世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

IKEAに見る、消費財に対する世間の意識変化【カンヌ2022より】

UnsplashのRuoyu Liが撮影した写真

アラフィフ・カンヌウォッチャーから見た時代の変化

私は1998年に”世界的クリエイティビティの祭典”カンヌライオンズに惹かれて広告業界に入り、以来ずっとその受賞作をウォッチしてきました。2000年前後はセクシズム全開だったり、異国文化を馬鹿にしたような広告キャンペーンがグランプリや金賞を獲得することが普通にあり、DE&Iの概念が浸透しつつある今から見れば相当な荒れ場でした…。

それから20年後、人々の「物を消費する」ことに対する意識もDE&Iと同様、サステナビリティの普及に合わせてかなりの変化を遂げています。

ということで今回は2000年代から2022年にかけての、消費財に対する世界の人々の意識の変化が明快に感じられるカンヌライオンズ2022の受賞作をご紹介しようと思います。広告主はIKEA。カンヌライオンズ2022のプリント&パブリッシング部門で金賞を獲得した取り組みとなります。まずはこちらの紹介ムービーをご覧ください。

IKEA Trash Collection / イケア・廃棄物コレクション

youtu.be

【雑和訳】文字:BILLY、2021年5月1日、Bjerkeで発見 -14ユーロ / MALM、2021年4月28日、Roykenで発見 -12ユーロ / FRANKLIN、2021年4月28日、Toyenで発見 -10ユーロ / IKEA PS、2021年4月24日、Fredrikstadで発見 -29ユーロ / HEMNES、2021年4月28日、Hovseterで発見 -49ユーロ / ASKVOLL、2021年4月28日、Oppsalで発見 -17ユーロ / VISDALEN、2021年5月1日、Bjerkeで発見 -19ユーロ / VASTERON、2021年4月28日、Hvalstrandで発見 -4ユーロ / BILLY、2021年4月28日、Oppsalで発見 -14ユーロ / ”廃棄物コレクション2021” / 私たちが見つけたIKEAの家具に必要だったのは洗浄と、いくつかのスペアパーツだけでした。/ IKEA.no(IKEAノルウェーのウェブサイト)で私たちのコレクションと、廃棄物を減らす方法についてご覧ください。 / ロゴ:IKEA - ようこそ2030年 

IKEAが果たした、消費に対する大きなスタンスの変化

いかがでしたでしょうか?こちらの取り組み、カンヌライオンズではこれらの家具を印象的に扱ったプリント広告のキャンペーンが高い評価を受けたのですが、実際この取り組みによりノルウェーの人々はムービー中に登場したような再生品をIKEAで安く買うことができただけでなく、自分の家で使ってきたIKEA商品をIKEAに売り返したり、またはそれらを少しでも長く使えるよう、無料でスペアパーツを入手するサービスまで受けることができたそうです。

結果、IKEAに使用済みの商品を売り返す人の数は倍以上となり、この廃棄物コレクションは総商品数3,000点を超える大きなコレクションとなったそうです。スペアパーツのオーダー数も週あたり20%以上を記録し、これらの取り組みはサステナブルな企業としてのIKEAのイメージを大いに引き上げたそうです。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。

 

 

・・・と、いつものようにこのブログを締める前に、ここでIKEAアメリカで2002年にオンエアし、当時のカンヌライオンズでグランプリを取るなど、かなり高い評価を得たこのテレビCMを見てみましょう。

youtu.be

【雑和訳】通りすがりのおじさん「このランプ、かわいそうだと思った?それはあんたの頭がおかしいからだよ。だって新しい方がずっといいに決まってんじゃん」/ ロゴ:IKEA -退屈じゃない

いかがでしたでしょうか?ご覧になった皆様は、今年の受賞作とはあまりに違うそのメッセージにきっと驚かれたと思います。ただし私は、サステナビリティという概念が普及する前の時代(=大量生産・大量消費賞賛時代末期)のこの広告が、今の尺度で闇雲に叩かれるべき物でもないと思います。

当時、IKEAアメリカではまだメジャーになりきれていませんでした。同地での知名度確保およびライバルとの差別化のため、IKEAがこのようなインパクトのある広告を必要としていたことと、そしてその要求に対し、広告マンたちが見事なクラフトで形にした、という部分は評価されてしかるべきところだと思います。

ただ、もし今の時代に家具ブランドがこのような広告を出したとしたら、それは弁解の余地なく、かなりのダメージを自社や社会に与えてしまうことになるでしょう。

人々の企業やブランドに対する視線はサッカーのオフサイドラインのように、絶えず動き続けています。知らぬ間にオフサイドラインを越えてしまう、そんな悲劇を防ぐためにマーケターやクリエイターたちは、市井の人々の認知・態度の移り変わりを絶えずウォッチし、学び続ける必要があると思います。

そういう意味でIKEAは、時代に合わせて自らの立場をしっかり修正し、対応しています。今回紹介した取り組みももちろん素晴らしい!ですが、私としては、それらを含んだ企業全体としての「時代への対応力」に敬意を評したいと思います。

↓ちなみにこのランプのCMも、2018年に発表された続編でしっかり「罪ほろぼし」がされています。(おじいさんは、前作と同じ人なのかな?)

vimeo.com

【雑和訳】文字:RYET、LED電球、1.29ドル / 通りすがりのおじさん「このランプを見て、ハッピーに感じたよね?それは正常だと思うよ。再利用する方がずっといいんだから」/ ロゴ:IKEA -美しい可能性

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!