世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

ショッピング=新品を買う、の時代の終わり

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Photo by freestocks on Unsplash

私が子供の頃の1980年代、ショッピングといえばまだこの世で一番楽しい行為のひとつで、たくさんお金を稼いだら、まだ他の人が手に入れていない新しいものを買って見せびらかす、ということが本気でイケていると信じられていた時代でした。

時は移り変わり、大量消費・大量生産の時代が曲がり角を迎える中、さまざまなブランドの買い物に対するスタンスは、消費者の変化に後押しされる形で変化してきています。

今回は、その代表的な事例のひとつとして、2019年のBlack Friday(ホリデーシーズンの到来とともに、欧米一体で大規模な安売りが実施される11月の第4金曜日)にデンマークIKEAが行った試みをご紹介します。

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【雑和訳】(*シンプソンズより)「ご紹介します、スウェーデンの”パ”イケア社製造のロボットです!」「俺の国の手頃なガラクタを堪能してくれ!」<バキッ!←壊れるw>

IKEAはいつもお手頃価格。だからIKEAは品質も低いと考える人たちがいる。そこで、IKEAの家具は長持ちするだけでなく、再利用ができることを示すために、そして(その高品質ゆえに)毎年廃棄されている、900万トンもの他の家具とともに廃棄される必要もないことを示すためにIKEAは立ち上がった。 IKEA提供「Black Fridayの”再”セール」。

世界初・過剰消費に歯止めをかけるためのBlack Fridayのセール。それは、新品よりも古いものを買うことをお勧めするセール。「おかしくないよ。再利用する方が(環境には)ずっといいんだ。」Black FridayIKEAは思いもよらないことをした。当日、IKEAの販売サイトに家具を買いに訪れた人々に向けて、完全に再利用が可能な、1,600品以上のIKEAの中古品を揃えるサイトへのリダイレクトを促したのだ。人々が2回でも、3回でも、何度でも、お互いにIKEAの家具をやり取りできるように。テレビ番組のホスト:「家具の大手、IKEAは今年、Black Fridayに参加しません。代わりに我々に、中古品を買って欲しいそうです。」(*ここで、関連ニュース報道のヘッドラインがいくつか入る)しかし、我々の試みはここで終わらない。我々は、デンマークの人々が一年中、IKEAの中古品売買ができるプラットフォームをローンチ。この試みはデンマークの67%の人々に知られ、4万人の人々を中古サイトにリダイレクトした。しかし何より大切なことは、この試みによりお金より大切なものをセーブ(save;「節約する」と「救う」のダブルミーニング)するよう、消費者たちをインスパイアしたことである。IKEA

IKEAはこの試みの成功を受け、昨年(2020年)の秋には日本を含む全世界でサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に貢献すべく「BuybackFriday(買い取りの金曜日)」という試みを実施。世界27カ国のIKEAストアにて、数千点に及ぶ中古品を買い取り、販売したそうです。

こういった、新品を売るだけではなく、中古品も活用していこうという動きはファッション&アパレル業界にも広がっていて、パタゴニアや、ナイキもそれぞれのやり方で中古品を活用するための取り組みを行なっています。

詳しくは以下のリンク先をご確認ください。

wornwear.patagonia.jp

www.nike.com

近頃はもはや企業やブランドがメッセージを発信するためのソーシャル・グッドな「キャンペーン」だけでは生活者の心を動かすことはできず、ブランドや企業には今回ご紹介したような実際の「アクション」が求められているんだな、とひしひしと感じます。

(そういう意味では、「キャンペーン」で終わるこのブログのタイトルもそろそろ賞味期限が切れているのかな、と感じますが、もう少し様子を見てみることにします。)

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!

レシピは「主婦」だけのもの?

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Photo by Dan Gold on Unsplash

今も本屋に行くと棚にズラリと並ぶレシピ本。「簡単!お弁当のおかず」や「残り物でこんなにおいしい!」、「5分でできる時短レシピ!」など、あらゆる角度から各出版社がしのぎを削っていますが、そこに書かれているレシピのほとんどには、ある共通項があります。

それは”ひとりで作る”前提であること。しかしこの時代、そのような料理の時間もパートナー間でシェアをするべき!ということで、インドのスーパーマーケット宅配サービスSwiggy Instamartが、このようなユニークなレシピ本を開発しました。以下のプロモーション用ムービーをご覧ください。

