世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

すべてが規格外!世界食糧計画(WFP)が実施した「とんでも素晴らしい」ソーシャルキャンペーン

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広告の世界では数年前、街などで突然パフォーマンスをするフラッシュモブや、ありえない場所に広告を置く「ゲリラ広告」なるものが一世を風靡しました。(一般でも、集団でマイケルを踊るなどのムーブメントが盛り上がったのは記憶に新しいところです。)

今回はそれの進化版というか、ありえない!をなんども重ねることで物凄いことになってしまったソーシャルキャンペーンをご紹介します。

 

<805 Million Names (8億500万の名前)>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:2015年2月14日 パリ・サンジェルマン vs カーン

ナレーション:2月14日、パリ・サンジェルマンパルク・デ・プランスでカーンと対戦した。ほとんどの選手にとって、これは数ある試合の中のひとつ。しかしこの試合は、ズラタン・イブラヒモビッチ選手にとっては最も大事な試合のひとつだった。彼の服の下には、50もの新しい名前のタトゥーが刻まれていた。…それらは彼が会ったことのない、でも近くに感じていたい、今も飢えに苦しむ8億500万人もの人々を代表する名前だった。飢えは人々の健康を脅かす、世界最大の要因であるにもかかわらず、新聞の一面を飾ることはほとんどなかった 

イブラヒモビッチは、飢えに対してできることはわずかだが、世界中のあらゆるメディアの一面を飾る術は知っていた。

国連の世界食糧計画とともに作り上げたこのイベントでは、イブラヒモビッチに向けられた注目を、飢えに苦しむ人たちへの注目に変えることにしたのだ。

私たちのアイデアの成否は、イブラヒモビッチのプレイヤーとしての能力に大いにかかっていた。その日の試合に彼がゴールしなければ、キャンペーン全体がお蔵入りという状況だったのだが、その心配はすぐに吹き飛んだ。

アナウンサー「ゴールを決めました!」

イブラヒモビッチ「人々は僕の名前を聞くたびに、(飢えに苦しむ)人々の名前を思い出し、僕の姿を見るたびに、飢えに苦しむ彼らの存在をまぶたに思い描くのです。」

ナレーション:この瞬間、私たちのメッセージは世界のニュースになった。

アナウンサー:「8億500万人というビデオが公開されました。これは50人の子供たちを…」

ナレーション:このキャンペーンは非公開のポロボノで行われ、イブラヒモビッチもノーギャラで参加。大きな予算をメディアにつぎ込む代わりに、私たちは興味関心を喚起するため、イブラヒモビッチの名声を利用したのだ。メインのメディアじは、彼の体。キャンペーンのネタばらしは彼のソーシャルメディア上で行われた。

彼の有名な友人たちにより、この話題はさらなるリーチを獲得。

タイトル:トータルリーチ 8億7,700万人

<WFP 世界食糧計画>

 

さて皆さま、このキャンペーンを自分で考え、実行することをイメージできるでしょうか?このアイデアは、3つの「規格外(=ありえない!)」から成り立っています。

1:試合直前の選手の体に手を入れるという規格外

2:シュートを決める前提でキャンペーンを組み立てる規格外

3:イエローカード覚悟で実行する規格外

1は選手自身にとっては準備のルーチンを崩すことになるので難しいですし、2については、シュートを決めなければ全てがおじゃん、という計画が、クライアント的には受け入れがたいところです。また、3に至ってはチームが激怒するし、日本であればチームのサポーターが許さないのではないでしょうか?

…ということでこのどう考えても不可能なこのアイデアを、これら3者を納得させて(しかもほぼプロボノで!)実行してしまった、という背景には制作者たちの並外れた熱い情熱と、それが呼び込んだかなりの運があったのではないでしょうか。

ちなみにこの企画の成立に運を使い果たしたのか、試合自体は引き分けだったようです。

www.goal.com

でも、このリンクのように、きちんと日本でもニュースになっていますね。

ということで、このブログが標榜しているひとひねりの非常識どころではない、物凄い非常識でメッセージを伝えてしまった「規格外に素晴らしい」キャンペーンをご紹介いたしました。 

In this article, I featured WFP’s “805 million names” campaign because it consists of 3 miracles. How did they persuade Zlatan? How did they persuade WFP? And, How did they persuade PSG? This campaign tell us the importance of passion to execute the great idea, no matter how it seems impossible.

