世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

冷蔵庫にある、ちょっと傷んだ食べものを捨てる前に…

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Photo by Anna Pelzer on Unsplash

突然ですが質問です。皆さん、今、世界中で1年の間に生産されている食べ物のうち、何パーセントが廃棄されるなどして、無駄になっていると思いますか?

答えはなんと33%。世界中の生産者さんが一生懸命作ったり、獲ったりしてくれている努力の3割強をわれわれは無駄にしている…と考えるとすこぶる心が痛む数字ですが、国連による調査結果なので、残念ながら信頼できる調査だと思われます。

スーパーやコンビニに流通する過程で規格外などにより廃棄される無駄、売り場で売れず、レストランで使われずに廃棄される無駄、そして家庭で調理されずに捨てられる無駄。その小さな無駄の積み重ねが最終的には33%もの無駄になっていると思うと、まずは一人ひとりの身の回りの無駄を削らないことには始まらないな、と強く思います。

とはいえ冷蔵庫の中のものを微妙に傷むまで放置してしまい、捨ててしまうことは誰にでもあるはず。ということで本日はそんな我々に「ちょっと待った!」をしてくれる、海外のマヨネーズなどの調味料メーカーHellmann's社によるナイスな企画をご紹介いたします。

彼らが何をしたかと言うと…まずはビデオをご覧ください。

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”たくさんの食材が入っているのにも関わらず、冷蔵庫を開けて「食べるものがない」と思ったことはありませんか?そんな私たちの食習慣のせいで、おいしい料理となるべき何百万もの食材が捨てられています” 

…ということで、この問題を解決すべくHellmann'sが行ったアイデアが、「ロクな食材のないレストラン ~ The Restaurant With No Food」の開店。

彼らはこのお店に招待したゲストたちに、来店時に彼らの冷蔵庫から「(傷んでしまい、)もう食べそうにない食材」を持ってきてもらうように依頼。それをセレブシェフに美味しい料理として調理してもらい、サーブすることで、5つ星レストラン級の満足をゲストに提供したのです。もちろん、Hellmann'sの調味料をふんだんに使って…。

お客さんも「食べられないと思って持ってきたんだけど」「すばらしい!」と、捨ててしまおうと考えていた食材の実際のポテンシャルに驚いた様子で、芸が細かいことに食事の後には、お勘定の紙の代わりに、彼らが食べた料理のレシピもシェアされたようです。

それらのレシピはビデオ・コンテンツとしてもオンライン上に公開され、結果的にこの取り組みは多くのインフルエンサーたちの賛同も得て世界的な話題となったそう。

Hellmann's商品の魅力をしっかり伝えつつ、社会的に意義のあることを行うことでブランドに対するファンを増やしていく。これからのブランドビルディングの教科書に乗りそうなシュアーな事例だな、と思いました。

いやぁ、美味しい食事もアイデアも、本当にいいものですね。それでは皆様、また来週!

汚い政治家たちをあぶりだせ!をデジタルデータの活用で実現した反汚職キャンペーン

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Photo by Luther Bottrill on Unsplash

人の世は移ろいやすく、ちょっと前に汚職などで糾弾されていたはずの人も知らぬ間に「禊」を済ませ、政治家として復活している…なんてことは古今東西を問わず、よく起きている話です。

そこで2018年、ブラジルの総選挙前に立ち上がったのが当地のReclame Aquiという団体。彼らは顔面認識技術を活用することで、新聞記事やニュース映像に映った候補者の画像をスキャンするだけで、彼らが過去に、どんな汚職事件や、疑惑に関与していたかを有権者たちに情報提供するアプリを開発しました。まずはその、説明ビデオをご覧ください。

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ビデオ終盤のこのアプリに対する動揺した政治家の乱暴な振る舞いは「こんなに取り乱す、ということはよっぽど効き目があるんだろうなぁ」、とちょっとドキッとさせられます。

個人単位でのデジタルデータの流出に関する恐ろしい話はたくさんありますが、こういうカタチのデジタルデータの活用であれば、より良い政治家を当選させるためにも大歓迎かな、と思いました。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆様、また来週!

