世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

サッカーにおけるジェンダーギャップに立ち上がった女性たち

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Photo by Lars Bo Nielsen on Unsplash

去年の記事(男子との格差が消えない女子プロスポーツを支援するアイデアあれこれ)でも触れましたが、スポーツニュースなど、メディアなどで紹介されるスポーツに関する話題の中で、女子スポーツが占める割合はアメリカでもたったの4%だそうです。日本でも、女子スポーツの扱いがどうしても「付随的」な扱いなのは否めないところだと思います。(この無意識な区別は、例えば女性によるサッカーは女子サッカーというのに、男性によるサッカーは「男子」サッカーとはあまり言われない、という無意識の言葉遣いにも表れているところです。)

このようなジェンダーによる女性アスリートの機会損失は、アメリカ、日本にとどまりません。今回取り上げるのは、南米各国の国家代表を務める女子サッカー選手たち。南米といえばブラジル、アルゼンチンなど世界を代表するサッカー大国が集まったエリアのイメージが強いですが、それは男子に限っての話。メッシなどが裕福な生活を楽しむ一方、女子サッカーへのサポートはかなり貧弱で、選手のほとんどは副業を持たなければ生活していけない状況だそうです。

そんな状況を打開しようと、2019年の女子ワールドカップを機に、同大会の放映権を持つ南米のテレビ・ネットワークTelemundoは、南米各国の女子代表チームの選手たちと共にインパクトあふれる取り組みを行いました。まずは以下の紹介ムービーをご覧ください。

vimeo.com

<ざっくり和訳>

メッシ、ネイマールスアレス。彼らは小さな頃から、男子サッカーで生計を立てることを夢見てきた。しかし、女の子がそれを目指すとどうなるのだろうか?女子サッカーのプロ選手の実に約半数は、副業をしなければ食べていけない状況だ。この状況の打開を求める彼女たちの声は、もっと世間に知られ、理解され、サポートされるべきである。司会者「給与は支払われてるんですか?」選手「いいえ」司会者「生計はどう建てているんですか?」選手「副業をしています」そこで、2019年FIFA女子ワールドカップの公式テレビ・ネットワークTelemundoは動いた。もし、彼女たちが副業を求めているなら、我々が与えれば良いではないか。”ブラジル、Erika Dos Santos選手”, ”チリ、Su Helen Galaz選手”, ”アルゼンチン、Vanina Correa選手” 我々は3人の女子プロサッカー選手たちにそれぞれ、自局の番組でレポーター、パネリスト、気象予報士やスポーツキャスターを務めてもらう日を設けた。そうすることで、彼女たちに副業を与えただけでなく、世界中の女子サッカー選手たちが直面している問題を世に広めるプラットフォームを提供したのだ。(Erika選手が気象予報中に問いかける)「なぜ私が気象予報をしているかわかりますか?なぜなら、女子サッカー選手の半数以上が、(私のように)副業をしないと生活できないからです。あなたに女子ワールドカップを見てもらうことで、その状況を少しでも変えてほしいと思います。」結果、Telemundoは同大会史上、最多の視聴者数を記録。その前の2015年の大会に比べ、27%の伸びを記録した。しかしこれは、次世代の女子サッカー選手たちが、(副業なしに)普通のプロ選手として活躍するための始まりに過ぎない。

人々に女子サッカーをもっと見てもらう、だけでなく、そこに彼女たちが直面する困難を織り交ぜることで見る人には、単に勝ち負けの応援だけでなく、彼女たちの人生全体への応援の気持ちが生まれたことと思います。

敗北から勝利へ、という物語のフォーマットだけをなぞった感動ポルノがあふれるスポーツ界ですが、そういう中で一つ、誰もが無意識に許容してきた社会的な理不尽(Systemic Sexism)に異を唱えるこの取り組みは勇敢ですし、見る側にも、当たり前の日常にクエスチョン・マークをもたらすいいきっかけになったと思います。

今回はおまけに、ブラジルの女子サッカー選手Andressa Alvesさんの幼少期を見事に描いた、ナイキの痛快な ムービーをご覧ください。女性だから、と人形ばかりをあてがわれてきた天才少女の第一歩を描いた、お気に入りの1本です。

www.youtube.com

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!