世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

洗濯は女の役目!?ジェンダーギャップに切り込んだ洗剤メーカーのキャンペーン

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Photo by Jason Briscoe on Unsplash

社会進出が進むにつれ、仕事と家事の両立に悩む女性は多いですが、インドでも同じ悩みを持つ女性が増えてきているようです。その象徴的なトピックが「洗濯」。実にインドの家庭の95%で、洗濯は女性だけの家事となってしまっているそうです。

(実は私も皿洗いと自分の洋服のアイロンがけをするだけで、他は妻に任せきりになってしまっています…反省です。)

そんな状況を受け、P&Gの洗剤ブランド「アリエール」がインド女性のために立ち上がりました。洗浄力や部屋干しの匂いなど商品性能をアピールする代わりに、なんとこのような衝撃的なテレビCMをオンエアしたのです(以下に軽く和訳もつけておきますね)。

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和訳:

キャリアウーマンの娘の家庭に遊びにきた父親の独白

「娘よ。立派にそだってくれた。昔はままごとをしてたが、今は家庭も、仕事もしっかり切り盛りしている。誇りに思うよ。と、同時に申し訳なく思う。家事のすべてを押し付けてしまっていることを。ままごとをやめさせなかったことを。ままごとでやるようなことは、お前一人でやるべきことじゃない。お前の夫もやるべきことだったんだ。…でも、自分が言えた義理じゃない。自分だって、お前のお母さんのことを何も手伝わなかった。それを見て、お前はそういうものだと学んでしまったんだ。お前の夫もおそらく、父親から学んだんだろう。ままごとでお前がお茶を作る真似事をしている時に、彼はTVを見るフリをしていたんだろう。彼の父の代わりに謝罪する。悪しき前例を作ってしまったすべての父親たちに代わって謝罪する。…でも、まだ遅くない。これからは夫として、お前の母さんの家事を手伝おうと思う。キッチンの王様のように家事をこなすことはできないと思うけど。洗濯だったらできると思う。これまでの過ちを、今こそ変える時だと分かったんだ。おまえのパパより。」

”なぜ洗濯は母親だけの仕事なのか?” 父親も #分担しよう

 

洗剤メーカーが商品特性を全く言わず、公共広告のようなCMを打って売り上げが上がるのか?と思いますが、このCMはインドのみならず世界中の人々の話題となり、オンラインでシェアされた結果、実に22カ国・6,300万人が見るところとなりました。そしてインドの男性210万人がもっと家事に協力する、と誓っただけでなく、現地でのアリエールの売り上げはなんと、76%もの上昇を記録したそうです。

他にも商品パッケージに「今日は夫が/妻が洗濯する日」と示したカレンダーをつけるなど、アリエールは様々な施策を展開したそうですが、そこらへんをまとめた事例ムービーをこちらに置いておきますね。

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昨今はミレニアム世代やジェネレーションZを中心に、商品特性よりもその商品の売り手が、どのような課題意識(Purpose)でそれを売ろうとしているのか?ということが商品選択の際の大きな基準になってきている、という事実がさまざまな調査結果を通じて浮かび上がってきております。

そういえばパンテーンの「#この髪どうしてダメですか」など、日本でもちらほらと、課題意識ドリブンなキャンペーンが生まれ始めていますよね。このトレンドを認識しておくことは、皆様の取り組みをアピールする際の参考になると思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆様、また来週!

 

プラスチックゴミによる海洋汚染を訴えるアイデア その2

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Photo by Brian Yurasits on Unsplash

先週にひきつづき、今回もプラスチックゴミによる海洋汚染を見事に世界に訴えたアイデアをご紹介します。(私がアップしたいなぁ、と思いつつブログ更新をさぼっていた)2年ほど前のアイデアなのですが、今見てもその手口の鮮やかさには感心させられます。

 

大量生産・大量消費時代の始まりから海に投棄されつづけているプラスチックごみ。太平洋に漂うその総量を面積にすると、実にフランスに相当する大きさになるそうです。ただし、国境を気にせず自在に漂うそれらの処理に、わざわざ税金を使って乗り出す政府もありません。国はもちろん、メディアや普通の人々にも無視され続けているこの状況をなんとかしたい。どうにか彼らを振り向かせたい!そこでプラスチック・オーシャン財団がひねりだしたアイデアとは…

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6月8日の「世界海洋デー」に、プラスチックゴミの浮遊物を「ゴミ諸島(Trash Isles)」として、国連に国家申請をする、というアイデアでした。

イデアの秀逸さはもちろんですが、前回紹介した鯨のオブジェと同様、このアイデアを適切なタイミング(世界海洋デー)に実行することで、単なるユニークなアイデアとしてだけでなく、世界海洋デーを象徴する格好の”時事ネタ”として世界中のニュース番組に取り上げてもらうことに成功しました。

