世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

おら電気自動車乗るだ@南仏

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Photo by Emmanuel Martin on Unsplash

フランスの田舎で行われた電気自動車の”実用実験”

電気自動車と聞くと、2021年の時点で皆様はどのようなイメージを持つでしょうか?未来はみんな乗っているんだろうけれども、自分が買うにはまだ色々不便がありそう…。というような、心理的障壁がまだ根強いのかな、と思います。

発電やバッテリーの製造〜廃棄過程が改善されない限り電気自動車=絶対善ではないですし、地理的条件によっては日本のように水素という選択肢も普及されて然るべきです。

そういった事実を念頭に置きつつ…ではございますが、今回は、社会にとってより良い選択=電気自動車に対する人々の心理的障壁を見事に下げた事例としてフランス車ブランド、ルノーによる取り組みをご紹介します。

クリエイティブの世界的祭典、カンヌライオンズ2020/21のアウトドア部門(屋外広告部門)のグランプリ受賞作品でもあります。

事例紹介ムービー(雑和訳付き)

www.youtube.com

【雑和訳】「ここ数年、自動車業界は人々に電気自動車を売るべく、大量の金額を投じて広告を展開してきました」「しかし現在、電気自動車の購入意向がある人たちはたったの7%」「93%は今もなお、都市部にでもすまない限り、電気自動車は使い勝手や社会的基盤に欠くと信じています」「つまり、彼らは電気自動車の良さを納得できる何かを欲しているのです」

「電気自動車のリーダーとして。ルノーは電気自動車が、誰にとっても選択肢となりうることを証明したいと思いました」「そこで2020年、ルノーは100%電気自動車で生活するエリアを作ったのです」「(*画面ではパリやリヨン、マルセイユを地図で示しつつ)どこでかって?」「ここです。…その名もアピー村」

”村の全員が、電気自動車にシフトするとこになるのだそうですね”、”はい。アピーで行われます”

(*画面ではパン屋やスーパー、学校までの遠い距離が示されつつ)「この村は、何をするにも遠くに離れています」「本当に遠いので、ここの暮らしでは自動車が不可欠。ですが、電気自動車で暮らすことは不可能に思えます」「そう、我々はあえて、最も遠くに離れた村を実験の場として選んだのです。なぜなら”ここで可能なら、どこででも可能なはずだから”」

「そこで我々はルノーの電気自動車”ZOE”を3年間、アピーのすべての人々の車と交換」「ご覧ください。今やこの村は公式に、地球で唯一、100%電気自動車で生活する居住エリアとなりました」「しかし、ZOEだけで暮らし始めて6ヶ月」「何が変わったのでしょうか?」「…何も変わりませんでした」

「パトリックは毎朝職場に行き、帰ってきますし」「シルビーはスーパーで買い物をしますし」「マリーは毎日、子供を学校に送ります」「ジルベルトはGPSがあってもまた迷子になっています」「アピでの毎日はまったく変わりません」

「たったひとつのこと…炭素を除いては」[2,600リッターのガソリンを節約][4トン分のCO2削減に相当]「テレビやソーシャルメディアが彼らの暮らしを追うことで、アピは有名になりました」「そしてフランスの多くの人たちに、電気自動車への転換を促したのです」[売り上げは50%上昇][ZOEがヨーロッパで一番売れている電気自動車に]

「でも、それだけではなく…ご覧ください。(村人が誇らしげに”電気自動車の村”という看板を磨いている)」「これがホントの"アッピー・エンド"です」

イノベーションと実用性のギャップを素直に認めたルノーに拍手

電気自動車というと最先端の街だったり、緑の森をクールなタレントが走るようなイメージを売る広告が多い気がしますが、消費者の立場から言うとクルマにとって大切なのはイメージよりもこの紹介ムービーの冒頭にもある通り「走行距離」や「充電のしやすさ」といった実用性です。

そこを素直に認めて、イノベーションという言葉が持つイメージからはある意味、真逆にある「都会から遠く離れた村の人々」に着目し、ここまでのコラボレーションを繰り広げたところにこのアイデアの素晴らしさがあると思います。

