世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

あの死から23年。アイルトンセナ財団が見せる、アスリートによるソーシャルグッドの可能性:Ayrton Senna Foundation - New Way of Social Good by a Legendary Athlete

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1994年5月1日。イモラのタンブレロコーナーで34歳の人生を終えたアイルトン・セナ。年代的にも自分の生き方に大きな影響を与えてくれた人物ですが、死後23年を経て、彼のブランドやレガシーは遺族によるNGO団体、アイルトンセナ財団によって今もブラジルの子供たちの教育に大いに役立てられているそうです。最近の著名アスリートたちが企業との関係性などで自己ブランドの維持に苦労する中、ソーシャルグッドと結びつけたこのような座組みのアイデアは案外とこれからの参考になるかもしれないと思いましたので、以下にイギリスBBCによる記事の概要を翻訳してご紹介いたします。

Here is a link to BBC's article about Ayrton Sena Foundation, which is supporting chilren's education in Brazil even today.  

www.bbc.com

<記事概訳>

アイルトン・セナ : そのブランドとレガシーは生き続ける”

その死から23年を経てなお、かつてのF1世界王者アイルトン・セナの名は生きている時と同様の価値を保っている。彼の故郷、ブラジルに変化をもたらしながら。

 

金曜の午後、サンパウロから1時間ほど離れた郊外の小さな町イタチバの学校では、12歳ぐらいの子供たちがコンピューターラボに集まっていた。

授業時間を超え、課外活動として自発的に参加している子供たち。彼らはMITのエキスパートが子供にコーディングを教えるために開発した「スクラッチ」というソフトウェアを学んでいる。

ブラジルの学校でこのようなカリキュラムを持つところはほとんどない。世界での学力ランキングでも最下層に沈むこの国では、算数やポルトガル語など、基本的なことを教えるのにすら苦労しているのが実情だ。

イタチバではF1に興味を持つ生徒や教師はほとんどいない。ただ、ここで起きていることは1994年5月1日、サンマリノGPで命を落としたアイルトン・セナのレガシーの一部だ。

“セナとその一族”

コーディングの授業は、セナの姉ヴィヴィアーノが彼の死から数カ月後に立ち上げたNGO団体、アイルトンセナ財団により運営されているプロジェクトだ。

この財団の主な資金源は、セナのブランドやレガシーのマネジメントによりもたらされている。

彼は今もなお、世界でもっとも価値のあるスポーツブランドの一つだ。過去5年間で、この財団には10億レアル(およそ350億円)もの資金が集まった。

そしてこれは、セナ家のビジネスでもある。財団の理事はヴィヴィアーニで、彼女の娘、ビアンカブランディングを担当している。

その資金の多くは野心的な教育プロジェクトの推進に使われ、それが財団の主なビジネスになっている。

ビアンカは言う。「普通の企業の場合、その中の一部に社会貢献活動のための部門がありますが、私たちはある意味、その逆だと言えます。私たちは、スポーツブランド会社をその中の一部に入れ込んだ、唯一のNGO団体なのです」

<衰えぬ人気>

セナは、マーケティングの点でまだかなりの価値がある存在だ。

セナ関連の商品が強い市場はブラジルと英国、イタリア。

ボストン・コンサルティンググループが行なった2015年の調査によると、セナブランドが商品に与える影響力はロジャー・フェデラーマイケル・ジョーダンと同じクラスに属する。

また他の調査によると、リオ五輪に参加したブラジル代表選手(多くは若すぎて、彼の存命中の姿を知らないはずだ)の中で、彼はネイマールやペレを上回り、彼らにもっともインスピレーションを与えた存在として位置付けられた。

セナ財団はこのマーケティングの価値を最大限に生かすべく、関連書籍やDVD、ヘルメットやコレクターズアイテムを購入してくれるF1ファン層と、レースには興味がないが、彼のカリスマや価値に良い印象を持つ一般層の2つのターゲットに向けて、何百という商品にセナの顔と名前の使用を許可している。