 

まさに三方良し!広告業界の求人と、社会貢献を両立させたベルギー発のソーシャルキャンペーン

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三方良し(さんぼうよし)、という言葉をご存知でしょうか?商売で「売り手良し」と「買い手よし」、「世間良し」の3つを心がけて成功した近江商人の心得なのですが、今回はそれを地で行くベルギー発のソーシャルキャンペーンを見つけましたのでご紹介します。

手がけたのはベルギーの広告業界を取りまとめている協会。同国の広告代理店が共通の悩みとして抱えていた「コピーライター不足」を解決すべく、彼らが仕掛けたアイデアとは?まずは以下のビデオをご覧ください。 

<Sell the Jobless 失業者を売り込もう>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

ナレーション:

ベルギー・コミュニケーション業協会(acc)は、ベルギー国内にあるすべての広告代理店が加盟する団体。彼ら共通の悩みは、コピーライターを志望する有能な人材の減少だった。業界内で人材募集の会を開いても、焼け石に水。

そこでaccは今年、広告業界の外にいるライターたちを魅きつける、意義深いチャレンジに取り組むことにした。

<失業者を売り込もう>

この取り組みは応募者たちに車やスマホ、デオドラントを売るための広告コピーを書かせる代わりに、より人間的で、切実な課題の解決を依頼した。

男性1「こんにちは、ミシェルです」

女性1「私はワーファーです」

女性2「こんにちは、エヴァです」

女性3「私はマリカ」

男性2「私はエリック。42です。アントワープに住んでいます。2009年から職がありません。」

ナレーション:

応募者たちには、これらの失業中の人々を売り込むための紹介状を書く、という課題が課された。結果、失業者が面接のチャンスを得た場合、その紹介状を書いた応募者もコピーライターとして広告代理店にリクルートされる、という仕組みだ。

テレビやラジオ、オンライン、新聞などによる告知の結果、あらゆるバックグラウンドの、あらゆるライターから何百通もの紹介状が寄せられた。

結果を出した紹介状を書いた応募者たちは、ベルギーのトップクリエイターたちによるコピーライター講座のマスターコースに招待され、最終候補者は、それぞれの代理店に採用された。

でも、最高の結果といえば・・そう。

この取り組みの期間中、協力してくれた失業者のうちの実に4割以上が、応募されてきた紹介状を使って就職を決めることができた、ということだ。

男性2「紹介状のサポートのおかげで、自分の人生を前進させることができました。仕事は暮らしに充足を与えてくれますが、失業中だとそうはいきません。何かが欠けている気がしてしまうのです。今では毎日、メリハリのある生活で仕事を楽しんでいます。私の銀行口座にとっても、人生にとってもとても効果的な取り組みだと思います」

ナレーション:

かくして<失業者を売り込もう>という取り組みは、広告業界の人材不足を解消した一方、失業者たちに仕事の機会を与えたのだ。

“言葉の大切さと、言葉がもたらす意義ある変化を感じよう。”

タイトル:

<失業者を売り込もう>

以上、いかがでしたでしょうか?私はこのアイデアについて、以下の3点が素晴らしいと思います。

1:広告業界に興味がなかった求職者を振り向かせた「つかみ」

自分の言葉が失業者を救う、しかも自分にも仕事のチャンスができる!となれば、広告に興味がなくても腕に覚えがある人たちは参加したくなるのではないでしょうか。

2:応募課題の適切さ

対象の特長を抽出して魅力的な言葉で売り込む、という技術はまさにコピーライターの作業そのもの。これをくぐり抜けた応募者たちはそのまま、代理店にとっても理想的な人材だといえます。

3:広告業界全体のイメージアップ

このキャンペーンに触れた人たちは、言葉の力で世の中の課題解決に貢献しているという、広告業界に対する新しい見方を手に入れることになります。

業界良し、応募者良し、失業者良しというまさに理想的な「三方良し」を実現したこのキャンペーン。どんな課題であれ、アイデアを考える際にはぜひ、参考にしたいと思います。

In this article, I featured this campaign because it realizes 'Sambo yoshi' (benefit for all three sides), a traditional philosophy of Japanese merchants. This campaign is great not only for the ad industry, but also for job applicants and the whole society.

