世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

政府の汚職を実演で証明したチェコ共和国のハッカソン

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Photo by Martin Krchnacek on Unsplash

政府の「サイト開発費」の異様な高さをハッカソンで証明

古今東西、権力者は自分の力を濫用したい誘惑と戦い、時には打ち勝ち、時には破滅へと突き進む代物です。

そんな個人の内面に暮らしが左右される一般市民はたまったものではない、ということでそのチェック&バランス機能としてジャーナリズムが存在しているわけですが、インターネットが発達した今の時代、ジャーナリストに加えて「デジタル・テクノロジスト」も社会に公正さを保つ重要な存在となっていくのかもしれません。

今回は、チェコ共和国政府が高速道路の通行証を販売するeコマースサイトの開発のために、明らかに必要以上の予算を私企業にこっそりつぎ込もうとしていることを糾弾すべく、プログラマーやコーダーなどの「デジタル・テクノロジスト」たちが取り組んだユニークかつ、劇的な結果を導いたハッカソンをご紹介します。

世界的クリエイティビティの祭典カンヌライオンズのブランド・エクスペリエンス&アクティベーション部門とダイレクト部門の2部門で2021年、金賞を獲得した取り組みです。ぜひご覧ください。

Anticorruption Hackathon "反汚職ハッカソン"

www.youtube.com

[雑和訳] タイトル[過去40年、チェコ共和国全体主義体制の下にあった] [一般市民は変革をする術を持たなかった] [共産主義の終焉から数十年を経た現在にしてなお、汚職の蔓延は収まることがなかった] […これまでは。]

ニュース”多くのチェコ市民が抗議の声をあげています” 市民「この国を誇りに思いたいのに、今はできません」 タイトル[2020年1月、私有企業Asseco Central Europeがeコマースのプラットフォーム開発について政府との契約を勝ち取った] [その価格は1,600万ユーロ(約20億7,000万円相当)。しかしその公示すら無かったのだ]

ニュース「4億チェコ・コルナの契約です」 タイトル[そこで反汚職を掲げる団体Znamkamaradaは行動を起こすことにした]  [我々だったらこんなものはタダでできる。しかも2日以内で] Znamkamaradaのスタッフ「我々はハッカソンを計画しています。コードが組める人はこの週末、参加してください」

タイトル[高まるプレッシャーの中、首相はZnamkamaradaと対面することを承認した] [そしてハッカソンが始まった。194人のプログラマーが昼も夜も開発に取り組み続けた] ニュース「数百人のコーダーたちが週末、サイト作りに取り組み続けています」 プログラマー「このアプローチでサイト構築は可能であることを示したいです」

レポーター「順調にいけば、日曜の午後6時には完成しそうです」 「しかも全て無料で作られてしまうのです」 「果たして約束通り、時間内に完成できるのでしょうか?」 中の人「できると思います」 タイトル[そして、48時間以内にサイトは完成した]

[Assecoとの契約はキャンセルされた] 要人「本日、刑事告訴を提出するつもりです」 タイトル[交通省大臣は罷免に] ニュース:「臨時速報:交通省大臣が罷免されました」 タイトル[1,100万ユーロ(約14億2,500万円相当)に上る納税者のお金が救われた]

[政府は24万ユーロ(約3千100万円相当)を超えるIT関連の契約については公示の上、入札を行うことを約束した] 中の人「政治家は公金の使用について、より慎重になることでしょう」 タイトル[Znamkamaradaによる反汚職ハッカソン]

デジタル・テクノロジストたちが力を合わせて大臣を罷免に

いかがでしたでしょうか?社会に真偽が判別し難い情報が溢れかえってしまっている今、権力者の犯罪については「真実を記事にする」というジャーナリスト的動きだけではその影響力に限界が出てきているのも事実です。

そんな状況に対し、このアイデアのようにデジタル・テクノロジストが力を合わせて「おかしな事実」を自分たちの行動で証明する、という方法は新しいですし、一方「みんなで大きくて悪いものに立ち向かう」というストーリーは今度東西、なぜかあらゆる人々をの心を巻き込む力があります(私もこの取り組みを翻訳している間、映画「サマーウォーズ」を観た時のようなワクワクを感じていました)。

そうした人間の根源的なインサイトを踏まえつつ、ハッカソンという(フェイクだと糾弾しにくい)新しい形式で権力の悪をやっつけたところに、この取り組みの凄まじさがあると思いました。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!