世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

高齢者は気難しくてつまらなそう、というステレオタイプを打ち壊そう。

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Photo by Nick Karvounis on Unsplash

先日、世界中のマーケターに最新のクリエーティブやイノベーションを紹介しているContagiousが「Smashing Stereotypes/OK Boomers(ステレオタイプを打ち壊そう・OK、ベビーブーマー世代)」と題して、高齢者に対するステレオタイプについてのウェビナーを開いてましたのでご報告します。

これはマーケターや広告制作者にとっても注目すべきトピックで、YouGovによる調査によると、50代以上の人々のうち実に79%もの人々が、広告表現などでの高齢者の描写が正確ではない、と感じているそうです。

人間の寿命は先進国を中心に延びており、イギリスでは100年前の平均寿命がおよそ50歳だったのに対して、今では81歳。(アメリカ人ですが、あのトム・クルーズさんだって映画であれだけ飛び跳ねて58歳!)。なのに広告などメディアの表現は、100年前と同じ感覚で老人を描いてないか、ということを豊富なデータと事例で問いかけていました。

人口比でかなりの比重を占める高齢者層。彼らはお金を持ち、ステレオタイプに反して予想以上にアクティブで人生を謳歌し、消費活動も盛んです。なのに今どきのマーケターは若いZ世代ばかりを見て、高齢者についてあまりに無関心ではないか?というメッセージはとても納得のいくものでした。

今回はそのウェビナーで取り上げられていた、高齢者のステレオタイプを壊すような、元気あふれる広告表現を以下に3つ、ご紹介します。

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3本とも若者が人それぞれであるのと同様、年齢を重ねた人もそれぞれであることがよくわかる、そして歳をとることが楽しみになる内容ですね!

またこのウェビナーでは、もはや年齢という数字でターゲティングするより、価値観ベースで人々を分けた方が適切である、という意見や事例も紹介されていて、自分が漠然と感じ始めていたことを言語化してもらった気がしました。

Contagiousのウェビナーは無料のものも多く、定期的に開かれているので、マーケターやコンテンツ制作者の皆様は、英語の学習も兼ねて覗いてみてはいかがでしょうか?

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆様、また来週!

 

お店に大混乱をもたらしたナッツ菓子の”隠れた狙い”

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Photo by Remi Yuan on Unsplash

もし近所のスーパーで、自分が好きなスナック菓子の大きな袋と、小さな袋が同じ値段で売られていたらどうしますか?普通は大きな方を買おうとしますよね。でも、レジでこう言われたらどうでしょう。「あなたは男性だから、小さいのしか買えません」…。

今回は、それを実際に行ったアメリカのナッツのお菓子「NUT-rition」のケースビデオをご紹介します。自己主張が強いアメリカ人だけに、その理不尽な決めつけに抗議するお客さんでお店のレジは大混乱。

でも彼らは何故、こんなことをしたのでしょうか?その答えは、ケースビデオの後で…。

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実はこれ、性別による賃金格差を訴えるための施策でした。アメリカでは平均すると、同じ時間、同じ内容で働いでも女性は男性の8割しか賃金をもらえないそうです。しかしそれを当然のように感じている大多数の男性に、その理不尽さを理解してもらうことは難しい。では、どうすれば実感してもらえるのか…。

そこでNUT-ritionは性別にパッケージを開発。女性用のパッケージを、男性用のパッケージの2割増の大きさ(とナッツの量)にし、同じ値段で提供することで男性たちに「同じものを提供しているのに自分の性別のせいで少ししかもらえない」という状況の理不尽さを実感してもらった、というわけです。

このナッツのメインターゲットは女性だそうで、この施策によりNUT-ritionは性別による賃金格差問題とブランドの認知向上のみならず、メインターゲットである女性からの支持拡大を成し遂げることができました。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆さん、また来週!

ブラジル政府が自転車にかける”異常な税率”を訴えたユニークなアイデア

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Photo by Andrew Gook on Unsplash

持続可能な社会を作るために、世界各地でその使用が推進されている自転車。その購入にあたり、ロンドンでは20%、ドイツでは19%、アメリカでは約8%の税金がかかるそうです。では、ブラジルではいくらの税金がかかるでしょう?下のビデオを見ればわかりますが、その税率はなんと70%!これでは自転車に乗りたくても、諦める人が出て来てしまう。

そんなおかしな状況を訴えるべく、現地の自転車雑誌Bicycling Magazineが編み出したアイデアが、こちら↓

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そうです、彼らは「組み立て方」を変えるだけで、家具になる自転車を開発したのです。全く同じ部品なのに、家具にすれば70%だったはずの税率があら不思議、家具の税率(12%)になってしまう。これっておかしくないですか…?

この自転車は自転車店の店頭などで展示され、ソーシャルメディアで話題に。政府に問題を認知させることに成功したとか。

実際にどれだけの社会的インパクトを産み出したかは?な事例ではありますが、一般の人々に無視されている課題に耳目を集めるためのアイデアの構造としては十分参考になる取り組みだと思います。

ちなみにこのアイデアについてですが、政府による理不尽な税率を訴えた、という点で先週取り上げた以下の記事も参考になると思います。

wsc.hatenablog.com 

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆さん、また来週!

暮らしに巧みに「刷り込まれた」性差別に気づき、正したアイデア

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Photo by Brooke Lark on Unsplash

私は今まで日本の他に韓国、シンガポール、台湾で暮らしたことがあるのですが、その中で気づいたのは、どの社会にも大した優劣はなく、ただ同時にどの社会にも「他の社会から見ると理不尽な制度や風習がある」ということでした。そしてその中のいくつかは、それぞれの社会の人々には当たり前のこととして「刷り込まれた」、女性や少数民族などへの隠れた差別につながっています。当然だと思われすぎて、差別とすら思われていない差別。今回はそれに気づき、声をあげたドイツのキャンペーンをご紹介します。

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ドイツでは今から50年前に、男性ばかりの国会議員たちが制定した税法により、女性にとっては生活必需品であるべき生理用品がなぜか「高級品」に分類され、以来ずっとタンポンには19%の税率が適用されてきたそうです(高級食材のキャビアやトリュフが日用品と変わらない7%の税率しか適当されていないのにかかわらず)。

その理不尽に気づいたオンラインの生理用品ブランド「The Female Company」がとった施策が「タンポンを本にしてしまう」こと。本の税率は7%である、という税法の区分に着目した彼らは、大量のタンポンを本の中に格納。それを書籍として売り出すことで、タンポンをより安い価格で売り出すことに成功したのです(タンポンの税率19%-本の税率7%=12%の値引き効果!)。

さらにその「タンポン・ブック」の記事パートでは、税法上の性差別や、生理に対する社会的不理解をアピール。この本はあっという間に売り切れ、版を重ねると共にこれまで気づかれずに放置されてきたこれらの問題に対する社会的ムーブメントを巻き起こしていきました。

オンライン上に多くの賛同の署名を集めたこの運動は、やがてインフルエンサーを動かし、メディアを動かし、ついには国会を動かし、このビデオには触れられていませんが去年の11月、タンポンの税率はついに他の日用品と同じ7%へと引き下げられる決定がなされたそうです。

当然のこととして社会に刷り込まれ、見過ごされている差別に気づき、アイデアの力で知らせ、正す。社会とアイデアの理想的な関係を示す、素晴らしいキャンペーンだと思いました。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆さん、また来週!

企業のニューノーマルを示す、ユニリーバ10年の試み

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Photo by Robert Collins on Unsplash

新型コロナウイルスへの対応で世の中が騒然とする中、洗剤やボディソープなど、世界中のスーパーの棚にたくさんの商品を供給しているグローバル企業ユニリーバによる、10年にわたる試みが終了しました。それが「ユニリーバサステナブル・リビング・プラン(以下USLP)」。グレタさんが世の中に出てくるよりも、SDGs(持続可能な開発目標)が国連サミットにより採択されるよりもずっと前の2010年から、ユニリーバが自発的に10年計画で始めたこの「サステナブルな社会」を実現するためのイニシアチブは、同社をこれからの企業が目標とすべきロールモデルへと押し上げました。今回は彼らに敬意を表し、ユニリーバがこの10年間で「ステレオタイプによる差別や格差をなくし」「環境負荷の少ない商品を作り」「より持続可能な社会づくりに貢献する」ためにおこなった素晴らしい取り組みをいくつか、ご紹介します。