今こそ、映像の力を。コロナに屈せず、人々を勇気づけるムービー特集

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Photo by Ajeet Mestry on Unsplash

世界的に続く新型コロナウイルス災禍に対し、各国の企業やブランド、自治体も次々と立ち上がっています。その中でも今回は、それらの組織が制作した「人の気持ちを動かす」という点で秀でたムービーを4つご紹介いたします。

 

まず最初が、「なぜパンデミックを防ぐために、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を取ることが大事なのか」ということを見事に視覚化したオハイオ州保健局の啓蒙ムービーから。映像があまりにシンプルでクリアなので、英訳も、何もいりません。

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次がApple。こんな困難な時でも、人々のクリエイティビティは決して屈することはない。そのために我々はいるのだ、という企業の姿勢を、彼らの商品をうまく交えながら”Creativity goes on.(クリエイティビティは続いていく。)”というシンプルなキャッチコピーで感動的に伝えています。あえて間延びした作りにして、家でじーっと見ている人たちにじっくり味わう時間を与えているところなんかも素敵だな、と思います。

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日本のポカリスエットも負けてません。こちら、ながらく高校生の青春に寄り添う飲料としてブランディングを展開していますが、新型コロナウイルスの影響で「集まれない」状況に対し、何よりもみんなで「集まって」なにかをしたい年頃の若者たちの気持ちに寄り添った、見事な青春賛歌を謳いあげています。

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最後にどんな時でもユーモアを忘れない、アメリカのバーガーキングによるテレビ広告を一つ。外で新型コロナウイルスが猛威を振るう今だからこそ「家でカウチポテトしながらスマホアプリでバーガーキングをデリバリーする」ことこそが愛国者(patriot/パトリオット)の証!!ということで、彼らはなんと「カウチポテト」と「パトリオット」を組み合わせた「カウチ・ポテトリオット(カウチ愛国者?)」という造語を開発。カウチ・ポテトリオット愛国者として、家でしっかりダラダラしましょう、ということをユーモラスに表現しています。ユーモアで序盤は見る人を楽しませながらも、実は一番伝えたい情報が後半の「バーガーキングは医療従事者にワッパーバーガーを寄付したり、全米ナース財団をサポートしているんだよ」という、すこぶる真摯な内容だったりするところもニクいなぁ、と思います。

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以上、視覚的に情報を伝えるものから、エモーショナルに企業やブランドの姿勢を示すもの、そしてくすっと笑えるユーモラスなものまで、4つのムービーをご紹介させていただきました。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。(こんな時だからこそ本当にしみじみ、そう思います。。。)

それでは皆様、また来週!

サミュエル・L・ジャクソン、コロナに吠える。

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Photo by LOGAN WEAVER on Unsplash

新型コロナウイルスの社会への影響が徐々に、人々の気持ちにまでおよんでいるのを実感する今日この頃。世界中で様々なインフルエンサーたちが、自分なりのカタチでこの事態に対してメッセージを発信しています。

この病気に立ち向かうために大切なことは、何はともあれできるだけ「家にいる(Stay Home)」こと。その重要性について映画「パルプ・フィクション」などで”この人に4文字言葉(F***)を言わせたら右に出るものはいない”というハリウッド俳優、サミュエル・L・ジャクソンさんは彼ならではの「絵本の朗読」でユーモアたっぷりに伝えてくれています。

