世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

「母のチカラ」でティーンの課題解決に挑んだキャンペーン【カンヌ2022より】

UnsplashのAdam Wingerが撮影した写真

子供にとっての一番のインフルエンサーは”親”

私はふたりのティーンエージャーの親ですが、正直、彼らがスマホタブレットで日頃何をみているのか皆目見当がつきません(もちろんペアレンタルコントロールは噛ませてはいるのですが…)。今回はそんな私自身が見て少し恐ろしくなった、Doveのキャンペーンムービーをご紹介いたします。

SNSを通じて危険なダイエットをはじめとする、有害な美容法をティーンたちに注ぎ込むことで自己顕示欲とお財布を満たしている「有害な」インフルエンサーたち。そんな彼らの悪影響から愛する我が子を守るためにはどうすれば良いのか…

といったところで、子供たちにとって最も影響力を持つ私たち自身。つまり「親」の影響力に着目したキャンペーンです。

クリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2022のエンターテインメント部門で金賞を獲得した、素晴らしくもショッキングなフィルム作品になります。それではご覧ください。

「Toxic Influence / 有害なインフルエンサー

youtu.be

【雑和訳】

文字:Doveフィルム / 拡声器「くつろいでください」「ようこそ!」/ 母親「ありがとう」/母親「どう座ろうかしらね?」/ 拡声器「水もあるので、飲んでくださいね」/  母親「リップ塗っちゃったから飲めないわね。ふふふ」/

文字:私たちは、ソーシャルメディアについて話してもらうために様々な母親とその娘を招待した /

母親「ソーシャルメディアは良いとは思うけど、悪いものにもなりうるかな」/ 母親「娘に自信を持ってもらう上では、助けになるかもしれません」/ 母親「マージーは今、自分を模索しているところなんです。まだソーシャルメディアにも影響受けてないと思いますし」/ 娘「ほとんどのインフルエンサーは、私にポジティブなインパクトを与えてくれていると思います」/

文字:私たちは、少女たちに画面をスクロールしてもらうようお願いしました / インフルエンサー「ハロー。これ、私がハマっているビューティ・ハックなんだけど…」/

文字:ほとんどの親が、ソーシャルメディアでのビューティ(美容)に関するアドバイスの有害さを過小評価していました / インフルエンサー「とても幸せよ。私のこのくびれを見てよ」/

文字:そして、有害なビューティアドバイスは、彼女たちの娘にとって日常的なものになっていたのです / インフルエンサー「私のこの平らなお腹を見て」/

文字:フェイスマッピング・テクノロジーを使い、私たちは、とても有害なアドバイスを少女たちの母親に言わせてみました /

有害なアドバイス「完璧な肌へのショートカットよ」/ (スクリーンが急に少女の母親の顔に切り替わる) / ディープフェイクの母親「ボトックスはシワを減らすだけじゃないって知ってた?ベイビー・ボトックスは最高よ。始めるのに早すぎるなんてことはないわ」 /

母親「あれは私じゃないわよ!」/ ディープフェイクの母親「とってもすごい粉があるの。空腹感が抑えられるので、朝ごはんもランチも食べなくてへっちゃらなの」/ ディープフェイクの母親「ケミカルピールを試してみなきゃ。肌がピカピカよ。表皮を焼き去って新しい皮膚を育てるの」/

ディープフェイクの母親「オモジョちゃん、もし歯列が平らじゃなければ、爪やすりで削ればいいの。とても簡単なことよ」/ 母親「歯を削る?」/ ディープフェイクの母親「薄い唇で我慢なんてしなくていいの。唇用の充填セットを家で使ってみてください」/

母親「おぞましいわ…」/ ディープフェイクの母親「これが私のおすすめ」/ ディープフェイクの母親「フェイクのまつ毛は本当に簡単にくっつけられるの。まつ毛を切ればね」/ ディープフェイクの母親「あなたにも手に入る、とっても良い錠剤があるのよ」/

ディープフェイクの母親「自分自身に空腹じゃないと言い聞かせなさい。喉が乾いているだけなの」/ ディープフェイクの母親(口々に)「もう膨れて見えることはないわよ」「肌に打ち込むの」「セクシーなまつ毛」「ボトックス」「忘れないで、ずっとスキニーでいることに終わりはないの」/

文字:あなたはそんなことを、自分の娘には言わないでしょう。/ しかし彼女たちはオンラインで、そんな情報に晒されているのです。/

母親「わぁ…」/ 母親「これは、これは…」/ 母親「あなた、本当にこんなもの見たことあるの?」/ 娘「ええ、たくさん…。どの娘のフィードにも載ってるよ」/  母親「娘たちは見ているんでしょ…私の目が届かない夜中とかに」/ 母親「本当に怖いですね。娘たちがこれを見てこんな風にならなきゃ、なんて思うわけよね」/

娘「歯を削るビデオは見たよ。覚えてる。全部見たわ。これ知ってる」/ 母親「これを見ないようにすることは出来ないのはわかっています。でも、(これについて)話し合うことはできるのです」/ 母親「100%会話を欠かさないようにします。ペイトンにはいつも、いつでも相談に乗ってあげるよ、ということを知ってもらいます」/

娘「お母さんは、こんな人たちを気にするなと教えてくれました。自分を誇りに思いなさいと」/

文字:少女たちにとって、親たちはいつも最高のインフルエンサーです。/ DoveのSelf-Esteem(自己尊重)プロジェクトは、親たちが娘たちのフィードから有害なものを取り除くためのツールを開発しました。/

ロゴ:Dove Self-Esteem(自己尊重)プロジェクト

流行り物ばかりに目が行く時代だからこそ効く”親子の情”

いかがでしたでしょうか?オンラインが社会の基盤となり、さまざまなデジタルプラットフォームや、そこに寄生するインフルエンサーが世に出ては消えていきますが、その中でも育ての親たちは、時代を超えて子供たちに揺るぎのない影響を与え続けることができる究極の「インフルエンサー」だといえるでしょう。

この企画のように皆様もキャンペーンのアイデアに行き詰まった時、今が旬のもの追いかけるだけでなく、あえてプリミティブなもの(今回の場合は”親子の情”)に立ち返り、それを活用する、という方法を探ってみるのも効果的かもしれません。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!