考えてみると、村人一人一人の車をZOEに変えさせる、という交渉も大変なことです。ここらへんは村とどう信頼関係を築いていったのかなど、機会があれば制作スタッフたちに裏話などもぜひ聞いてみたいものです。

「ここで可能なら、どこででも可能なはず」ということを可視化して売り上げを伸ばし、そして地球環境の改善に寄与した…のみならず、村おこしにも多大なる貢献を果たしたこの取り組みは、日本でもフォーマットの一つとして取り入れ、応用する価値はあると思いました。

ただし、カンヌのグランプリに値するかは文脈が必要

ここからは少しマニアックな話になりますが、個人的には一番最初にこの取り組みを見た時、これがカンヌのグランプリに値するかどうかについては、少し疑問に思いました。なぜなら過去、Skodaというチェコの自動車メーカーが住民70人の過疎の村と徹底的にコラボをして成果を上げた「70 Guardians Of Winter」という素晴らしい取り組みがカンヌを受賞していて、今回のアイデアはどうしてもそれの”電気自動車版”に感じてしまったからです。

www.youtube.com

カンヌのグランプリにはこれまでにない、業界全体を未来へと導くようなものこそがふさわしいと思いますし、それがカンヌライオンズのカンヌライオンズたる所以だと思います。その文脈を読むとすると、今回のグランプリはアウトドア部門のものだった、ということで「アウトドア(屋外広告)の可能性をこれまでにない領域にまで広げた」というところが高く評価されたのかな、と思います。

何はともあれ、目まぐるしく価値観が変わり続けるこの世界の中で、こういう試行錯誤を堂々と続けながら、人々にとって価値ある存在であり続けようと努力するカンヌライオンズには敬意を表しますし、これまでになかったアイデアかどうかに関わらず、このアイデアを考え、高いレベルで実行したルノーの皆様には拍手以外ありません。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!

PS.Skodaの取り組み、このブログですっかり取り上げた気でいましたがまだ取り上げてなかったみたいです。5〜6年前のキャンペーンですがまだ十分素晴らしいので、近いうちに取り上げようと思います!

カンヌの知恵を盗んでください。そして社員を盗んでください。

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Photo by Elevate on Unsplash

今回のブログの記事には、伝えたいことが2つあります。「カンヌの知恵を盗んでください」ということと、「社員を盗んでください」ということの2つです。

カンヌの知恵を盗んでください

先日、今年の6月にほぼフルオンラインで開かれたクリエイティビティの世界的祭典・カンヌライオンズに日本から参加した各部門の審査員たちによるシェアリングがまとめられたコンテンツが無料で公開されました。

簡単な登録は必要ですが、このブログの読者にはかなり役立つものと思います。2021年末まで見れるそうなので、閉じられてしまう前にぜひご覧ください。

www.canneslionsjapan.com

私もこれをみて、審査員たちの熱のこもったプレゼンに、記事を書くたびにうっすらと感じていた「今年のカンヌなんて書いてももう古い、て思われちゃうかな…」と思っていた迷いがなくなりました。

そもそもが自分の勉強のために始めたブログです。もちろん最新のネタもピックして参りますが、受賞作のクリエイティビティの質はやはり一級品ですので、一つ一つ丁寧に、これからもカンヌの今年の受賞作を紹介し続けていこうと思います。

そして社員を盗んでください

そしてもうひとつの伝えたいこと。上にご紹介した審査員たちによるシェアリングでも取り上げられていて特に素晴らしいな、と思ったキャンペーンを今回はご紹介させていただきます。

スタッフの80%が何らかのハンディキャップを持つ人たちで構成されているイギリスの石鹸メーカー、Becoが障がい者の雇用を広めるために行った挑戦的で、でも人間の暖かさが溢れているキャンペーンです。

ではこちらの、紹介ビデオをご覧ください。タイトルはズバリ「#StealOurStaff(#我々の社員を盗んでください)」です。

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【雑訳】”一般人口の80%には職があるのに、職についている障がい者は48%しかいない”[障がい者が職につける確率は、50%少ない(世界経済フォーラム調べ)]”企業の90%は人材の多様性に重きを置いていると言っているにもかかわらず、障がい者を考慮している企業は4%だ”[イギリスでは、110万人の障害者が職探しに苦労している(イギリス国家統計局調べ)]

