世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

クルマの安全性は男性優位だった!ボルボが社会の盲点をついた衝撃的なキャンペーン【カンヌ2019受賞作より】

UnsplashのChris Martinが撮影した写真

🏷️ クルマの安全は、男性の体を基準にデザインされていた

長年このブログをやっていると、時折「あれ、なんでこんなすごいアイデアを紹介してこなかったんだろう」と思うことがあります。もちろんその時の仕事の状況や精神状況など、いろいろな要因で紹介しそびれることはあるのですが、何より興味深いのが「当時の自分では、その重要性を感じることができなかった」という現象です。

今回ご紹介するVolvoによる「The E.V.Aイニシアチブ」は自分にとってまさにその現象が起きた取り組みで、コロナ前にこれを見たときは、何か凄そうだけど改めて掘り下げるほどでは…と考えていました。

しかし、コロナ中に以下の本を読んで、この社会に気づかずに組み込まれている性別による不平等を知った後にこの取り組みを見ると、その素晴らしさがストンと腹落ちし、むしろ取り上げないのは怠慢だ、と思うようにすらなりました。

(↓ちなみに”以下の本”はこちらです)

www.kawade.co.jp

ということで今回は、ボルボがコロナ前に始めた「The E.V.Aイニシアチブ」についてご紹介します。大部分のクルマは、男性の体をベースにしたダミー人形で安全性を測って開発されてきたために、女性の安全が蔑ろにされていた・・という出だしから衝撃的です。

こちら「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2019のクリエーティブ・ストラテジー部門でグランプリ、クリエーティブ・データ部門で金賞を獲得するなど、かなり高い評価を獲得したキャンペーンとなります。それでは以下の解説ムービーをご覧ください。

🪧「The E.V.A. Initiative / The E.V.Aイニシアチブ」

youtu.be【雑和訳】ナレーション:女性は、交通事故により負傷をする可能性が76%も高い / そして、死亡する可能性も17%高い / なぜかって? / それは、ほとんどの自動車が男性のダミー人形でクラッシュテストを行なっているから /

しかし、ボルボは違います / ボルボは1970年から現実世界での(事故の)データを集めてきました / 衝突時、人体や、性別の区別なしになにが起きているのかを学ぶために… / 私たちは、すべてのクルマが女性にもっと安全なものになるために、これらのデータが活用できるとしたらどうなるだろう、と考えました /

紹介します、”E.V.A(Equal Vehicles for All = あらゆる人に平等な乗り物を )イニチアチブ” / 私たちは、これらのあらゆる調査結果を収集 / デジタルライブラリ上で誰にでも活用できるように公開しました /

デジタルライブラリには43.000件の衝突事故や、7,200人の当事者に関する情報を格納 / これにより初めて、誰もが調査結果をダウンロードできるようになり / これらのデータがどのようにボルボのイノベーティブな安全機構の数々に活かされたのかを知ることができるようになりました /

データをもっと人間らしく感じさせるために、私たちは数字に顔を持たせ(訳註:数字により人体を作り)、この不正義な状況がどのように女性たちにパーソナルな、または直接的な影響を与えているかを伝えました / 文字要素:”妊婦は、首の骨折に見舞われた 年齢-31歳, 速度-時速60キロ, 事故内容-側面衝突 " /  文字要素:”高齢の女性は、致命傷を負った 年齢-72歳, 速度-時速49キロ, 事故内容-正面衝突 " /

ナレーション:E.V.Aはジャーナリストやライバルメーカーが集まるライブストリーミングのイベントでも紹介された / ボルボ・カー・セーフティーセンターのシニア・テクニカルスペシャリスト、ロッタ・ジェイコブセン博士 「このデータは、私たちが(事故の)メカニズムを理解する手助けになりますし、あらゆる人にとって重要なものです。私たちは、同じ自動車業界の他のメーカーたちにも同じような取り組みを行なってほしいと考えています」/

ナレーション:そして、私たちは多種多様なメディアを活用し、グローバルなキャンペーンを行いました / このイニシアチブは瞬く間にミームとなり / そして、交通安全に対する(男女の)平等性についての国際的な議論を巻き起こしました / TVの女性有識者「…彼らはデータを自社のために活用するだけでなく、データや分析結果をウェブサイト上に公開しました。全ての自動車メーカーも見れるわけです。これによって路上における、特に女性の安全性が改善されると思われます」 /

ザ・サンデータイムズ ”ボルボがジェンダーにおける事故時の不平等を少なくする” / デイリーメール紙 "E.V.Aプロジェクト、自動車メーカーのリサーチデータを開放 /

文字要素:ニュース・アウトレット -457, アーンド・メディアリーチ -317,000,000, ソーシャル・メディア・インプレッション -120,000,000, フィルム・ビュー -12,000,000 / データベースのダウンロード数は11,000を超え、今も上昇している /

ナレーション:何より重要なことはこの試みが、すべての車の安全性を向上させている、ということです。…すべての人々の / タイトル:”E.V.Aイニチアチブ” / ロゴ:ボルボ

🏷️ データをシェアする、という企業ならではの”デモ活動”

いかがでしたでしょうか?

クルマの安全性に関する「女性の不平等」を外から訴える場合、通常その活動は消費者団体によるデモなど、間接的なものになりがちです。

そういった外部の声を待つのではなく、ボルボは今回、自分から表玄関に出てきて、さらにデータをさらけ出すことで業界全体の問題を明らかにする、という行動に出ました。

The E.V.Aイニシアチブはある意味、ボルボが自動車業界全体に向けて行なったデモ活動だともいえます。

20世紀から自社のクルマの高い安全性を謳ってきたVolvoならではのアクションだともいえますが、その裏側には1970年代から事故のデータを地道に取り続けていた、という事実があったことも忘れてはいけないと思います。

最後に、解説ムービーでも紹介されていた「数字に顔を持たせたムービー」を以下に置いておきますね。悲しみや怒りから希望へと、ボルボへの共感とともに心が揺り動かされる、美しく、そして見事なムービーです。

youtu.be

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!