアパレル業界に幅広く活用させている…というそのスケールにあると思います。

SDGsの最後のゴールであるゴール17に「パートナーシップで目標を達成しよう」という達成のための「手段」があえて入っている理由もここにあります。

もはや1個人はもちろん1企業や、1政府が解決できる社会的課題などどこにもありません。幅広いパートナーシップの組み合わせでこれまで考えられなかった、または不可能だった角度から発想し、社会課題を解決していく。

この姿勢があるかどうかで、地球上のありとあらゆる組織体の成否が大きく変わってくるのかな、と思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

eスポーツで更生を!史上初の刑務所eサイクルチーム【カンヌ2022より】

UnsplashのEmiliano Barが撮影した写真

インクルーシブの波は、塀を越える

古今東西、罪を犯した人はそれを償い、更生する必要があります。しかし、映画「ショーシャンクの空に」でも触れられていた通り、刑務所にいることで外部との人間関係が失われてしまった人間が、厳しい視線に晒されながら社会復帰し、新しく生き直すにはさまざまな困難が伴います。

この取り組みは、そんな塀の中に暮らす受刑者たちをeスポーツで外部の人々と繋ぐことで、彼らの更生と、社会復帰の大きな後押しとなった取り組みです。

ちなみにこの取り組み、世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にて、クリエイティブ・ストラテジー部門とPR部門で2つのグランプリを獲得するなど、大変高い評価を得たアイデアです。詳しくはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「The Break Away -史上初の刑務所eサイクルチーム


www.youtube.com

【雑和訳】受刑者の声「僕たちがいつも聴く声は、だいたい”そいつらはそこに放っておけ、どうせ変わりっこないんだから”というものだ。確かに僕たちは過去に過ちを犯したかもしれない。だけど、それは変われない、ということではないんだ。僕たちが人間であることは変わらないんだ」/

ニュースキャスター「6人の受刑者による新しいサイクリングチームがあります。彼らはZwiftのバーチャルサイクリングプラットフォームで練習をしています」/ 文字 ”バーチャルなフォットネス・プラットフォームでできることについての我々の考えを広げてくれる取り組み - zwiftinsider.net" /

ナレーション:スポーツをみんなのものにする小売チェーンとして、デカスロンは6人の受刑者に、史上初の刑務所eサイクルチームのメンバーになるチャンスを与えた / タイトル:"The Break Away -史上初の刑務所eサイクルチーム"/

男性の声「これは記念すべきことだ。刑務所でオンラインで何かをする、だなんてね」 / 文字 ”外部の人たちとZwiftでレースを実行” /  ナレーション: 彼らはのけ者としてではなく、匿名のアスリートとして外部の人たちとZwiftでレースを行った」/

ポッドキャストのドキュメンタリーから抜き出された受刑者の声「そこでは、自分たちと同じように他の人たちも自転車に乗っているんだ」/ ナレーション&文字: 私たちはオンラインでスケジュールを公開して、Zwiftのコミュニティが彼らと走れるように調整した /

ポッドキャストのドキュメンタリーから抜き出された受刑者の声「南米や中国、英国に人たちにも会いました。彼らは世界中から集まってきているのです」/ ナレーション&文字: 鉄格子の向こうの受刑者たちと、社会とを結び直す。/

元受刑者のプロトライアスリート ジョン・ムカボイさん「最初にこの試みを聞いた時、彼らと走りたい、と思ったんだ。彼らにただ、外の世界の人々が彼らを気に留めていることや、更生を果たし、より良い暮らしを送ってほしいと願っていることを伝えたくてね」/

文字:130万ユーロ分の露出をアーンド・メディアで記録/ 文字: この取り組みは1,500万人に到達 /  

ナレーション&文字:この取り組みが受刑者たちのメンタルヘルスに与えたインパクトに関するポッドキャストも公開 /  ポッドキャストのドキュメンタリーから抜き出された受刑者の声「足が疲れ始めると、人々が励ましてくれるんだ。本当に素晴らしいな、と思ったよ」/

