世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

コロナ克服を祈念して、2022年の執筆を開始します

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Photo by Branimir Balogović on Unsplash

今年こそ、コロナの克服を

2020年からパンデミックにより、人々の暮らしはすっかり変わってしまいました。新しい株の出現により未だ克服はできてない状況ですが、冷静に考えればたった2年の間に有効なワクチンが開発され、貧困国への供給など、数多くの問題はあるものの世界中でワクチンが受けられる状況になったという点は人類の進化として誇りに思って良いのかな、と思います。

去年の年明け最初の投稿は、米議会襲撃という愚かな事態に衝撃を受け、キング牧師やガンジーによる20世紀を代表するソーシャルキャンペーンを紹介しました。今年は「今年こそ」のコロナ克服を祈り、昨年の世界的クリエイティビティの祭典、カンヌライオンズにてプリント&出版部門のグランプリを獲得したこの取り組みをご紹介いたします。

Courage is beautiful "勇気は美しい"

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[雑和訳] ニュースキャスター”このキャンペーンは、その名も「勇気は美しい」というキャンペーンで…” "Doveはヘルスケア・ワーカーのヒーローたちに光を当てる素晴らしい広告を始めました"
”#勇気は美しい、のタグラインがDoveのビデオが広まると共に注目を集めています” ”看護師や医師が感染を防ぐために装着するギアによる、彼らの顔のアザを見せています””これらの表現からは彼らが共通して持つ、我々を守ろうとする決意や、苦労を感じることができます” タイトル文字[勇気は美しい]
看護師のアマンダさん「3月か4月ごろ、彼らは私が写真をシェアしたインスタで打診をしてきました」同パトリックさん「病院にいるスタッフたちは忘れられていました。このキャンペーンで同じような状況にある他のヘルスケアワーカーたちの姿を見て、一人じゃないと感じることができました」同リナさん「とにかくパワフルだと思いました。この中の一員であることに誇りを感じることができました」
ナレーション「世界中の病院施設に隣接するビルボードに、そこで奮闘するヘルスケアワーカーたちに向けた広告が掲出された」パトリシアさん「わぁ、私だ、私たちのことだと気づいてびっくりしました」ベサニーさん「私の看板を初めて見た時はウルッときて、このグローバルキャンペーンの一員であることを誇りに思いましたね」アマンダさん「私の写真がニューヨークタイムスの1面に載るなんて、想像もできませんでした」
*世界中のさまざまなメディアの、この取り組みに対する賞賛のコメントが入る 結果:世界で合計20億強のアーンド・インプレッションを達成。ソーシャルメディアの99%がポジティブに反応。ツイッターだけで1日あたり36万のハッシュタグ・メンションを獲得。500万ドル強のドネーションを獲得。
SnapのCEO「目下、Doveによる素晴らしいキャンペーンがSnap(のソーシャルメディア)で展開されていて、(ブランドの)差別化のための素晴らしい取り組みだと考えています」
司会者「人々の体型や肌の色、年齢などについて、いつも素晴らしい意見表明をおこなってきたDoveによる、もう一つの賞賛すべき取り組みだといえるでしょう」*最後、さまざまな言語の文字で”勇気は美しい”というスローガンが入る

人々の美にこだわってきたブランドゆえに成立した取り組み

いかがでしたでしょうか?特にこのキャンペーンが行われたパンデミック初期にはこの疾病について未知の部分も多く、最前線で患者のために戦っていた医療関係者に対する差別的な言動は今よりもはるかに多かったかと記憶しています。
彼らが報われない気持ちで疲労困憊し、通勤・退勤するその路上でこのような広告を目にしたら、そのメッセージはさぞかし温かく感じられたことだろうと思います。
さらに人々が家に閉じこもり、屋外広告の価値に疑問符がついたこの時点であえて「屋外広告にしかできないこと」をやり遂げた勇気も素晴らしいと思います。

さらに最高なのが、この取り組みを行ったブランドがDoveだったこと。Doveは2006年にカンヌライオンズのフィルム部門でグランプリを獲得した(私の中ではその先見性で未だに21世紀のベストグランプリです)”Evolution”を皮切りに、世界的ボディケアブランドの責任として、ほぼ一貫して現代における「Real Beauty(本当の美しさ)」とはどうあるべきなのか、を問い続けてきました。ここで彼らのいくつかの過去キャンペーンを見てみましょう。

「加工された美」への違和感を表明したEvolution


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タグライン「これでは、美の概念が歪んでしまうのも無理はない。女の子たちのためのReal Beautyワークショップに参加しよう」

「自分の美しさ」への過小評価を可視化したドキュメント


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目撃者の話をもとに似顔絵を描く犯罪捜査の似顔絵師が、被験者の似顔絵を描く。本人の自己評価に基づいて書いた似顔絵と、彼らの友達のコメントに基づいて描いた似顔絵との差で「人々は本人が思うより美しい(=だから自信を持って)」というメッセージを打ち出した感動的なキャンペーン

いかがでしたでしょうか?これらの15年以上にわたる一貫した「美」への取り組みがあったからこそパンデミックの第一線で戦う人たちに「勇気は美しい」と言い切る強さがDoveの中の人たちにもできたのだと感じますし、同時にこの取り組みの受け手(ヘルスケア・ワーカーや一般の人々)に対しても、他のブランドでは真似のできない説得力を感じさせることができたのだと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。
それではみなさん、今年もどうぞよろしくお願いいたします!