 

電話で報道への政治介入を攻撃!マケドニアのテレビ局が放ったソーシャルキャンペーン

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自分たちにとって都合の悪いことを書かれたり、伝えられたりするのを不快に思うのは人の性。しかしそれと同じノリで、一国の政府や政治家たちが都合の悪い報道に対してあからさまに圧力をかけたらどうなるでしょう?

今回はそんな慣行がはびこるマケドニアの国営放送局TELMAが、報道への政治介入の実態と、それに対する姿勢を国民に見事に知らしめた、ちょっぴり過激なソーシャルキャンペーンをご紹介します。

<赤い電話 Red Phone> 

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:<マケドニア。20年以上、報道の自由が失われた国>

国境なき記者団による報道の自由度ランキングでは、34位から123位へと大幅にランクダウン>

報道の自由→自由への圧力>

与野党双方の政治家たちは、ニュースの編集に直接的に介入してくる>

<記者を名誉毀損や侮辱罪で訴え、拘留を行うことも>

<議会からの強制退去を命じることもあった>

記者「なぜ記者たちを追い出しているのですか?理由を教えてください!」

タイトル:<最近の盗聴事件では、政治家たちが複数の国営放送の放送内容に対し、直接的に介入してきたことが明らかになった>

<結果、マケドニアのほとんどの人々は、TVを信用しなくなっていた>

<そこで国営放送のひとつであるTELMAは、その独立性を宣言。「我々は今後、政治家たちの指示には従わない」という姿勢を明らかにすることにした>

<限られた予算で我々が編み出したのが…>

<“赤い電話”>

レポーター「マケドニアは政治の混乱を収束するため、EUの代表団を調停者として受け入れることを決めました。これはEUのヨハネス・ハーン委員が認めたもので、彼はマケドニア政府の次の動きを待っている、と述べています。同議員は…」

ガチャン!(鳴り続ける受話器を切る)

レポーター「私たちは政府だろうが、野党だろうが、政治的な圧力に屈しません」

タイトル:<これを本当の電話だと信じた各政党は、TELMAに対して「政治的圧力の証拠」を見せるよう要求>

<一方、人々はこのアイデアに熱狂した>

<24時間も経たぬ間に、この電話は様々なコンテンツとなり拡散>

<赤い電話自体が、ニュースとなった>

<この小さなアクションは、ネットやソーシャルメディアで拡散>

<直ちにバイラルコンテンツとなり、24時間で、10,000を超えるシェア数を獲得した>

アレフ「安心して、これ黒電話の方だから」

<ついには他のチャンネルの、他のアンカーまで赤電話を番組内に赤い電話を取り入れた>

<赤い電話はメディアの独立性と、痛切に言論の自由を求める市民運動の象徴となったのである>

<AGBニールセンのメディアリサーチによると、 TELMAの番組に対する評価は、2倍以上の伸びを示した>

報道の自由→自由への圧力>

報道に対する圧力は意外と目に見えにくいものなので、それを「赤電話」というアイコンで可視化・可聴化したのは素晴らしいな、と思います。ここまで直接的に権力にNoを突きつけるのは、日本だとなかなか真意が分かってもらえないとは思いますが、とにもかくにも、受話器を叩きつけるキャスターたちの力強さに、報道機関の意地と誇りを感じるキャンペーンでございました。

I featured this idea because it succeeded very well in visualizing “the pressure on freedom.” More than hundreds of thousands of words, this icon tells you a lot about the irritating pressure from politicians and their government. Well done.

ニッポンよ、これが街おこしだ!アメリカの個人商店を救ったソーシャルキャンペーン

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皆さまこんにちは。11月に入り、忘年会やクリスマスに向けて色々と買いだすものも増えていく季節ですが、皆様は買い物というとどんな場所を思い出しますか?デパートやアウトレット、ショッピングモール、といった大型施設を思い出す人がほとんどだと思いますが、一方で中小規模の個人商店の人たちは、客足の鈍化に悩まされつづけています。

そしてそれはアメリカも同じ。ということで、今回は時を超えて今もなお、私が素晴らしい取り組みとして記憶している企業発のソーシャルキャンペーンをご紹介しましょう。アメリカのクリスマス商戦(ホリデーシーズン)の幕開けを告げる11月の第4金曜日、みんなが大型施設に買い物に出かけるブラックフライデーにうま〜く乗っかり、その翌日を「個人商店で買い物する日」として定着させてしまった見事すぎるアイデアです。それでは早速、以下の解説ビデオをご覧ください。 

<Small Business Saturday スモールビジネスサタデー>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:“アメリカの大統領が、特定のアイデアについてつぶやくことはそんなにない。”

バラク・オバマのツイート:今日は、地元のお気に入りの個人商店で買い物して、街のスモールビジネスをサポートしましょう。>

タイトル:“それは、こうして実現した。”

ナレーション:2010年、アメリカン・エキスプレス社はクリスマスの一ヶ月前、アメリカで最も盛り上がる買い物シーズンの幕開けを告げる「グラックフライデー」の翌日に「スモールビジネスサタデー」を開始した。

スモールビジネスサタデーは、不況に悩む個人商店に客足を取り戻すための試みだった。

そして2年目となる2011年の目標は、この一日をホリデーシーズンのオフィシャルな「個人商店買い物デー」として定着させること。

しかしアメリカン・エキスプレス社が一社で押し進めるのは難しいので、個人商店や消費者、行政などにサポートを呼びかけた。

まずアメリカン・エキスプレス社は個人商店のオーナーのために、手軽に活用できる販促ツールを提供した。

スローガン「SHOP SMALL」を記した缶バッヂやポスター、それにソーシャルマーケティングツールなど、彼らの商売のサポートとなるものを提供。

このデジタルツールキットでは、個人商店のオーナーが自分で広告を作るYouTubeの動画作成ツールが入っている。さらに、Facebookページ制作ツール。そしてfoursquareに、オンラインショップ情報を流せるツールも提要した。これらは50万人以上もの個人商店のオーナーに利用された。

次に、アメリカン・エキスプレス社は行政に働きかけた。アメリカ全土の自治体や州政府がこの運動に支持を表明した。さらに米議会上院でも「スモールビジネスサタデー」を公的な日として認める決議が採択された。・・全会一致で!

さらにアメリカン・エキスプレス社は何百万人もの消費者たちに呼びかけ、個人商店で買い物をするという誓いを立ててもらった。

少年「僕はここ、ビッグトップキャンディ店で買い物することを誓います。

男性A「アレンのブーツ屋で買います」

妊婦「ジュノのベビー店で買うわ」

男性B「個人商店で買うことを誓います。」

少女「買って〜。」

男性C「スモールビジネスサタデーに、個人商店で買い物しよう」

ナレーション:で、その反響は?

オーナーA「売上が20%も増えたよ」

オーナーB「30%ぐらいかな。」

オーナーC「去年に比べて、166%も増えました!」

ナレーション:Twitterでは、年間トレンドワードの総合トップ10にラインクイン。Facebookページも昨年の2倍以上となる、270万もの「いいね!」が集まった。しかし最も重要なことは、カリフォルニアからワシントンD.C.まで、アメリカ中の1億300万人もの人々が、個人商店で買い物したということ。

バラク・オバマ「スモールビジネスサタデーだから、今日はスモールビジネスを応援させてもらうよ」

ナレーション:以前にはなかった「スモールビジネスサタデー」は、今ではホリデーシーズンの中でも大切な買い物デーとして定着したのである。また来年!

皆様、いかがでしたでしょうか?日本でも企業がPRのために「ナントカの日」を作ることは多いですが、ここまで説得力を持ち、社会全体を変えてしまったものはないのではないでしょうか?そしてこの企画がさらに素晴らしいのは、これが普及した暁には、アメリカン・エキスプレス社に加盟する個人商店もきっと増えている、ということ。このソーシャルキャンペーンは、日本のシャッター商店街もよいアイデアがあればきっと救える!という希望と可能性を示しているといえるでしょう。

 (スモールビジネスサタデーについて、より詳しく述べているブログを見つけました。こちらを読むと改めてこのキャンペーンの仕組みの巧みさに、もっとうっとりします。)

ameblo.jp

年末に向けてワクワクしてくる11月。皆さまも近所の個人商店で、買い物してみてはいかがでしょうか?

In this article, I featured a legendary-successful social campaign by American Express, “Small Business Saturday”. This idea is a beautiful example of so called “win-win” situation between the credit card brand and small business owners. 5 years have passed since the campaign began but, it is still new and shining.

ハロウィン万歳!エボラから人々を救った見事なソーシャルキャンペーン

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街がハロウィンに染まりはじめる今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。さて今回は、昨年のハロウィンシーズンにSNS上で起きた炎上騒動に見事に対応することで、当時西アフリカで猛威を振るっていたエボラ出血熱の拡大阻止に貢献したアメリカ発のキャンペーンをご紹介します。

国を問わず、毎日のようにSNS上で繰り広げられる炎上合戦。変に萎縮するのではなく、このように立ち回ることでみんなを幸せにしてしまう結果を手繰り寄せることができるのもやはり、アイデアの力だと思います。今の時代ならではのリアルタイムなアクションと、コンパクトな展開で鮮やかに目的を果たしたこの取り組み、詳しくは以下のビデオをご覧ください。

<More Than a Costume/コスチューム以上のものを> 

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:2014年、ハロウィンの季節に議論を呼ぶニュースが飛び込んだ。

キャスターA:エボラ出血熱の防護服風コスチュームがオンライン販売されています。

お店の人「結構売れてまして、もう2回ほど仕入れてます。」

キャスターA:取扱説明書には「今年最も感染力の高いコスチューム」などというメッセージが書いてあります。

キャスターB:販売会社を、多くの人がツイッターで非難しています。

販売者「死ぬほど驚くコスチュームですよ。ハハハ!」

ナレーション:アメリカで偽のコスチュームが話題の中、「世界の医療団」は西アフリカの人々を救うために、本物の防護服を必要としていた。ハロウィンはもうすぐ。我々は急ぐ必要があった。

タイトル:「作戦:2014年、最も議論を呼んでいるハロウィンのコスチュームを、寄付のツールに変えてしまう。」

ナレーション:私たちはメディアをハイジャック。ハロウィンでエボラ出血熱の防護服風コスチュームを着る人たちに、本物にも寄付してくれるようお願いしたのだ。

キャスターC:人道団体「世界の医療団」からのコメントが届いています。「どうぞコスチュームを着てください。ただし、本当にそれを必要としている人にも寄付してください。」

ナレーション:人々は偽のコスチュームを買う代わりに、本物の防護服や医療器具に寄付ができるサイトを訪れた。

コメディアン「なんてこった(ピー!)」

ナレーション:トラフィックを加速するため、我々はソーシャルメディア上でもセレブから防護服のコスチュームを着たセルフィーの投稿者まで、関心を持つすべての人に向けたキャンペーンを実施。

これらをサポートするために、トラディショナルな告知や、印刷メディアでの記事などを展開した。

人々はすぐに我々の側につき、周囲に寄付を呼びかけてくれた。これらの効果はあきらか。

タイトル:72時間で、定期の寄付者が2倍に。SNS上でのフォロワーは45%増加。2億1500万のメディアインプレッションを記録した。経費は0。

ナレーション:我々は世間の議論に対して見事に立ち回ることで、わずか7日間の間に、西アフリカでエボラと戦う4600人以上の医師たちに、十分な装備を支給する資金を集めることができたのである。

どうもありがとう。(※以下要約文省略)

以上、いかがでしたでしょうか?よく考えるとエボラしかり、MERSしかり、そして毎年話題になる鳥インフルエンザしかり。20世紀に何度か発生したような危険な病気の世界的感染拡大を防ぐために、お医者さんや研究者たちは今日も地球のいろんなところで、懸命の努力を続けています。彼らの努力を無駄にせぬよう、正しい情報と正しい対策で健康を保ち、各自がそれぞれの持ち場で社会にお返しできれば素晴らしいな、と思います。

ということで皆さま、この秋冬も体に気をつけて、すこやかに頑張ってまいりましょう!

This is a social campaign which was executed in the Halloween season last year in the U.S. It turned a controversial issue on the social media into the campaign to donate to the doctors who fought against Ebola in the West Africa at that time. How clever it is!

 

パパママ感涙。自閉症のわが子との絆を深めるアプリケーション

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こんにちは。連休が多すぎて曜日感覚が麻痺する今日このごろですが皆さまいかがお過ごしでしょうか?さて今回は、出ましたSAMSUNG。以前にも彼らによる、アルツハイマーの進行を抑えるためのアプリをご紹介しました(下にリンク貼っておきます)が、今回は自閉症の子供たちのために制作されたアプリをご紹介します。どんな子を持つ親にとっても子供と分かり合えたなぁ、と思える瞬間は特別にうれしいもの。このアプリは、コミュニケーションに困難を抱える自閉症の子を持つ親にそれを叶えた、とっても素敵な試みです。それではビデオをご覧ください。

<Look at me(わたしを見て)>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

母親「ジョンヒョンは、他の人たちとだけでなく、わたしとも目を合わせるのが苦手だったんです。だから、私のことを赤の他人のように思ってるんじゃないかって感じてしまうこともあって…」

ナレーション:ジョンヒョン君のように、世界では6千万人以上の人々が自閉症と診断されている。多くは視線を合わせず、コミュニケーション能力に困難を抱えている。治療は高額で、限定的なもの。しかし研究結果は、自閉症の人々がデジタル機器の操作を好むということを示していた。

我々は教授や博士、アプリデザイナーを招集。楽しく、簡単に使えるアプリ「Look at me(わたしを見て)」を開発した。アプリには科学的に推奨された7つのミッションが入っていて、子供たちが目を合わせたり、表情を見たり、自分の感情を表すことをサポート。毎日15分、8週間にわたりジョンフンと19人の子供たちがこのプログラムに参加した。

識者「テストした子供たちの60%が目を合わせたり、相手の表情を読み取ることができるようになりました。このプログラムは自閉症の子供たちが社会的に暮らすことの手助けになると考えています」

 ナレーション:この取り組みはグローバルに展開。自閉症の子供たちは新たに、いつでも利用できる治療の選択肢を手に入れた。

母親「最初はよくわからなかったのですが、最近は本当に変わったなぁ、って思います。こんな風に目を見て話してみると、二人の関係がより近くなったように感じるのです」

<Look at me (わたしを見て)> SNUHと延世大学の合同研究 〜

SAMSUNG

さて皆様、いかがでしたでしょうか?このアプリ、登場するや否や韓国だけでなく、世界各国のアプリチャートにランク入りするなど、実際に使えるアプリとして大きな話題を呼んだようです。

具体的にどのような目標を持っているのかはわかりませんが、SAMSUNGはこれまでにも様々な社会的課題を解決するアイデアを世に出してきています。

このような取り組みをグローバルに粘り強く継続することで、徐々にブランドイメージを向上させていく。そんなクレバーさは、日本の大企業にとっても見習うところが多いのではないか、と感じさせてくれる1本でした。

ちなみに冒頭にお話しした「アルツハイマーの進行を抑えるアプリ」についての記事はこちらになります。

wsc.hatenablog.com 

SAMSUNGは他には、大型車両を追い抜くときに起こる事故を防ぐために、こんなことや…

www.youtube.com

視覚障害者にカメラの楽しさを伝えた、こんなこともやっております。

www.youtube.com

 (いやぁ、この記事書くために久々に見ましたが心にしみます。3年ぐらい前の取り組みだけど、これ自分の中でのベストに近いかも…。)

英訳なくて申し訳ございませんが、お時間があるときなど、ぜひご覧ください!