ナレーション&文字: バーチャルスポーツの本当の力を証明/ ライブ・ニュースレポート「ベルギーの法務大臣と5人の法執行者たちが、6人の受刑者たちと競います!」/

文字: ライブ中継で受刑者たちと競った後、法務大臣はこの取り組みをベルギー中の刑務所に拡大することを決定した / 法務大臣「これは、より意義深い更生を目指す私の長期ビジョンの一部となることでしょう」/

ロゴマークデカスロン

eスポーツの可能性を広げたナイスアイデア

いかがでしたでしょうか?eスポーツというとド派手な会場でプロのゲーマーたちが技を競う…という方向にどうしても思考が行きがちですが、リアルなスポーツだと超えられない「物理的制約」を、ひらりと解決してしまうeスポーツには、今回の「受刑者の更生」のみならず、まだまだ自分たちが気づいていない方法によってソーシャルイシューを解決する、大きな可能性が眠っていそうです。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

女性たちの「泳ぎたい!」を応援したドバイでのキャンペーン【カンヌ2022受賞作より】

UnsplashのLi Yangが撮影した写真

最大公約数を取る時代から、誰も取り残さない時代へ

このブログでも何度か書いていますが、時代の考え方は、ここ10年で大きく変わりました。

ひと昔前までは「大多数の人にとってより良い品を、より安く」という、大量生産・大量消費の考え方が世の中の主流でしたが、2010年代以降、私たちはいよいよその結果が地球環境にもたらす弊害をさまざまな自然災害などで体験することになりました。

さらにそこに、デジタル技術の進展による商品のパーソナライゼーションの容易化が重なり、今現在、モノづくりの考え方は「ひとりひとりの個性に合わせて、必要なものをサステナブルに」というものになってきているように感じます。

まずは多様性を祝福すること。そしてその先に、どんな個性を持つ人でも存分に能力が発揮できるよう、その助けとなる商品を世に出し、よりインクルーシブな世の中を作り上げていくこと。

多くの企業が既にこれらを新たなゴールとして走り始めている中、彼らが打ち出すキャンペーン・メッセージの方向性も以前のものから大きく変わってくるのは当然のことと思います。

ということで今回は、よりインクルーシブな世の中を目指して動き出したadidasが、その姿勢を世の中に力強く打ち出すことに成功したドバイでの事例を紹介いたします。

ちなみにこの取り組み、世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にて、アウトドア部門でグランプリなどを獲得しています。詳しくはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「 Liquid Billboard / 液体の屋外看板

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【雑和訳】文字:世界的に見て、32%の女性が公共の場での水泳にためらいを感じている(Lloyd's Register調べ)/ 中東地域になると、その値はほぼ3倍となる(YouGov調べ)/ 活動家であり詩人、アスリートのAsmaさん「子供のころは、ヒジャブを被っている私のような女性が、という思い込みで、夢を諦めたりしてきました」/ 

文字:そこでadidasは、ドバイの女性一人一人に / 新しい、インクルーシブな水着のコレクションのアンバサダーになってもらうことにした /

”Liquid Billboard(液体の屋外看板)” / それは、世界初の女性が実際に泳げる屋外看板 / あらゆる体型、民族、宗教、能力を持つ女性たちに向けて / (これまでの慣習による)バリアを破壊するよう勇気づけた /

参加女性による水泳はすべて、国内最大のデジタルディスプレイにライブで投影された / そして、パーソナライズされたadidasのポスターになった /

これまで、アスリートやモデルしか採用されてこなかった看板に / 自分と等身大の人々が、(アスリートやセレブたちと)同じように扱われているのを目にしたのだ /

その後、世界各国でのメディアの反応が映し出される)/ 結果:トータルリーチ 2億9千500万 /

インフルエンサーA「水泳をすべての人に…」/ インフルエンサーB「看板スタイルにセットされた、adidasによる…」/ アーンドメディア露出 135万ドル相当 / 6大陸、50を超える国に拡散 /

ギネス記録保持者のダレンさん「見回してみると、水の中では誰もが同じだと感じるのです」/

"表面的なものの、その先に" / adidas

ナイキ、IKEAなどグローバルブランドも続々と

いかがでしたでしょうか?ちなみにadidasによるヒジャブつきのスイムスーツは以下からカタログをご覧いただけます。(スリーストライプのレイアウトがかっこいいです。)

www.adidas.com

しかし冒頭にお伝えした通り、こういった取り組みをしているのはadidasだけではありません。…ということで以下に、今までこのブログで取り上げたIKEAやナイキ、レゴやバービー、そしてセサミストーリーによる「自社商品を最大公約数に合わせることだけで満足しなかった」素晴らしい取り組みの数々をおまけとしてつけておきます。

