世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

アリかナシか?マレーシアで賛否を巻き起こした生理用品ブランドのチャレンジ

Photo by Amy Shamblen on Unsplash

去年のカンヌで話題になった、Bodyformがまたやった

皆さん、去年6月に行われた「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズを席巻した”子宮の物語”で話題になったBodyformという生理用品ブランドはご存知でしょうか?

wsc.hatenablog.com

こちら、生理や女性器に関するタブーに挑み、それらを破壊していくことで女性の活躍を応援することで知られる世界的ブランドなのですが、マレーシアではLibresseという名前で展開しています。

イスラム教徒が多く、女性が暮らしていく上で制約を感じることも西洋と比べ多いとされるマレーシア。ここでも彼らは、東南アジア地域の伝統的衣装「ケバヤ」の柄を活用した勇敢な取り組みを行いました。

多様な文化が共存するアジアならではの、各地の伝統や風習に根ざしたソリューションを評価するAdfest2022のLotus Roots部門と、アジア太平洋地域のクリエイティビティの祭典、スパイクスアジアのヘルスケア部門グランプリを相次いで受賞した、今年のアジアを代表するアイデアです。

ぜひ、以下の解説ムービーをご覧ください。

「VULBA KEBAYA: 女性器のケバヤ」

youtu.be

【雑和訳】「国中で話題になった花だ」(Jinnyboy/ マレーシアのYouTubeクリエイター)「人々を勇気づけてくれる美しくて、ゴージャスな花です」(Sivananthi Thanenthiran/ Arrowおよび国連のエグゼクティブ・ディレクター)

ナレーション:マレーシア社会では女性器について根深い偏見があります。(背景に“マレーシア女性の50%が自身の女性器について決して話さないと答えた”、“3人に1人が自分の女性器の形に引け目を感じている”、“56%が生理について話すなら、いじめられた方がマシだと答えた”などの情報が入る。)

その結果、現実の世界にさまざまな問題を引き起こしています。(背景に“マレーシアは女性器切除を終わらせるべき”、“17歳の高校生がマレーシアのレイプ・カルチャーを暴露”などのニュース記事の見出しが入る。)

私たちはタブーを破壊するために、女性たちに自分たちの性器についてもっと話してもらう必要があると考えました。自分自身の体について自主的に語ることなしに、人生に自立をもたらすことはできないからです。

*このキャンペーンのタイトルが入る→ “Libresse提供 VULVA KEBAYA(女性器のケバヤ)”

私たちはマレーシアの女性たちにかつて、自身が持つ性についてインスパイアを与えた現地のファッション様式“NYONYA KEBAYA”に着目(1920年台のNyonyaケバヤの画像が入る)。地方に住む女性の職人たちとともに、その花の刺繍の中心部に女性器をあしらった新しい様式を創り出しました。(Chrysanthemum、Peony)私たちはインフルエンサーを活用することで、そのファッションをアピール。

インフルエンサー「なぜ私たちは自分の女性器の形に引け目を感じないといけないんですか?」「あなたの女性器はあなたの一部です。個性的でもいいじゃないですか。」

ナレーション:さらに私たちは、そのデザインを(Libresseの)商品パッケージにも反映させました。中には苛立つ人たちもいました。(さまざまな批判の声が入る「信仰深い女性たちが痛烈に批判しています」「女性器の利用は侮辱では?」

ナレーション:そしてこの試みは国中の話題となったのです。

(さまざまな援護の声が入る「品位を損なっているわけでは全くない」、「これは、あなたの女性器がいかに美しいかを讃えているのです」)

この取り組みは、マレーシア国内で最も話題となったキャンペーンとなりました。

論争を巻き起こし…、女性器をテーマにした人々の創作意欲を刺激しました。

このキャンペーンは国中をインスパイアし、古臭いタブーを崩すための大きなきっかけとなったのです。

“Libresse提供 VULVA KEBAYA(女性器のKEBAYA)”

炎上をも計算に入れたブランディングはアリなのか

いかがでしたでしょうか?

上記紹介ビデオでも「この取り組みの是非をめぐり、マレーシア国中で論争が起きた」と紹介されていますが、2021年9月16日の建国記念日(マレーシア・デイ)に合わせて開始されたこのキャンペーンは、実はその4日後の9月20日、同地イスラム教系団体からの「女性への冒涜である」というクレームを受けてあっさりその取り組みを中止しています↓

malaysia.news.yahoo.com

ブランドの購入者である人々に反感を買うリスクまで見込んだ上で、一企業の商品がブランド活動家のような取り組みをすることについてや、活動を華々しく立ち上げたものの、異論を受けてあっさりとそれを中止してしまうことについてはさまざまな捉え方があると思います。

本ブログの趣旨上、それらの意見の是非を問うことはここではしませんが、イスラム教を国教とするマレーシアでも、ジェンダーに関してこのような取り組みが既に行われている、ということは知っておいて損はないと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!