世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

乳がん予防を、イスラム社会でタブーに触れずに広めたアイデア

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Photo by Mihai Surdu on Unsplash

すっかり秋めいてまいりました。6月末にほぼ完全オンラインでおこなわれたクリエイティビティの世界的祭典カンヌ・ライオンズからたった2ヶ月半の間にオリンピック・パラリンピックが行われ、身の回りでもワクチン接種が進み、日本の首相も(再び)変わることが内定するなど、世界は変わり続けます。

ですが、こちらのブログはブレずに今回もカンヌライオンズの受賞作品を紹介し続けたいと思います。今回はPR部門でグランプリを獲得したレバノンでの取り組みです。

レバノンでは、乳がんの初期段階での発見が難しいそうです。その背景には、女性たちが自身の体について語ることに対してタブー視をする文化的・社会的な風潮があります。

結果として、どのように(乳がんの初期発見には欠かせない)セルフチェックをするのかを女性たちが知りたくても、語ることも、学ぶこともできません。

どうすれば、タブーとされる体について語ることなしに、レバノンの女性たちに乳がんのセルフチェックを啓蒙し、初期段階での発見を促すことができるのか?

そこである「食べ物」の作り方に目をつけ、課題の解決に結びつけたアイデアがこちらになります。以下の紹介ビデオをご覧ください。

www.youtube.com

【超雑和訳】[レバノンでは、女性が体について語ることについてタブー視する風潮があるため、乳がん患者はしばしば、末期にならないと判明しない状況にある]「我々の社会では、タブーだとか、気に触ることとみなされてしまいます」「まだ公に話すべき話題とはなっていません」「セルフチェックをどうするのか、誰も話してくれないのでわからないんです」[このタブーを打ち破るために][我々は、我々の食伝統を活用することにした][そして、女性たちにセルフチェックの方法を伝授するのだ][…パンづくりを通じて ][AUBMC、Spinneyスーパーマーケット、レバノン乳がん協会提供]["パンづくりチェック"]「こんにちは、アリです」「みなさんが毎月パンを焼いてくれることを願ってお届けしています」「今回は、最も体に良いレシピをご紹介します」[このレシピは、人気の伝統料理のパン焼き職人、ウム・アリさんと産婦人科医が開発][パンづくりと、乳がんのセルフチェックの手の動きの類似性に着目し、乳がんのセルフチェックの方法を、生地をこねながらデモンストレーションしたのだ][胸について見せることも、語ることもせずに][こうすることで、このチュートリアルはソーシャル・メディアで公にシェアすることが容易になった][(*スマホ内の字幕)今月はパンを焼きましたか?][大手テレビ局では、このレシピの真の意図が乳がんのチェックであることを発表][「今月、パン焼いた?」はこれまで語られてこなかった乳がんの話題を指す言葉として、女性たちの間の隠語となった ][世界中の料理人インフルエンサーもセルフチェックのためのオリジナルレシピを開発](自分なりのレシピを公開するUAE/トルコ/ドイツ/UKの料理人インフルエンサーの様子が映る)[このコンテンツは、伝統的コミュニティに住む女性たちがタブーを克服するきっかけとなった][レシピのQRコードは、Spinneyブランドの小麦粉のパッケージに印刷され流通][パンの包み紙にも印刷され、市場でも実演された][もちろん、Sipnneyの店舗でも][この取り組みは、レバノンの大統領や国際的なメディアから賞賛を受けた(*いくつかのメディアのコメント入る)][このレシピは1億1200万人にリーチ][86%のアラブ地域の女性たちが、このレシピはセルフチェックを思い出させてくれるだろうと答えた][タブーを伝統と融合させることで、”パンづくりチェック”は乳がんについて語り合うための言葉となった] [ ただ、まだ一つだけ確認すべきことがある]["あなたは今月、パンを焼きましたか?"]

いかがでしたでしょうか?このアイデア乳がんという体についての問題なのに、肝心の体について物が言えないという、いわば完全な「無理ゲー」状況を一発で鮮やかに解決した、というところがカンヌライオンズのグランプリ受賞作たる所以なのかな、と思います。

そしてまたこのアイデアの根底にある「理不尽な現状に頑なに争うのではなく、むしろその潮目を合気道のように活用し、社会を無理なく、自然により良い方向へとひっくり返していく」という考え方は、分断したまま各々が言いたいことをソーシャルメディアに投げつけて憂さを晴らしているだけの、いわば「全員が少しずつ負けている」状況よりは建設的なのかもしれないな、と思いました。

 

ちなみにこのアイデアに関連して一言:「パンの生地に着目した」という点で、だいぶ前のアイデアではありますが、南アフリカハンバーガーチェーンWIMPYが目の不自由な人たちへのメッセージを、ハンバーガーのバンズについたゴマを点字にして伝えたこちらのアイデアを思い出しました。いつか取り上げたい!と思ったまま10年放置していたようなので、罪滅ぼしにまずは以下に紹介ビデオを置いておきます。音楽の使い方など、ボケーと見るだけでも気持ちが明るくなる映像なので、お時間あればこちらもぜひご覧ください。(機会があればいつかまた、こちらも雑和訳込みで解剖してみたいと思います。)

www.youtube.com

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。

それではみなさん、また来週!