世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

ジェンダー問題に「就活」の角度から切り込んだ日本発キャンペーン

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Photo by James A. Molnar on Unsplash

性的マジョリティには気づきにくい就職活動の”壁”

東京の桜は近年、3月の終わりには散ってしまうことが多いのですが、今年はこの記事の執筆日(4月2日)現在、まだ桜は咲いているようです。

ということで昨日は花びらが舞い散る中、多くの新入社員が入社式を迎えたことと思います。(残念ながらリモートでの入社式が多かったのかな、とは思いますが…。)過酷な就職活動を乗り越えて社会人となった皆さん、おめでとうございます!

ということで今回は、性的マジョリティの人々が感じにくい、就職活動におけるLGBTQの人々の精神的な「壁」を見事に問題提起したパンテーンのキャンペーンをご紹介します。

先日行われたアジア太平洋・アセアニア地域におけるクリエイティビティの祭典Spikes Asiaのソーシャル&インフルエンサー部門でグランプリを獲得したアイデアです。

「#PrideHair この髪が私です」

www.youtube.com

「ブランドが意見する時代」の教科書的取り組み

いかがでしたでしょうか?多くの性的マジョリティにとっては「どちらの性別で就活すれば良いのだろう?」という悩みがあること自体が盲点だったと思います。

さまざまな調査によると、日本では人口の10%前後がLGBTだといわれています。「左利きの人とさほど変わりのない比率」で存在しているそうで、そう考えるとその比率の高さがイメージしやすいのではないでしょうか?

私も左利きですが、職場でも、最近ではCMでタレントがお箸を使っているシーンなどでも「あ、この人左利きなんだ」と親しみを感じることが多いです。

それを同じ比率で性的マイノリティが存在しているという数値と、日常生活での実感値とのギャップを考えると、かなり多くの人たちが公の場所で「自分の本来の性」を隠していることがわかります。

人間は、本来の自分でいることを認められたときにその個性を伸び伸びと、ポジティブに発揮します。なのにそれを発揮できず、男じゃないのに「男なんだから気合いで乗り越えろ」とか、女じゃないのに「女らしくしなやかに立ち振る舞いなさい」など、頓珍漢なことを言われて暮らしていかなければならない人々がこの社会に10%いた、という事実は性的マジョリティにとってかなりの衝撃なのではないでしょうか?

このムービー、性的マジョリティにとってはLGBTQの身近さに気づかせてくれる第一歩となりますし、LGBTQの皆さんにとっても励みになるムービーだと思います。

さらにいいな、と思うのは、これが髪の毛を扱うブランドによって制作されたムービーであることです。

髪の毛は体の一部で、とてもパーソナルなものでありながら、同時にそのスタイルで社会的な意味が変わってくる、自己と社会の橋渡しとなるパーツです。

そのパーツを扱うヘアケアブランドとして、「しなやかな洗い上がり」や、「髪、より艶やかに」といった機能的ベネフィットから離れ、あるべき自己と社会の関係について意見を発し始めたというのは、すこぶる21世紀的なマーケティング手法といえるでしょう。

実はパンテーンは日本市場において数年前から、他に先駆けてこのような「ブランドが意見する」取り組みを始めている稀有な存在です。

ideasforgood.jp

この動きが今後どう展開されていくのか?そして、この流れに乗って意見を表明しはじめる他のブランドが現れるのか?期待を込めて見てまいりたいと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!