<ざっくり和訳> レシピ本は4世紀の発祥以来16世紀もの間、ひとりで作るもの、という前提で書かれてきた。しかし、それって変えちゃダメなの?…紹介します、Swiggy Instamartの「より良い半分のレシピ本」ー2人前を、2人で作ろう!(画像解説:レシピ本の背表紙のスプーンが外れると、レシピ本が文字通り半分に分かれ、2冊になる)”調理を平等に、時間を半分に”。ひとりだと46分かかるレシピも、このレシピならたったの26分でできる。食材は記載のQRコードからSwiggy Instamartでオーダーするだけ。自分のサイドの本のレシピに従って、料理を一緒に完成させよう。世界中からの料理の調理も割り勘に。この本で、キッチンにも平等を。あなたがあなたのもう半分(=パートナーのこと)とキッチンに立つ写真に「#より良い半分のレシピ本」をつけてシェアすれば、無料でこの本が当たるチャンス!Swiggy Instamart、30分から45分でご自宅に雑貨をお届けします。グルグラムとベンガルル地域限定です。

そうです。Swiggy Instamartは料理における「家事の分担」を促進するために、一人がパートナーとでレシピを文字通り「半分に」分けられるレシピ本を開発したのです。

この本の素晴らしいのは「家事を半分に分けましょう」というだけでなく、パートナーと力を合わせることで家事の時間が半分に減らせる、というメリットもきちんとアピールしているところ。

私も残念ながら普段の料理はパートナーに任せるか、たまに作ると大作になり呆れられるかのどちらかなのですが、こういうレシピがあれば時短にもなるし、やってみてもいいかな、と思いました。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!

本名から「本当の自分」の名前へ。マスターカードが取り組んだ素敵な試み

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Photo by Markus Winkler on Unsplash

自分も含め、当事者でない限り気づきにくい悩みが、LGBTQ+の人たちにはたくさんあります。その悩みのひとつが、クレジットカードによる買い物。

皆様、その理由がなぜかわかりますか?

今回は種明かしをする前に、その悩みの解消のためにマスターカードが取り組んだ勇気ある取り組みをご紹介します。以下のムービーをご覧ください。

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<雑訳>トランスジェンダーの人の声「トランスジェンダーの人たちにとって「安全な支払い」というのは、自分のカードで他人にスニーカーなどを買われてしまう不安がない、ということではない。トランスジェンダーの人たちにとって安全な支払いとは、見下されたり、質問されたり、鼻で笑われたり、侮辱されたり、嫌がらせされたり、時には殴られたり…。カードの名前が見た目と違うというだけの理由で、そんな目に合わないことだ。大事なのは、カードが安全であることだけじゃない。カードを使う我々を守ってくれること。それも大事なことなんだ。…マスターカードの”True Name(本当の名前)カード”。そのほうが自分らしいから、と自分で選んだ名前で使える、初めてのカード。」

そうなんです。言われてみないと気づきませんが、これまでは自分が女性の気持ちを持っている、と気づいた「太郎さん」という男の人が女性名を使い、女性として生きることに決めても、クレジットカードの名前は本名の「太郎さん」のままで買い物しなくてはいけませんでした。そうなった場合の、”もと”太郎さんが買い物のたびに感じる心理的負担はいかばかりか…。

そこでマスターカードは、戸籍などに登録された本名の代わりに、自分のアイデンティティに紐づいた「本当の自分」らしい名前で使えるカードを開発した、ということになります。

その背景をより詳細に説明したムービーも以下に置いておきますので、ご興味のある方はぜひ、ご覧ください。*字幕の設定を日本語にしてご覧いただけます。

www.youtube.com

ムービーによると最初は、このカードの取り扱いについて全く乗り気でなかったシティバンクなどの金融機関も、人々やメディアの反響を受けて取り扱うことに決めたとか。

イデアが一時的な賑やかしだけでなく、業界自体の常識を変えた、というところがまた、このアイデアの圧倒的に素晴らしいところだと思いますし、アイデアが社会にもたらす善の可能性を信じている身としては、勇気づけられる事例です。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!

