昨今、日本社会でも嬉しいことにダイバーシティ(Diversity/多様性=異なる立場や価値観、LGBTQ+、文化的背景を持つ人々を受け入れること)の大切さが叫ばれるようになってきました。
しかし、多様性の面で先をいく世界の他の地域では、単に多様な人々を受け入れるだけでは不十分で、その前に彼らが「それぞれの価値」を存分に発揮するための基盤が社会に包含されていなければ意味がない、という考えが主流になってきております。
他の言葉で言い換えるとダイバーシティに満ちた、活力あふれる社会を作るには、まず社会が多様な人々に対して十分に「インクルーシブ(包括・包容的)」であることが大前提となってきているわけです。
ということで今回は、デジタル化されゆく世界のなかで、マイノリティの人々にとってもよりインクルーシブな社会を実現すべく行われているキャンペーンをご紹介します。
以下の紹介ムービーをご覧ください。
<ざっくり和訳>
2023年までに、世界中の音声アシストサービスは80億を超えるといわれている。しかしそのほとんどは、ダウン症の人々の音声を理解するようには開発されていない。
Googleのスマートスピーカー「(*ダウン症のユーザーの声に対して)すみません。何をおっしゃられたか理解できません。」
ダウン症の娘の父親「娘は比較的口が小さく、舌が長いんです。口の中にマシュマロを入れて話している感じ、とでもいいましょうか。」
グーグルの技術者1「音声でデバイスに指示を出す、という行為は日常化してきています。その中で自分の声がきちんと認識されない、というのはやる気が削がれますし、社会から取り残された気分になるでしょう。」
(彼らにとって)音声認識技術が使えるようになることは、人生を変えるような自立の機会となりうるだろう。
そこで、カナダ・ダウン症ソサエティはGoogleに赴き、彼らの音声技術の学習をサポートすることにした。
Googleの技術者2「カナダ・ダウン症ソサエティとのパートナーシップには本当にワクワクしています。我々のゴールは、喋り方が異なる人たちに対する音声認知技術を改善することです。」
ダウン症の人々「(*口々に)私がGoogleに教えているんです!」
Googleの技術者3「Googleの音声認識技術はダウン症の人々の話し言葉の3分の1を認識できないので、彼らにとって使いやすい、とはいえない状況です。」
Googleの技術者2「我々はダウン症の人々に、サイトにアクセスして、彼らの声や音声を登録するボランティアに参加して欲しいと考えています。」
彼らの声は全て、Googleの音声認識アルゴリズムを改善するためのデータベースに活用される。
ダウン症の娘の父親「より多くの声が集まれば、より良い音声技術を手に入れることが可能になります。」
Googleの技術者3「これが基礎的な周波数で、これがどのように動いてあなたの声に対応するかを見ているんです。」
ダウン症の人「このプロジェクトに参加して実感したのが、この取り組みが本当に多くの人々の役に立つのだ、ということです。」
関係者の女性「この音声技術は声なき人々に声を与える、とても大切なものだと思います。こんなことが可能な世界に住んでいる、ということ自体が素晴らしいことだと思います。」
Googleはたくさんのことを教えてくれている。しかし今、彼らは我々の助けを求めている。あなたの声を、ProjectUnderstood .caに登録しよう。
-Project Understood
これまでインクルーシブな社会実現のための取り組みというと、どうしてもマイノリティの人に「施す」ような、上から目線のものになりがちだったと思うのですが、この取り組みはむしろ、事態の改善のためにダウン症の人々から支援を「求める」構造になっているところが素晴らしいし、時代だな、と思いました。
もう一つ声がらみの素晴らしい取り組み、ということで、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行で声を失った人のために、デジタル技術でその声を復活させた「Project Revoice」の紹介ムービーを置いておきます。
いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!