世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

貧困問題打開のため、立ち上がったインドのストリートキッドたち【カンヌ2022より】

UnsplashのTapishが撮影した写真 *写真の子どもたちは本記事の内容とは無関係です

ブランドを”ハック”し、課題解決に巻き込む新手法

さて、今年もあっという間に12月になり、赤い羽根が目印の歳末助け合い運動が始まりました。公式サイトを調べてみると、この取り組みは明治39年1906年)に始められた活動のようです。

そして昨今、日本社会の中でも貧富の格差が深刻さを増す中、この活動の存在意義は増しているはず…なのですが、この運動への募金総額は新型コロナウイルスによるパンデミックの影響などもあり、年々減少してしまっているようです。

ということで今回は「貧困と寄付」をテーマに、インドのホームレスな子どもたちを支援する市民団体「SOS Children's Villages in India」がとあるものを”ハック”することで世界的人気ブランドからの寄付金額を爆上げさせることに成功した、ユニークな取り組みをご紹介します。

ちなみにこちら、世界のクリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2022のメディア部門やソーシャル&インフルエンサー部門でそれぞれ金賞を獲得するなど、高い評価を獲得した取り組みとなります。それではその紹介ムービーをご覧ください。

「Chatpat / チャットパット君」

youtu.be

【雑和訳】文字要素:SOS Children's Villages in Indiaは / 45,000人以上のホームレスの子どもたちをサポートしている / 予算不足は大きな課題 / 大きな予算を持っている存在は? / (様々なグローバルメディアのロゴと、それぞれの予算額が表示される) /  どうしたら、彼らから一部でも予算を受け取ることができるのか? /

Chatpat「僕の名前はChatpat。こいつらは僕の仲間」文字要素:Chatpatに会おう / 彼は、(ビッグブランドからの)マーケティング予算を追い求めたストリートの子供 /  予算獲得のため、彼はインド人なら誰でも覚えている、最も象徴的なCMを復活させたのだ/

"キャドバリーの1990年のテレビCM" / "キャドバリーの2022年のテレビCM" /

Chatpat「(チョコレートブランドの)キャドバリーさん、僕たちは素晴らしいCMをあなたたちのブランドのために作りました。今度はあなたが私たちのために何かをしてください。SOS Children's Villages in Indiaは…」 / 文字要素:SNS上の声” キャドバリーさん、この少年に寄付してやってくれ!”、”キャドバリーさん、やるべきことはわかっているよね?”等々が表示される / 

Chatpatのアカウント ”(洗剤ブランドの)タイドさん、あなたのためにCMを作りました”  / (すると、タイドのブランドのパネルが裏返って”送金済み”の表示が) / Chatpatのアカウント ”(石鹸ブランドの)Lirilさん、このCMを見てください”  / (すると、Lirilのブランドのパネルが裏返って”送金済み”の表示が) /  (その後、”ありがとう”や”我々のブランドのCMも作ってみてもらえません?”など、画面上に様々なブランドからの返信内容が表示される /

ビジネスインサイダー・インドの記事 ”10歳のChatpatくん、インターネット界を虜に” / 文字要素: ブランド・インプレッション +1506% / 企業からの寄付は61.5%上昇 / 男性「子どもたちはあなたを必要としています」 / ユニリーバの人「 Chatpatは私たちを虜にしました。誰がお返しせずにいられるでしょうか?」/

文字要素:寄付額は30万ドルを超え、なお増え続けている。 / SOS Children's Villages in IndiaのAkashさん「Chatpatは人気ブランドに呼びかけるための寄付の仕組みを私たちに提供してくれました」 / Chatpat「連絡してね!」

SNSが可能にした”善意の押し売り”

いかがでしたでしょうか?大きな予算を持つ人気ブランドのCMをハックし、そのパロディを勝手に作って広告するという”善意”の見返りとしてブランドに寄付を募るという、かなり強引なやり口です。

これが普及するとそれはそれで色々な問題が出てくるとは思うのですが、評価すべきなのはこれがオンライン上で衆人環視のもと、誰とも垣根なくコミュニケーションをとることを可能にするSNSが普及した世の中だからこそ可能になったアイデアだ、ということでしょう。

著作権などの意識も進んだ日本でこのアイデアをそのまま活用する、ということは難しいでしょうが、私たちの暮らしの中で、SNSならではの特性をまだ活用しきれていない部分はたくさんあると思いますし、寄付や募金もそうしたものの中の一つかもしれません。

そう考えた時にこの取り組みは、新しい寄付や募金の方法をはじめ、SNS時代ならではのエコシステム創出を考える上でとても良い参考事例になるのかな、と思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!