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「家にいやがれ、この野郎」

”全くシャレにならない事態で、働いてなんかいる場合じゃなくなっちまった。でもやんなきゃいけないことは簡単だぜ。ただ家にいやがれ、ということだこの野郎。俺は医者でもなんでもない。でも俺が詩を読めばお前ら面白がって、聴く耳を持つんだろ?だから俺様、サミュエル・"F"・ジャクソンがお前のために家にいやがれ、と言ってやってるんだこの野郎。もし前みたくフツーに暮らしたかったら、パニックにならず手を洗い、顔を触らず、家に、い・や・が・れ・この野郎。ここはカジノでもないし、ギャンブルをする時じゃない。自分の名前がタランティーノからクアランティーノ(「隔離」という英単語のもじり)に変わっちまったぐらいの気持ちになって家にいやがれこの野郎。友達?スマホアプリを使えばいつでも会えるじゃねーか。家から食い物がなくなっちまう時以外は、絶対に家にいるんだぞ、この野郎!こいつをくたばらせることに協力してくれてありがとよ。なぜならこいつは本当に手強いやつだからな。で、お前ら家にいるんだろ?じゃあ安心して「はやく寝やがれ、この野郎」。”

…こんな悪い口をきいても、そこはかとなく愛を感じてしまう彼のキャラクターでしか成立しないメッセージですね。メッセージ自体も大切ですが、街にエンターテインメントが溢れていた頃の豊かな気持ちを思い出させてくれて、俳優という職業へのリスペクトすら感じさせるコンテンツになっています。

ちなみにこの朗読は彼が以前、絵本を読んでも寝付かない子供に苦悩する親の気持ちを描いた絵本「Go the F**k to Sleep(はやく寝やがれ、この野郎)」の朗読で話題を呼んだことにちなんだ、セルフパロディでもあるようです。

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こちらも微笑ましい、彼の演技力あふれる朗読が楽しいです。

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新型コロナウイルス対策については、他にも世界中でさまざまな取り組みが行われています。こちらのブログでも折に触れ、皆様のクリエイティビティが前向きに刺激されるようなモノを選んでご紹介していこうと思います。 

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆さん、来週もStay Safe (& 可能な人はStay Home)で、元気にお会いしましょう!

ネットもない僻地に「ググる喜び」をもたらしたGoogleの素敵な取り組み

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Photo by Daria Nepriakhina on Unsplash

 Googleの創業は私が社会人になった年と同じ1998年。当時は検索といえばYahoo!が主流で、入社2年目ぐらいに友達からGoogleを教えてもらった時は検索窓だけのシンプルすぎる(と当時は思った)サイトデザインに「なぜこれがアメリカで流行っているのか?」と不思議に思ったものです。

それから22年。日本でも「ググる」という言葉が一般に定着しているように、Googleによる検索は世界のスタンダードになりました。

しかし世界の僻地にはまだネットが普及せず、結果Google検索ができないエリアがまだたくさんあります。そこの住民たちにもなんとかして、検索のよろこびと、それによる生活の質の向上を実現してほしい…。

今回は、そんな思いでコロンビア政府とGoogleが、ネットが使えない地域の住民のために合同で行った素敵な取り組みをご紹介いたします。彼らが何をしたのかというと…(以下の説明ビデオをご覧ください)

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そうです。Googleはインプットされた音声を文字に変換し、その語句でGoogle検索した文字情報を音声に戻して応答するAIアルゴリズムを開発。コロンビア政府の協力のもと、Googleの文字の形に近い「6000913」という番号で、ネットにつながらない旧式のケータイ電話からでも音声でGoogle検索できるサービスを、ネットの使えないエリアに住むコロンビア国民に提供したのです。

上の説明ビデオでも天気を尋ねたり、宿題の調べ物や、コロンビア代表のフットボールの試合日程を調べたりして嬉しそうな住民の表情が印象的ですが、このような情報インフラを持つことは災害時、二次災害の防止などにもきっと効果を発揮することでしょう。

「ネットがない地域でも、ネットを使えるようにした」というこのアイデアは、いわゆる「イノベーション」というものが、何か新しいものを生み出すためだけのものではない、ということを教えてくれます。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それではまた来週!