ゴミを国に置き換えてしまう、というアイデアの大胆さに加えて、素晴らしいのがそれにちなんだ制作物の作り込み。国連が国として認めるのに必要な国旗や紙幣、パスポートなどをまるで実在する国家のようなクオリティで作り上げ、国民をオンラインで募ったところ、その登録者数はトンガなどの小国を上回る規模になったそう。

さらにアル・ゴア元副大統領など世界の著名人に市民権を与えるなど、インフルエンサーの活用もしっかり行われたようです(セレブリティの中には、大臣に就任した人も!)。

最終的にはこの取り組みに関するトピックは、世界中の5億人にリーチするという、大成功のキャンペーンとなりました。うーん、お見事。

 

この素晴らしいアイデアを、遅まきながらみなさまに紹介できて嬉しいです。アイデアって、本当にいいものですね。それでは皆様、また来週!

プラスチックゴミによる海洋汚染を訴えるアイデア その1

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Photo by Jon Eckert on Unsplash

長年世界のソーシャルキャンペーンを見ていると、そこにもトレンドがあることがわかります。近年特に、世界的問題として浮かび上がってきているのがプラスチックゴミによる環境破壊。ということで今週と来週は、私がブログの更新をさぼっていた間に実施された、この問題に関するインパクトあふれる取り組みを紹介しようと思います。

 

今週紹介するのはこちら。7,000以上の島々で構成される海洋国家フィリピンでは毎年、プラスチックゴミをエサと間違えて飲み込んでしまい、命を落とす海の生き物がたくさんいます。ただ、身の回りのことで忙しい人々はなかなか関心を持ってくれません。そこでフィリピンのグリーンピースが行なった取り組みとは・・・

 

www.youtube.com

 

彼らはプラスチックゴミで大きな鯨の死体を作り、海に展示しました。このアイデアのキモは、遠目には本物の鯨かとだまされるぐらいにクラフトされた「展示物の精巧さ」と、海の問題について各国の首脳が語り合うASEANサミット前日にそれを実施したという「タイミングの巧妙さ」。これらにより「旬な話題」としてマスメディアに取り上げられつつ、SNS上でもこの展示に実際に触れた人々による記事が拡散するという、理想的なPR展開を行うことができたようです。

 

実際にどれぐらいの予算がかけられたものかはわかりませんが、プラスチックごみをユニークな形で活用するだけでフィリピン中、いや世界中の人々の脳ミソにこの問題の深刻さをすり込むことに成功した、という点で、とても秀逸で勇敢なアイデアだと思いました。

 

さて、これでブログ復帰から4週間がたちました。なんとな〜く、昔の感覚が戻ってきた気がします。アイデアって、本当にイイものですね。それでは皆様、また来週!

身近なものからサステナビリティ!

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Image by Adriano Gadini from Pixabay

温暖化が進み、台風の大型化など、異常気象の常態化が進んでおります。いよいよ人類の活動に地球が持ちこたえられなくなってきているのかな、と感じますが、ここでくじけてはいけません。コンビニでもビニール袋を受け取らない。マイボトルを持ち歩く。そんな小さな積み重ねが、徐々に周りの意識を変化させ、ついには人々の暮らしをもっとサステナブルにしていくのだと思います。

そして、こんな時代の転換点でこそ必要とされるのがアイデアの力。下のリンクをクリックいただけると、アメリカの大学のデザインチームが考えた、とってもサステナブルな「新しい歯磨き粉のパッケージ」のアイデアをご覧いただけます。

 

www.yankodesign.com

 

…ご覧いただけましたでしょうか?

 

よく考えたら、商品棚の歯磨き粉がわざわざ箱に入っている必要はないですよね。さらにチューブがプラスティックではなく、生分解性のものだったらどうでしょう?記事によると、インクも色味を減らすことで、ケミカルなものを使わずに済むそうです。

個人的にはやはり、消費者にとってはあまり必要でない箱の無駄を削いだ点と、売り場にすでにある歯ブラシ用のフックにそのままかけられる、という実用性がとても賢いな、と思いました。

 

デザインやアイデアには、理屈を超えてこのように1発で、「こんなのがあったら欲しい!」「あったら買う!」と、人の心を動かす力があります。

 

このような発想でぐんっ、と無駄を削ぎ落とせるものはまだまだ、この世に隠れていそうですね。そう思うと、明日から街を歩くのがまた、楽しくなりそうです。

 

それでは、また来週!

パラリンピック・イヤー、はじまりました!

