世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

「僅差の勝ち負け」を視覚化することで全米の投票者を動かしたSNSキャンペーン

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Photo by Element5 Digital on Unsplash

どうせ自分の一票なんて…を覆した「データに基づく表現」

気づけばアメリカの中間選挙、韓国の大統領選はもちろん、日本の夏の参議院選挙など、今年は選挙の一年となっています。国がある程度安定していると投票率が下がるのは日本だけではなく、世界各国でも一般的な傾向のようで、アメリカでも2020年の大統領選挙では投票率の向上はさほど見込まれていない状況でした。

今回は、そんな状況に一石を投じたアメリカで人気のソーシャルメディアReddit」の賢い取り組みを紹介します。

日本ではまだ無名と言っていいRedditですが、ユーザー登録すると、「野球」や「K-pop」などの趣味のスレッドに参加して、他の参加者たちと投稿を交わすことができます。良い内容の投稿には上向きの矢印のアイコンをクリックすることで投票(FBで言うlikeにあたるもの)することができます(詳しくはこちらの記事をご覧ください)。

今回のアイデアは、Redditがその「投票(VOTE)」機能に着目して2020年の大統領選挙前に実施した、とても説得力の高い取り組みになります。

世界的クリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2020/2021のアウトドア部門で金賞を獲得した取り組みです。それでは以下の紹介動画をご覧ください。

Reddit - Up The Vote (投票をアップしよう)」

www.youtube.com

[雑和訳] ナレーション「アメリカの選挙では、国民のほぼ半数が投票をしていません。なぜなら、彼らは自分が投票しても意味がないと思っているからです。しかし、2020年の大統領選挙はとても重要な選挙でした」 (*失業者や、BLM運動の映像がインサートされる)

ナレーション 「そこで、参加者の投票で運営されているソーシャルプラットフォームRedditは、そこでのさまざまな投稿に集まる投票を、実際の選挙に役立てることにしました。”Up the Vote”キャンペーンをご紹介します。

この取り組みでは、Reddit上の記事に集まった投票数の影響力を、これまでの実際の選挙結果と対比させることで表現

(*画面上ではRedditで537票を集めたネコの投稿の後に、過去のニュース記事「2000年の大統領選挙において、フロリダではわずか537票差で選挙結果が決まった」が入る。その後、Redditのデジタルディスプレイ広告として掲出された表現「2000年の大統領選挙では、わずか537票差で勝敗が分かれた。Redditでは、このネコに729票が集まった」が映し出される)

ナレーション「このキャンペーンでは、わずかな得票差が実際の選挙結果を左右することを、その際の票差と、それに近い票数を持つRedditの記事とをペアリングすることで示しました」(*画面上ではRedditのデジタルディスプレイ広告として掲出された表現「このアート作品はReddit上で、2018年にイリノイ州で州議会選挙で勝つための票よりも多くの投票を集めた」が映し出される)

ナレーション「私たちはこれらの広告をただ見てもらうだけでなく、Redditユーザーたちがシェアしたくなるよう、意図的に目立つデジタル屋外看板にて掲出。実際にたくさんのシェアが行われ、各地の広告をたくさん集めて、シェアしようとユーザーたちも団結してくれました。そしてさらに、このキャンペーンの看板についての投稿に集められた得票数に反応し、それを基にしたさらに新しい看板広告をアップするなど、インタラクティブな取り組みも行われました」

ユーザーの書き込み「やったぜ!自分の記事が看板に載った!」

ナレーション「我々はさらに、地理的な場所に合わせた内容のデジタル屋外看板と、そこから周辺のモバイル端末に配信されたデジタル広告で、周辺の人々をその場で選挙登録サイトへと誘導。フィルム、プリント、デジタルも露出を稼ぎ、デイリーユーザーへのリーチは5,800万を記録。12,000のユニークコメントと、90万のRedditへの投票を集め、4億500万のトータルインプレッションを記録しました」

ナレーション「でも何より重要なのは、33万2千人の人々を選挙登録サイトに導いたことです。これは、(2020年の大統領選挙において)全てのスイング・ステート*(*共和党民主党の支持が拮抗している州)で勝敗を分けた票差の合計数(31万1,257票)と、ほぼ同じになります。

たまたまかって?その通り。でも少なくとも、この取り組みが人々に投票の大切さについて、改めて見直す機会を与えたのは事実です。そして人々がRedditと、そのコミュニティの素晴らしさについて見直したことは言うまでもありません」

データの可視化の背後にある自虐的インサイトがお見事

いかがでしたでしょうか?この企画、SNS上の得票数を実際の選挙と対比させることで「1票の価値」を人々にわかりやすく可視化し、納得してもらうことに成功しています。

…というのは教科書的なまとめでして。

個人的には、このキャンペーンが他の似たようなアイデアよりも素晴らしいものになっている理由は、Redditのユーザーが日頃、いかにくだらないもの(失礼!)に投票をしているか、ということをReddit自身が認めた上で取り組んだ、いわば「自虐」の効いたアイデアになっているところだと思います。

さらにはそれを、Redditユーザーたちと一緒に「悪ノリ」することでさらに盛り上げていった点が、コミュニティビルディングの観点からいっても実に素晴らしいと思います。

この2点が起点としてあることで、この広告を目にした普通の(若干Redditを引いた目線で見ている?)人には「クスッと笑えつつ、心にグサッとくる」気がかりを与えることに成功してますし、同時にRedditユーザーたちには「さすがReddit、面白いね。俺たちをわかってるねぇ!」とロイヤルティを上げるきっかけになっています。

隠し事がほぼ何もできないSNS全盛時代。ブランドによっては、こうした計算ずくの「悪ノリ」ができるかどうかも今や、そのイメージ構築において大事なファクターとなっています。

各ブランドの中の人たちにとっては実に大変な時代ですが、最終的にはやはり透明性と愛と真心、そしてリアル・アクションを武器に乗り越えていくしかないのかな、と思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!