サッカーにおけるジェンダーギャップに立ち上がった女性たち

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Photo by Lars Bo Nielsen on Unsplash

去年の記事(男子との格差が消えない女子プロスポーツを支援するアイデアあれこれ)でも触れましたが、スポーツニュースなど、メディアなどで紹介されるスポーツに関する話題の中で、女子スポーツが占める割合はアメリカでもたったの4%だそうです。日本でも、女子スポーツの扱いがどうしても「付随的」な扱いなのは否めないところだと思います。(この無意識な区別は、例えば女性によるサッカーは女子サッカーというのに、男性によるサッカーは「男子」サッカーとはあまり言われない、という無意識の言葉遣いにも表れているところです。)

このようなジェンダーによる女性アスリートの機会損失は、アメリカ、日本にとどまりません。今回取り上げるのは、南米各国の国家代表を務める女子サッカー選手たち。南米といえばブラジル、アルゼンチンなど世界を代表するサッカー大国が集まったエリアのイメージが強いですが、それは男子に限っての話。メッシなどが裕福な生活を楽しむ一方、女子サッカーへのサポートはかなり貧弱で、選手のほとんどは副業を持たなければ生活していけない状況だそうです。

そんな状況を打開しようと、2019年の女子ワールドカップを機に、同大会の放映権を持つ南米のテレビ・ネットワークTelemundoは、南米各国の女子代表チームの選手たちと共にインパクトあふれる取り組みを行いました。まずは以下の紹介ムービーをご覧ください。

vimeo.com

<ざっくり和訳>

メッシ、ネイマールスアレス。彼らは小さな頃から、男子サッカーで生計を立てることを夢見てきた。しかし、女の子がそれを目指すとどうなるのだろうか?女子サッカーのプロ選手の実に約半数は、副業をしなければ食べていけない状況だ。この状況の打開を求める彼女たちの声は、もっと世間に知られ、理解され、サポートされるべきである。司会者「給与は支払われてるんですか?」選手「いいえ」司会者「生計はどう建てているんですか?」選手「副業をしています」そこで、2019年FIFA女子ワールドカップの公式テレビ・ネットワークTelemundoは動いた。もし、彼女たちが副業を求めているなら、我々が与えれば良いではないか。”ブラジル、Erika Dos Santos選手”, ”チリ、Su Helen Galaz選手”, ”アルゼンチン、Vanina Correa選手” 我々は3人の女子プロサッカー選手たちにそれぞれ、自局の番組でレポーター、パネリスト、気象予報士やスポーツキャスターを務めてもらう日を設けた。そうすることで、彼女たちに副業を与えただけでなく、世界中の女子サッカー選手たちが直面している問題を世に広めるプラットフォームを提供したのだ。(Erika選手が気象予報中に問いかける)「なぜ私が気象予報をしているかわかりますか?なぜなら、女子サッカー選手の半数以上が、(私のように)副業をしないと生活できないからです。あなたに女子ワールドカップを見てもらうことで、その状況を少しでも変えてほしいと思います。」結果、Telemundoは同大会史上、最多の視聴者数を記録。その前の2015年の大会に比べ、27%の伸びを記録した。しかしこれは、次世代の女子サッカー選手たちが、(副業なしに)普通のプロ選手として活躍するための始まりに過ぎない。

人々に女子サッカーをもっと見てもらう、だけでなく、そこに彼女たちが直面する困難を織り交ぜることで見る人には、単に勝ち負けの応援だけでなく、彼女たちの人生全体への応援の気持ちが生まれたことと思います。

敗北から勝利へ、という物語のフォーマットだけをなぞった感動ポルノがあふれるスポーツ界ですが、そういう中で一つ、誰もが無意識に許容してきた社会的な理不尽(Systemic Sexism)に異を唱えるこの取り組みは勇敢ですし、見る側にも、当たり前の日常にクエスチョン・マークをもたらすいいきっかけになったと思います。

今回はおまけに、ブラジルの女子サッカー選手Andressa Alvesさんの幼少期を見事に描いた、ナイキの痛快な ムービーをご覧ください。女性だから、と人形ばかりをあてがわれてきた天才少女の第一歩を描いた、お気に入りの1本です。

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いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!

青少年の健全な成長のために。遺族とサッカー界がコラボした感涙アイデア

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Photo by Abigail Keenan on Unsplash

2006の5月18日、英国サッカー界の未来に貢献することを大いに期待されていた15歳の少年Prince Kiyan君は学校の近くで若者同士の喧嘩の仲裁に入り、ナイフで胸を刺されて死亡してしまいました。

それから15年。生きていれば今頃30歳だった彼は、父親が設立したチャリティー団体の取り組みにより再び、人々の記憶の片隅から呼び起こされました。若者の健全な成長を促すことで、青少年の犯罪による犠牲をなくしたい、という思いとともに。