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さぁ、2020年はパラリンピック・イヤーです!ところが2年前の平昌冬季五輪開催時、カナダのテレビ局にはパラリンピックを放送する予定がほとんどありませんでした。このままでは選手がいくら頑張っても、人々は見てくれません。そこでカナダのパラリンピック協会が何をしたのかというと…

vimeo.com

登録した人々のFacebookや、Twitterのアカウントに自動的にパラリンピックのライブ映像がシェアされるアプリを開発しちゃいました!つまり、パラリンピックのファンやサポーターたちによる独自の放映ネットワークを作ってしまったワケです。

計算方法はわかりませんが、上のビデオによると、視聴率が11.464%上がり、カナダ史上、最も試聴されたパラリンピックになったとか。

この仕組み、5G時代が来ればパラリンピアンとのリアルタイム交流など、もっといろんなことができそうな可能性を感じます。 

 

それでは、また来週!! 

ソーシャルグッドのタネ探し、2年ぶりに再開します。

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Image by Alexas_Fotos from Pixabay

皆様あけましておめでとうございます!ここ数年は海外赴任やモチベーションの変化などがあり、しばらくこのブログから遠のいておりましたが、色々と落ち着いてきましたのでまた世界中から、社会に役立つユニークなネタを探してお届けしたいと思います。

しかもいいことに(?)、私がブログをサボっている間にもすばらしいアイデアがどんどんと世に出ております。張り切って紹介してまいりますので、引き続きお楽しみください。

ブログ復活第1段はこちら。ルーマニアの最大手電力会社Enelが現地の鳥類保護団体とコラボで取り組んだ、すばらしい取り組みです。

アフリカから北上し、ルーマニアにやってくるコウノトリの大群。彼らの多くは電信柱の上に巣を作り、結果、電気による出火で毎年、何千羽ものコウノトリが命を落としているそうです。そんな悲劇を防ぐためにEnelと鳥類保護団体が編み出したアイデアとは・・・?


Enel & The Ornithological Society of Romania "The Nest Address" (Publicis Romania)

コウノトリ専用・位置特定アプリの開発」です。コウノトリの巣を電柱の上に発見したら、アプリを開いて撮影するだけ。それだけで電力会社がGPSで巣の場所を特定し、引火しないよう巣をかさ上げしてくれる、というアイデアです。私はルーマニア国民ではないのでこのアプリを人々がどれだけダウンロードする気になるのか不明ですが、スマホGPSを駆使した取り組みとしては、とても賢いと思いました。

コウノトリ、という題材もいいですよね。

それでは、また来週!!

 

販促と捨て犬問題の解決を両立!イスラエル発の見事なキャンペーン - Samsung Adoption package

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企業活動において、本業とCSR(企業の社会的責任)活動は分けて考えられがち。

でも今回はその垣根を超え、製品の特徴をフックに社会問題の解決とセールスプロモーションを両立させてしまったイスラエル発のソーシャルキャンペーンを紹介します。

大谷選手しかり、そしてこのアイデア然り。今年は垣根を超えてハイブリッドなものが世界レベルで次々と始まる年なのかもしれません。

Samsung Adoption package – サムソン引き取りパッケージ>


Samsung Adoption package case study

<和訳>

ナレーション:イスラエルでは、何千匹もの捨て犬が暖かい家に引き取られるのを待っている。問題は、捨て犬を引き取ることを検討した人のうちの37%が、犬から抜け落ちる毛や汚れなどを理由に引き取りを諦めていること。

そこでサムソンは、毛の絡まりを防ぐ機能付きの掃除機のローンチと合わせて、“Let the animals live (いきいき動物会)”というイスラエル最大の動物愛護NGO団体とパートナーシップを結び、捨て犬たちを助けることにした。

私たちは実際に飼い主を探している犬を起用して、引き取りをアピールする6本のコマーシャルを制作。見る人々の心を動かした。

(タイトル:“メディア・インプレッション=350万”“シェア数=7,700”“コメント数=153,000”)

CM内ナレーション:

“彼女は生後5ヶ月の可憐なカーラ。シェパードのミックス犬で、一日中元気に遊ぶ彼女は、あなたのお家にも楽しく愛らしい雰囲気をもたらしてくれることでしょう。幸せと、愛と・・・そして本当に、たくさんの抜け毛とともに。でもそれを気にする必要はもう、ありません。「サムソンの引取りパッケージ」

では犬とセットで、髪の毛や抜け毛の絡まりを防止する最先端機能が付いた、サムソンの新しい掃除機をご提供。なのでぜひ、犬を引き取るスペシャルイベントであなたの一匹を見つけてください。2018年2月16日、テルアビブで開催です!”

ナレーション:イベント当日は、何千もの人々がテルアビブでの引き取りイベントに来場。結果、このNGO団体がこれまでに開いたどのイベントをも凌ぐ盛況となった。

そして、全ての犬と、掃除機が暖かい家にたどり着くことに。

(仔犬たちと、引き取り手の写真が名前付きで次々と映し出される)

“サムソン絡まり防止機能付き 犬を引き取ろう