一般層に向けての商品としては、おもちゃや子供向けのコミック、ケチャップやマスタード、マヨネーズなどの調味料が販売されている。

<比類なきブランド>

トップブランドコンサルタント社のマーケティングスペシャリスト、マルコス・マチャド氏によると、キャリア全盛期における悲劇的な死によって、セナは勝利者としてのイメージを失わず、大衆の心に訴えかけることができたと言う。

ほとんどのスターアスリートは衰え、引退することによりその魅力を失うことになる。時にはタイガー・ウッズライアン・ロクテのように、スキャンダルで自らのブランドを傷つけてしまうこともある。

<セナのF1キャリア>

・世界王者:1988,1990,1991

・161レースに出場

・通算41勝

・ポール・ポジション獲得数65

・初レース 1984 ブラジルGP

・初優勝 1985 ポルトガルGP

・最後の勝利 1993 オーストラリアGP

・ラストレース 1994サン・マリノGP

・F1史上最高のドライバーに選出

セナブランドの強みは実質上、ライセンス契約による収入のほぼ全てが、利益ではなくチャリティに生かされるところである。

教育は財団の中核事業であり、過去20年で、この財団は年間1900万人の子供たちをサポートし、6万人の教師を訓練するブラジル最大のNGO団体の一つとなった。

そして今、財団は多くの学校に安価で導入することができるスマートな教育推進策 ー ヴィヴィアンが言うところの「ワクチン」の開発と研究に投資を集中させている。

<社会的かつ、情緒的スキル>

昨年この取り組みは、リオデジャネイロ低所得者たちが集まる公立学校、コレジオ・チコ・アニシオで大きな成果を上げた。

カリキュラムを見直し、算数や言語といった従来の科目のみでなく、忍耐や規律、決断力といった社会的、情緒的スキルの教育も評価マトリクスとセットで組み入れたところ、全国規模の学力テストにより低所得者層の中では5番目に優秀な学校としてランクインしたのだ。

今年、財団はこの「ワクチン」プログラムをブラジル南部の20校に展開している。

「このような社会的、情緒的スキルは個人的な特性に基づくものであり、計測できるものではない」、「この財団は学校や教師を一般のビジネスと同じように扱いすぎなのでは」など、財団の活動に批判がないわけではない。

 しかしヴィヴィアーニはこう否定する。

 「もし19世紀の人が今の教室を見たとしても、何も違いを感じないでしょう。でも世界の他の部分では技術や科学の革命が起きているのです」「何もそれは、スマホタブレットを子供に持たせるだけのことではありません。私たちは、そのような世界と相対するための社会的、情緒的スキルを育もうとしているのです」

<これからの課題>

いくつかの成功にもかかわらず近年、ブラジルの教育水準はPisaによる世界ランキングでも低下傾向から抜け出せていない。

ブラジルでは6歳から16歳までの子供、合わせて5000万人が教育を受けるものの、高校を卒業するのは5人のうちたった1人で、あとの子供たちはその間に教育過程から身を引いてしまう。

財団も前途が洋々というわけではない。学校との全ての取り組みは州や市当局の認可が必要なものの、公共の財政は不況により破綻している。

ブランドの点から言っても、一般大衆のセナへの興味・関心を保ち続けることは、時の経過とともに難しくなっていくことだろう。

マチャド氏は言う。「この財団は素晴らしい仕事をしてきた。大衆のセナへの興味関心も保ち続けることができるだろう。ただ、それは永遠というわけではない」「私たちは現実的にならないといけない。いつか、若い世代にとってセナは現実のアイドルというよりかは、遠い過去の人物のように感じることになるだろう」

サーキットでは、不可能なことを可能にすることでその伝説を作り上げたアイルトン・セナ。その名を冠する財団は今、彼のスピリットを胸に新たな不可能に挑戦しようとしている。

悲しい誤解を解くために。セサミストリートのキャラクターに自閉症の女の子が登場!〜A new friend with autism comes to Sesame Street!