[Becoはその点、一味違う石鹸メーカー]「私は障がいじゃなくて、人間としての能力が評価されるべきだと思います」[Becoでは、スタッフの80%が障がい者(そしてスタッフの100%が素晴らしい)]「これは手話じゃなくて、こうすることで作業が捗るんです」[我々は、もっと多くの企業が我々のように雇用すべきだと考える]「他の雇用主もBecoのようにできると思います」「そして、彼らにチャンスを与えるのです」

[そこで我々は、他の雇用主たちを誘った…]"我々を盗…。"「あら、私のセリフ取らないで!”#我々社員を盗んでください”」[我々は、自社の石鹸のパッケージに彼らの履歴書をつけ][500以上の店舗に並べた]「それが皆様が、イギリス中のBecoの商品で我々の履歴を目にした理由なんです」”そして3つの工場のスタッフが、自身の履歴を記したソープボトルを手に取った”「お前はハンサムだよ、マイケル」「おお、ありがとう自分」

[そして][ターゲットは][至る所に]【親愛なるリチャード・ブランソンさんへ】【カールスバーグ社の皆さん。あなたたちは世界一優秀なスタッフを雇えますよ。多分ね。】【我々のスタッフを盗んでください。Just do it.】【ジレットさん、上司が求める最高のスタッフ、いかがですか?】【ステファンに会ってみよう】【私はステファンを盗みたい】

[我々は無視されていた存在を][見逃せないものに変えた]「あなた、私に似てますがそこ(ボトルのラベル)で何をしてるんですか?」「あなたを有名にしてるんです」「ハハハ…」「あなたにも良くて、みんなにも良いことなんです」*各種メディアからのコメントが抜粋される

[売上は96%向上][Web上のトラフィックは1600%の向上を見せた][そして、40を超えるブランドから接触があった]「必要なのはチャンスで、それで人生がまるで変わってくる、ということもあると思います」「もっと多くの会社がBecoのようなことを試み、採用を進めてくれるといいと思います」[Beco #社員を盗んでください]

「ブランド体験」の教科書的事例

いかがでしたでしょうか?私はこのビデオの中にある、「我々は無視されていた存在を、見逃せないものに変えた(”We made the invisible hard to miss.”)」という一節が大好きです。

息が詰まりそうなほど大量の情報を消費しながら生きている人たちが(自分含め)大半の中、どうやったら人々に認知し、立ち上がってもらえるのか。ここを考え抜き、実行することが障害者の雇用だけでなく、全ての社会課題の解決のために不可欠な「思考の基盤」なのだと思います。

そしてもうひとつ。あなたがこれから立ち寄るスーパーマーケットでもしも突然、いつもの石鹸を売る棚の一角が履歴書のパッケージになっていたらどう思うでしょうか?

おそらく他の石鹸のブランドとは明らかに異なるブランドとして認知するでしょうし、それを手に取り、買うことによって彼らを支援しているような、いい気分になることでしょう。

値段の安さだけでは決して作れない”心のドラマ”がそこにはありますし、それこそがまさに「ブランド」体験なのです。

…ということで単なる社会的課題の解決だけでなく、それをしっかりと自社ブランドの確立と売上向上にも結び付けたところが、このキャンペーンが世界的に高い評価をうけた理由のひとつだと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!

温暖化、森林破壊…壊れゆく地球の変化をグーグルアースで見てみよう

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Photo by NASA on Unsplash

引き続き今年のクリエイティビティの世界的祭典、カンヌライオンズの受賞作品特集を続けてまいります。今回はデザイン部門で金賞を受賞したGoogleによる試みをひとつ。

今回はあまり説明の必要がなく、世界各地の1980年代から現在に至るこの星の環境変化を「変わりゆく森林」、「温暖化する地球」などのテーマ別にGoogle Earthを使って、タイムラプスで見れるというプロジェクトの紹介になります。

