世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

カンヌの知恵を盗んでください。そして社員を盗んでください。

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Photo by Elevate on Unsplash

今回のブログの記事には、伝えたいことが2つあります。「カンヌの知恵を盗んでください」ということと、「社員を盗んでください」ということの2つです。

カンヌの知恵を盗んでください

先日、今年の6月にほぼフルオンラインで開かれたクリエイティビティの世界的祭典・カンヌライオンズに日本から参加した各部門の審査員たちによるシェアリングがまとめられたコンテンツが無料で公開されました。

簡単な登録は必要ですが、このブログの読者にはかなり役立つものと思います。2021年末まで見れるそうなので、閉じられてしまう前にぜひご覧ください。

www.canneslionsjapan.com

私もこれをみて、審査員たちの熱のこもったプレゼンに、記事を書くたびにうっすらと感じていた「今年のカンヌなんて書いてももう古い、て思われちゃうかな…」と思っていた迷いがなくなりました。

そもそもが自分の勉強のために始めたブログです。もちろん最新のネタもピックして参りますが、受賞作のクリエイティビティの質はやはり一級品ですので、一つ一つ丁寧に、これからもカンヌの今年の受賞作を紹介し続けていこうと思います。

そして社員を盗んでください

そしてもうひとつの伝えたいこと。上にご紹介した審査員たちによるシェアリングでも取り上げられていて特に素晴らしいな、と思ったキャンペーンを今回はご紹介させていただきます。

スタッフの80%が何らかのハンディキャップを持つ人たちで構成されているイギリスの石鹸メーカー、Becoが障がい者の雇用を広めるために行った挑戦的で、でも人間の暖かさが溢れているキャンペーンです。

ではこちらの、紹介ビデオをご覧ください。タイトルはズバリ「#StealOurStaff(#我々の社員を盗んでください)」です。

www.youtube.com

【雑訳】”一般人口の80%には職があるのに、職についている障がい者は48%しかいない”[障がい者が職につける確率は、50%少ない(世界経済フォーラム調べ)]”企業の90%は人材の多様性に重きを置いていると言っているにもかかわらず、障がい者を考慮している企業は4%だ”[イギリスでは、110万人の障害者が職探しに苦労している(イギリス国家統計局調べ)]

[Becoはその点、一味違う石鹸メーカー]「私は障がいじゃなくて、人間としての能力が評価されるべきだと思います」[Becoでは、スタッフの80%が障がい者(そしてスタッフの100%が素晴らしい)]「これは手話じゃなくて、こうすることで作業が捗るんです」[我々は、もっと多くの企業が我々のように雇用すべきだと考える]「他の雇用主もBecoのようにできると思います」「そして、彼らにチャンスを与えるのです」

[そこで我々は、他の雇用主たちを誘った…]"我々を盗…。"「あら、私のセリフ取らないで!”#我々社員を盗んでください”」[我々は、自社の石鹸のパッケージに彼らの履歴書をつけ][500以上の店舗に並べた]「それが皆様が、イギリス中のBecoの商品で我々の履歴を目にした理由なんです」”そして3つの工場のスタッフが、自身の履歴を記したソープボトルを手に取った”「お前はハンサムだよ、マイケル」「おお、ありがとう自分」

[そして][ターゲットは][至る所に]【親愛なるリチャード・ブランソンさんへ】【カールスバーグ社の皆さん。あなたたちは世界一優秀なスタッフを雇えますよ。多分ね。】【我々のスタッフを盗んでください。Just do it.】【ジレットさん、上司が求める最高のスタッフ、いかがですか?】【ステファンに会ってみよう】【私はステファンを盗みたい】

[我々は無視されていた存在を][見逃せないものに変えた]「あなた、私に似てますがそこ(ボトルのラベル)で何をしてるんですか?」「あなたを有名にしてるんです」「ハハハ…」「あなたにも良くて、みんなにも良いことなんです」*各種メディアからのコメントが抜粋される

[売上は96%向上][Web上のトラフィックは1600%の向上を見せた][そして、40を超えるブランドから接触があった]「必要なのはチャンスで、それで人生がまるで変わってくる、ということもあると思います」「もっと多くの会社がBecoのようなことを試み、採用を進めてくれるといいと思います」[Beco #社員を盗んでください]

「ブランド体験」の教科書的事例

いかがでしたでしょうか?私はこのビデオの中にある、「我々は無視されていた存在を、見逃せないものに変えた(”We made the invisible hard to miss.”)」という一節が大好きです。

息が詰まりそうなほど大量の情報を消費しながら生きている人たちが(自分含め)大半の中、どうやったら人々に認知し、立ち上がってもらえるのか。ここを考え抜き、実行することが障害者の雇用だけでなく、全ての社会課題の解決のために不可欠な「思考の基盤」なのだと思います。

そしてもうひとつ。あなたがこれから立ち寄るスーパーマーケットでもしも突然、いつもの石鹸を売る棚の一角が履歴書のパッケージになっていたらどう思うでしょうか?

おそらく他の石鹸のブランドとは明らかに異なるブランドとして認知するでしょうし、それを手に取り、買うことによって彼らを支援しているような、いい気分になることでしょう。

値段の安さだけでは決して作れない”心のドラマ”がそこにはありますし、それこそがまさに「ブランド」体験なのです。

…ということで単なる社会的課題の解決だけでなく、それをしっかりと自社ブランドの確立と売上向上にも結び付けたところが、このキャンペーンが世界的に高い評価をうけた理由のひとつだと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!