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先日、セサミストリートの新キャラクターに自閉症の女の子が登場したというニュースがBBCのウェブサイトに掲載されていました。この子とセサミストリートの仲間たちとの交流を通じて、自閉症の子供たちについての誤解を解いていこうというアイデアです。

バードが、普通の子と反応が違う女の子に悩んだり、おじさんがその悩みを解決してあげたりする感じが、とても愛おしかったので以下リンク先のムービーでご覧ください(和訳もリンク下につけておきます)。きちんと専門家をつけているのでしょう、症状に個人差があるところまできちんと触れているところも啓蒙としては練れていて、誠実だな、と思いました。

Hi Bird, could you tell me how to get to Sesami Street? I need to learn from Julia a lot!

www.bbc.com

<ムービー和訳>

エルモ「この子がお友達のジュリアだよ!」

バード「ジュリアちゃん今日は。僕はバードだよ。よろしくね!・・(無反応にあせって)あれ、ジュリア?」

おじさん「ジュリアは今、お絵かきに夢中なんだ。みんな今日は、頑張ったね!」

文字:セサミストリートの新しいキャラクター、自閉症のジュリア。彼女はその存在を通じて、子供たちがその症状や、暮らしの中で誤解が起きやすいシチュエーションを理解する手助けをしてくれる。

おじさん「ジュリアは自閉症なんだ。理解してあげるとジュリアも喜ぶよ。」

バード「自閉症?それってなあに?」

おじさん「ジュリアの場合はね、話しかけてもすぐに答えてくれないかもしれない。」

エルモ「そう、ジュリアはあまり喋らないんだ。」

おじさん「その通り。そして、彼女は君がハイファイブしようと思っても乗ってこなかったりするよ。」

アビー「そう、ジュリアは他の子たちとは、ちょっぴり違ったことをするんだ。“ジュリア流”のね。」

バード「ヘぇー。」

文字:これについて、自閉症関連のコミュニティからは、好意的な反響が多く寄せられている。

ジェームズ:自閉症の一人一人は、勇敢に素晴らしく、驚くべき毎日を全力で送っている。私の息子もそうだ。セサミストリートのジュリア、ありがとう!

MrsC:ジュリアに感謝!あなたは自閉症を身近なものに変えてくれたわ。あなたは子供たちだけじゃなくて、大人たちにまで必要なことを教育してくれているわ。

マリ:セサミストリートにジュリア登場。自閉症の女の子がキャスト入り!

 

ちなみに上記映像の本編や、自閉症についての情報がたくさん盛りこまれたセサミストリートの公式サイトには以下からアクセスいただけます。

autism.sesamestreet.org

 

自分や、その他大勢とは違う存在や考え方を受け入れることを、こんな感じで前向きに、明るく楽しく教えたり、教わる機会がもっと増えるといいんだろうな、増やさなきゃいけないな、と強く思いました。

 

SNSの動画フォーマットを活用して「見えない貧困」を可視化したカナダ発のキャンペーン:Salvation Army - Facebook 360 Photo

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今回は、ブログをお休みしていた昨年末に見つけて紹介したいなぁ、と思っていたアイデアをご案内いたします。日本でいう救世軍、サルベーションアーミーのカナダ支部が行なった、Facebookの360度パノラマ画像機能を活用したキャンペーンです。

2年前に映画「スターウォーズ フォースの覚醒」のプロモーションコンテンツとしてこの機能(動画と静止画の違いはありますが)を体験して以来、それをうまく使ったキャンペーンが意外と少ない気がしたのですが、これは救世軍が伝えたいメッセージと機能がきれいにつながっていて、素敵だなと思いました。

This is an idea which was executed during the holiday season last year, by the Salvation Army Canada. It adroitly connects the unique visual format of Facebook – 360 photo, with the message they want to appeal especially in the holiday season. Though it might be a bit modest, I like this idea since there have been not so many good works using this visual format effectively except for the promotional content for Star Wars VII, which was launched 2 years ago - “A long time ago”, seriously.