まずは美しくも末恐ろしい、この取り組みの紹介ビデオをご覧ください。

www.youtube.com

【超雑訳】”宇宙には、真空を回転する美しい球体がある。そこには命があり、我々がいる。それはたくましく、不変のもののようにも見える。しかし今、我々はそうではないことに気づきつつある。時の経過や、暮らしや、呼吸とともに。…時とともに、我々はかつてないスピードで地球を変化させている。我々は我々の生き方や、選択がこの星に与えている影響を目の当たりにしている。そして、その結果も。宇宙には今どう扱うかで、我々の未来が決まる場所がある。目の前で世界が変わりゆく中、あなたは何を思い、何をするのか?”[グーグルアースのタイムラプスで、変わりゆく世界を巡ってみよう。goo.gle/timelapse]

いかがでしたでしょうか?では早速、こちら→(https://goo.gle/timelapse)から「変わりゆく世界」を目撃し、この美しい星を守るため、自分がどうすれば良いのかを考えるきっかけとしてください。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!

乳がん予防を、イスラム社会でタブーに触れずに広めたアイデア

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Photo by Mihai Surdu on Unsplash

すっかり秋めいてまいりました。6月末にほぼ完全オンラインでおこなわれたクリエイティビティの世界的祭典カンヌ・ライオンズからたった2ヶ月半の間にオリンピック・パラリンピックが行われ、身の回りでもワクチン接種が進み、日本の首相も(再び)変わることが内定するなど、世界は変わり続けます。

ですが、こちらのブログはブレずに今回もカンヌライオンズの受賞作品を紹介し続けたいと思います。今回はPR部門でグランプリを獲得したレバノンでの取り組みです。

レバノンでは、乳がんの初期段階での発見が難しいそうです。その背景には、女性たちが自身の体について語ることに対してタブー視をする文化的・社会的な風潮があります。

結果として、どのように(乳がんの初期発見には欠かせない)セルフチェックをするのかを女性たちが知りたくても、語ることも、学ぶこともできません。

どうすれば、タブーとされる体について語ることなしに、レバノンの女性たちに乳がんのセルフチェックを啓蒙し、初期段階での発見を促すことができるのか?

そこである「食べ物」の作り方に目をつけ、課題の解決に結びつけたアイデアがこちらになります。以下の紹介ビデオをご覧ください。

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【超雑和訳】[レバノンでは、女性が体について語ることについてタブー視する風潮があるため、乳がん患者はしばしば、末期にならないと判明しない状況にある]「我々の社会では、タブーだとか、気に触ることとみなされてしまいます」「まだ公に話すべき話題とはなっていません」「セルフチェックをどうするのか、誰も話してくれないのでわからないんです」[このタブーを打ち破るために][我々は、我々の食伝統を活用することにした][そして、女性たちにセルフチェックの方法を伝授するのだ][…パンづくりを通じて ][AUBMC、Spinneyスーパーマーケット、レバノン乳がん協会提供]["パンづくりチェック"]「こんにちは、アリです」「みなさんが毎月パンを焼いてくれることを願ってお届けしています」「今回は、最も体に良いレシピをご紹介します」[このレシピは、人気の伝統料理のパン焼き職人、ウム・アリさんと産婦人科医が開発][パンづくりと、乳がんのセルフチェックの手の動きの類似性に着目し、乳がんのセルフチェックの方法を、生地をこねながらデモンストレーションしたのだ][胸について見せることも、語ることもせずに][こうすることで、このチュートリアルはソーシャル・メディアで公にシェアすることが容易になった][(*スマホ内の字幕)今月はパンを焼きましたか?][大手テレビ局では、このレシピの真の意図が乳がんのチェックであることを発表][「今月、パン焼いた?」はこれまで語られてこなかった乳がんの話題を指す言葉として、女性たちの間の隠語となった ][世界中の料理人インフルエンサーもセルフチェックのためのオリジナルレシピを開発](自分なりのレシピを公開するUAE/トルコ/ドイツ/UKの料理人インフルエンサーの様子が映る)[このコンテンツは、伝統的コミュニティに住む女性たちがタブーを克服するきっかけとなった][レシピのQRコードは、Spinneyブランドの小麦粉のパッケージに印刷され流通][パンの包み紙にも印刷され、市場でも実演された][もちろん、Sipnneyの店舗でも][この取り組みは、レバノンの大統領や国際的なメディアから賞賛を受けた(*いくつかのメディアのコメント入る)][このレシピは1億1200万人にリーチ][86%のアラブ地域の女性たちが、このレシピはセルフチェックを思い出させてくれるだろうと答えた][タブーを伝統と融合させることで、”パンづくりチェック”は乳がんについて語り合うための言葉となった] [ ただ、まだ一つだけ確認すべきことがある]["あなたは今月、パンを焼きましたか?"]