それでは彼の記憶は、どのように呼び起こされたのでしょうか?「彼の人生は2つある。ナイフを持った若者に殺された人生と、生きていた場合の、もっと力強い人生だ」で始まり、若者に誇りを持って生きることの大切さを熱く語る父親の語りに誰もが心を動かされること間違いない、以下の紹介ムービーをご覧ください。

(ちなみのこちらの取り組み、この記事をアップした後日、カンヌライオンズ2022にてチタニウム部門でグランプリを獲得するなど、非常に高い評価を得たアイデアになります。)

「Long Live the Prince / プリンス選手よ、永遠に」

www.youtube.com存命中、QPR(クイーンズ・パーク・レンジャーズ)というプロチームのユースアカデミーでも抜きん出た才能を発揮していた彼。生きていたら今頃きっと、一流選手としてQPRを牽引していたであろう…という思いとともに、父親とそのチャリティー団体は15年分、歳をとったプリンス選手のリアルな3Dビジュアルを制作。

QPRと”バーチャル”選手契約を交わすことで、彼の命日をきっかけにトレードカードやFIFAのテレビゲームの中に、QPR所属のベテラン選手として彼を復活させたのです。

デジタル技術を使った死者の復活、という手法は今やよくあるものですが、大事なのはその文脈です。サーカスの見せ物のように亡くなった方を利用するアイデアにはもううんざりですが、我が子の死を無駄にしたくない、という父親の気持ちと、こんなに輝かしい未来を破壊してしまう青少年による犯罪の残酷さが胸に迫る、というふたつの点で、この取り組みは素晴らしいと思いました。

執筆時からたった4日前に実施されたこの試みですが、ざっとネットをサーチする限り、すでにイギリス国内外で大きな反響を呼んでいるようです。

ちなみにイギリス国内限定だとは思いますが、70490に”KPF L5(5ポンド)"とテキストすると、その金額が父親が設立したKiyan Prince基金を通じて現地の若者の健全な成長に役立てられるそうです。

いやぁ、アイデアって本当にイイもんですね。それではみなさん、また来週!

「どうぶつの森」のカブを使った見事なドネーションアイデア

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Photo by steffi borg bartolo on Unsplash

このご時世、ソーシャル・ディスタンスや外出の自粛が続く中、街頭で募金を募るのはなかなか難しいと思います。

しかしそんな中、1年前もその素晴らしい取り組みを記事として取り上げたHellmann'sがまたやってくれました。

どうぶつの森を使い、適切なタイミング(クリスマス)に、適切なアイデアで行われた取り組みです。では、いつものように以下のケースフィルムをご覧ください。 

www.youtube.com

<雑訳> 

どうぶつの森のクリスマスは、喜びのひととき!人々は友達を招待して、パーティを開きます。内装もムードたっぷりに準備して、ホストは一日中料理を仕込みます。焼いたり、煮たりのご馳走を用意して。それでは、いただきましょう!と思ったら、カブが腐っていることに気づいてしまいました。なんということでしょう。もうクリスマスはおしまいです…。みんなが悲観に暮れる中、一人のゲストが閃きました。「あ、腐ったカブがカネになる場所を知ってるよ!」そこでみんなは空港に行きました。「Hellmann's島行きのチケットをください!」そしてHellmann's島に到着すると、みんなはその島の畑に、腐った株をひとつ置きました。なんという善行でしょう!これで、Hellmann'sから(現実世界の)恵まれない人たちに2食分の食事が与えられることになりました。私たちは、思いがけずもまた、「食材は無駄にするには素晴らしすぎる」ということを知りました。そしてそれは、今年最高のクリスマスプレゼントとなったのです。

スーパー「この取り組みを通じて、フェアシェア・フードバンクに5万食を寄付してくれた人々に感謝します。Hellmann'sより」

いかがでしたでしょうか?日本でも昨年のクリスマスは、コロナ下であまりやることがなくて久しぶりにどうぶつの森をプレイした人も多かったのではないでしょうか?特にこの取り組みが行われた英国では当時、感染の拡大が深刻で家に閉じこもりきりの人も多かったと思います。

そんなタイミングでこのアイデアを実施した、というところがまず素晴らしいですし、さらにこのアイデアは過去記事でも取り上げました「食べごろを過ぎた食材を活かす(Food's too good to waste)」というHellmann'sブランドの信条とも一貫していて、生活者にHellmann'sブランドへの信頼と愛着がしっかりと貯金される、素晴らしい取り組みだな、と思いました。

ちなみに小ネタではありますが、彼らはどうぶつの森のプレイヤーが入手できる”無駄にされそうな醜いブロッコリのジャンパー”など、「食べごろを過ぎた食材をデザインモチーフにしたオリジナルファッション」のコードを公開しつつ、実世界でそれらの食材を活かすための(Hellmann'sのソースやドレッシングを使った)レシピを公開しています↓。

www.hellmanns.com

↓あと、念のため去年取り上げたHellmann'sのアイデアをここに貼っておきますね。今回のアイデアの実世界版、とも言えると思います。

wsc.hatenablog.com

 いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。

それでは皆さん、また来週!