今度、またリゾートに行けるようになったら…「観光客」としてのふるまいを考えさせてくれる傑作アイデア

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Photo by Denis Oliveira on Unsplash

時節柄、みなさまじぃーーーーっと、家の中にいることが増えていると思います。時は春休み真っ最中。通常であればお花見や、家族旅行を満喫している頃だと思いますが、こういう事態に直面するたびに日常の幸せがいかに尊く、そしてもろいものかと思い知らされます…。

ということで今回は、国際的リゾート地が環境保全のために実施した、素晴らしいアイデアをご紹介します。以下の美しいアイデア紹介ビデオをお楽しみいただきながら、今度また、自分が自由にリゾート地に行けるようになったら現地で自然環境を守るために、どうふるまうべきかを、ちょっとだけでも考えるきっかけになれば幸いです。

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その美しい島々で知られ、リゾートを楽しむために世界中から観光客が集う南太平洋のパラオ共和国。しかし観光客の中には、ゴミをポイ捨てたり、密猟したり、サンゴを傷つけたりする人たちが後を断ちませんでした。そこで当地の政府が、市民たちと組んで行ったこととは…?以下の紹介ビデオをご覧ください。

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なんとパラオ政府は、入国審査のスタンプを観光客たちの「環境保護宣誓書」に変えてしまいました。このシンプルなアイデアひとつで全ての観光客たちは入国時に「未来の子供たちのために、これから訪れるパラオの地を、環境保全のために傷つけない」ことを署名で宣誓しなければならなくなりました。結果はこのビデオが示す通り、大成功。世界中のニュースで取り上げられ、かのディカプリオさんも賛同を示すなど、この課題の認知向上に大いに役立ったそうです。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それではまた来週!

シューズの売り方を変えるだけで、少数派の隠れた不満を解決したナイスアイデア

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Photo by Conor Luddy on Unsplash

蛇口をひねると、水が出る。スイッチを押すと、照明がつく。大多数の便利を追求した結果、私たちは毎日、信じられないぐらい数多くの「お約束」に囲まれた暮らしを享受しているわけですが、そんな中で少数派の人々の隠れた不便や不満はこれまで、気づかれずに見過ごされがちでした。

しかし、スマホの普及などで消費者とのOne to Oneコミュニケーションが可能となった現在、そういうニッチな隠れた不満や不便を解決してあげることで、企業がブランドイメージを向上させることも可能になっています。

今回はそんな取り組みの代表的なものとして、アディダスの事例を紹介させていただきます。世界には事故や病気などの理由で、片足だけ義足を履いてランニングを楽しむ人たちがたくさんいます。その人たちの隠れた悩みは、新しいシューズを1組買うたびに、左右どちらか片方のシューズが必ず無駄になってしまうこと。それに気づいたインドのアディダスは、こんな取り組みを実施しました。

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…そうです。彼らは2016年のリオ・パラリンピックの開催に合わせて、義足のランナーたちのために左右どちらか片方の足のシューズだけを1組にして売り出す「Adidas Odds」という商品を世に送り出したのです!

このアイデアの素晴らしいところは、既に売られているシューズ自体に何も手を加える必要なく、梱包時にただ、入れる靴の組み合わせを変えるだけで簡単に実現できてしまう点。この取り組みを初めて知ったとき、「シューズは左右1対で売られるべきもの」という思い込みに知らぬ間に囚われていた自分に気づき、愕然としたのを覚えています。

この商品の直接的な売り上げへの貢献はこの説明ビデオからは分かりませんが、インド初のパラリンピアン・ランナーをフィーチャーしてこの取り組みを伝えたアディダスのTVCMはインド国内はもちろん、広く世界中で話題となり、アディダスのブランドイメージ向上に大きな役割を果たしました。

世の中はまだ無数の様々な思い込みに満ちていて、それを疑い、ひねることで誰もが、誰にとってもより良い暮らしに貢献できる。

そんなことを教えてくれる、素晴らしい事例だと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それではまた来週!