いかがでしたでしょうか?このアイデア乳がんという体についての問題なのに、肝心の体について物が言えないという、いわば完全な「無理ゲー」状況を一発で鮮やかに解決した、というところがカンヌライオンズのグランプリ受賞作たる所以なのかな、と思います。

そしてまたこのアイデアの根底にある「理不尽な現状に頑なに争うのではなく、むしろその潮目を合気道のように活用し、社会を無理なく、自然により良い方向へとひっくり返していく」という考え方は、分断したまま各々が言いたいことをソーシャルメディアに投げつけて憂さを晴らしているだけの、いわば「全員が少しずつ負けている」状況よりは建設的なのかもしれないな、と思いました。

 

ちなみにこのアイデアに関連して一言:「パンの生地に着目した」という点で、だいぶ前のアイデアではありますが、南アフリカハンバーガーチェーンWIMPYが目の不自由な人たちへのメッセージを、ハンバーガーのバンズについたゴマを点字にして伝えたこちらのアイデアを思い出しました。いつか取り上げたい!と思ったまま10年放置していたようなので、罪滅ぼしにまずは以下に紹介ビデオを置いておきます。音楽の使い方など、ボケーと見るだけでも気持ちが明るくなる映像なので、お時間あればこちらもぜひご覧ください。(機会があればいつかまた、こちらも雑和訳込みで解剖してみたいと思います。)

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いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。

それではみなさん、また来週!

ヴィヴァルディの「四季」を現在の気候に置きかえてみた

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Photo by Samuel Sianipar on Unsplash

今年の夏「も」日本列島は異常気象に悩まされました。長引く雨は西日本に大きな損害を与え、国外でもドイツやトルコで洪水が起こるなど、温暖化する気候が我々の暮らしを脅かしていることがいよいよ明らかになってきました。

この状況を緩和するため、現在SDGsをはじめとする様々な取り組みが世界的になされてきておりますが、何せ問題が大きく、一人一人の心掛けから政府や企業の思惑が複雑に絡み合っているため、日々の暮らしの中では「できるなら考えずにいたい」と、具体的アクションを訴える声に耳を塞いでしまうことも多いのではないでしょうか?

今回はそんな人間の心理に対し、気候変動のおぞましさを「有名な音楽」で可視化ならぬ”可聴化”することで表現、世界に大きなインパクトを与えた取り組みをご紹介します。

使われた曲はヴァイヴァルディの「四季」。1700年台初頭に作られたこの傑作の構成楽曲である「春」「夏」「秋」「冬」を、それぞれ現在の気候に合わせて編曲したらこうなる…ということで、21世紀版のなんとも気持ちの悪い四季をまとめ上げてしまいました。カンヌライオンズ2020/21のクリエーティブ・データ部門の金賞受賞作品です。それでは解説ビデオをご覧ください。

