世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

共感への入口を作る:アニメーションの力作2点

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Photo by Phil Shaw on Unsplash

身の回りに隠れた問題をあぶり出すアニメーション

ハロウィンが終わった途端にいろんなお店で早くもクリスマスソングが流れ出しておりますが、まだまだ続きますクリエイティビティの祭典・カンヌライオンズ2020/21受賞作品のご紹介シリーズ。今回は私が6年前に審査員を務めたこともある(懐かしい!)同賞のウェルス&ウエルネス部門で金賞を受賞したアニメーションを使った2作品をご紹介いたします。

まず最初は、白人社会にマイノリティとして生きるアフリカ系女性の葛藤を描いた作品「SKIN DEEP」です。高校時代、水泳大会で白人の相手から言われた心ない一言によるトラウマから、その克服までを描いたストーリーです。このムービー、総尺8分13秒のうち頭の30秒が活動家のコメント、そしてお尻の何と5分がスタッフリストなのでそんなに長くはありません(笑)。

SKIN DEEP(素肌の奥、深く)

vimeo.com

水泳大会で打ち負かした相手から「くたばれ、もじゃもじゃ女」と言われて、それをコーチに訴えても「そんなことは言うような子には思えないけど」という一言で救われず、闇堕ちしていく女の子。彼女を、これまでに受けた様々な差別や偏見が襲います。

もがき苦しむ中、彼女よりももっと厳しい差別を受けてきただろう世代の母親の声が救います。「私もずっと、あなたと同じような状況で生きてきたのよ。これからもこういうことはずっと続くのよ。でも挫けないで。あなたのそばにはいつも私とお父さんがついてるわ。」

そこに、高校時代の水泳のコーチが今の世界線に移って語りかけます。「そんな言葉に負けないで。次の戦いに集中するのよ。」そして、今や25歳になった彼女の目に自信が再び宿るのでした。

最後のメッセージは「この話は、実話にインスパイアされたムービーです。人種に由来するトラウマ的ストレスは本当に起きている話なのです。傷ついた人々の心は、リアルなのです。」というような意味です。

Two Monsters in My Story(2匹の怪物の物語)

続いては、フランスの活動団体がアニメで訴えた、家庭で起きている「児童への性虐待」と、それに対する社会的制度の矛盾を炙り出したアニメーションです。

www.youtube.com

子供が語ります。「僕の家には、2匹のモンスターがいる。1匹はクローゼットの中。もう1匹はすぐそばにいる、よく知っている顔をしている(←お父さんのこと)。」そして夜、その子を襲いにくるお父さんという名のモンスター。

男の子は、クローゼットの中のモンスターに助けに出てきてくれることを願いますが、出てきてくれません。恐怖で何も言えない少年。虐待の被害に遭った後、勇気を出して少年はクローゼットを開け、中のモンスターに語りかけます。「何で助けてくれなかったの?」すると中のモンスターは子供に話しかけるのです。「君はお父さんに”嫌だ”と言いましたか?」

そこに衝撃的なメッセージが流れます。「フランスの法律では、子供の性的虐待の被害者は、自分が同意しなかったことを証明する必要がある。」

つまり、クローゼットの中のモンスターは、フランスの「法制度」を暗喩していたわけです。このように被害者の心理を汲み取らない状況を放置している法曹界は、虐待を繰り返す犯罪者と同罪だ、ということを訴えている、かなり辛辣な内容であることがわかります。

アニメには、無関心の鎧を潜り抜ける力がある

2作品とも、アフリカ系の人々や子どもたちなど、マイノリティが抱える辛い状況をアニメーションならではの表現で人々に伝え、「わかるわかる、それは辛いだろうなぁ」と共感させたところで最後に訴えたいメッセージを言葉で突き刺すという、見事な構成となっています。

宮崎アニメを観ていてもいつも思いますが、質の高いアニメには、実写ではなかなか実現できない、概念と実存が入り混じった「頭の中で描いたもの」を表現し、人の心を動かすことができるという、とてつもない特長があります。そして質の高いアニメの底にはいつも、強いメッセージがあります。

強いメッセージがあるのにうまく伝えられない時の表現手法としてのアニメーションに、アニメーション大国を誇る日本の我々も、もっと注目していいのかもしれませんね。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!