世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

女性が避妊薬を服用する権利を広げた、ホンジュラス発のキャンペーン【カンヌ2022受賞作より】

Photo by Becca Tapert on Unsplash

避妊の手段が制限されている日本でも参考になる発想

この世に完璧な社会など存在せず、どのコミュニティにも進んでいる部分と、遅れている部分が存在します。日本の場合、避妊にまつわる分野が世界的に見て遅れている部分の一つだといえるでしょう。

以下はNHKこちらのサイトからの抜粋ですが、国連の発表によると日本で行われている避妊方法の75%が男性用コンドームとなっており、女性が服用するピルが6%、導入が極端に遅れている子宮内避妊具がわずか1%。一方欧米ではピルが31%で男性用コンドームが25%と逆転していて、子宮内避妊具を使っている人も14%と、日本とは大きな違いを見せています。

見方を変えれば「男性用コンドーム一本足打法」の日本は、避妊において男性の意思に委ねられてしまっている部分が極端に大きいともいえ、女性に自身のキャリアをデザインする権利を保障し、彼女たちの社会進出を促進する上での障害になっています。

今回ご紹介する事例は、そんな日本でも入手が可能なアフターピル(性行為の直後に有効な緊急避妊薬)ですら使う権利が認められていない、ホンジュラスの女性たちの権利を守るべく実施されたキャンペーンです。

ちなみにこの取り組み、世界的クリエイティビィの祭典・カンヌライオンズ2022にて、女性の権利拡張を促進する取り組みを評価するグラス部門やヘルス&ウェルネス部門、ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門にて金賞を獲得しています。詳しくはぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「Morning After Island / 翌朝の島」

www.youtube.com

【雑和訳】聖職者と見られる男性「アフターピルの服用は中絶と同じです」女性「この国では、アフターピルの販売が禁じられています」他の女性「アフターピルは、薬による中絶です」/

文字スーパー: ”ホンジュラスは法的にアフターピルを禁止しているラテンアメリカ唯一の国である -ニューヨークタイムス”/ ”4人に1人が18歳になる前に母親になっている -El Pais”/ "アフターピルを服用した女性は最高で懲役6年の実刑に処される -CNN"/

文字スーパー: 我々には手段がなかった/ そこで、自分たち自身で手段を作ることにした/

女性の権利提唱団体 GE PAE創立/ Morning After Island(翌朝の島)/

女性ニュースキャスター「権利の欠落を受け、ホンジュラスの女性たちが島を創りました」/ 男性ニュースキャスター 「”翌朝の島”です」/ 女性ニュースキャスター「今や女性たちは、公海上の安全な場所に行けば良いのです」/

文字スーパー:我々は、ホンジュラスによる管轄地域の外に島を創った/ 公海上に/ 我々は、毎週岸から出港した/ アフターピルを必要とする女性たちが/ 起訴される恐れなく、それを服用できるようにすることで/ 我々は300万人の女性たちに選択肢を与えたのだ/

文字スーパー: ”この海での抗議活動は、法の撤回を求めている -CNN"/ ”ホンジュラスの女性たちは抑圧に立ち向かっている -Lopez -dorigaデジタル"/ ”ホンジュラスの女性たちは大統領に法の撤回を求めている -Excelsior” /

(*この後、この取り組みを取り上げたメディアのロゴやSNS上での盛り上がりが映し出される)

文字スーパー: オーガニック・インプレッション2億6,800万/ オーガニック・リーチ1億8,000万/ 集まった署名200万/ 

文字スーパー: そして、我々の声は政府に届いた/ 2022年3月8日/ 大統領は公式に我々の訪問を受け入れた/ そして、アフターピルを合法化する新しい法律の起草を誓った/ ホンジュラス大統領シオマラ・カストロホンジュラスの女性の皆様、私はあなたたちを見捨てません。私はあなたたちの権利を守ります。信じてください!」

文字スーパー: Morning After Island(翌朝の島)

日本でも女性たちの現状打破への熱は高まっている

いかがでしたでしょうか?この企画はおそらくPRが主な目的で、実際にこの島に立ってアフターピルを服用できた女性は一握りだとは思いますが、それでも宗教やメディアの価値観の押し付けにより避妊の道を絶たれた状態で、望まないセックスや妊娠を強いられてきた女性たちにとって、こういう取り組みが報じられること自体が一筋の光になったかと思います。

一方、日本でもこの超弱小ブログ(汗)のアクセス数がポン、と上がるのはジェンダー平等を取り上げた時が多いですし、国内のウェビナーでも避妊を含む、女性を取り巻く問題を扱ったときの女性参加者の質問や、チャットボックスでの議論にかなりの熱を感じます。

日本は今あるもののドラスティックな破壊をよしとせず、規則を守ることを肯定的に捉える傾向が特に強い社会だと思います。そして誰も褒められぬよう、責められぬよう、時間をかけて調整していく社会です。

なので今回のこのアイデアのように、法律を逆手に取ったようなアイデアで短期間に国全体を大きく動かす、というやり方は支持を得にくい部分も大きいことでしょう。

ただし、確実にこれらの問題へのマグマは日本でも溜まってきています。

そこで例えば、今回ご紹介した企画の発想を参考に、それを日本社会に馴染むように「翻訳」した場合、どのようなアイデアが考えられるのか?

時間をかけて、女性が当たり前のように活躍できる社会へと日本の人々を導くためには…?

もちろんそんな悠長に時間をかけていられない、という人々も勇気ある者として讃えられるべきだと思いますが、あれやこれや、そんなふうに多様な皆様の施策のアイデアの幅を広げるきっかけとしてこのブログがお役に立てれば、それに勝る喜びはございません。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

おまけ:最後に「社会の特性や文脈に合わせた変革促進キャンペーン」として私が20世紀の最高傑作として崇めるマハトマ・ガンジーさんによる「塩の行進」について紹介した過去記事にリンクを貼っておきます。これこそ神だ・・・。

wsc.hatenablog.com