世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

世界に広がる新ムーブメント:MovemberとVeganuary

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Photo by Waldemar Brandt on Unsplash

年明け2週目。仕事も本格的に再開し、かなり慌ただしい方も多いと思いますが、今回は2000年以降に開始され、海外で広がりつつある「季節もの」の新しいソーシャルグッドのための取り組みを2つ、ご紹介します。

 

11月(November)は男性の健康増進を応援するMovember

最初がこちら。前立腺や精巣の癌から精神的な病まで、男性がかかりやすい病気についての理解や支援を促進するために2003年、オーストラリアで始まった取り組みが「Movember(モーメンバー)」。これらの課題への支援の印として毎年11月は1ヶ月間、世界中の男性が連帯して髭を伸ばし続けましょう、という運動なのですが、まずはその広がりを紹介するムービーをご覧ください。

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2003年、オーストラリアのメルボルンでたった30人で始められたこの取り組みはニュージーランド、北米、ヨーロッパへと広がり、2012年には1億4千ドルに登るドネーションを集めることに成功したそうです。

企業による活動も盛んで、この運動に参加する人たちのしきたりである「11月1日に髭を剃る」というアクションに着目し、過去にはバーガーキングジレットとコラボをして、彼らのマスコットキャラクターを活用したユニークなムービーを発表しています。

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髭を剃ったバーガーキング、違和感が面白いですね。ちなみにこのブログでもすでに紹介していますが、フランスのKFCがカーネルおじさんを使って同じような取り組みを行なっています。

wsc.hatenablog.com

 ちなみのこの運動の主催団体は、新型コロナウイルスによる影響も大きいのでしょう。昨年の11月は男性の精神的な落ち込みへの理解と予防にフォーカスを当てたムービーを発表していました。

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「行動の変化は精神的なトラブルのサインです。あなたのドネーションがあなたの父、兄弟、息子、友達、男性たちの人生を救います。男性の健康はクライシスに置かれています。今こそ、ドネーションを。」という内容です。

興味がある方は以下、主催団体の公式ホームページをご覧ください。

https://movember.com

 

1月(January)はヴィーガンの食生活にチャレンジするVeganuary

一方2014年にイギリスで始められ、ここ数年アメリカでも急速に広がりつつあるのがVeganヴィーガン:完全菜食)とJanuary(1月)を掛け合わせた「Veganuary(ヴィーガニュアリー)」という取り組み。こちらは1月の1ヶ月間、みんなで体にも地球環境にも優しいヴィーガンの食生活にチャレンジしてみよう、というものなのですが、サステナビリティへの関心が高まる中、アメリカでは前年比50%増の8万人が参加を表明し、コストコネスレなど100以上の企業からのサポートも受けているそうです。プロモーションのためのムービーも、ご覧のように参加者のインサイトをついた、いい感じで仕上がっております。

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最後の”Nobody is Perfect. Let`s try anyway(誰も完璧じゃありません。とにかく始めてみませんか?)”というキャッチコピーがいいですね。この運動は現在、世界192の国に広まっているそうです。気づけば1月ももう半分過ぎてしまいましたが、まずは来年につながる「お試し版」として、ご興味のある方は今から気軽にチャレンジしてみても良いのではないでしょうか?

*蛇足ですが、ヴィーガンのレストラン情報が詰まったサイトもこちらに置いておきます。vegewel.com

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆様、また来週!

【ポッドキャスト・アーカイブvol.3】熱帯雨林を保護するための史上初!ユニークなデモ行進 (2014年7月23日のブログより)

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本ブログの、2014年の7月23日掲載分の記事を要約してポッドキャストにしました。

週に一度、たった2分のアイデア復習。

上記ご聴取いただき、ご興味沸きましたらぜひ下の元記事もお読みください。 

wsc.hatenablog.com

いやぁ、アイデアって本当にイイもんですね!

残念なものを見た週末に

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Photo by Cameron Smith on Unsplash

2021年の年明けは、民主主義を旗印に発展してきた超大国のリーダーが、その根幹をなす自国議会への攻撃を扇動し、実施するという残念な場面から始まりました。時代に応じて常識は変わるものだし、常に民主主義が最善だとは言い切れませんが、どんな社会であれ「立場の異なる人たちに耳を傾ける」という態度を失った瞬間、人は破壊へと突き動かされるものなのだ、ということを改めて感じる出来事でした。

そこで今回は、自分自身の心理的ダメージの治癒も兼ねて、もう一度人類への希望を感じることができる「平和的な行進」の過去事例を2つ、取り上げようと思います。

 

言葉の力を信じさせてくれる「ワシントン大行進」

そのひとつ目が1963年8月28日に、アメリカのワシントンD.C.で行われた「ワシントン大行進」。まずはそれをまとめたビデオをざっとご覧いただき、今回の事件との違いを「心で」感じていただければと思います。

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こちら、アフリカ系アメリカ人公民権運動において最も象徴的なイベントですが、全米から集まった黒人と、この運動を応援する白人たちが平和裡に行ったことでも有名です。そしてこの行進を象徴するのが、キング牧師による有名な「I have a Dream」で始まる演説です。以下、Wikipediaの和訳*から転載します。

「私は夢見ている。ある日、ジョージアの赤土の丘の上で、以前の奴隷の息子達と以前の奴隷所有者の息子達が、兄弟愛というテーブルにともに就き得ることを。私は夢見ている。ある日、不正と抑圧という熱で苦しんでいる不毛の州、ミシシッピーでさえ、自由と正義というオアシスに変わることを。私は夢見ている。私の4人の子ども達がある日、肌の色ではなく人物の内容によって判断される国に住むことを。」

このように、平和裡に行われる運動には必ず、聞く人の想像力を建設的な方向に導く言葉があります。「もし黒人と白人が力を合わせたら、何ができるだろう」そんな希望に満ちた人々の瞳の輝きが、上のムービーからも感じられるのではないでしょうか?

今回の事件で使われ続けてきた、人々から考える力を奪ってしまう怒りと嘲りに満ちた言葉と比べてみると、その違いは明らかだと思います。

 

行動の力を信じさせてくれる「塩の行進」

ふたつ目が1930年3月12日からマハトマ・ガンディーが行った「塩の行進」。当時、イギリス植民地政府によるインドの統治に不満を持つ活動家たちに「独立運動のトップに立ってほしい」と依頼されたガンディーは悩みます。これまでの経験から、そうした運動は必ず暴力に行きついてしまうことを知っていたからです。それから1ヶ月半悩んだガンディーの答えは…YesでもNoでもなく「私は海岸まで歩いていって、塩を作ろうと思う」というものでした。海岸線目指して歩くガンディーと、その仲間たちの様子が映像で残っていますのでご覧ください。

www.youtube.com

 ご覧の通り、たくさんの人がガンディーについていっているのがわかると思います。しかしなぜ「塩」だったのでしょうか?実は当時、植民地政府はインドの人々が「塩を作る」権利を奪っていて、インドの人々は生活に不可欠な塩ですら、わざわざ植民地政府から買わなければならなかったのです。

当時、字を書ける人も、書けない人も「塩ですら自分の意思で作れない」という状況には共通して腹ただしい思いを抱いていました。いわば塩は、信じている宗教や自分の身分、政治的思惑などを超え、インドの人々が共通して立ち上がれる「お題」だったのです。そこに目をつけたガンディーは、植民地政府への抗議の手段として「一緒に歩く」という、これまた宗教や政治と関係のない、最もシンプルな行為と組み合わせることでインドの万人が「平和的に参加できる」座組みのイベントを考案し、実施したわけです。

その後の話は歴史が証明していることですが、コミュニケーション・デザイナーの端くれとして、この事例は20世紀最高かつ、最善のPRキャンペーンだったと確信しています。

(*ちなみにこの記事の参照元こちらです。是非お読みください!)

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?先人たちが成し遂げたこれらの偉業を見ることで、残念なものを見た皆様の気持ちが、少しでも明るくなったら幸いです。

キング牧師による言葉の力と、ガンディーの行動の力。これらを規範におたがい「よりよく生きる」ための可能性を、アイデアの力で平和的に、皆さんと切り開いていければと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

【ポッドキャスト・アーカイブvol.2】思わず募金したくなる!ユニークな募金マシン(2014年7月19日のブログより)

ポッドキャスト、まだまだ試行錯誤中ですが第2弾、作ってみました。今回はiMovieを使い、音量を少し大きくしてみました。(普通のMacBookでもいろんなことできるんですね・・。)

それはともかく、今回も時を経てなおWow!のあるいいアイデアをご紹介します。ご聴取いただき、ご興味沸きましたらぜひ、併せて元記事もお読みください。

anchor.fm

元記事へのリンクはこちらになります。

wsc.hatenablog.com

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね!

マラソンで社会的課題を訴える

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Photo by Isaac Wendland on Unsplash

明けましておめでとうございます。おかげさまで去年は50の記事を更新することができました。今年は年末に始めたポッドキャストも入れて、少なくとも70〜80記事の更新を目指したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

などと言っているそばから新着情報が途切れがちの新年。2021年1発目の話題として、何かいいネタはないか…と悩みつつ駅伝中継を見ていたときに思い出したのがこのマラソンを活用した事例です。

5年前のものですが、訴えたいメッセージが種目とも関連性があり、効果的な取り組みとなっています。まずはその、紹介ビデオをご覧ください。

vimeo.com

こちらは、水道施設の不備のために毎日村から遠く離れた水場まで歩き、水を汲まないといけないアフリカの女性たちの窮状を訴えるべく「Water for Africa」という団体が行ったソーシャルキャンペーンです。この団体は彼女たちの村に井戸を掘る資金を募るべく、アフリカはガンビア共和国で実際に毎日水を汲んでいる女性をパリマラソンに招聘。いつもの水を汲みに行く格好で前面に「アフリカでは女性たちが毎日、綺麗な水を求めてこの距離を歩いている」、背面に「この距離を縮めるために、ご支援を」という看板を掲げて歩いてもらったのです。

この「飲み水のために毎日、マラソンと同じ距離を歩かなければいけない」という衝撃的な事実は、ランニングウェアで走る市民ランナーの中、水のタンクを乗せて静かに歩く彼女の印象的なビジュアルとともに拡散してメディアを席巻。特設ウェブサイトを通じた募金も集まり結果的に(このビデオが制作された時点で)、合わせて5組の井戸がガンビアの村々に寄付されたそうです。

「アフリカでは毎日、人々が長い距離を歩いて水を汲んでいる」と言われても恵まれた環境にいる我々にはいまいちピンときませんが、そこに「マラソンと同じ距離=42.195キロ」という尺度が入ると途端に「え、そんなに!?」とびっくりしてしまうのが人間心理の面白いところです。(そして”数字の可視化”はこのブログでも以下の過去記事にあるように、有効なアピール方法のひとつです。)

wsc.hatenablog.com

 ただしこの素晴らしいアイデア、過去に類似のアイデアが実施されていた、ということがあり、広告業界の賞などではあまり高い評価が得られませんでした。こちらにその「過去にすでに行われていた」事例の紹介ビデオも置いておきますので、よろしければご確認ください。

www.youtube.com

確かにアイデアは全く同じですが説明が多く、あまり「心が動かない」紹介ビデオになっています。(逆にいうと、冒頭に紹介したビデオは左脳的な説明よりも、ビジュアルの綺麗さや印象的なBGMで見る人の”心を動かす”ことに重きを置いていることがわかります。)伝え方次第で同じような取り組みでもここまで印象が変わるのだ、という部分は我々の学びとして得られる部分だと思います。

また、後者の取り組みは冒頭に比べて実施面でも単純に記者を呼んで、マラソンコースをアフリカの女性に歩かせただけのように見えて、最初の事例に比べてSNS時代の拡散に欠かせない”ビジュアル的な強さ”に欠けるのは否めないな、と思いました(手に持っているペットボトルの意味も彼女自身の給水用なのか、課題の可視化なのか曖昧です)。

ある意味、世界的にSNSが普及する前の2010年の施策と、ある程度普及した後の2015年の施策の力点の違いが浮き彫りになっている、ということなのかな、と思いました。

そして今は2021年。SNSが世界的な情報インフラとして確立した現在はまた、冒頭の企画が実施された5年前とも全く違う環境にあると思います。コア・アイデアの開発や、それを広めるためのPRプランももちろん評価されて然るべきですが、最終的にそれに触れることになる人々の脳裏に”いかに鮮やかに印象付けるか”、という表現部分までトータルに管理して初めて、こういった取り組みは時代を超える強さのあるものになるのです。

(全くの余談ですが、以下のキャンペーンは今見てもコア・アイデアからPRプラン、そしてユニークなミュージックビデオまで全方位的に効果的だな、と思えるソーシャルキャンペーンです。こちらもお時間あれば、是非チェックしてみてください。) 

wsc.hatenablog.com

いやぁ、アイデアってほんとうにいいもんですね。

それでは皆さん今年も、どうぞよろしくお願いいたします!

