今回と次回で2021年のベストキャンペーンをご紹介
今年はこのブログにたくさんの記事を書きました。
そこで!皆様に記事のひとつひとつを見直していただくのも大変だろうと思いますので、その中でも特に印象的だったアイデアを今回と次回の2回で合計10個、ご紹介させていただきます。
選考基準は「革新性」「スケール」「読者の反響」
最初はサラッとまとめて今年を締めるつもりだったのですが、甲乙つけ難いものが多く、熟考の末選考基準を上記の3つに設定しました。それでも悩んだ時は私の好みで決めました(すみません!)。では、今回は第6位から10位までを発表します。それぞれの詳細は各記事に置いたリンクからご覧ください。それではドラムロール!
第6位 「#Steal our Staff(#我々の社員を盗んで)」
スタッフの80%が何らかのハンディキャップを持つ人たちで構成されているイギリスの石鹸メーカー、Becoが障がい者の雇用を広めるために行った挑戦的で、でも人間の暖かさが溢れているキャンペーンです。
私はこの作品が大好きで最初は2位に入れていたのですが、選考基準のひとつに置いた「スケール」的には第1位〜5位のものに比べれば小さいということで、僅差の6位にしました。商品パッケージを履歴書にしてしまうことで、差別化しにくいカテゴリーの代表であるトイレタリーの購入体験を「障がい者たちへの応援活動」に変えてしまったところに、この取り組みの素晴らしさがあります。
第7位 「Raising Profile(プロフィールをより良くする)」
新型コロナウイルスの影響により街から人が減り、創刊以来の危機に瀕していた雑誌ビッグ・イシュー。そのピンチを解決するだけでなく、なんと恵まれない境遇の人たちの未来へのチャンスをも広げてしまった、そんなポジティブな姿勢が大好きなキャンペーンです。
こちらはリンクトインの活用が見事であることや、コロナによる社会変化に鮮やかに対応した点、そして、ターゲットであるホームレスの人たちに、このキャンペーンが終わっても生き続けるスキルを与えたところがミソだな、と思いました。
第8位 「The Bread Exam(パンこねテスト)」
女性たちが自身の体について語ることに対してタブー視をする文化的・社会的な風潮があるレバノンでは、結果として乳がんについての知識が広まらず、女性たちがその初期段階を見逃してしまうことが多いそうです。そこでこのキャンペーンでは、乳がんの初期段階を発見する方法を、パンをこねるレシピの中に織り交ぜてレバノンの女性たちに伝えました。
社会的なタブーや制約を逆手に取る、という点ではこのアイデアは10選の中でもピカイチだと思います。さらに「今月、パンこねた?」という日常的な言葉を「今月、乳がんのチェックした?」という意味の暗喩として流通させたという点も天才的だと思いました。
第9位 「Hellmann’s Island(ヘルマンズ島)」
第9位はマヨネーズなどの調味料を販売しているブランドHellmann'sがどうぶつの森を使い、クリスマスに恵まれない人々のために行った素敵なキャペーンです。
ゲームの中の「カブが腐る」という現象に着目し、それを現実世界でのドネーションとつなげたところが素晴らしいのはもちろん、どうぶつの森を使うことでシリアスになりすぎず、プレイヤーたちに行動を促したところがうまいなぁ、と思いました。
第10位 「Vivaldi's For Seasons(ヴィヴァルディの”季節のために”」
そして最後は、気候変動のおぞましさをヴァイヴァルディの「四季」で表現したこのアイデア。1700年台初頭に作られたこの傑作の構成楽曲である「春」「夏」「秋」「冬」を、それぞれ現在の気候に合わせて編曲したらこうなる…というものです。
アイデアとしては相当ユニークで、読者の皆様の反応も大きかったこの取り組み、5年前ぐらいまでであればもっと高い評価になっていたことと思います。ただ、今の世界の関心はアイデアひとつひとつの面白さよりも、これらの取り組みを行った結果、社会にどんな”実質的変化”が起こせたのか、に移っています。そこの部分の薄さが、今回このアイデアを10位に置かせていただいた理由です。
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「今年の10選」、後半の次回は社会に与えた「実質的変化」のインパクトが比較的大きなアイデアをご紹介させていただきます。
いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね!それでは皆さん、また2〜3日後に!