STEM分野に起きているジェンダー格差に迫ったキャンペーン
皆さん、STEM教育という言葉をご存知でしょうか?Science(科学)とTechnology(技術)、Engineering(エンジニアリング)とMathmatics(数学)の4つの教育分野の頭文字をとったもので、21世紀にますます重要となる学びの分野をまとめて言い表す言葉なのですが、この分野は同時に、世界各国で女性たちの進出が遅れている分野でもあります。
この分野で女性の進出が遅れる、ということは、今世紀を担うSTEM領域から開発されるものが男性目線に立った(=女性には使いにくい)ものになってしまう、または女性にとって切実な問題に対するソリューション開発が後回しにされてしまう、ということに繋がりかねません。世界人口のおよそ半分が女性だと考えた場合、これは由々しき事態です。
そこで今回は、アメリカで長くこの問題、特にコーディングの分野でのジェンダー不均衡の解決に向けて取り組んでいるNPO「Girls Who Code」が同国音楽業界のディーバ、ドージャ・キャットとコラボして取り組んだ素敵な事例を紹介したいと思います。
ちなみにこちら「世界のクリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2022のBrand Experience & Activation部門にてゴールド(金賞)を獲得するなど、高い評価を獲得したキャンペーンになります。それでは以下の紹介ビデオをご覧ください。
「DojaCode with Doja Cat / ドージャ・キャットとドージャコード」
【雑和訳】
女性A「人生でコーディングとワルい女ほどワクワクするものはないわ」/
ナレーション:「Girls who code(コーディングする女性たち)」は次世代の女性のコーダーたちにインスピレーションを与えたいと考えていました / 文字要素:コーダーの性別 男性75%・女性25% /
ナレーション:しかし、若い女性たちの身の回りにはコードを学ぶよりもクールなことがあふれています。なかでも彼女たちを惹きつける存在といえば… / *画面上のドージャ・キャットの活躍ぶりを伝える記事や映像がコラージュされる / 授賞式の司会者「ドージャー・キャット!」/
ナレーション:そこで、ドージャー・キャットがパワフルな女性についてのヴァイラル・ソングをリリースするタイミングで、私たちはそれを、コーディングの次世代を担う女性たちを後押しする機会としました /
インフルエンサーA「ちょっと、聞いてください。ドージャ・キャットがGirls who codeとタッグを組みました」/ インフルエンサーB「ドージャー・キャットのビデオをコーディングできるんですって。マジで!?」/ インフルエンサーC「コーディングできるミュージックビデオなんですって!」/
ナレーション:その通り。これまでで初となる、コーディングができるミュージックビデオDojaCode。(そこでは)密かにコード学習のレッスンとなるインタラクティブな体験ができるのです。コードのスニペッドを使うことで、若い女性たちはミュージックビデオのストーリーを変えることができます。
ミュージックビデオをディレクションしながら、コードのやり方の基礎を学べるのです。DojaCodeは世界を席巻しました。まさに、全ての世界に。メディア予算は0ドルにもかかわらず、1,000万ドル相当の露出効果を創出。世界中の女性が何百万分もの時間、学んでいる、という自覚もなしにコーディングに没頭しました / *世界中で没頭する女性たちの画像が次々と挿入される。/
ナレーション:インターネットを(いつものように)消費する代わりに、女性たちはそれを創造したのです。世界で最もホットなミュージックビデオを、これまでで最もクールなコーディングのクラスに変えてしまうことで /
ドージャ・キャット「これこそが教育よ」
エンタメをきっかけに、多くの女性にコードの楽しさを教育
いかがでしたでしょうか?こちらのアイデア、男性のコーダー比率をなんとかしてカットしようとするのではなく、まずはこれまでコードに触れたことがない女性たちにその「楽しさ」を学んでもらうことで、コーダー全体のパイを大きくしていこうという考え方が前向きでとても良いな、と思いました。
また、紹介ビデオの最後の方にあったナレーションのように、コーディングの方法を学ぶことで人々はインターネットをモノを買う「消費の場」とするだけではなく、何かを創る「創造の場」に変えることができます。
ジェンダー問題を超えてそういう意味でも、インターネットの世界をより豊かにするための実に意義深い取り組みだなぁ、と思いました。
いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!