 

まずは、これまで広告やメディアが押し付けてきた「美しさ」に関するステレオタイプを改めるべく、普通の女性たちをモデルにしたフォトライブラリーを立ち上げ、広告・メディア業界に向け公開したDOVEのProject #ShowUs。

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↓ちなみに日本語のキャンペーンサイトはこちらです。

#ShowUs / #美しさって?プロジェクト - Dove

 

次に、疫病の予防を目指して今から100年ほど前に世に出たユニリーバの石鹸ブランド「LifeBuoy」による試み「Infection Alert System(感染警告システム)」を紹介します。インドのローカル地域を対象に、同ブランドは疫病の感染拡大を予防すべく、各地の健康管理センターと連携。ビッグデータにより感染拡大が予想された地域住民のケータイに自動的にメッセージを送る、という仕組みを開発することで対象地域における関連疾病を18万件近く減少させるなど、多くの人々を救っているそうです。

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最後は「木にとってはもはや、熱帯雨林にいるより都市にいる方が安全だ。」「こんな(おかしな)状況を変えよう。」というメッセージを美しい映像と音楽で表現し、ユニリーバ が持つブランドの数々が、森林に負荷を与えない商品づくりを行っていることをアピールしたオンラインムービーです。自分たちの取り組みを伝えるだけでなく、最後にWWFによる木々を守る取り組みへのリンクをつけて、見た人への行動を促しているところも素晴らしい。

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しかし何よりすごいのは、これらが彼らの取り組みの「氷山の一角」でしかない点。彼らがこれまで繰り広げてきたこのほかの取り組みがSDGsの17のカテゴリー別に網羅的に分けられた記事があるので、ご覧いただくと「SDGsの達成には貢献したいが、どうすれば…」と悩んでいる、あらゆるジャンルの組織の皆様の参考になると思います。 (↓カテゴリー別の取り組みはこのリンク記事の下のほうにまとめてあります)

www.unilever.co.jp

 そしてさらにすごいのが、USLPの活動を通じてユニリーバ

サステナビリティを戦略の中核に置くブランドが、他のブランドに比べて 46%速く成長」し、「今やユニリーバ全体の成長の 70%を占める」

ようになった、という事実。(↓出典元はこちら)

www.unilever.co.jp

この成功の裏には、より環境/社会コンシャスな若い世代の消費者からの支持だけでなく、「自分の仕事が世の中に役立っている」というユニリーバの中で働く人々のモチベーションアップ、そして「そんな企業で働きたい」というインセンティブによる、より良い人材の獲得などがあるようです。

ユニリーバももちろんUSLPが終了したからといって前世紀的な姿に立ち戻るのではなく、「ユニリーバ・コンパス」という新たな、さらに野心的な指針を発表する予定だそうです。(↓以下のリンク参照のこと)

www.unilever.co.jp

なんだかユニリーバさんの回し者のようになってしまいましたが(汗)、このような企業を加速度的に増やしていかないと、次の世代にきちんとバトンを渡せなくなる!という危機感からこの記事をまとめました。

こんなブログを通してでもいいので、一人でも多くの人に彼らの知見が届き、世の中がより良くなれば、と思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆様、また来週! 

街の大気汚染を「可視化」と「カネのチカラ」でロンドン市民に"自分ゴト化"させたキャンペーン

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Photo by Benjamin Davies on Unsplash

産業革命当時は工場から出る排気で「霧の街」といわれたロンドン。技術革新や法制度の充実、産業構造の変化により当時に比べれば大気汚染は大幅に改善されていると思われますが、住民の視点に立てば、まだまだ改善の余地があるようです。

そこでロンドンのクリエーティブ業界が加盟する非営利団体COPI(Central Office of Public Interest)が立ち上げたイニシアティブがAddressPollution.org。彼らがこの試みで何をしたかというと…。詳しくは、以下の説明ビデオをご覧ください。

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彼らはロンドン市内の600万にのぼるポイントから収集したデータを基に、ロンドン市街の大気汚染の状況を20平方メートルごとに区切ったグリッドで表示(=可視化)。のみならず、そのデータをそれぞれのグリッドにある不動産の資産価値と結びつけてデジタルプラットフォーム上で表示する事で、自己資産の価値に関心のある市民や、それを扱う不動産業の人々に大気汚染を自分ゴト化させることに成功しました。