In this article, I featured Samsung's great works done to solve various social issues. Samsung has been working on these wonderful campaigns so I respect their attitudes. I hope some companies of my own country will also have this kind of passion. It's a matter of conscience.

俺の声を聞け!権威への怒りを大音量で表現したインドの新聞社によるソーシャルキャンペーン

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皆さまこんにちは。秋も深まり、色々と物事を考えるのにいい季節になってきましたが、今回はそんなしっとりとした気持ちに衝撃を与える、インド発の熱いソーシャルキャンペーンをお伝えします。インド最大の都市ムンバイで発行されている「ムンバイ・ミラー」という新聞紙が作ったCMなのですが、世界中で進む新聞離れに対して、読み手の人々にこびへつらうのではなく、読まないことで助長されている世の中の不公正を大声で訴えることで、人々に「新聞を読まないことの罪」を突きつけることに成功しています。それではさっそく、ご覧ください。

<私はムンバイ>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

2010年10月2日 11面:

男性「本を焼きやがった!あいつら、本を焼いて、俺の言葉を燃やしやがった!でもあいつらは、私の声を消し去ることはできない!絶対に。…私はムンバイだ!…私はムンバイだ」

2011年9月29日 12面:

母親「うちに配達された牛乳には、どぶの水が混ぜられていたの!その牛乳を、うちの子たちは飲まされていたの!なんでよ!なんでうちの子がそんなものを飲まなければならないの!?…私はムンバイ」

2010年8月23日 7面:

子供「僕のベッドはこのテーブルより小さいんだ!1週間に2回しか食事は出ない!しかも便所と同じ場所で食べなきゃならないんだ!…僕はムンバイ!」

2011年2月12日 2面:

男性「ここは私の家!私はその一員だ!わかったか!私は自分の家の壁を、政治のポスターなんかに汚されたくないんだ!わかったか!?放せよ。政治のポスターは貼るな!聞こえたか!?…私はムンバイ!…私はムンバイだ!!」

<キャッチコピー:ムンバイは、毎朝私たちに語りかける。…その声を、聴いていますか?>

市民A「私はムンバイ」

市民B「私はムンバイ」

市民C「私はムンバイ」

市民D「私はムンバイ」

市民E「私は、ムンバイ」

<ムンバイ・ミラー紙>

皆さま、いかがでしたでしょうか?このCM、劇中のネタとして1面に載るようなトップニュースではなく、あえて身近なニュースを取り上げることで、ムンバイ・ミラー紙がいかに地域に密着しているかを表現しているところもうまいなぁ、と思います。

実際、新聞が無くなってしまったアメリカのとある街では権力に対するチェックが効かなくなってしまい不正が増加した、という話も聞いたことがありますし、出元のわからないネットのニュースに比べれば正確さも段違い、という点では新聞、とくに地元に密着した地方紙は、なくてはならないものだと思います。

苛烈な暮らしの中で、新聞が民の声を堂々と突きつける公器であることを堂々と宣言したこのフィルム。日本のメディアもきっと志があって運営されているものだと思いますから、時には受け手に向けてこれぐらいの熱さ、激しさで語りかけることがあってもいいのかな、と思わせてくれるアイデアでした。

This is a TV advertisement from Indian newspaper, “Mumbai Mirror ”. This film always moves my heart and makes me realize how important it is to keep journalism effective in one’s society. The idea and its message is quite simple, but the execution is brilliant. And I hope Japanese journalism will also take this kind of aggressiveness, sometimes.