デジタル技術の活用で、もっと「インクルーシブ」な社会へ

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Photo by Nathan Anderson on Unsplash

昨今、日本社会でも嬉しいことにダイバーシティ(Diversity/多様性=異なる立場や価値観、LGBTQ+、文化的背景を持つ人々を受け入れること)の大切さが叫ばれるようになってきました。

しかし、多様性の面で先をいく世界の他の地域では、単に多様な人々を受け入れるだけでは不十分で、その前に彼らが「それぞれの価値」を存分に発揮するための基盤が社会に包含されていなければ意味がない、という考えが主流になってきております。

他の言葉で言い換えるとダイバーシティに満ちた、活力あふれる社会を作るには、まず社会が多様な人々に対して十分に「インクルーシブ(包括・包容的)」であることが大前提となってきているわけです。

ということで今回は、デジタル化されゆく世界のなかで、マイノリティの人々にとってもよりインクルーシブな社会を実現すべく行われているキャンペーンをご紹介します。

以下の紹介ムービーをご覧ください。

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<ざっくり和訳>

2023年までに、世界中の音声アシストサービスは80億を超えるといわれている。しかしそのほとんどは、ダウン症の人々の音声を理解するようには開発されていない。

Googleスマートスピーカー「(*ダウン症のユーザーの声に対して)すみません。何をおっしゃられたか理解できません。」

ダウン症の娘の父親「娘は比較的口が小さく、舌が長いんです。口の中にマシュマロを入れて話している感じ、とでもいいましょうか。」

グーグルの技術者1「音声でデバイスに指示を出す、という行為は日常化してきています。その中で自分の声がきちんと認識されない、というのはやる気が削がれますし、社会から取り残された気分になるでしょう。」

(彼らにとって)音声認識技術が使えるようになることは、人生を変えるような自立の機会となりうるだろう。

そこで、カナダ・ダウン症ソサエティGoogleに赴き、彼らの音声技術の学習をサポートすることにした。

Googleの技術者2「カナダ・ダウン症ソサエティとのパートナーシップには本当にワクワクしています。我々のゴールは、喋り方が異なる人たちに対する音声認知技術を改善することです。」

ダウン症の人々「(*口々に)私がGoogleに教えているんです!」

Googleの技術者3「Google音声認識技術はダウン症の人々の話し言葉の3分の1を認識できないので、彼らにとって使いやすい、とはいえない状況です。」

Googleの技術者2「我々はダウン症の人々に、サイトにアクセスして、彼らの声や音声を登録するボランティアに参加して欲しいと考えています。」

彼らの声は全て、Google音声認識アルゴリズムを改善するためのデータベースに活用される。

ダウン症の娘の父親「より多くの声が集まれば、より良い音声技術を手に入れることが可能になります。」

Googleの技術者3「これが基礎的な周波数で、これがどのように動いてあなたの声に対応するかを見ているんです。」

ダウン症の人「このプロジェクトに参加して実感したのが、この取り組みが本当に多くの人々の役に立つのだ、ということです。」

関係者の女性「この音声技術は声なき人々に声を与える、とても大切なものだと思います。こんなことが可能な世界に住んでいる、ということ自体が素晴らしいことだと思います。」

Googleはたくさんのことを教えてくれている。しかし今、彼らは我々の助けを求めている。あなたの声を、ProjectUnderstood .caに登録しよう。

ダウン症の人2「ありがとう、Google。」

Googleスマートスピーカー「どういたしまして。」

-Project Understood 

これまでインクルーシブな社会実現のための取り組みというと、どうしてもマイノリティの人に「施す」ような、上から目線のものになりがちだったと思うのですが、この取り組みはむしろ、事態の改善のためにダウン症の人々から支援を「求める」構造になっているところが素晴らしいし、時代だな、と思いました。

もう一つ声がらみの素晴らしい取り組み、ということで、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行で声を失った人のために、デジタル技術でその声を復活させた「Project Revoice」の紹介ムービーを置いておきます。

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いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!