世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

青少年の健全な成長のために。遺族とサッカー界がコラボした感涙アイデア

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Photo by Abigail Keenan on Unsplash

2006の5月18日、英国サッカー界の未来に貢献することを大いに期待されていた15歳の少年Prince Kiyan君は学校の近くで若者同士の喧嘩の仲裁に入り、ナイフで胸を刺されて死亡してしまいました。

それから15年。生きていれば今頃30歳だった彼は、父親が設立したチャリティー団体の取り組みにより再び、人々の記憶の片隅から呼び起こされました。若者の健全な成長を促すことで、青少年の犯罪による犠牲をなくしたい、という思いとともに。

それでは彼の記憶は、どのように呼び起こされたのでしょうか?「彼の人生は2つある。ナイフを持った若者に殺された人生と、生きていた場合の、もっと力強い人生だ」で始まり、若者に誇りを持って生きることの大切さを熱く語る父親の語りに誰もが心を動かされること間違いない、以下の紹介ムービーをご覧ください。

(ちなみのこちらの取り組み、この記事をアップした後日、カンヌライオンズ2022にてチタニウム部門でグランプリを獲得するなど、非常に高い評価を得たアイデアになります。)

「Long Live the Prince / プリンス選手よ、永遠に」

www.youtube.com存命中、QPR(クイーンズ・パーク・レンジャーズ)というプロチームのユースアカデミーでも抜きん出た才能を発揮していた彼。生きていたら今頃きっと、一流選手としてQPRを牽引していたであろう…という思いとともに、父親とそのチャリティー団体は15年分、歳をとったプリンス選手のリアルな3Dビジュアルを制作。

QPRと”バーチャル”選手契約を交わすことで、彼の命日をきっかけにトレードカードやFIFAのテレビゲームの中に、QPR所属のベテラン選手として彼を復活させたのです。

デジタル技術を使った死者の復活、という手法は今やよくあるものですが、大事なのはその文脈です。サーカスの見せ物のように亡くなった方を利用するアイデアにはもううんざりですが、我が子の死を無駄にしたくない、という父親の気持ちと、こんなに輝かしい未来を破壊してしまう青少年による犯罪の残酷さが胸に迫る、というふたつの点で、この取り組みは素晴らしいと思いました。

執筆時からたった4日前に実施されたこの試みですが、ざっとネットをサーチする限り、すでにイギリス国内外で大きな反響を呼んでいるようです。

ちなみにイギリス国内限定だとは思いますが、70490に”KPF L5(5ポンド)"とテキストすると、その金額が父親が設立したKiyan Prince基金を通じて現地の若者の健全な成長に役立てられるそうです。

いやぁ、アイデアって本当にイイもんですね。それではみなさん、また来週!