世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

【名作探訪 その4】家庭内暴力の発生源 - スタジアムで女性たちが立ち上がる

UnsplashのNicholas Greenが撮影した写真

サッカー観戦中の飲酒が引き金となる南アフリカの家庭内暴力

名作探訪も第4弾となりました。意外とまだまだ紹介していない過去の名キャンペーンがありそうなので、このまま探訪を5〜6回続ければ6月下旬に発表されるカンヌ2023の受賞作紹介にバトンを繋げられるのではないか…と期待しております。

さて今回は自社調査により「南アフリカでは(家での)サッカー観戦中の飲酒がきっかけとなり、試合終了後に家庭内暴力の件数が飛躍的に上昇する」という事実に気づいたビールメーカーがそれを真摯に受け止め、解決のために取り組んだ素晴らしいキャンペーンについてです。

この取り組みは2018年のカンヌライオンズ、Radio & Audio部門で見事グランプリを獲得するなど高い評価を得ました。それでは解説ムービーをご覧ください。

「Soccer Song For Change / 変化のためのサッカーソング」

youtu.be

【雑和訳】文字要素:南アフリカの男性の40%が、日常的にパートナーに暴力を振るっている(南アフリカ医学調査カウンシル2017)/ 各種メディアのレポーターの声:”南アフリカでは、女性と子どもに対する暴力が…” / "若い女性に起きたおぞましい出来事です…" / "恐ろしい事件にスポットライトが…" / "レイプや家庭内暴力が…" 等々 /

文字要素:この数字は、サッカーの試合後に劇的に増加する / 私たちの調査によると、アルコールの摂取がその一番の引き金だ (ABインベブ リサーチ&インサイトより) / カーリング黒ラベル マーケティング担当副プレジデント アンドレア・クェイ「私たちは明確すぎるほどに、アルコールを過剰に摂取する男性と、女性を虐待してしまう男性の間に相関関係があることを認識しています」 /

文字要素:カーリング黒ラベルは、シーズン中、最も大きなサッカーイベントのスポンサー /  カーリング黒ラベルプレゼンツ "変化のためのサッカーソング" / (南アフリカの)妻や娘たちが、一曲の歌のみを武器に、私たちのメッセージを伝えた / しかも、最も大きなサッカーのイベントで /

解説者”このダービーでの成功が、南アフリカのサッカー界においては何よりも大切なことです。私たちのライブ中継にようこそ!” / 文字要素:彼女たちは、南アフリカ国家代表サッカーチームの歌を歌った / そしてその途中で、歌詞を切り替えた /

歌詞 ♪愛しいあなたよ 過ちはもう繰り返さないで / ♪これで結局喧嘩になったら、彼はどんな言い訳をするのだろう / ♪私はもうウンザリなのよ / ♪本当の男だったらそんなことはしない! / (歓声)/

電光掲示板の文字要素 ”女性への虐待に言いわけの余地なし” / (SNSの反響を背景に)男性の声 ”1日に3人の死者。そんなことが起こるべきじゃないし、これは世界のどこで起きようが(同じように深刻な)問題だ” /

文字要素:私たちのこの取り組みは、2010年のW杯開幕式よりも多くの人々にリーチした / そして私たちは、メッセージを国中の男性たちの手に持たせた / (缶に”言いわけの余地なし”の文字がデザインされたカーリングの特製黒ラベル缶が工場で作られる様子が映し出される) /

文字要素:南アフリカの人々は、私たちのメッセージをストリートにも展開した / 運動家「女性と子供達を助け、守りましょう!」/ 女性の声「これは、男性たちのためのキャンペーンではありません。これは社会のための運動なのです」/

文字要素:ブランドへの言及は823%増加 / ブランドへの好感度は86%上昇した / トータルのリーチは4500万を記録 / このキャンペーンは今、5つの国でも展開を始めている一方 / 国会では、GBV(ジェンダーに基づく暴力)に対する法案化について議論が進んでいる /

カーリング黒ラベルビール #言いわけの余地なし

自分たちの商品の”負の側面”に真摯に向き合う姿勢が評価

いかがでしたでしょうか?誰に対しても無害に生きることが難しいように、ビールであれなんであれ、自社の商品やサービスが100%他の人々に対して無害であることは難しいと思います。

そして今の時代、ある組織体にとって「不都合な真実」はSNSなどの発達により、都合よく隠蔽することがとても難しい時代になりました。

自分たちの商品やサービスが社会に与えている負の側面をしっかり受け止め、それを解決するためのソリューションアイデアを開発〜実施し、その結果を嘘偽りなく発表する。そして、一度始めたらその解決にずっとコミットし続ける。

そんな誠実な態度がこれまでよりもより一層、あらゆる企業やブランドに求められていますし、今回の取り組みもまた、その教科書的事例になると思います。

 

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!