思い込みの”枠”を作り直す、リフレーミングのチカラ
人類の歴史上、楽しいばかりで人生を生き抜いた人はほとんどいないと思います。長い人生を振り返った時、概ね楽しかったな…と思うためには、時にはつまらないな、とか、難しいな、という状況からなんとかして自分が楽しめる要素を見つけ出して、その状況を楽しいものとして捉え直す(リフレーミングする)ことが不可欠です。
そして、リフレーミングを自分の心の中だけではなく他人の心に応用すれば、あのトム・ソーヤのペンキ塗りの話のように、社会的にこれまでネガティブに捉えられていた物事をもポジティブなものに変えてしまうことが可能です。(もちろん、その逆もできてしまうのですが…。)
今回はディスレクシア(発達性読み書き障がい)の人たちに対する職場の人たちのネガティブな思い込みを、見事なリフレーミングで見事に変容させたヴァージンとリンクトイン、そして社会的に成功したディスレクシアたちによるチャリティ団体Made By Dyslexiaによる取り組みをご紹介します。
ちなみにこちら「世界のクリエイティビティの祭典」カンヌライオンズ2022にて、その年のベスト級のアイデアに与えられるTitanium Lionを受賞するなど、高い評価を獲得したキャンペーンになります。それでは以下の紹介ビデオをご覧ください。
「Dyslexic Thinking / ディスレクシア的思考」
【雑和訳】
女性司会者「英国では、推定で600万人以上の人たちがディスレクシアだとされていまして、それに起因する学習への妨げは、”隠れた障がい”とも言われています」/
文字による表示:"私は自分の#ディスレクシア的思考を周りに隠してきましたが、今やそれらはスキルとして認知されています!-@ChrisWilkinson"/ "#ディスレクシア的思考がリンクトインのオフィシャルスキルになって、嬉しくて涙が出た -@lovethewayoure"/ "Wow! リンクトインのスキルに#ディスレクシア的思考が追加できて感極まるわ -@Savvy"/
文字要素:世界の5人に1人がディスレクシアです / しかし、その97%がディスレクシアをネガティブに捉えています/
ジェイミー・オリバー、起業家「自分が否定された感じになるよね」/ キーラ・ナイトレイ、俳優「自分はバカなんだと感じました。他人よりも劣っていると」/ オーランド・ブルーム、俳優「愉快ではないよね」/
ジョン・ケリー、Dictionary.comのシニア編集長「ディスレクシアという言葉に対する人々の現在の感覚は明らかに時代遅れの認識で止まってしまっています」 /
ジュリア・キャロル博士、コベントリー大学「このネガティブな認識は職場にとても大きなダメージを与えています。そして多くのディスレクシアを持つ人々がとてつもなく大きな成功を果たしてきたことを考えると、不当なものだといえます」/
文字要素:職場でのディスレクシアに対する人々の認識を改めさせるために / 私たちは、社会のディスレクシアに対する見方を変えたのです/ リンクトインのオフィシャルスキルのタグ:”ディスレクシア的思考+” ヴァージンxリンクトインx Made By Dyslexia/
文字要素:ディスレクシアを職場のスキルとして再規定(リフレーミング)/ ケイト・グリッグス、Made By Dyslexia「私たちの調査によると、ディスレクシアを持つ人々はまさに、世界経済フォーラムがまとめた職場が求めているスキルの数々を持っています」/ 文字要素:世界経済人フォーラム・2023年のトップスキル 1:分析的思考とイノベーション 2:複雑な問題の解決 3:クリティカルな思考と分析 4:学習戦略 5:リーダーシップ /
ニコール・レバリッチ、リンクトインのコミュニケーションVP「(*画面上ではヴァージンの会長、リチャード・ブランソンのプロフにディスレクシア的思考が加えられる)リンクトインは、あなたの職場でのスキルを紹介する場所です。なので私たちはプラットフォームに変更を加え、世界中の人々が自分のプロフィールに「ディスレクシア的思考」をスキルとして足せるようにしました」/
文字要素:変更後、わずか1週間で1万人以上の人々がこのスキルを追加 / ディスレクシアに対するソーシャルメディア上のポジティブな認識は1,562%上昇しました /
タマラ・ピケット、ヴァージンのコミュニケーション・グループディレクター「キャンペーンの開始以来、より多くの人々が立ち上がり、自分がディスレクシアであることを話し始めました」/
リチャード・ブランソン「自分がディスレクシア的思考を持つことを誇りに思います!」/
ナレーション:そして、Dictionary.comはディスレクシア的思考をオフィシャルな単語として登録 / (*各メディアからの好意的な声や記事の抜き出しが流れる) / 文字要素:13,553人の人事担当責任者がこのキャンペーンを認知 /
ローラ・パウエル、ウエルス・アンド・パーソナル・バンキング、グローバル人材担当責任者「私たちは今、積極的にディスレクシア的思考を持つ人材を求めています。そして、マイクロソフトやEY、facebookなど他のさまざまなグローバル企業も同様の動きを進めているというのは本当だと思います」/
リチャード・ブランソン、ヴァージン・グループ創設者「自分が持つディスレクシア的思考は、他人が問題だと思う物事の中にソリューションを見つけるのに役立ってきました」/ キーラ・ナイトレイ、俳優「(ディスレクシア的思考は)とても大事な要素です。世界は変わり続けてますし」/ オーランド・ブルーム、俳優「これこそがリーダーたちが持つ資質ですし、また、我々の人間性を進化させる考え方だと思います」/
リンクトインのオフィシャルスキルのタグ:”ディスレクシア的思考+” ヴァージンxリンクトインx Made By Dyslexia
いかがでしたでしょうか?実は私はかなりのリフレーミング好きでして、いつも身の周りや自分のことについて、どういったフレームで括ればもっとやる気が出るだろう、とか、他人にやる気を出してもらえるだろう、とか、そんなことばかりを考えています。
この世のアイデアの基本は、薄々と感じていながらこの社会の多くの人が見えていない「本当のこと」を、これまでにない角度でリフレーミングすることで、人々にはっきりと気づかせることです。
(だから人々は見事は優れたアイデアを見た時に「やった!」ではなく「やられた!」と思うわけですね。)
私たちはこれまで”ディスレクシア「なのに」成功した人”としてリチャード・ブランソンやその他大勢の人々を括ってきました。しかしこの取り組みが順調に発展していけば、人々の彼・彼女たちに対する認識はやがて”ディスレクシア「だから」成功した人”へとフレームチェンジしていくことでしょう。
そしてその変化はまさに今、学校でディスレクシアに悩みながらも一生懸命頑張っている子供たちにも大きな励みとなるに違いありません。
いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!