世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

韓国警察庁が110番に追加した、素晴らしい新機能【カンヌ2023より】

UnsplashのJenny Ueberbergが撮影した写真

時代に合わせたバージョンアップで、被虐待者の保護に貢献

夏になりました。久しぶりに街に人が溢れている昨今、日本でも物騒な事件が増えているように感じます。ということで今回は、お隣の国・韓国の警察庁が今の時代に対応すべく、その緊急呼び出し番号である112番(日本でいう110番)に加えた小さな、でも偉大なるひとひねりをご紹介したいと思います。

カンヌライオンズ2023の、女性の権利拡張を目指すアイデアを評価するグラス部門でグランプリ、他の部門でも金賞以下を多数獲得するなど、非常に高く評価された取り組みです。

それでは早速、以下の紹介ムービーをご覧ください。

「Knock Knock / トントン」

youtu.be

【雑和訳】文字要素:韓国では過去8年間、ドメスティック・バイオレンスが718%増加しました / しかしその2%しか警察に報告されていません / なぜ、そんなに報告が少ないのでしょうか? / 被害者は伝えられないのです / なぜなら、加害者と同じ場所にいるから… /

では、どうしたら警察は話せない被害者を救うことができるのでしょう? / タイトル:静かな緊急呼び出し”Knock Knock(トントン) /

文字要素:112番(訳註:日本でいう110番)をダイヤルします / そして、どの番号でも良いので同じ番号を2回押すだけ / 何も言わず / 警察はそのタップ音を聞くと / それが静かな緊急呼び出しかどうかを確認 / 発信者にリンクが送られます / それにより、発信者のカメラを通じて警察は現場の状況を把握することができるのです /

また、リンクにより発信者の場所もトラックすることが可能に(LBSリクエストなしのトラッキングが可能)/ そして、隠密にチャットができるモードも開発しました(Google検索をしているだけのように見えるチャットウィンドウを採用)/すべては、警察が現状をリアルタイムに判断できるようにするため / そして、迅速に対応するためです /

この新しい緊急呼び出し方式は / 韓国全域、4,800人の警察の電話交換手に導入されました / そして、一般に告知されました / ビューティー関連のチャンネルや / ネイルサロンやヘアサロン / その他、女性がよく訪れる場所を通じて /

ニュースキャスター「警察への、新しい緊急呼び出し方法が開発されました」/ さまざまな人たち「Knock Knock(トントン)」/ メディアで大きな話題に(全域放映すべてのニュースチャンネルがフィーチャー)/ 2億3千7百万(ソーシャルからトラディショナルメディアまでのメディアインプレッション) / (様々なメディアの称賛の声が入る)/

聾唖の女優 リー・ソビュル「これはとても重要な発明です。障害を持つ人や、社会的弱者にとっても」/ この取り組みが始まって以来、緊急対応室の交換手に5,749の通知が寄せられました / そしてKnock Knock(トントン)は、正式に韓国の緊急呼び出し方法になったのです / 声を出さずに、あなたの声を警察に / 韓国警察庁

意外とある、身近すぎて昔のままになっているもの

いかがでしたでしょうか?

このアイデアの素敵なところは、110番のような、当たり前すぎて前世紀から何も更新されてこなかった仕組みに「スマホの普及」という社会の側の変化をフィードバックし、進化させたことにあると思います。

考えてみれば他にも、郵便ポストやマンホールなど、世の中がこれだけ進化しているのに、子供の頃から何もかわっていないものは本当にたくさんあります。

それらが知らぬ間に我々に押し付けている不便はないでしょうか?

さらにはそれらがもたらす制約の中で、知らずと諦めてしまっているより良い可能性や、選択肢はないでしょうか?

誰もが日々の中で見逃してしまっているそういった「問い」を見つけ、それらにきちんと向き合う力が、この韓国警察庁のアイデアのように、世の中をより良い方向へと変えるソリューションを生み出す原動力となるのだと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!