私は今まで日本の他に韓国、シンガポール、台湾で暮らしたことがあるのですが、その中で気づいたのは、どの社会にも大した優劣はなく、ただ同時にどの社会にも「他の社会から見ると理不尽な制度や風習がある」ということでした。そしてその中のいくつかは、それぞれの社会の人々には当たり前のこととして「刷り込まれた」、女性や少数民族などへの隠れた差別につながっています。当然だと思われすぎて、差別とすら思われていない差別。今回はそれに気づき、声をあげたドイツのキャンペーンをご紹介します。
ドイツでは今から50年前に、男性ばかりの国会議員たちが制定した税法により、女性にとっては生活必需品であるべき生理用品がなぜか「高級品」に分類され、以来ずっとタンポンには19%の税率が適用されてきたそうです(高級食材のキャビアやトリュフが日用品と変わらない7%の税率しか適当されていないのにかかわらず)。
その理不尽に気づいたオンラインの生理用品ブランド「The Female Company」がとった施策が「タンポンを本にしてしまう」こと。本の税率は7%である、という税法の区分に着目した彼らは、大量のタンポンを本の中に格納。それを書籍として売り出すことで、タンポンをより安い価格で売り出すことに成功したのです(タンポンの税率19%-本の税率7%=12%の値引き効果!)。
さらにその「タンポン・ブック」の記事パートでは、税法上の性差別や、生理に対する社会的不理解をアピール。この本はあっという間に売り切れ、版を重ねると共にこれまで気づかれずに放置されてきたこれらの問題に対する社会的ムーブメントを巻き起こしていきました。
オンライン上に多くの賛同の署名を集めたこの運動は、やがてインフルエンサーを動かし、メディアを動かし、ついには国会を動かし、このビデオには触れられていませんが去年の11月、タンポンの税率はついに他の日用品と同じ7%へと引き下げられる決定がなされたそうです。
当然のこととして社会に刷り込まれ、見過ごされている差別に気づき、アイデアの力で知らせ、正す。社会とアイデアの理想的な関係を示す、素晴らしいキャンペーンだと思いました。
いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆さん、また来週!