世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

本気かポーズか?世界的アダルトサイトが仕掛けた「サステナブルな暮らし」啓蒙キャンペーン

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Photo by krakenimages on Unsplash

世界各国の首脳が本腰を入れ始めたからでしょうか、昨年あたりから様々な企業が「サステナビリティ(sustainability/ 持続可能性)」、またはSDGs(Sustainable Development Goal/ 持続可能な開発目標)についての取り組みを競うようにアピールし始めています。今まで自分たちが依拠していたビジネスモデルを革新し、本気でサステナブルなビジネスを推進しようという企業から、単にPRの手段としてこれまでやってきたことを「サステナブルだ」と主張する企業までその幅は様々ですが、今回は世界有数のアダルト動画サイト「Pornhub」が始めた、人気のセクシー女優たちがサステナビリティを啓蒙するキャンペーンをご紹介します。

YouTubeにそのプロモーション動画がシェアされていたので見たのですが、ちゃんと服を着たセクシー女優がキッチンや、車の上、シャワー室の中などで少し色っぽく「私たちは車に乗り過ぎているし、環境に負荷の高い物ばかりを食べている、水も使い過ぎているし、ゴミだって捨て過ぎている。そんな暮らしはセクシーじゃない」とストレートに語りかけ、セックスとサステナビリティを掛け合わせた「セックステナビリティ」という概念をアピールする内容でした。

仕組みとしてはPornhub内の特設チャンネルにある、様々なセクシー女優がサステナビリティについての情報を伝えるキャンペーン動画を見るたびに10セントが気候変動に関する取り組みに寄付される、というすこぶるシンプルなもので、プロモーション動画自体も正直、そんなに過激な内容でもないな、と思ったのですが今朝確認したら年齢制限ががかかっていました。(上記の内容以上でも以下でもないムービーですが、YouTubeへのリンクを張っておきますのでご興味がある方はこちらをご覧ください↓)

www.youtube.com

しかしながら実はこのPornhubというサイト、未成年の動画など、不適切な動画の存在を糾弾されて先月、大量の動画を削除したばかりでした↓

news.yahoo.co.jp

冒頭に申し上げた「よりサステナブルな世界を実現するための国際的目標」SDGsには17のゴールがあり、そのゴールの中には今回、このサイトが推し進めている「気候変動に具体的な対策を(ゴール13)」の他に「ジェンダー平等を実現しよう(ゴール5)」があります。

以下は私の私見になりますが、彼らは性、つまりジェンダーそのものを商品として取り扱う産業にいます。(その是非はここでは置いておくとして、)さらにはすでに上記のような問題を起こしてしまっている、ということを考えた場合、まずは気候変動よりも「ジェンダー平等」の促進・実現のために例えば「視聴できるビデオの基準を厳格化する」、「視聴によるドネーションを、貧困国における女性の経済的自立に充てる」などのアクションをとることがより適切だし、人々の理解も得やすいのではないか、と疑問に思いました。

現状のように、彼らが原因の一部となっている社会的課題(性的搾取)と、彼らのサステナビリティ・アピールの方向性(気候変動の抑制)がずれたままだと「イメージ悪化を誤魔化すための単純なPR目的では?」と思われても仕方がないと思います。

そして実は、このように「本業の改革をともわない」サステナビリティ・アピールは皆さんのお仕事がどの業界に属していようと、”SDGsウォッシュ(見せかけのSDGs活動)”として炎上のきっかけになりうる、ということを覚えておいていただくと、企業にも、地球にもウィン-ウィンなサステナブル・アクションの実現にまた一歩、近づくことができると思います。

いやぁ、アイデアって本当にイイもんですね。それでは皆さん、また来週!