シルバーウィーク後半戦、ふとした合間にご覧いただけると幸いです。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

<おまけ>

wsc.hatenablog.com

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世界的キャットフードブランドによる、珊瑚礁再生のためのキャンペーン【カンヌ2022受賞作より】

UnsplashのFrancesco Ungaroが撮影した写真

先週に続き、海の環境問題への取り組みについて

先週ご紹介した「プラごみ」だけが海洋が抱えている問題ではありません。海は気候変動により世界的に水温が上昇、結果、海中の生態系にも大きな狂いが生じ始めているといいます。

そんな中、珊瑚礁にも大きな危機が迫ってきていることは、数年前に関心を集めた以下の記事からもご存じの方は多いのではないでしょうか?

www.bbc.com

ということで今回は、ブランドぐるみで珊瑚礁の再生に取り組んでいるキャットフードブランド、Shebaの事例についてご紹介いたします。

ちなみにこの取り組み、世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にて、インダストリー・クラフト部門とメディア部門でグランプリを獲得しています。詳しくはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「 Hope Reef / 希望の珊瑚礁

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【雑和訳】文字:(キャットフードブランドの)Shebaは、サステナブルな方法で調達された魚を(原料として)使うことに取り組んできた/ …時には、最もプレミアムな商品群を販売終了にしてさえも/

しかしそれでさえ、十分ではなかった/ なぜなら魚の生存は、海の環境が持続可能であって初めて、サステナブルになるからである/

1950年以降、世界で50%以上の珊瑚礁が失われた/ ナレーション「珊瑚礁は、死に続けています」/ 文字:残りの90%の珊瑚礁も、20年以内に絶滅の危機に瀕する/ ナレーション「そして珊瑚礁に頼ってきた魚も、(人間の)コミュニティも、大きな危機に瀕しています」/

「 …しかし、希望はあります」/ 文字:”2020年の土地再生プロジェクト Top5のひとつ -National Geographic” / "ファインディング・ニモの世界が実現したみたいだ -The Guardian" /

ナレーション「Shebaは、珊瑚礁の再生に取り組むことにしました」「そしてそれが、グーグルアースで見ることができる、再生された珊瑚礁による初の「生きた」屋外広告-”希望(HOPE)の珊瑚礁”をShebaが育てた理由なのです」/

「国連と世界自然保護基金(WEF)の支援のもと、Shebaはインドネシア沖の死んだ珊瑚礁を復活させる方法を開発。星型の岩礁網を使い、珊瑚再生に理想的な環境を創出しました」

「Shebaの海洋生態学者はその珊瑚礁が希望(HOPE)の文字の形の、”生きて育つ”屋外広告になるよう再生」「ユーチューブチャンネルでは、視聴数や広告収入から規模拡大のための資金を集めました」

「さらにこの取り組みが教育的事例となるよう、googleとパートナー関係を構築しました」/ キャスター「グーグルアースでご覧いただける、希望(HOPE)という言葉になるよう再生された珊瑚礁です」/ ナレーション「100万人以上の人々がグーグルマップ上でこの場所をサーチ。その場所では、ストリートビューでバーチャルにダイビングを楽しめるようになっていました」/

文字:2019 / 2021 /

ナレーション「わずか2年の間に、現地の珊瑚礁は99%死滅していた状態から、70%生存している状態へと改善。事実、(HOPEの)文字の周りの珊瑚礁の再生があまりに順調に進んだため、Shebaの生きた屋外広告は蘇った珊瑚礁により飲み込まれて、消えてしまいました」 /

文字:珊瑚礁に関する報道は6900%増加 / 魚の数も300%増加 / ナレーション「そして、世界中の各国政府が我々の珊瑚礁再生方法を採用するなど、希望は広がっています」/ 文字:世界最大の再生プロジェクト/

ナレーション「しかもShebaの行きた屋外広告はただ育っているのではなく、歌っているのです」/ テレビのナレーター「よく耳を澄ましてみてください。…再生を続ける珊瑚礁の、奇妙な音が聞こえることと思います!」/

ロゴマーク:"今日はもっと珊瑚礁を、明日はもっとお魚を-Sheba"

なぜキャットフードのブランドが珊瑚礁を?

