世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

シューズの売り方を変えるだけで、少数派の隠れた不満を解決したナイスアイデア

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Photo by Conor Luddy on Unsplash

蛇口をひねると、水が出る。スイッチを押すと、照明がつく。大多数の便利を追求した結果、私たちは毎日、信じられないぐらい数多くの「お約束」に囲まれた暮らしを享受しているわけですが、そんな中で少数派の人々の隠れた不便や不満はこれまで、気づかれずに見過ごされがちでした。

しかし、スマホの普及などで消費者とのOne to Oneコミュニケーションが可能となった現在、そういうニッチな隠れた不満や不便を解決してあげることで、企業がブランドイメージを向上させることも可能になっています。

今回はそんな取り組みの代表的なものとして、アディダスの事例を紹介させていただきます。世界には事故や病気などの理由で、片足だけ義足を履いてランニングを楽しむ人たちがたくさんいます。その人たちの隠れた悩みは、新しいシューズを1組買うたびに、左右どちらか片方のシューズが必ず無駄になってしまうこと。それに気づいたインドのアディダスは、こんな取り組みを実施しました。

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…そうです。彼らは2016年のリオ・パラリンピックの開催に合わせて、義足のランナーたちのために左右どちらか片方の足のシューズだけを1組にして売り出す「Adidas Odds」という商品を世に送り出したのです!

このアイデアの素晴らしいところは、既に売られているシューズ自体に何も手を加える必要なく、梱包時にただ、入れる靴の組み合わせを変えるだけで簡単に実現できてしまう点。この取り組みを初めて知ったとき、「シューズは左右1対で売られるべきもの」という思い込みに知らぬ間に囚われていた自分に気づき、愕然としたのを覚えています。

この商品の直接的な売り上げへの貢献はこの説明ビデオからは分かりませんが、インド初のパラリンピアン・ランナーをフィーチャーしてこの取り組みを伝えたアディダスのTVCMはインド国内はもちろん、広く世界中で話題となり、アディダスのブランドイメージ向上に大きな役割を果たしました。

世の中はまだ無数の様々な思い込みに満ちていて、それを疑い、ひねることで誰もが、誰にとってもより良い暮らしに貢献できる。

そんなことを教えてくれる、素晴らしい事例だと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それではまた来週!