2023年もどうぞよろしくお願いいたします
このブログも途中、長いお休みを挟みつつ9年目を迎えました。ここ数年で世界は大きく対決モードにスイッチしてしまった感がありますが、今こそ武器ではなく、アイデアの力が我らを明るい未来へと導いてくれるはず…という願いをこめて、今回も地道に世界からの素敵なアイデアをご紹介していこうと思います。
今回は、正月休みに観た「RRR」という滅茶苦茶かっこいいインドのアクション映画に触発されて、インドの国民的スター、シャー・ルク・カーンが主役となったソーシャルキャンペーンをご紹介したいと思います。
今から2年前、インドはデルタ株の感染爆発により困難に陥っていました。特にインド各地の小規模な個人商店は衛生面の懸念やeコマースの普及により、売り上げの急減に悩まされていました。
そんな状況で迎えたインド最大規模のヒンズー教のお祭り、ディワリの時期に、インドの国民的大スター、シャー・ルク・カーンが現地でも人気のチョコレートブランド、キャドバリーと組んで行ったのが今回のキャンペーンとなります。
ちなみにこちら「世界のクリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2022にて、その年のベスト級のアイデアに与えられるTitanium Lionをはじめ、Creative Data部門やDirect部門でゴールドを受賞するなど、高い評価を獲得したキャンペーンになります。それでは以下の紹介ビデオをご覧ください。
「Shah Rukh Khan-My-Ad / シャー・ルク・カーンを使ったマイ広告」
【雑和訳】
ナレーション:大きなブランドは、セレブを起用するほどの大きな広告予算に恵まれています / しかし、小規模なお店の店主たちはそうではありません / そして彼らはいまだに(コロナによる悪影響から)立ち直れていませんでした /
そこで行ったのが”Shah Rukh Khan-My-Ad(シャー・ルク・カーンを使ったマイ広告)”というキャンペーン /
TVキャスター「みなさん、シャー・ルク・カーンです!」 「彼は世界中の誰よりも多くの熱狂的なファンを持つ大スターです」「世界で最も人気の大スター」「フォーブスは彼を世界中で最も人気のスターのひとりだと呼んでいます」/
ナレーション:私たちは、世界で最も偉大な大スター、シャー・ルク・カーンを彼らのブランド・アンバサダーにすることでスモールビジネスを営む人たちを支援することにしたのです /
(*以下、CMからの抜粋)シャー・ルク・カーン「今年のディワリには、あなたも”Fashinova Emporium”で洋服を買いませんか?」「最新のスマホを、”Siddhivinayak Electronics”で買って、素敵なセルフィーをポストしてください」/ パートナー「何してるのあなた?」「スイーツ食べた?」/ 字幕:この(キャドバリーの)アソートも買ってご賞味ください」/
ナレーション:私たちはマシンラーニングを活用して、各地のお店の名前を広告内で告知できるよう、シャー・ルク・カーンの表情と声を再現できるようにしました /(*以下、CMからの抜粋)シャー・ルク・カーン「あなたもぜひ、近所の”Choice Of Fashion”でショッピングしてください」「”Royal Fashionで”」「”MK Clothsで”」「”Laxmi collectionで”」/
ナレーション:(シャー・ルク・カーンが)各地のお店の名前を告知する、さまざまなバージョンの広告が作られ、PINコードを活用したターゲティングで、視聴者の近所にあるお店の名前を伝える広告が配信されました。しかし全てのストアを網羅することは不可能なため、私たちは人々に自身で”シャー・ルク・カーンを使ったマイ広告”を作る権利を与えました。そしてWhatsApp Forwardsなどの自分自身のソーシャルメディア・ネットワークで、自分のお店をプロモートできるようにしたのです。/
Podcastの音声「あなたが小さなお店のオーナーや商人だとして、シャー・ルク・カーンがあなたのお店を宣伝してくれるんです。なんて素晴らしいことでしょうか!」/キャスター「キャドバリーの広告キャンペーンは広告の枠を超えて広がっています」/ 女性の声「(画面上にSNS上に寄せられたコメントを表示しながら)ボリウッドスターのシャー・ルク・カーンを使った広告の話題がソーシャルメディアを席巻しています」/
文字要素:作られた広告の数=13万 / 広告視聴数=3000万以上 / 無料で600万ルピー相当のPR効果を獲得 / ビジネスの伸び率=35% /
ナレーション:”Shah Rukh Khan-My-Ad(シャー・ルク・カーンを使ったマイ広告)”
お金の寄付だけがドネーションじゃない
いかがでしたでしょうか?趣味嗜好が細分化された日本では国民的なスターというものがいなくなって久しいですが、インドにおけるシャー・ルク・カーンさんの存在感たるや、おそらく私が子供だった頃の石原裕次郎さんのようなカリスマだったのかな?と思います。
もしもそんなスターが自分のお店を宣伝してくれたら…という、一昔前だったら絵空事だったことをデジタル技術とマシンラーニングの力で実現したところに、この企画が高く評価されたポイントがあるのかな、と思います。
また、これだけのカリスマがチャリティをする、というと、これまでは稼いだお金をポーンと寄付をする、という話が多かったのかなと思いますが、このアイデアはお金の代わりに、自分の肖像権を困った人たちのために寄付をした、ということもできそうです。
技術の進化とともに、これまでやりたくてもできなかったことができるようになっていたり、また、これまで気づかなかった角度でのアクティビティが知らぬ間にできるようになっています。
それに気づくか、気づかないか。
気づきを実行に移すか、諦めるか。
それはすべて、私たち次第です。
いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!