 

救世軍:Salvation Army - Facebook 360 Video>

vimeo.com

<ビデオ英訳>

「このホリデーシーズン、救世軍は人々に、貧困は必ずしも目に見える形では現れないことを知らせたいと考えていた」

「そこで我々は、ホリデーシーズンの隠された一面を、Facebookの360度パノラマ映像機能を使って明らかにすることにした」

「私たちの投稿は一見、単なるホリデーを祝う家族の挨拶画像に見える」

「しかしユーザーがこの画像に触れると、全く違う側面が見えてくるのだ」

(ユーザーが360度の画像を見回して、挨拶画像を取り囲む家族の生活環境が、決して恵まれていないことが分かった後「貧困は目に見えにくい。特にホリデーシーズンは。」というキャッチコピーと救世軍のロゴが表示される。これがバージョン違いで何度か繰り返される。)

「貧困は目に見えにくい。特にホリデーシーズンは」                                 

「このシーズン、救世軍カナダのウェブサイトで募金にご協力ください」

タイトル:今日に希望を – 救世軍

 

ちなみに、このアイデアを基づいたテレビや、ポスターも制作されているようです。以下にリンクを貼っておきますが、強いアイデアはフォーマットに関わりなく、様々なメディアに転用しやすいものなのかもしれませんね。

You can also check the TV commercial and some poster visuals for this campaign from this Adweek article.

<出典元:The Salvation Army’s Clever Facebook 360 Photos Show Poverty Lurking Just Out of View>

http://www.adweek.com/creativity/salvation-armys-clever-facebook-360-photos-show-poverty-lurking-just-out-view-174789/

 

また、冒頭に触れたスターウォーズの記事もつけておきます。

<参考資料「スターウォーズ フォースの覚醒プロモーション用360度パノラマ動画>

www.facebook.com

 

 

この視点は斬新!本棚に加えたひとひねりで男女格差のリアルを明示したキャンペーン:The best Idea for International Women's Day 2017

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去る3月8日は「国際女性デー」ということで、日本を含む世界各地で様々な取り組みが行われましたら、今回はその中で自分が一番感心したアイデアをご紹介します。

アメリカはオハイオにある、ローガンベリー(Loganberry)という古本屋さんで行われた取り組みだそうなのですが、とても低予算で、男女の労働における格差を見事に訴えることに成功しました。一体、何をしたのかというと。。

まずは以下のリンクをクリックして、記事の写真を見てください。一目瞭然とは思いますが、どんな低予算でも、普段当たり前だと思い込んでいるものの視点を少しずらすだけで、世界中で話題になるようなキャンペーンにできてしまう。その模範のような事例で、企画者としてとても励みになりますよ。

This is the best idea for International Women's Day 2017 personally. Please check the English article below.

www.adweek.com

 記事の写真、ご覧いただけましたでしょうか?そうなんです、この古本屋さんは様々なジャンルの本の「著者」についての男女格差を明示するために、男性が著者の本の背表紙をくるりと全部、裏返してしまいました。するとどうでしょうか、本棚のほとんどが裏返ってしまい、使い物にならないショッキングな状態に。

「(女性たちの歴史月間でもあることにちなんで)女性の著者たちを讃える目的も兼ねて、男性の著者たちを黙らせて見ました」とは書店側のコメント。この取り組みがより大きな男女格差の問題についても深く考えるきっかけになれば、というのが書店側の思いだそうです。

ちなみに、男性風のペンネームを使っている女性の著作はそのままキープ。名前で判断できない場合は一人一人リサーチするなど、10万冊以上の古本屋、希少本を持つ古本屋だけに、必要最低限の手間はきちんとかけているようです。

「毎年何度も同じようなイベントをしても意味がないし、ただ問題に関連した本を読ませるだけでは不十分だと思いました」というのがこの企画の動機。健全な疑問を持つことで、制作費ほぼゼロのビッグアイデアにたどり着いてしまいました。実にあっぱれです。

 

<参考リンク>

手作り感が微笑ましいローガンベリーのFBページ(Loganberry’s Facebook page)

https://www.facebook.com/loganberrybooks/

こんなスローガンあり?〜人類共通のとある行動に目をつけたキャンペーン:The idea which changed the meaning of a “pee”

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去年の7月から久しぶりの更新です。仕事の拠点が東京からシンガポールに移ったのですが、異国での環境にも慣れましたし、世界情勢もかなり変わってしまいましたのでやはり「今こそアイデアの力だなぁ」ということでまた無理のない範囲でアップしていこうと思います。ブログ復帰の第一回目を飾るのは、毎度おなじみアメリカの大胆な意見広告です。いろいろ問題はありますが、意見が対立することを炎上という言葉でごまかさずにきちんとぶつかる文化、前向きです。

7 months have passed since I stopped this blog. During this period, the U.K. decided to move out of the EU and the Trump administration has started in the States. Aside from political opinions, everybody seems to feel that we need some fundamental changes in today’s world. This is the era that great idea is strongly needed and that’s the reason I restart this blog.

