世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

教育を肩代わりすることで、インドの女の子たちに希望を与えた生理用品のキャンペーン【カンヌ2022より】

UnsplashのLoren Josephが撮影した写真

女の子たちの活躍を妨げる「恥」の意識

生理の話題をタブー視するインドでは毎年、2,300万人もの女の子が初潮の時期に、適切な教育を受けてないために学校をドロップアウトしてしまうようです。

生理はそもそも女性の体が子供を産むために必要な、祝福されるべき変化です。が、何も知らずに始まってしまった場合、「自分だけでは?」「自分の体がおかしいのでは?」と自分を責めてしまい、恥の意識から学校へ行かなくなってしまう…。

今回はそんなおかしな現状を改めるべく、P&Gの生理用品ウィスパーが関連団体と共に取り組んだ取り組みをご紹介します。

ちなみにこちら「世界のクリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2022のSDGs部門でグランプリを獲得したキャンペーンになります。それでは以下の紹介ビデオをご覧ください。

「The Missing Chapter / 失われたチャプター」

youtu.be

【雑和訳】

ナレーション:インドでは恐るべきことに毎年、2,300万人の少女が初潮の時期に学校をドロップアウトしてしまっている。/

生徒のAlishaさん「もう死ぬかと思いました」/ 生徒のLeelaさん「大量の血が出てきて、何が起きたのかわかりませんでした」/ 生徒のPayalさん「家でも誰もこのことについて話してくれませんでした。学校の教科書にも載ってないのです」/ 生徒のZainabさん「恥ずかしくて学校に戻れなくなってしまいました」

ナレーション:生理。それはインド社会ではタブーとされている話題のため、母親でさえそのことについて話しません。少女たちがそれについて学びうる唯一の場所が、学校です。しかし同様のタブーにつき、国の教育委員会でさえ、生理についてのチャプターを教科書に加えてきませんでした。/

紹介します。“失われたチャプター”。/

P&Gのウィスパーと共に、私たちは学校の少女に向け、生理の背景にある生物学の基礎を教えるチャプターをデザイン。この試みは整理についての啓蒙を広げるべく、使命感に燃える3人の反逆的な少女を主人公にした映像作品により反響を呼び起こした。/

(劇中に出てきた、生理の基本を教える)赤い紙は、私たちの革命のシンボルとなった。数々のニュースメディアがこの失われたチャプターを話題にし、TVではプライムタイムにこのチャプターが読み上げられた。/(テレビで取り上げられた様子がいくつか取り上げられる)/

ナレーション:この活動をインドの奥深くにも伝えるべく、私たちはこのチャプターを28に登る各地の芸術様式と言語でも啓蒙。学校や村の壁面に掲出した。/ インドの人々はこの運動への賛助を、このチャプターを読み上げることで表明。/ ジョニータ・ガンジー(歌手・女性)「より多くの人がこのような教育に触れられれば、生理に関する問題は今より小さくなるはずです」/

ナレーション:これらの声は、国の為政者たちを動かした。/

文字要素:歴史的な決定として、政府は1世紀続いた教育システムを変革させることを決定した。― 失われたチャプターを、教科書に加えることで。/ キャンペーンタイトル: “失われたチャプター” P&Gウィスパー(等)

日本社会にもたくさんある、無意味な「恥」

いかがでしたでしょうか?インドは毎年、実に多様な社会課題を解決するための素晴らしいキャンペーンを繰り広げてくるのですが、よく聞くのが「日本はインドほど社会課題がないから」こういうキャンペーンをあまり見ない、という言葉です。

しかし、それは本当でしょうか?日本でも今なお、さまざまなステレオタイプにより「恥」の感情を押し付けられ、自身の可能性を発揮できない人が驚くほど多くいると思います。

彼・彼女たちが社会から押し付けられてきたこれらの「恥」の背景にある課題を一つ一つ掘り起こし、それを解決しようとしたら、日本にももっともっと、それを後押しするアイデアやソーシャル・キャンペーンが必要なことは明白です。

一人一人が少しずつ我慢して、社会的安定を実現させているのが日本社会の特徴です。進歩よりも安定に重きをおく社会の中で、声を上げたり、アクションを起こすことは、それ自体が「恥」になりかねず、他の社会よりもう少し、勇気が必要なのかもしれません。

しかし、だからこそ。

今ことみんなの心を動かし、行動へと移させるようなアイデアの力がこの国にはより一層、求められているのだと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

 

PS.ちなみに8年前に同じくP&Gの生理用品Alwaysがメキシコの村民たちのために行ったキャンペーン(ライオンズヘルス2015グランプリ受賞作)が、今回取り上げたキャンペーンのインスパイア源なのかな?と思ったので以下にそれを取り上げた過去記事をご紹介しておきます。スケールで比べたら小さな取り組みなのですが、見返してみるとやはりこちらも素晴らしいです。

wsc.hatenablog.com