世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

マウスがうまく使えない人たちのために開発された”マウス”パッド【カンヌ2023受賞作より】

UnsplashのClem Onojeghuoが撮影した写真

🏷️ 今回はかなり良さげな発明品についてご紹介

トラックパッド付きのMacBookを使い始めてもう10数年、会社以外ではマウスを使う機会もだいぶ減りましたが、トラックパッドを使った長時間の作業となると手首などが痛くなることもあり、そんな時は手首への負担が少ないマウスのありがたみを痛感します。

しかし、そんなマウスの便利さを享受できるのも、腕から先の機能が問題なく発揮できているからこそ。世の中にはさまざまな理由でマウスを使えない人たちも多く、そんな人たちの(本人たちが気づいてないことすらある)隠れた不満やニーズは、これまであまり顧みられることはありませんでした。

そこで今回は、そんなニーズに応えるべく、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボからのスピンオフ企業、Augmental社が開発した”マウス”パッドについてご紹介しようと思います。さてこのマウス、パソコンのマウスなのでしょうか、動物のマウスなのでしょうか?答えは…そう、その通り!

ちなみにこちらは今年の「世界的クリエイティビティの祭典」カンヌライオンズのイノベーション部門でグランプリを獲得するなど、非常に高い評価を受けたアイデアとなります。アーリーステージ・テクノロジー(初期段階の技術)というカテゴリーでの受賞ゆえ、人々の手に届くようになるまでにはまだ曲折があるかもしれませんが、以下Augmental社のWebサイトから、ウェイティングリストに購入希望を登録することはできるようです。

www.augmental.tech

それでは”マウス”パッドの紹介ムービーを以下、ご覧ください。(カンヌのケースフィルム(2分)よりもうんと理解が深まる、3分40秒バージョンです!)

🪧「MouthPad / ”マウス”パッド

vimeo.com

【雑和訳】文字要素:毎年、世界では毎年25万から50万の人々が、脊髄損傷に苦しんでいる-世界保健機関 /

アーティストでミス車椅子カリフォルニアのクリスティーナさん「私は四肢麻痺とともに暮らしています」/ プロゲーマーのロッキーさん「私は2006年に首を損傷しました。なので、麻痺状態になってから17年が経ったことになります」/  Sports MgmtのMA・YPACメンバーのニコさん「ピックアップトラックの後ろからジャンプした時、不運なことに首が後ろに曲がってしまったのです、そして今に至っています」 /

ロッキーさん「長年ペンを口に咥えたり、クアッドスティック*(*口で操作するゲームコントローラー)を顔面に打ち付けてきた影響で、前歯はすでになくなってしまいました」/ クリスティーナさん「最初に脊髄を損傷した時、声による操作やタイピングを学んで論文や宿題をやろうと努力したんですが、とてもやりにくくて…、それが学校をドロップアウトした原因のひとつでした」/

United Spinal社 テクノロジー&イノベーション部門VPのブルックさん「脊髄を損傷した人々が彼らのパソコンや、スマートフォンを使うための商品ってどこにあると思いますか?ほとんどないのが現状です」/

タイトル:紹介します。MouthPad(”マウス”パッド)/ 文字要素:サンフランシスコ、カリフォルニア /

Augmental共同創業者のトーマスさん「私は人間の能力を補うことに情熱を注いでいます。私は、すべての制限を克服するためにテクノロジーを活用することに興味を持っています」/ Augmental共同創業者のコーテンさん「Augmental社では常に、舌が人間の体の中でもとても柔軟に動き、活用できる部位だと考えてきました。私たちはそれをいわば、”11番目の指”と位置づけたのです」/ ブルックさん「舌はとてもユニークな特性を持っています。素早く動き、(人々は)すぐに(その動きを)学習することもできるのです。とても正確に動き、その器用さは、(体の他の部分だと)指にしか見られないものです」/

ニコさん「ありがとう!」/ トーマスさん「”マウス”パッドは、口の中に装着されるインターフェイスで、手を使わずにコンピューターの操作を可能にするものです。なので実際、まるで指でトラックパッドに触れたり、カーソル操作したり、クリックするのと同じような感覚で、あなたは自分の舌を使い、コンピューターを操作することができるのです」/

クリスティーナさん「わぁ、これは本当に素晴らしい。一体感があるし、とても使いやすいです。思いのままに動かせますね」/ ロッキーさん「電話をクリックして、誰かに電話をかけられるなんて…本当にゲームチェンジャーです」/ ニコさん「私は本当にただ…なんというか、もう一度、人間らしくありたいだけなんです」/

コーテンさん「私たちは人間をアシストするだけでなく、自分たちのテクノロジーで、私たちの進化する方法を本当に変えていけると信じています。だから、これは”あぁ、自分は人間性を失ってしまった”と嘆くような話ではなく、むしろそれを補い、強化するものだと考えています」/  

ニコさん「まるで自分の右腕を取り戻したような気分です」/ メカニカルデザイン主任のジュリアンさん「私たちには、人々の暮らしを変える可能性があると思います。私たちは、誰もが使えるインターフェイスを作っているのです」/

ロッキーさんのガールフレンド、ジャクリーンさん「ロッキー、気に入った?」/ ロッキー「ペンを咥えなくていいのは、いい感じだね」/ クリスティーナさん「私はセックスが大好きなの。なので、こうした場に立ち会えて、(Augmental社の)お手伝いができることは素晴らしいし、自分たちが力を合わせて働いていられることに本当に興奮しています。AugmentalのみんながどのようにMouthPadを使うつもりなのか…私のヴァイブレーターと繋いでね」/ クリスティーナのパートナー、ティサさん「この新しいデバイスは、すべてを良くしてくれるの!」/

ニコさん「動き回っている間や、何か他のことをしている時もコミュニケーションが取れるおかげで、人生を取り戻したような気分です」/ ロッキー「自分のニックネームがインターネット上では”口を使った殺し屋”というものになっちゃってw」/ クリスティーナさん「最後はきっと、みんなが使うようになると思うわ」/ ニコ「春がまさにやってくる気分ですね。これが永遠の春になるといいな、と思います」/

商品ロゴ:MouthPad(”マウス”パッド)- 世界をその舌先に

🏷️ 技術進化のスピードに、アイデアはついていけるか

いかがでしたでしょうか?改めて、素晴らしい技術ですよね!

より詳しくは、以下のギズモードによる関連記事をお読みいただければと思います。

www.gizmodo.jp

こういう素晴らしい発明品は、一度できたものを見てしまうと誰でも考えつきそうで、なぜ今までなかったのか?と感じるものが多いような気がします。そしてそういった発明の背後には、いつも技術とアイデアの素晴らしいマッチングがあります。

VRですらすでに死語に思えるようなこの時代。技術が凄まじいスピードで進化する中、今日不可能なことも、明日、明後日にはできるようになっていても不思議ではありません。

例えば、子供の頃にひらめいて、当時はどうあがいても実現できなかったアイデアはありませんか?時にはそんなアイデアを記憶の倉庫から引っ張り出して、現在の技術を活用したらどうなるのか、考えてみるのも面白いかもしれません。

 

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!