The first idea of my blog’s 2nd season is the one from the States. This idea tells us the importance of a slogan in social activities. Please enjoy and, pee.

 

<便座に座って、立ち向かおう。: Taking a seat, Making a stand.>

www.youtube.com

<以下和訳>

女性「テキサスの議会はSB6、トイレ法案を可決しようとしています。トランスジェンダーたちが、彼らのアイデンティティに合った性別のトイレを使うことを禁じる法案です」 

男性「この法案を食い止める方法はただ一つ」

男性「ソデをめくり上げて、パンツを下ろす。そしてLGBTと一緒にオシッコすることです」

 女性「便座に座ることで、この法案に立ち向かいましょう」

男性「おしっこシャー、が意思表明」

女性「なぜならこれは、プライバシーの問題でないからです」

女性「そして、自分たちでなんとかできる問題です」

教師「なぜならお金は子供たちがトイレでなく、学校に通えるように使われるべきだからです・・・ちょっと、廊下を走らないで!」

カウボーイ「それに法案を通すことは、フェミニンな仲間を差別することになっちまうからな」

男性「ボクみたいなね」

カウボーイ「その通り」

男性「SB6はテキサスのビジネスの脅威になります」

カウボーイ「そんで、しまいには(同じような法案を実際に通してビジネスが不調になったとみられる)ノースカロライナみたくなっちまうのさ」

みんな口々に:

「私はおしっこ、シャーします」

「シャーします」

「シャーします」

「シャーします」

男性「LGBTの人と一緒にね」

女性「なぜならおしっこしない人なんていないし、

誰にでも安全におしっこできる場所は必要だから」

 

タイトル:

それはプライバシーではなく、差別の問題。

 

一同「私はLGBTとシャーします。」

ロゴ<私はLGBTとシャーします。>

 

切り口いろいろ〜男女の賃金格差を訴えるソーシャルキャンペーン集:Clever ideas to appeal the gender pay gap

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先日、世界中から素晴らしいアイデアが集まるカンヌ国際クリエーティビティ・フェスティバルに参加してまいりました。ほぼ一週間展示室にこもりきりで何百本ものアイデア紹介ビデオを見てまいりましたので、これからしばらくは、そこで発見した素晴らしい最新事例をご紹介できればと考えております。

I’ve just come back from Cannes lions – the Festival of Creativity in France. This year again, there were tons of thousands of great ideas from all over the world so, I’d love to show you some of them.

まず今回は、男女の賃金格差についての課題を扱ったニュージーランドの金融機関ANZと、アメリカの女性サポート団体AAUWからの事例をご紹介します。

First, the online films about “the gender pay gap” from New Zealand and the US. Please have a look.

<ポケットマネー:Pocket Money>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

#公平な未来

女の子A「もし私が総理なら、違法にするけど…」

タイトル:子供たちはお手伝いを頼まれた。

タイトル:そして女の子たちには、男の子より安いお駄賃が渡された。…まるで今のビジネス界と同じように。

女の子B「なんでこの子が5ドルもらえるの?」

大人「そういうものだから」

女の子C「(10ドルをもらった男のを横目に)…7ドル?」

タイトル:でも、これって公平?