家のアイコンと、色の使いわけにより大気汚染の程度をシンプルに示したデザインと、「子供の喘息や、肺の発達障害などを誘発しうる」「ここの大気汚染は不動産価値において20%のディスカウント要因となる」といった、リサーチに根差した率直なレポーティング、そして、そのレポートが自分の住む、または自分の不動産がある20平方メートルについてなされる、というこの試みは大きな反響を呼び、そのデータが一般的な不動産ポータルサイトの物件情報として活用されるようになったり、大気汚染について正しい情報を与えない行為が法律違反となるなど、不動産だけでなく行政にも具体的なアクションを促したそうです。

巧みなコンセプトやデザインによりなされた課題の「可視化」を、不動産ビジネスという「お金の流れ」と組み合わせる事でより現実的に事態の改善を促していこう、というこのアプローチは、理想論と建前の応酬になりがちでなかなか実際の成果に結びつきにくい、その他大勢の環境問題に取り組む人々にとってもヒントになるかと思いました。

ちなみにこのキャンペーンのウェブサイトは以下になります。

https://addresspollution.org

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ご覧のようにとってもシンプル。ちなみにここのウィンドウに、私の勤務先とネットワーク関係にあるロンドン拠点の郵便番号を入れてみたところ、以下のような結果が出てきました。

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私はロンドンに行ったことがないのでこの場所がどんなところかはわからないのですが、「DEMAND ACTION(改善の必要あり)」とのこと。画面では見切れていますが、左側のウィンドウを下にスクロールすると大気汚染に関する概況と健康、資産価値への影響が簡潔に書かれていて、私のようなノンネーティブでもとってもわかりやすいインターフェイスとなっていました。

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さらにいいな、と思ったのがこの機能。上述の「DEMAND ACTION」をクリックするとこの署名ページになり、ここでの署名はサイト運営者により取りまとめられ、そのまま行政や政治家へと手渡されるそうです。…うん、いいUIだ。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆さん、また来週!

【悲報】自分、知らぬ間にヤバいモノを食べていたことが判明

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Photo by pixpoetry on Unsplash

2週間前に、「数字を可視化すること」に成功したアイデアについて触れましたが、その言霊に惹かれたのか、今週はさらに強烈なインパクトを持つ「数字の可視化」アイデアを見つけましたのでご紹介します。WWF(世界自然保護基金)による「Your Plastic Diet」キャンペーンです。

このプロジェクトは自然分解されず、世界中の食物や水、大気などあらゆる場所に散らばるプラスチックの目には見えないゴミ「マイクロプラスチック」の脅威を可視化しました。人体が1週間の間に体内に取り入れているプラスチックの量を、とある身近なプラスチック用品に可視化したのです。その用品が何かというと…。以下のビデオをご覧ください。

 

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 そうです、その答えは↓

 

 

 

 

 

 

 

 

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クレジットカード!!

まだ具体的な人体への影響は証明できていないそうなのですが、毎週クレジットカードを1枚食べているとしたら、長期的には人体に何らかの影響はありそうですよね。

そして、このキャンペーンは日本語のサイトも用意されておりまして、以下のリンクからアクセスいただけます(上のビデオの日本語字幕付きバージョンもご覧いただけます)。 

yourplasticdiet.org

この中に、簡単なアンケートで自分が先週体内に取り入れたプラスチック量を推測できるコンテンツがあるのですが、それによると先週私は…

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私は先週6.15グラムのプラスチックを食べたらしい…

 知らぬ間にこんなに大量のプラスチックを毎週体内に取り込んでいたことも衝撃だし、何よりもこの事実があまりに世間に伝えられていない事にも愕然としました。

私は常日頃からマイボトルを持ち歩いてはいますが、どうやらそれだけでは、次の世代に健康な暮らしをつなぐことは全くもって難しそうです。では、どうすればよいのか…?

プラスチックのような便利なものを作り出したのも人間。使いすぎて首を締めつつあるのも人間。でも同時に、この問題を乗り越えるのも人間にしかできないことです。そしてその時に必要なものは「アイデアの力」です。

いやぁ、アイデアって本当にイイものですね。それでは皆さん、また来週!