いかがでしたでしょうか?こちら、確かに素晴らしい取り組みなのですが、私が最初、この取り組みのカンヌでのグランプリ受賞を聞いたときは「キャットフード」と「珊瑚礁」との間の関連性がよくわからず、果たしてグランプリに値するのかについて疑問でした。

しかし、カンヌライオンズがこれからのマーケティングコミュニケーションを示唆する場所なのだとした場合、この受賞が示唆するものは、これからの消費者たちの視点が、例えば「キャットフード=ネコ」という、買い手主体の狭い範囲にとどまらなくなる、ということなのだと思います。

SDGsの12つ目のゴール「つくる責任、つかう責任」にもある通り、持続可能な生産消費形態を確保することは、すでに作る側と、使う側双方の責務となっています。

そうなった時、キャットフードの原材料をサステナブルに調達するために、ブランドぐるみでここまでやっている、という事実は、世界市民として「つかう側」の責任を果たしたい消費者にとっては好ましい情報になり、結果、Shebaのブランドイメージ向上につながるのでしょう。

(そしてもしShebaのキャットフードが珊瑚礁に住む魚を原材料にしているのであれば、その必然性はさらに強化されますが、現状、そこまでは調べられていません…)

しかし実行主がどうであれ、こういうトライアルを実際に実行し、注目と資金を集めてインドネシアから今やモルジブセイシェル、メキシコ、オーストラリア、ヴァージン諸島にそのプロジェクトが拡大していることは素直に素晴らしいことだと思いますし、このまま世界中にどんどん、拡大していってほしいと願っています。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

海辺で飲みたいビールブランドによる、海辺を守るためのキャンペーン【カンヌ2022受賞作より】

UnsplashのAnastasia Palagutinaが撮影した写真

困った時の”ゲーミフィケーション

各種メディアの取り組みにより、海に投棄されるプラごみが今のペースで増えると、2050年には海に浮かぶプラごみの総重量が海に住む魚の総重量を上回ってしまう、ということを知っている人も増えてきました。

しかし、この問題の解決にはゴミを海に「捨てる」人を減らす努力と同時に、すでに海に漂っているプラごみを「拾う」人を増やす必要もあります。

今回は、その「拾う」人を増やすために拾う行為をゲーム化(ゲーミフィケーション)したアイデアです。

ちなみにこの取り組み、世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にて、ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門、アウトドア部門、SDGs部門で金賞を獲得しています。詳しくはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「 Plastic Fishing Tournament

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【雑和訳】漁師A「海は全てを与えてくれた」「なのに俺たちは海に、ゴミでお返ししているんだ」/文字: 毎年、1400万トンのプラスチックが海に投棄されている/ PENAオセアニアエステバン・ガルシア「この大量のゴミが海の生き物たちと漁師の暮らし、両方に影響を与えてしまっているのです」/  漁師B「海では魚よりプラスチックの方をよく見るよ」/

ABINBEVマーケティングVPのファビオ・バラチョ「Coronaビールは長年、海辺の暮らしとその保全に関わってきました。今回、私たちはその関わりをさらに深めることにしました」/ 街宣車コロナビールは、プラスチック・フィッシングトーナメントを開催します!」町のスピーカー「土曜日の朝9時」「海を掃除して、お金を稼ごう」/ ナレーション「私たちは、初めてのプラスチック・フィッシングトーナメントを開催しました。これは全世界レベルでの取り組みで、漁師たちは海のプラごみを捕獲することで報酬が得られるのです。採れば採るほど、儲かるという寸法です」/

漁師「行こうぜ!」/ 文字: 中国 1日で3.8トン/ 中国の漁師「海の掃除に貢献できて、誇らしいです」/  文字: イスラエル 1日で2.7トン/ イベント司会者「始めるよ〜」/ イスラエルの漁師「海がきれいになれば、魚が帰ってくるよ。そうなれば、俺たちの暮らしも楽になる」/

