世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

マラソンで社会的課題を訴える

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Photo by Isaac Wendland on Unsplash

明けましておめでとうございます。おかげさまで去年は50の記事を更新することができました。今年は年末に始めたポッドキャストも入れて、少なくとも70〜80記事の更新を目指したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

などと言っているそばから新着情報が途切れがちの新年。2021年1発目の話題として、何かいいネタはないか…と悩みつつ駅伝中継を見ていたときに思い出したのがこのマラソンを活用した事例です。

5年前のものですが、訴えたいメッセージが種目とも関連性があり、効果的な取り組みとなっています。まずはその、紹介ビデオをご覧ください。

vimeo.com

こちらは、水道施設の不備のために毎日村から遠く離れた水場まで歩き、水を汲まないといけないアフリカの女性たちの窮状を訴えるべく「Water for Africa」という団体が行ったソーシャルキャンペーンです。この団体は彼女たちの村に井戸を掘る資金を募るべく、アフリカはガンビア共和国で実際に毎日水を汲んでいる女性をパリマラソンに招聘。いつもの水を汲みに行く格好で前面に「アフリカでは女性たちが毎日、綺麗な水を求めてこの距離を歩いている」、背面に「この距離を縮めるために、ご支援を」という看板を掲げて歩いてもらったのです。

この「飲み水のために毎日、マラソンと同じ距離を歩かなければいけない」という衝撃的な事実は、ランニングウェアで走る市民ランナーの中、水のタンクを乗せて静かに歩く彼女の印象的なビジュアルとともに拡散してメディアを席巻。特設ウェブサイトを通じた募金も集まり結果的に(このビデオが制作された時点で)、合わせて5組の井戸がガンビアの村々に寄付されたそうです。

「アフリカでは毎日、人々が長い距離を歩いて水を汲んでいる」と言われても恵まれた環境にいる我々にはいまいちピンときませんが、そこに「マラソンと同じ距離=42.195キロ」という尺度が入ると途端に「え、そんなに!?」とびっくりしてしまうのが人間心理の面白いところです。(そして”数字の可視化”はこのブログでも以下の過去記事にあるように、有効なアピール方法のひとつです。)

wsc.hatenablog.com

 ただしこの素晴らしいアイデア、過去に類似のアイデアが実施されていた、ということがあり、広告業界の賞などではあまり高い評価が得られませんでした。こちらにその「過去にすでに行われていた」事例の紹介ビデオも置いておきますので、よろしければご確認ください。

www.youtube.com

確かにアイデアは全く同じですが説明が多く、あまり「心が動かない」紹介ビデオになっています。(逆にいうと、冒頭に紹介したビデオは左脳的な説明よりも、ビジュアルの綺麗さや印象的なBGMで見る人の”心を動かす”ことに重きを置いていることがわかります。)伝え方次第で同じような取り組みでもここまで印象が変わるのだ、という部分は我々の学びとして得られる部分だと思います。

また、後者の取り組みは冒頭に比べて実施面でも単純に記者を呼んで、マラソンコースをアフリカの女性に歩かせただけのように見えて、最初の事例に比べてSNS時代の拡散に欠かせない”ビジュアル的な強さ”に欠けるのは否めないな、と思いました(手に持っているペットボトルの意味も彼女自身の給水用なのか、課題の可視化なのか曖昧です)。

ある意味、世界的にSNSが普及する前の2010年の施策と、ある程度普及した後の2015年の施策の力点の違いが浮き彫りになっている、ということなのかな、と思いました。

そして今は2021年。SNSが世界的な情報インフラとして確立した現在はまた、冒頭の企画が実施された5年前とも全く違う環境にあると思います。コア・アイデアの開発や、それを広めるためのPRプランももちろん評価されて然るべきですが、最終的にそれに触れることになる人々の脳裏に”いかに鮮やかに印象付けるか”、という表現部分までトータルに管理して初めて、こういった取り組みは時代を超える強さのあるものになるのです。

(全くの余談ですが、以下のキャンペーンは今見てもコア・アイデアからPRプラン、そしてユニークなミュージックビデオまで全方位的に効果的だな、と思えるソーシャルキャンペーンです。こちらもお時間あれば、是非チェックしてみてください。) 

wsc.hatenablog.com

いやぁ、アイデアってほんとうにいいもんですね。

それでは皆さん今年も、どうぞよろしくお願いいたします!