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【雑和訳】”1723年、ヴィヴァルディは「四季」を作曲した” / ”以来、彼が描いた世界はドラスティックに変化した” / 「過去の10年は最も暖かい10年だったことが認められました」「世界的規模の破滅が見えてきたのです」/ [気候変動は、今他地球上の生命にとって最大の脅威となった][しかし、脅威のあまりの大きさからか、人々はこの問題に対して耳をふさぐ傾向がある][NDR エルフィローモニック・オーケストラがお届けする][ヴィヴァルディの”四季”改め”季節のために” -作曲:気候データ][NDR エルフィローモニック・オーケストラは、この問題に対して音楽の力で人々の耳をこじ開けようと試みた][ソフトウェア開発者と作曲家のチームを編成。(ヴィヴァルディの)”四季”の(楽譜)を現在の気候に合わせて再構成したのだ][特別に開発されたアルゴリズムで過去300年間にわたる気候変動データを使い、ヴィヴァルディの傑作を編曲][現代版の”冬”は51小節短くなり、”夏”の構成要素が”春”の構成を侵食した][鳥のさえずりをイメージしたヴァイオリンの音は、鳥類の減少に合わせて15%抑えられた][”夏”に時折挿入される雷鳴を表現したヴァイオリンのパートは、全ての季節を侵食][結果は眉をひそめるものに][(現代版の四季は)ちょうど今の自然界のように、バランスを欠いたものとなった][数ヶ月にわたる作業の後、この”四季”はハンブルグのエルフィローモニック・オーケストラにより世界に向けてプレミア上演され、その模様はfacebookライブ配信された][この試みはすぐに反響を呼んだ。そして、何百万人の人々に聴かれることとなった](色んな反応や結果が入る)[我々は気候変動を可聴化した。そして人々はついに、それに耳を傾けるようになったのだ][このスコアは、世界中のオーケストラが自由に演奏することを許可しています][この曲は今、国連開発プログラムのパートナーコンテンツとなっています][forseasonsbydata.comで実際に聴いてみてください]

いかがでしたでしょうか?誰もが知る、季節に関する心地よいオーディオコンテンツを、データの力で編曲することで気候の変動を「耳でわかる」不快な体験として提供したアイデアなのですが、聞いた瞬間に「一本取られた!」と膝を打つ、とてもクリアで強いアイデアですよね。

解説ビデオの途中で出てくるグラフィカルな説明のアニメーションも(このアイデアの本質と関係ないのですが汗)綺麗で何度も見たくなりました。

そして最後、演奏後のオーケストラの背景に出てくるキャッチフレーズ”We've heard all about climate change. Now, it's time to listen.”、これ、意訳すると「気候変動がどういうものかを今、皆様は”耳にしました”。(ひどいもんですよね?)さぁ、これからは気候変動の課題にもっと”耳を傾ける”時ですよ!」という意味になると思います。

うまいフレーズだと思いましたし、おまけに”hear”と”listen”のニュアンスの違いも学べる、英語の勉強的にもおいしい一言だと思いました。

せっかくなので、この気持ちの悪〜い、現在版の四季の全曲を収めたムービーを以下に置いておきます。「なんか、気持ち悪い」、そして「なんか怖い」というのが、今の気候変動に対する気持ちとかなりシンクロします。よくできてるなぁ…。

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いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。

それではみなさん、また来週!

学校閉鎖により奪われた「演じる喜び」を取り戻したアメリカでの素敵な試み

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Photo by Dan Barrett on Unsplash

新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。9月に向けて各種学校が新学期を迎える中、お子様をお持ちの皆様の中には運動会や発表会、学習旅行など、子供たちが楽しみにしていた行事がどうなるか、気を揉んでいる方も多いと思います。

そんな中、今回は新型コロナウイルスによる学校閉鎖により上演がキャンセルになってしまった中学校の演劇部のために、アメリカの放送会社Coxコミュニケーションズが行った素敵な取り組みをご紹介したいと思います。

今年6月に行われたクリエイティブの祭典、カンヌライオンズ2020/21のデジタルクラフト部門で金賞を受賞したアイデアです。

では早速、紹介ビデオをご覧ください。画面右下の字幕アイコンをオンにしてご覧になると、精度は低いですが日本語字幕付きでお楽しみいただけます。

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いかがでしたでしょうか?アメリカの一流3Dアニメ制作陣が、演劇部の子供たちひとりひとりのためにオリジナルキャラクターを制作。タブレット上に開発したアプリで彼らの演技をトラッキング&収録できるようにすることで、それぞれが離れた場所にいても演技できる環境を作り出したのです。

そしてその後、それぞれの演技のデータはまとめられ、以下のような1本の素晴らしいCGアニメが出来上がりました。

それではアメリカ、サーマンホワイト中学校演劇部による愉快なアニメーション演劇「追い詰められて、テンパって!」をご覧ください!