文字: 南アフリカ 1日で4.3トン/ 主催者「プラスチックなら、どんなゴミでもとって大丈夫です」/ 文字: ブラジル 1日で2.9トン/ ブラジルの漁師「プラスチックには散々な目にあってきたけど、今では追加の収入源になるんだよ」/ 文字: メキシコ 1日で8.6トン/

ナレーション「私たちは何百人もの漁師をリサイクル業者とつなげました。なのでこれから漁師たちは、魚だけでなく副収入源として、プラスチックを1年中採ることができるようになったのです。」ブラジルの漁師「プラスチックを採れば、もっと稼ぐことができるんだ」/

*各メディアの絶賛の声が表示される/ 漁師C「私の夢は、次の世代も魚を採れるようにするために、海をきれいにすることだったんだ」/ ブランドロゴ:コロナビール

「どこでもやっていること」も枠組み次第で際立った試みに

いかがでしたでしょうか?正直、海辺のゴミを拾う行為をゲーム化する、というイベントは日本でもたくさん行われているし、おそらく世界中で行われていることと思われます。

しかしそれを、海と関連性のあるブランド(今回の場合”Find Your Beach”をキャッチフレーズに、海辺で飲むイメージを打ち出しているコロナビール)の冠の下、グローバルに統一した取り組みとしてスケールアップさせることで、結果としてマスコミから注目を集める結果(合計20トンを超えるプラスチックごみを世界中から回収した、という事実)を成し遂げることができた、というのがこのアイデアの強いポイントです。

さらに、このイベントをきっかけに漁師とリサイクル業者を出会わせて、イベント後も漁師たちがプラスチックを業者に一年中売れるようにした、というのもイベントの弱点である「一過性」を解消するよいアイデアの加点ポイントだと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

<おまけ:海のプラごみを扱ったアイデア過去記事集。気づけばめちゃくちゃ多い…>

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女性が避妊薬を服用する権利を広げた、ホンジュラス発のキャンペーン【カンヌ2022受賞作より】

Photo by Becca Tapert on Unsplash

避妊の手段が制限されている日本でも参考になる発想

この世に完璧な社会など存在せず、どのコミュニティにも進んでいる部分と、遅れている部分が存在します。日本の場合、避妊にまつわる分野が世界的に見て遅れている部分の一つだといえるでしょう。

以下はNHKこちらのサイトからの抜粋ですが、国連の発表によると日本で行われている避妊方法の75%が男性用コンドームとなっており、女性が服用するピルが6%、導入が極端に遅れている子宮内避妊具がわずか1%。一方欧米ではピルが31%で男性用コンドームが25%と逆転していて、子宮内避妊具を使っている人も14%と、日本とは大きな違いを見せています。

見方を変えれば「男性用コンドーム一本足打法」の日本は、避妊において男性の意思に委ねられてしまっている部分が極端に大きいともいえ、女性に自身のキャリアをデザインする権利を保障し、彼女たちの社会進出を促進する上での障害になっています。

今回ご紹介する事例は、そんな日本でも入手が可能なアフターピル(性行為の直後に有効な緊急避妊薬)ですら使う権利が認められていない、ホンジュラスの女性たちの権利を守るべく実施されたキャンペーンです。

ちなみにこの取り組み、世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にて、女性の権利拡張を促進する取り組みを評価するグラス部門やヘルス&ウェルネス部門、ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門にて金賞を獲得しています。詳しくはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「Morning After Island / 翌朝の島」

www.youtube.com

【雑和訳】聖職者と見られる男性「アフターピルの服用は中絶と同じです」女性「この国では、アフターピルの販売が禁じられています」他の女性「アフターピルは、薬による中絶です」/

文字スーパー: ”ホンジュラスは法的にアフターピルを禁止しているラテンアメリカ唯一の国である -ニューヨークタイムス”/ ”4人に1人が18歳になる前に母親になっている -El Pais”/ "アフターピルを服用した女性は最高で懲役6年の実刑に処される -CNN"/