ポッドキャスト始めました!

いつもご愛読ありがとうございます!2014年に産声を上げたこのブログも(途中なが〜〜〜い、お休みをいただいておりましたが…)6年経ち、今でも全然通用する、素晴らしいアイデアが過去に埋もれてしまうのはもったいない!ということで恥ずかしながら、ブログの過去記事を短く伝えるポッドキャストを始めさせていただきました。

第1回目はこのブログの第1回目でもある、2014年7月12日にアップした記事を2分に短くまとめて紹介しております。まだ声のキャラが固まってない(汗)など、改善点は山盛りですがぜひ、物は試しに以下からご拝聴いただけると幸いです!

anchor.fm

 ちなみにこのポッドキャストのネタ元は以下の記事になります。

wsc.hatenablog.com

 ポッドキャストも”無理のない範囲”で週一更新ができればと考えております。皆さま引き続きどうぞ、よろしくお願いいたします。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね!

2021年はアウトドアがもっと楽しめますように!という願いを込めて

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Photo by Gavin Allanwood on Unsplash

2020年はもう耳にタコができて聴きたくもない事象により、思うように外に出れなかった人がほとんどではなかったかと思います。来年は皆様が外に出て、思い思いの活動ができますように!という願いを込めまして、今年最後の記事はソーシャルグッドな「アウトドア広告(屋外広告)」の事例2つをご紹介します。

最初はこちら。耳にタコができて聴きたくもない事象により、一時休業を余儀なくされたバーを支援するために、アルゼンチンのハイネケンが行った素晴らしいアイデアです。www.youtube.com

ハイネケンは、彼らにとって大事なお客様であるバーの営業をサポートするため、アウトドア広告をビルボードなどに出す代わりに、一時休業中の「バーのシャッター」を広告媒体として活用。その「広告出稿料」を運転資金に困っているバーの経営者に支払うことで、彼らの経営をサポートしたそうです。

ちなみに”シャッター広告”のメッセージを意訳すると「今日はハイネケンの広告を見てください。休業明けは、このバーでハイネケンを楽しんでね!」という感じでしょうか。

いくらビルボードに広告を出しても、ビールが飲まれる場所であるバーが閉まっていては意味がありません。彼らのビジネスを助けると同時に、広告効果も(こうして話題になることで)きちんとキープするという、本当に賢いアイデアだなぁ、と感心しました。もう諸葛孔明レベル。

そしてもうひとつ。だいぶ古いのですが、この前見返して改めてすごいアイデアだなぁ、と思ったのでシェアさせていただきます

今から10年ほど前。アフリカの国ジンバブエではムガベ氏による長期政権下、汚職が蔓延し、大統領がお金で権力を維持しようと紙幣を刷りまくった結果、ハイパーインフレが起きていました。権力のチェック機能であるマスメディアも弾圧を受け、現地の新聞「ジンバブエアン」もその購買価格に対して不当に高い税金を課せられるなど、存続の危機に立たされていました。

そこで、世界にジンバブエの窮状を知らせ、サポートを得るためにこの新聞社が行ったキャンペーンがこちらです。(ビデオが4分半と長いので、お忙しい方は2分50秒ぐらいからご覧いただければと思います。)

www.youtube.com

そうです。なんと彼らは、ハイパーインフレで紙屑同然になったジンバブエの現地紙幣を広告メディアとして活用。ビルボードいっぱいに紙幣を張り、その上に「ムガベのおかげで、お金を壁紙のように使えるようになりました」とキャッチコピーを載せて掲出したり、「紙に印刷するより、紙幣に印刷した方が安上がり」というキャッチコピーとともに、お札を繋いで作ったポスターを近隣国の街中に貼るなど、様々な施策を実施しました。結果、ムガベ政権の崩壊は2017年のクーデターを待たなければならなかったものの、少なくとも新聞の売り上げは回復した*そうです(*2009年時点の情報です)

普通の国では価値があり、奪い合うことさえあるお金をあえて「粗末に扱う」ことで生じるギャップで海外の人々の耳目を惹き、ジンバブエが抱える大問題を認知させる、というのはこれまた天才的なアイデアだと思いました。(紙屑のような価値の紙幣を使うなら、低予算で制作できますしね!)

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、良いお年を!

また来年〜。