世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

電話で報道への政治介入を攻撃!マケドニアのテレビ局が放ったソーシャルキャンペーン

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自分たちにとって都合の悪いことを書かれたり、伝えられたりするのを不快に思うのは人の性。しかしそれと同じノリで、一国の政府や政治家たちが都合の悪い報道に対してあからさまに圧力をかけたらどうなるでしょう?

今回はそんな慣行がはびこるマケドニアの国営放送局TELMAが、報道への政治介入の実態と、それに対する姿勢を国民に見事に知らしめた、ちょっぴり過激なソーシャルキャンペーンをご紹介します。

<赤い電話 Red Phone> 

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:<マケドニア。20年以上、報道の自由が失われた国>

国境なき記者団による報道の自由度ランキングでは、34位から123位へと大幅にランクダウン>

報道の自由→自由への圧力>

与野党双方の政治家たちは、ニュースの編集に直接的に介入してくる>

<記者を名誉毀損や侮辱罪で訴え、拘留を行うことも>

<議会からの強制退去を命じることもあった>

記者「なぜ記者たちを追い出しているのですか?理由を教えてください!」

タイトル:<最近の盗聴事件では、政治家たちが複数の国営放送の放送内容に対し、直接的に介入してきたことが明らかになった>

<結果、マケドニアのほとんどの人々は、TVを信用しなくなっていた>

<そこで国営放送のひとつであるTELMAは、その独立性を宣言。「我々は今後、政治家たちの指示には従わない」という姿勢を明らかにすることにした>

<限られた予算で我々が編み出したのが…>

<“赤い電話”>

レポーター「マケドニアは政治の混乱を収束するため、EUの代表団を調停者として受け入れることを決めました。これはEUのヨハネス・ハーン委員が認めたもので、彼はマケドニア政府の次の動きを待っている、と述べています。同議員は…」

ガチャン!(鳴り続ける受話器を切る)

レポーター「私たちは政府だろうが、野党だろうが、政治的な圧力に屈しません」

タイトル:<これを本当の電話だと信じた各政党は、TELMAに対して「政治的圧力の証拠」を見せるよう要求>

<一方、人々はこのアイデアに熱狂した>

<24時間も経たぬ間に、この電話は様々なコンテンツとなり拡散>

<赤い電話自体が、ニュースとなった>

<この小さなアクションは、ネットやソーシャルメディアで拡散>

<直ちにバイラルコンテンツとなり、24時間で、10,000を超えるシェア数を獲得した>

アレフ「安心して、これ黒電話の方だから」

<ついには他のチャンネルの、他のアンカーまで赤電話を番組内に赤い電話を取り入れた>

<赤い電話はメディアの独立性と、痛切に言論の自由を求める市民運動の象徴となったのである>

<AGBニールセンのメディアリサーチによると、 TELMAの番組に対する評価は、2倍以上の伸びを示した>

報道の自由→自由への圧力>

報道に対する圧力は意外と目に見えにくいものなので、それを「赤電話」というアイコンで可視化・可聴化したのは素晴らしいな、と思います。ここまで直接的に権力にNoを突きつけるのは、日本だとなかなか真意が分かってもらえないとは思いますが、とにもかくにも、受話器を叩きつけるキャスターたちの力強さに、報道機関の意地と誇りを感じるキャンペーンでございました。

I featured this idea because it succeeded very well in visualizing “the pressure on freedom.” More than hundreds of thousands of words, this icon tells you a lot about the irritating pressure from politicians and their government. Well done.

ニッポンよ、これが街おこしだ!アメリカの個人商店を救ったソーシャルキャンペーン

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皆さまこんにちは。11月に入り、忘年会やクリスマスに向けて色々と買いだすものも増えていく季節ですが、皆様は買い物というとどんな場所を思い出しますか?デパートやアウトレット、ショッピングモール、といった大型施設を思い出す人がほとんどだと思いますが、一方で中小規模の個人商店の人たちは、客足の鈍化に悩まされつづけています。

そしてそれはアメリカも同じ。ということで、今回は時を超えて今もなお、私が素晴らしい取り組みとして記憶している企業発のソーシャルキャンペーンをご紹介しましょう。アメリカのクリスマス商戦(ホリデーシーズン)の幕開けを告げる11月の第4金曜日、みんなが大型施設に買い物に出かけるブラックフライデーにうま〜く乗っかり、その翌日を「個人商店で買い物する日」として定着させてしまった見事すぎるアイデアです。それでは早速、以下の解説ビデオをご覧ください。 

<Small Business Saturday スモールビジネスサタデー>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:“アメリカの大統領が、特定のアイデアについてつぶやくことはそんなにない。”

バラク・オバマのツイート:今日は、地元のお気に入りの個人商店で買い物して、街のスモールビジネスをサポートしましょう。>

タイトル:“それは、こうして実現した。”

ナレーション:2010年、アメリカン・エキスプレス社はクリスマスの一ヶ月前、アメリカで最も盛り上がる買い物シーズンの幕開けを告げる「グラックフライデー」の翌日に「スモールビジネスサタデー」を開始した。

スモールビジネスサタデーは、不況に悩む個人商店に客足を取り戻すための試みだった。

そして2年目となる2011年の目標は、この一日をホリデーシーズンのオフィシャルな「個人商店買い物デー」として定着させること。

しかしアメリカン・エキスプレス社が一社で押し進めるのは難しいので、個人商店や消費者、行政などにサポートを呼びかけた。

まずアメリカン・エキスプレス社は個人商店のオーナーのために、手軽に活用できる販促ツールを提供した。

スローガン「SHOP SMALL」を記した缶バッヂやポスター、それにソーシャルマーケティングツールなど、彼らの商売のサポートとなるものを提供。

このデジタルツールキットでは、個人商店のオーナーが自分で広告を作るYouTubeの動画作成ツールが入っている。さらに、Facebookページ制作ツール。そしてfoursquareに、オンラインショップ情報を流せるツールも提要した。これらは50万人以上もの個人商店のオーナーに利用された。

次に、アメリカン・エキスプレス社は行政に働きかけた。アメリカ全土の自治体や州政府がこの運動に支持を表明した。さらに米議会上院でも「スモールビジネスサタデー」を公的な日として認める決議が採択された。・・全会一致で!

さらにアメリカン・エキスプレス社は何百万人もの消費者たちに呼びかけ、個人商店で買い物をするという誓いを立ててもらった。

少年「僕はここ、ビッグトップキャンディ店で買い物することを誓います。

男性A「アレンのブーツ屋で買います」

妊婦「ジュノのベビー店で買うわ」

男性B「個人商店で買うことを誓います。」

少女「買って〜。」

男性C「スモールビジネスサタデーに、個人商店で買い物しよう」

ナレーション:で、その反響は?

オーナーA「売上が20%も増えたよ」

オーナーB「30%ぐらいかな。」

オーナーC「去年に比べて、166%も増えました!」

ナレーション:Twitterでは、年間トレンドワードの総合トップ10にラインクイン。Facebookページも昨年の2倍以上となる、270万もの「いいね!」が集まった。しかし最も重要なことは、カリフォルニアからワシントンD.C.まで、アメリカ中の1億300万人もの人々が、個人商店で買い物したということ。

バラク・オバマ「スモールビジネスサタデーだから、今日はスモールビジネスを応援させてもらうよ」

ナレーション:以前にはなかった「スモールビジネスサタデー」は、今ではホリデーシーズンの中でも大切な買い物デーとして定着したのである。また来年!

皆様、いかがでしたでしょうか?日本でも企業がPRのために「ナントカの日」を作ることは多いですが、ここまで説得力を持ち、社会全体を変えてしまったものはないのではないでしょうか?そしてこの企画がさらに素晴らしいのは、これが普及した暁には、アメリカン・エキスプレス社に加盟する個人商店もきっと増えている、ということ。このソーシャルキャンペーンは、日本のシャッター商店街もよいアイデアがあればきっと救える!という希望と可能性を示しているといえるでしょう。

 (スモールビジネスサタデーについて、より詳しく述べているブログを見つけました。こちらを読むと改めてこのキャンペーンの仕組みの巧みさに、もっとうっとりします。)

ameblo.jp

年末に向けてワクワクしてくる11月。皆さまも近所の個人商店で、買い物してみてはいかがでしょうか?

In this article, I featured a legendary-successful social campaign by American Express, “Small Business Saturday”. This idea is a beautiful example of so called “win-win” situation between the credit card brand and small business owners. 5 years have passed since the campaign began but, it is still new and shining.

ハロウィン万歳!エボラから人々を救った見事なソーシャルキャンペーン

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街がハロウィンに染まりはじめる今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。さて今回は、昨年のハロウィンシーズンにSNS上で起きた炎上騒動に見事に対応することで、当時西アフリカで猛威を振るっていたエボラ出血熱の拡大阻止に貢献したアメリカ発のキャンペーンをご紹介します。

国を問わず、毎日のようにSNS上で繰り広げられる炎上合戦。変に萎縮するのではなく、このように立ち回ることでみんなを幸せにしてしまう結果を手繰り寄せることができるのもやはり、アイデアの力だと思います。今の時代ならではのリアルタイムなアクションと、コンパクトな展開で鮮やかに目的を果たしたこの取り組み、詳しくは以下のビデオをご覧ください。

<More Than a Costume/コスチューム以上のものを> 

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:2014年、ハロウィンの季節に議論を呼ぶニュースが飛び込んだ。

キャスターA:エボラ出血熱の防護服風コスチュームがオンライン販売されています。

お店の人「結構売れてまして、もう2回ほど仕入れてます。」

キャスターA:取扱説明書には「今年最も感染力の高いコスチューム」などというメッセージが書いてあります。

キャスターB:販売会社を、多くの人がツイッターで非難しています。

販売者「死ぬほど驚くコスチュームですよ。ハハハ!」

ナレーション:アメリカで偽のコスチュームが話題の中、「世界の医療団」は西アフリカの人々を救うために、本物の防護服を必要としていた。ハロウィンはもうすぐ。我々は急ぐ必要があった。

タイトル:「作戦:2014年、最も議論を呼んでいるハロウィンのコスチュームを、寄付のツールに変えてしまう。」

ナレーション:私たちはメディアをハイジャック。ハロウィンでエボラ出血熱の防護服風コスチュームを着る人たちに、本物にも寄付してくれるようお願いしたのだ。

キャスターC:人道団体「世界の医療団」からのコメントが届いています。「どうぞコスチュームを着てください。ただし、本当にそれを必要としている人にも寄付してください。」

ナレーション:人々は偽のコスチュームを買う代わりに、本物の防護服や医療器具に寄付ができるサイトを訪れた。

コメディアン「なんてこった(ピー!)」

ナレーション:トラフィックを加速するため、我々はソーシャルメディア上でもセレブから防護服のコスチュームを着たセルフィーの投稿者まで、関心を持つすべての人に向けたキャンペーンを実施。

これらをサポートするために、トラディショナルな告知や、印刷メディアでの記事などを展開した。

人々はすぐに我々の側につき、周囲に寄付を呼びかけてくれた。これらの効果はあきらか。

タイトル:72時間で、定期の寄付者が2倍に。SNS上でのフォロワーは45%増加。2億1500万のメディアインプレッションを記録した。経費は0。

ナレーション:我々は世間の議論に対して見事に立ち回ることで、わずか7日間の間に、西アフリカでエボラと戦う4600人以上の医師たちに、十分な装備を支給する資金を集めることができたのである。

どうもありがとう。(※以下要約文省略)

以上、いかがでしたでしょうか?よく考えるとエボラしかり、MERSしかり、そして毎年話題になる鳥インフルエンザしかり。20世紀に何度か発生したような危険な病気の世界的感染拡大を防ぐために、お医者さんや研究者たちは今日も地球のいろんなところで、懸命の努力を続けています。彼らの努力を無駄にせぬよう、正しい情報と正しい対策で健康を保ち、各自がそれぞれの持ち場で社会にお返しできれば素晴らしいな、と思います。

ということで皆さま、この秋冬も体に気をつけて、すこやかに頑張ってまいりましょう!

This is a social campaign which was executed in the Halloween season last year in the U.S. It turned a controversial issue on the social media into the campaign to donate to the doctors who fought against Ebola in the West Africa at that time. How clever it is!

 

パパママ感涙。自閉症のわが子との絆を深めるアプリケーション

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こんにちは。連休が多すぎて曜日感覚が麻痺する今日このごろですが皆さまいかがお過ごしでしょうか?さて今回は、出ましたSAMSUNG。以前にも彼らによる、アルツハイマーの進行を抑えるためのアプリをご紹介しました(下にリンク貼っておきます)が、今回は自閉症の子供たちのために制作されたアプリをご紹介します。どんな子を持つ親にとっても子供と分かり合えたなぁ、と思える瞬間は特別にうれしいもの。このアプリは、コミュニケーションに困難を抱える自閉症の子を持つ親にそれを叶えた、とっても素敵な試みです。それではビデオをご覧ください。

<Look at me(わたしを見て)>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

母親「ジョンヒョンは、他の人たちとだけでなく、わたしとも目を合わせるのが苦手だったんです。だから、私のことを赤の他人のように思ってるんじゃないかって感じてしまうこともあって…」

ナレーション:ジョンヒョン君のように、世界では6千万人以上の人々が自閉症と診断されている。多くは視線を合わせず、コミュニケーション能力に困難を抱えている。治療は高額で、限定的なもの。しかし研究結果は、自閉症の人々がデジタル機器の操作を好むということを示していた。

我々は教授や博士、アプリデザイナーを招集。楽しく、簡単に使えるアプリ「Look at me(わたしを見て)」を開発した。アプリには科学的に推奨された7つのミッションが入っていて、子供たちが目を合わせたり、表情を見たり、自分の感情を表すことをサポート。毎日15分、8週間にわたりジョンフンと19人の子供たちがこのプログラムに参加した。

識者「テストした子供たちの60%が目を合わせたり、相手の表情を読み取ることができるようになりました。このプログラムは自閉症の子供たちが社会的に暮らすことの手助けになると考えています」

 ナレーション:この取り組みはグローバルに展開。自閉症の子供たちは新たに、いつでも利用できる治療の選択肢を手に入れた。

母親「最初はよくわからなかったのですが、最近は本当に変わったなぁ、って思います。こんな風に目を見て話してみると、二人の関係がより近くなったように感じるのです」

<Look at me (わたしを見て)> SNUHと延世大学の合同研究 〜

SAMSUNG

さて皆様、いかがでしたでしょうか?このアプリ、登場するや否や韓国だけでなく、世界各国のアプリチャートにランク入りするなど、実際に使えるアプリとして大きな話題を呼んだようです。

具体的にどのような目標を持っているのかはわかりませんが、SAMSUNGはこれまでにも様々な社会的課題を解決するアイデアを世に出してきています。

このような取り組みをグローバルに粘り強く継続することで、徐々にブランドイメージを向上させていく。そんなクレバーさは、日本の大企業にとっても見習うところが多いのではないか、と感じさせてくれる1本でした。

ちなみに冒頭にお話しした「アルツハイマーの進行を抑えるアプリ」についての記事はこちらになります。

wsc.hatenablog.com 

SAMSUNGは他には、大型車両を追い抜くときに起こる事故を防ぐために、こんなことや…

www.youtube.com

視覚障害者にカメラの楽しさを伝えた、こんなこともやっております。

www.youtube.com

 (いやぁ、この記事書くために久々に見ましたが心にしみます。3年ぐらい前の取り組みだけど、これ自分の中でのベストに近いかも…。)

英訳なくて申し訳ございませんが、お時間があるときなど、ぜひご覧ください!

In this article, I featured Samsung's great works done to solve various social issues. Samsung has been working on these wonderful campaigns so I respect their attitudes. I hope some companies of my own country will also have this kind of passion. It's a matter of conscience.

俺の声を聞け!権威への怒りを大音量で表現したインドの新聞社によるソーシャルキャンペーン

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皆さまこんにちは。秋も深まり、色々と物事を考えるのにいい季節になってきましたが、今回はそんなしっとりとした気持ちに衝撃を与える、インド発の熱いソーシャルキャンペーンをお伝えします。インド最大の都市ムンバイで発行されている「ムンバイ・ミラー」という新聞紙が作ったCMなのですが、世界中で進む新聞離れに対して、読み手の人々にこびへつらうのではなく、読まないことで助長されている世の中の不公正を大声で訴えることで、人々に「新聞を読まないことの罪」を突きつけることに成功しています。それではさっそく、ご覧ください。

<私はムンバイ>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

2010年10月2日 11面:

男性「本を焼きやがった!あいつら、本を焼いて、俺の言葉を燃やしやがった!でもあいつらは、私の声を消し去ることはできない!絶対に。…私はムンバイだ!…私はムンバイだ」

2011年9月29日 12面:

母親「うちに配達された牛乳には、どぶの水が混ぜられていたの!その牛乳を、うちの子たちは飲まされていたの!なんでよ!なんでうちの子がそんなものを飲まなければならないの!?…私はムンバイ」

2010年8月23日 7面:

子供「僕のベッドはこのテーブルより小さいんだ!1週間に2回しか食事は出ない!しかも便所と同じ場所で食べなきゃならないんだ!…僕はムンバイ!」

2011年2月12日 2面:

男性「ここは私の家!私はその一員だ!わかったか!私は自分の家の壁を、政治のポスターなんかに汚されたくないんだ!わかったか!?放せよ。政治のポスターは貼るな!聞こえたか!?…私はムンバイ!…私はムンバイだ!!」

<キャッチコピー:ムンバイは、毎朝私たちに語りかける。…その声を、聴いていますか?>

市民A「私はムンバイ」

市民B「私はムンバイ」

市民C「私はムンバイ」

市民D「私はムンバイ」

市民E「私は、ムンバイ」

<ムンバイ・ミラー紙>

皆さま、いかがでしたでしょうか?このCM、劇中のネタとして1面に載るようなトップニュースではなく、あえて身近なニュースを取り上げることで、ムンバイ・ミラー紙がいかに地域に密着しているかを表現しているところもうまいなぁ、と思います。

実際、新聞が無くなってしまったアメリカのとある街では権力に対するチェックが効かなくなってしまい不正が増加した、という話も聞いたことがありますし、出元のわからないネットのニュースに比べれば正確さも段違い、という点では新聞、とくに地元に密着した地方紙は、なくてはならないものだと思います。

苛烈な暮らしの中で、新聞が民の声を堂々と突きつける公器であることを堂々と宣言したこのフィルム。日本のメディアもきっと志があって運営されているものだと思いますから、時には受け手に向けてこれぐらいの熱さ、激しさで語りかけることがあってもいいのかな、と思わせてくれるアイデアでした。

This is a TV advertisement from Indian newspaper, “Mumbai Mirror ”. This film always moves my heart and makes me realize how important it is to keep journalism effective in one’s society. The idea and its message is quite simple, but the execution is brilliant. And I hope Japanese journalism will also take this kind of aggressiveness, sometimes.

銃による悲劇を止めるために 〜 北米からのキャンペーン2連発

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みなさまこんにちは。夜もだいぶ長くなってきましたが、いかがおすごしでしょうか?さて本日は、卓越したアイデアとして世界中で高い評価を受けている、アメリカ発の「銃規制」を促進するソーシャルキャンペーンをふたつ、ご紹介します。最初のひとつは全米にチェーン展開しているスーパーマーケット「クローガー」の奇妙なルールに主婦たちが噛みついたキャンペーンで、もうひとつは、護身用に銃を持つという行為がいかに誤りであるかを「銃を買おうとしている人たち」に向けて直接、衝撃的に伝えたキャンペーンです。両方とも同時期に行われた同じテーマのキャンペーンなので、ふたつ並べて見つめる事で、読者の皆さまのアイデア出しのヒントになるかもしれない、と思い並べてみました。ひとつは課題に起因する「衝撃的な事象」を見つけて攻撃する事で、もうひとつは課題に関する「衝撃的な体験」を作り上げる事でそれぞれの角度から、アメリカのみならず世界中の耳目を集める事に成功しています。それでは以下のビデオをご覧ください。

<スーパーに銃はいらない/Groceries Not Guns>

vimeo.com

<ビデオ和訳>

母親代表「母親としての立場から見ても、従業員や警備員の視点から見ても、どんな人がいるかわからない状況の中、銃を持った人々が自由に入店できる状況は危険だと考えてます」

ナレーション:アメリカの法律は、人々が弾丸を装填した銃を持って入店することを許可している。

レポーター「(スーパーマーケットチェーンの)クローガーは、州法が認めていることもあり、銃を携行しての入店を断ることはないと主張しています」

ナレーション:そこで我々は、彼らに打撃となるPRキャンペーンを実施することにした。

アンカーたち「母親たちのグループが、」「母親たちが、」「母親たちが、」「アメリカの銃規制のために立ち上がりました」「銃を持っての入店を認める全米最大手のスーパーマーケットチェーン、クローガーに噛み付いたのです」

アンカー(※プリント広告を映し出しながら)「ライフルを持った人の横にクローガーの規則を破っている客を並ばせ『この中のどちらかが入店を歓迎されません。どちらが規則破りでしょう』というキャッチコピーをつけています。これは…理解に苦しみます。アイスを食べているからって自分の子供が追い出されて、その脇をライフルを持った人がのうのうと入店していくだなんて…狂気じみています!」

ナレーション:次に我々は、クローガーとのやりとりをオンラインで公開した。

カスタマーサービス「もしもし、顧客第一のクローガーストアです!」

カスタマーサービス「プードルですか?我々はペットの入店は認めていません」

女性「つまり、引き取られたプードルを抱えての入店は法的に認められず、殺傷能力を持つライフルを持っての入店は法的に認められる、ということですよね?」

電話の声「えーと…」

ナレーション:これは360,000もの抗議の署名を集めるなど、着実な効果をもたらした。我々はさらに、その歩みを進めた。

アンカー「気になるキャンペーンが、国内最大のスーパーマーケットチェーンを追い詰めています」

(※テレビCMを映し出しながら)

店員「なんでスケボーしているんだ。誰かがケガしたらこまるだろ?」

店員「水鉄砲を持っての入店はできません」

<クローガーでは、所持しての入店を断られるモノがたくさんある>

<でもライフルはそれに含まれていない>

ナレーション:そして私たちはついに、銃を持っての入場が許されていない「唯一の」クローガーを見つけた…クローガーの本社ビルだ。そこで我々は、彼らの本社ビルの壁に質問を投射することにした。

アンカー「クローガーは難しい選択を迫られています」

ナレーション:これらの一連の取り組みは、メディアに大きく取り上げられたのはもちろん、普通のアメリカの人々からも大きな反応が寄せられた。(同じような規則を持つ)他社も方針を変更し、調査結果は、アメリカの銃規制についての前向きな世論を示した。

オバマ大統領「このように母親たちと連帯しましょう。声をあげて、ともに安心な社会を作り上げていこうではありませんか」

<立ち上がる母親たちの会〜アメリカの銃規制のために〜>

 そして、もうひとつのキャンペーンがこちら。

<銃販売店/The Gunshop>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

<アメリカ国民の60%以上が銃を持つことで暮らしはより安全になると考えている>

<しかし事実は、殺人や自殺、不慮の事故による死亡を増やしているのだ>

<そこで我々は、初めて銃を購入しようとする人々に再考を促すため、意表をつく取り組みを行った>

<ニューヨークに銃の販売店を開いたのだ>

<本物に見せるために、隅々までリアルに再現>

<しかしよく見ると、それぞれの銃にはそれぞれが引き起こした悲劇が浮かび上がってくる>

<すべての銃には、それらが引き起こした殺人の記録がタグで記された>

“これは5歳児でも使える扱いやすさのために、2015年1月19日、親の寝室でこれを見つけた5歳児により、生後9ヶ月の弟が殺されてしまった”

“教えようとしていた際…”

“日時:2012年12年14日、使用者:アダム・ランザ、死者:26名、負傷者:2名”

<また弾薬の箱には、その弾丸が引き起こした不慮の死についてが記された>

“2歳児が偶発的に殺してしまった”

<狙撃の的となるポスターには、射程範囲に起因する事故の歴史が記された>

“撃ち方を教えていた教官を殺してしまった”

<フライヤーには、中古の銃による悲劇が記されていた>

“使用者:ジェームズ・ヒュバティ、死者:21名、負傷者:19名”

<隠しカメラは、銃を買いに来た人たちの姿を捉えた>

店員「これは一番人気の22口径6インチのリボルバーで、親の寝室でこれを見つけた5歳児が、生後9ヶ月の弟を射殺したものです」

客の男性「この銃で5歳児が、弟を射殺しました。…これで殺したの?これ?これを子供が使って殺したの?うわぁ、最悪…」

<この店があまりにリアルだったので、銃の推進派は警察に捜査を依頼>

アンカー「全米ライフル協会はこの店舗の違法性を探るため、警察に捜査を依頼しました」

コメンテーター「こんなことをする人は逮捕されてしかるべきでは…」

<最初の1週間で、1200万を超えるビュー数を獲得>

アンカー「この取り組みで法律が変わるようなことはないと思いますが、少なくとも銃を買おうとする人々のマインドに、考える機会を与えたことは間違いないでしょう」

<すべての銃には歴史がある。繰り返させないようにしよう>

<銃による暴力を食い止める州連盟>

皆さま、いかがでしたでしょうか?「銃の問題は日本にはほとんどないから関係ない」と思いがちですが、どの文化にも他国から見ると「なんでそんな事になってるの?」と思える、特有の課題があるものです。他国の文化の課題と、それらへの対処方法について知る事は、自国の文化が抱える問題を解決するためのヒントになるかもしれない。そう思うと、ご覧いただいたふたつの事例も見方が変わってくるのではないでしょうか?

These are the two campaigns which have been highly evaluated in various international advertising festivals. They are both about gun control and it’s quite surprising for Japanese like me, who are not allowed to have any kind of guns or rifles in public. Every culture has its own problems and it’s good to know how people living there are trying to deal with them, to understand how to deal with our own problems.

逃げ場なし!映画館の暗闇の中、観客にDVの現実を突きつけるタイのソーシャルキャンペーン

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シルバーウィークもあっという間に最終日ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?今回は先週更新できなかった分、間隔を短めに更新してみようと思います。お題はDV。先日シンガポールで行われたアジア地域限定の国際クリエーティブ賞「スパイクス・アジア」のメディア部門でも銀賞を受賞した、タイ発の見ごたえあるキャンペーンです。タイならではの(?)ドギツイ演出にクラクラしますが、映画館というメディアならではの「音響」に目をつけ、その意味をずらすことで、逃げ場のない暗闇に座る人々にメッセージを突きつけることに成功しています。ビデオの作り込みにはまだ雑なところはありますが、特筆すべきはそのキャッチコピー。アイデアと見事にダブルミーニングになっています。それでは以下をご覧ください。

<反虐待サウンドチェック(The Anti-Abuse Soundcheck)>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

“2014年12月 バンコクの‘メジャー・シネプレックス’にて”

“映画館でのサウンドチェックは通常、上映前に行われる”

“我々はこのサウンドチェックを、より意義深いものにした”

女性「助けて!…もう文句は言わないから!」

女性「そのお金は持ってかないで!子どもの学費よ!」

女性「お願い、持ってかないで…」

キャッチコピー:<あなたにチェックしてほしいサウンドがあります>

女性「お父さん、叩かないで…」

<毎時間、少なくとも3人の母子が家庭内暴力の被害者になっています>

<こんなサウンドを聞いたら、1300番にお電話を。家庭内暴力の根絶にご協力ください>

<サウンドチェック by 女性財団 & メジャー・シネプレックス

“我々は被害者の叫び声をサウンドチェックに使うことで、暴力が我々の周りに日常的にあることを伝えた”

“これらは実生活で、観客たちにチェックしてほしいサウンドでもあった。”

観客A「見えなくても、暴力はひどいもので、起こるべきでないものだと感じました」

観客B「事実、暴力は身の回りにあるものです」

観客C「家庭の問題ではなく、社会問題だと思いました」

観客D「もし同じような叫び声を聞いたら、無視せずに電話しようと思います」

<このキャンペーンはバイラルし、SNSやPR露出でおよそ3.8百万バーツ分の効果をもたらした>

<上映から1ヶ月で、ホットラインへの1日あたりの電話数は4件から20件へと増加>

バンコクでの成功を受けて、この試みは他の主要都市でも行われることになった>

<つまり、これにより人々の目を家庭内暴力に振り向かせただけでなく、耳を引きつけることにも成功したのだ>

“もしもし、近所で叫び声が聞こえたんですが…”

<反虐待サウンドチェック by 女性財団 & メジャー・シネプレックス

さて皆さま、いかがでしたでしょうか?DVの演出がかなり大袈裟ですが、これが映画館のサウンドチェックも兼ねていることを考えると理にかなっているのかな、と思います。そして特に嬉しいのはこのアイデアが、私が今所属している電通グループのタイにあるエージェンシー、電通プラスのアイデアである、ということ。こんな風に、東南アジアからもどんどん素晴らしいアイデアが出てくるようになると世界はもっと面白くなる!と思いました。

同じアジアの仲間にアイデアの質や総量で負けないように、このブログを通じて起業や世直しに立ち上がる日本の人たちのお役にたてればと思います。

では、明日からの戦いの日々、引き続き頑張ってまいりましょう!

This anti-abuse campaign is from Dentsu Plus, Bangkok. This won a silver award in Spikes Asia 2015. As the award evaluated, the media they chose is relevant and the tagline perfectly matches the environment. Though the case film should be improved a little bit, I feel proud of this achievement, as a member of Dentsu Aegis Network.