文字スーパー: 我々には手段がなかった/ そこで、自分たち自身で手段を作ることにした/

女性の権利提唱団体 GE PAE創立/ Morning After Island(翌朝の島)/

女性ニュースキャスター「権利の欠落を受け、ホンジュラスの女性たちが島を創りました」/ 男性ニュースキャスター 「”翌朝の島”です」/ 女性ニュースキャスター「今や女性たちは、公海上の安全な場所に行けば良いのです」/

文字スーパー:我々は、ホンジュラスによる管轄地域の外に島を創った/ 公海上に/ 我々は、毎週岸から出港した/ アフターピルを必要とする女性たちが/ 起訴される恐れなく、それを服用できるようにすることで/ 我々は300万人の女性たちに選択肢を与えたのだ/

文字スーパー: ”この海での抗議活動は、法の撤回を求めている -CNN"/ ”ホンジュラスの女性たちは抑圧に立ち向かっている -Lopez -dorigaデジタル"/ ”ホンジュラスの女性たちは大統領に法の撤回を求めている -Excelsior” /

(*この後、この取り組みを取り上げたメディアのロゴやSNS上での盛り上がりが映し出される)

文字スーパー: オーガニック・インプレッション2億6,800万/ オーガニック・リーチ1億8,000万/ 集まった署名200万/ 

文字スーパー: そして、我々の声は政府に届いた/ 2022年3月8日/ 大統領は公式に我々の訪問を受け入れた/ そして、アフターピルを合法化する新しい法律の起草を誓った/ ホンジュラス大統領シオマラ・カストロホンジュラスの女性の皆様、私はあなたたちを見捨てません。私はあなたたちの権利を守ります。信じてください!」

文字スーパー: Morning After Island(翌朝の島)

日本でも女性たちの現状打破への熱は高まっている

いかがでしたでしょうか?この企画はおそらくPRが主な目的で、実際にこの島に立ってアフターピルを服用できた女性は一握りだとは思いますが、それでも宗教やメディアの価値観の押し付けにより避妊の道を絶たれた状態で、望まないセックスや妊娠を強いられてきた女性たちにとって、こういう取り組みが報じられること自体が一筋の光になったかと思います。

一方、日本でもこの超弱小ブログ(汗)のアクセス数がポン、と上がるのはジェンダー平等を取り上げた時が多いですし、国内のウェビナーでも避妊を含む、女性を取り巻く問題を扱ったときの女性参加者の質問や、チャットボックスでの議論にかなりの熱を感じます。

日本は今あるもののドラスティックな破壊をよしとせず、規則を守ることを肯定的に捉える傾向が特に強い社会だと思います。そして誰も褒められぬよう、責められぬよう、時間をかけて調整していく社会です。

なので今回のこのアイデアのように、法律を逆手に取ったようなアイデアで短期間に国全体を大きく動かす、というやり方は支持を得にくい部分も大きいことでしょう。

ただし、確実にこれらの問題へのマグマは日本でも溜まってきています。

そこで例えば、今回ご紹介した企画の発想を参考に、それを日本社会に馴染むように「翻訳」した場合、どのようなアイデアが考えられるのか?

時間をかけて、女性が当たり前のように活躍できる社会へと日本の人々を導くためには…?

もちろんそんな悠長に時間をかけていられない、という人々も勇気ある者として讃えられるべきだと思いますが、あれやこれや、そんなふうに多様な皆様の施策のアイデアの幅を広げるきっかけとしてこのブログがお役に立てれば、それに勝る喜びはございません。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

おまけ:最後に「社会の特性や文脈に合わせた変革促進キャンペーン」として私が20世紀の最高傑作として崇めるマハトマ・ガンジーさんによる「塩の行進」について紹介した過去記事にリンクを貼っておきます。これこそ神だ・・・。

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気候変動に対する見事な”選択肢”を示した保険会社のキャンペーン【カンヌ2022受賞作より】

Photo by Matt Palmer on Unsplash

気候変動対策にも攻めと守りが

この夏も世界的な異常気象が伝えられています。ここまで毎年、世界のどこかで異常が伝えられていると、特に自然との距離が遠い都会ではそれらの情報に慣れてしまいそうになりますが、気候変動と、それが引き起こす災害の度合いが深刻化していることは事実だと思います。