↓↓↓

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いかがでしたでしょうか?ストーリー的には、怪我をして出られなくなりそうな演劇部員の出どころをめぐってのちょっとしたドタバタ劇なのですが、最後までしっかりと見られるエンターテインメントになってますよね!

最後の子供たちによるNG集も良い感じです。

もちろんCoxコミュニケーションズもすべての学校にこのような素晴らしいコンテンツを提供できるわけではないのですが、彼らの姿勢を参考に、すべての行事をやる・やらないの二択で判断してしまう前に「もっと良い方法はないのか?」と思考を巡らせ、何か新しいことにトライしてみるのも悪くないんじゃないかな、と思わせてくれる事例でした。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。

それではみなさん、また来週!

「母親になる自由を!」全ての女性アスリートのために立ち上がったアメリカ陸上界の女王

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Photo by Matt Lee on Unsplash

気づけば2010年ごろとは社会が様変わりし、一人一人が、ソーシャルメディアなどを駆使して自分らしさを発信することが普通の社会になりました。

 

それはアスリートにとっても同じこと。例えばオリンピックなどの国際的な試合でも最近の選手、特にスケードボードなど、新しい種目の選手の中には「国の威信をかけて戦う」という意識よりも「自分らしく戦う」という意識でベストを尽くす選手が増えてきているように感じます(かくいう私は超・運動音痴なのであくまでも主観にすぎませんが…)。

 

そんな中、東京オリンピックを通じて見事に自分のメッセージを表明し、女性アスリートに対する不平等解決のために立ち上がったアメリカの陸上選手、アリソン・フェリックス選手の見事な活動を今回はご紹介したいと思います。

 

ご存知の方も多いと思いますが彼女は過去のオリンピックで金メダルを何度も獲得したアメリカを代表する陸上競技選手で、ナイキとスポンサー契約を結んでいました。

 

しかし以下の記事によると、彼女は妊娠休養中の2018年にナイキから大幅に減額された契約料を提示され、さらに出産前後の数か月は成績が振るわなくても金銭的なペナルティーは科さないでほしい、という要望についても難色を示されてしまったそうです。(引用元:ナイキが妊娠した選手に対する方針改善へ、サポート減額に批判

 

上記記事の見出しの通り、批判を受けて方針を改善したナイキも素晴らしいのですが、ナイキと袂を分かったアリソンさんはさらに「女性アスリートが抱える不平等」解消のために、オリンピック直前になんと自分自身のシューズブランド「Saysh」を立ち上げました。

 

そのブランドムービーをご覧ください。

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【雑和訳】ほとんどの人々がそうだったように、私も立場をわきまえろと言われ続けきた。だけどここに、私は、女性たちによって、女性たちのためにデザインされたブランドを立ち上げようと思う。母親になり、子を育ててきたこれまでの経験が、私の本当の競争相手が「不平等」であることを教えてくれた。私は、私の声で女性のため、母親たちのため、そして、母親になりたいすべての女性たちのために変化を生み出したいと思う。だから私はここにいる。私は立つべき場所にいる。Saysh

 

このブランドのローンチを発表したのが今年の6月下旬。そして8月、Sayshブランドのスパイクを履いて新国立競技場に登場した彼女は見事女子400メートルで銅メダル、4x400メートルリレーで金メダルを獲得。これで彼女の生涯を通じての金メダル通算獲得枚数は11枚となり、なんとあのカール・ルイスさんが持つ10枚の記録を塗り替えてしまいました。

 

世界最高の舞台で競技上の結果だけでなく、彼女のスパイクの性能もしっかりと示したアリソン選手。さらに彼女は、このスパイクをNFT(Non-Fungible Token/偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ)付きでオークションにかけ、その利益を女性アスリートの子育てのための支援団体に寄付することを発表しています。

 

しっかりとしたパーパス(存在理由)と自身が持つ社会的価値に立脚し、巧みなPRで女性アスリートを取り囲む理不尽を突き破っていくアリソン選手と、その新たなシューズブランドのこれからに期待と、惜しみない拍手とエールを送りたいと思います。

 

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!

 

 

PS. ちなみに今回の記事の参照元と、Saysh のかっこいいブランドサイトへのリンクもここに貼っておきますね。 

adage.com

saysh.com