そんな気候変動への対策として我々が真っ先に考えることといえば「公共交通機関を使う」、「肉食を控える」といった地球への負荷を減らすための”攻め”の活動ですが、一方、気候変動により過激化する災害に対しては”守り”、つまりレジリエンス(強靭性)を強めることの重要性も日々高まるばかりです。

ということで今回は、我々が暮らしの中で「身近すぎて見落としてきたもの」に焦点をあて、その強靱化に取り組んだオーストラリアの保険会社によるキャンペーンをご紹介します。

ちなみにこの取り組み、6月下旬に行われた世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にてイノベーション部門でグランプリなどを獲得しています。詳しくはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「One House to Save Many / 多くを救うための一つの家」

www.youtube.com

【雑和訳】ナレーション「オーストラリアでは毎年、何千もの家屋が極端な気象により損傷、破壊されています。毎年、それは繰り返されていますが、私たちはその都度、急いで同じような家を建て直し、同じことが起きないようにと祈るだけでした」/

サンコープ保険の災害対策リーダー キャス・スチュワート「(災害においては)資金のおよそ97%が家の再建や修復に使われ、予防に充てられる金額は3%ほどでしかないのです。私たちはこれを逆転させたいと考えました」/

ナレーション「この破壊と苦悩のサイクルを変える唯一の手立ては、家を建てる方法を、全く変えてしまうこと。なので私たちは、オーストラリア最大の保険会社の一つサンコープに、科学的な方法で検証され、サイクロンや洪水、山火事にも耐えうるようデザインされた、世界初となる家の開発を持ちかけました。

それが「One House to Save Many(多くを救うための一つの家)」です。開発にあたっては、家の強靭さを評価するエキスパートたちが初めて結集。彼らの知識を集めて、これまでにないさまざまな強化機能が導入されました。

例えば火やデブリから家を守るメッシュスクリーンや、洪水による水流をいなすための仕切り壁、そしてサイクロンによるダメージを防ぐ、空気圧低減システムなど。このキャンペーンは、全オーストラリアを対象とした広告キャンペーンと、プライムタイムでオンエアされたドキュメンタリーにて開始されました。

 One Houseの開発で得られた学びは一般に公開。政府の各種組織や建設会社に対しても提供されました。/ TVアンカーパーソンA「5つの洪水やサイクロンに耐える家についての話題です」TVアンカーパーソンB「業界のエキスパートは歓迎すべき活動だと評価しています」TVアンカーパーソンC「なんで今までこういったことを考えてこなかったんでしょう。あなたたちは天才ですよ!」/

ンコープ保険のマーケティングマネジャー トラビス・ヒューズ「私たちは現在、One House から学んだことを、業界をリードする製品イノベーションに提供しています。これは保険のカテゴリー全体を変える可能性を秘めています」/ 

ナレーション「サンコープの主導により、オーストラリア保険評議会は、2025年までに国の建築規格に”強靭さ”を加えることを目指す「プロジェクト・レジリエンス(強靭化計画)」を開始。オーストラリア連邦政府は、新たな災害への備えや、災害による被害緩和プログラムのために6億ドルに上る強靭化基金を用意することを発表しました」/

サンコープ保険のマーケティングマネジャー トラビス・ヒューズ「このプロジェクトは、単純に One House(ひとつの家)が建築された、という話ではありません。これはオーストラリアの人々すべての家の建て方に変革をもたらすものなのです」

激変する世界の中で、衣食住のニーズも変わっている

いかがでしたでしょうか?地震大国に住む我々は、住宅については諸外国と比べても耐震性など、その強靭性についてはもともと関心が高いほうかと思います。

ただ、洪水は日本のどこかで毎年必ず起こっていますし、その頻度も増しているように感じます。(台風も、昔に比べてより強く、大きくなっていませんか?)

そんな日本ならではの気候変動の特性を念頭に、もう一度日本の「家づくり」について考えることも必要だな、と考えさせてくれる事例でした。

また、同じような変動は今回ご紹介した「住」の分野だけでなく、衣食の分野にも必ず起きているはずです。今回の事例の考え方を参考に、自分たちの衣食住をゼロから見直してみると、何か素敵なイノベーションへのヒントが見つかりそうな気がします。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!