女の子A「このままでいいわけないと思う、真剣に。変なことを言っているつもりでもないけど」

男の子A「男の子と女の子は同じ金額を渡されるべきだと思いました。50:50で…または、60:60。お駄賃が120ドルの場合はね」

女の子D「(金額は)どれぐらい頑張って働いたかによるべきだわ」

女の子C「同じ仕事をしたなら、同じ金額がもらえるべきだと思う」

女の子A「男の子のほうが、女の子よりもたくさんお金をもらえるなんてことは、公平でないと言いたいです」

女の子E「男の人も、女性よりも多くの金額をもらっているという事実に気づいているのだとしたら、声を上げるべきだと思います」

男の子A「大きくなったら、(この悪習を)変えてみせるつもりです。…もし覚えてたら」

女の子A「…あまりにおかしな話で言葉もないです」

タイトル:変革のために立ちあがろう。#公平な未来

ロゴマーク:<ANZ

 

<#新しい10ドル:#TheNew10>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:

2020年、アメリカ財務省は女性の肖像を使った10ドル紙幣を発行するという。

財務省は人々に「#TheNew10(新10ドル)」というハッシュタグでデザインを募った。

すべては、100年に渡る性の平等を祝うために。

しかしアメリカの白人女性は未だ、男性の78%の賃金しか支払われていない。

アフリカ系女性は、63%。ラテン系に至っては、54%だ。

はたしてこれが平等といえるのだろうか?

#TheNew10(新10ドル)という象徴的な変化以上を求めよう。

FightForFairPay.org(賃金の平等のための闘争.org)

<AAUW>

ちなみにAAUWは、男女の賃金格差を「労働時間」におきかえた、こんな面白いムービーも作っています。和訳はつけませんが、ニュースキャスターも同じギャラなら男は先に帰っちゃうよ、ということです。

AAUW has also made another interesting online movie as below.

<男女賃金格差の悪いニュース:Bad News about the Gender Pay Gap>

www.youtube.com

一番評価が高く、受賞なども多数していたのは冒頭のANZの物でした。それはともかく、同じ課題に対して子供の口に語らせたり、お札で表現したり、または時間に置き換えたり。過去にも何度か書いてますが、やはり「アイデアは無限」ですね。そう考えると、自分でも何かいいアイデアが出せるのではないかと、前向きな気持ちになってきます。

From the perspective of winning awards, “Pocket Money” was more highly evaluated compared to the other AAUW works. However, these content proves that there are almost infinite ways of appealing even on the same subject. So, all we have to do is just to find a more effective-and -efficient way to appeal the message. Sounds simple and easy, isn’t it?

 

浜辺でビール!の裏にある課題に挑んだ、アメリカの小さなビール会社のグッドアイデア:Edible Six Pack Rings

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梅雨の先に待つ、浜辺の季節。浜辺でのプシュッ!にワクワクしている方も多いと思いますが、今回は缶ビールの6パックが引き起こしている環境問題の解決に乗り出した、小さなビール会社のアイデアをご紹介します。このアイデアはブランドとの親和性が高いだけでなく、ダビデゴリアテによく例えられますが、小さなブランドが自分を大きく見せるために「大手ブランドを同じ土俵に立たせる」というマーケティング手法にも則っていて、非常に効果的な企業キャンペーンにもなっていると思いました。日本のビールメーカーの6缶パックは紙製であることが多いのでこのような問題は起きにくいのですが、業種を問わず、企業がソーシャル・イシューに取り組む際の良いアプローチ事例ということでご参考いただければと思います。

This idea is super-clever. It is relevant to the brand, and at the same time, it makes this brand look bigger and nicer by calling other major beer brands to join their innovative attempt based on goodwill. Applause!

<食べられる6缶パックリング:Edible Six Pack Rings>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

ナレーション&タイトル:

アメリカ人は昨年、63億ガロンのビールを消費し、その半分は缶ビールだった。

その6缶パックを束ねるためのリングの多くは使用後、海を漂うことになる。

海洋生物学者「世界中でおよそ100万羽の海鳥や何千何百もの海洋性哺乳動物、ウミガメがリングにはまってしまったり、食べてしまったりして命を落としています」

漁師「リングを切れば十分だと思っている人が多いんだけど、結局鳥やカメは食べて死んじゃうんだよ」

ナレーション:海の命を救うために。我々は、我々のメインターゲットであるサーファーや漁師、海を愛する人々の心にも響く施策を始めることにした。

ソルトウォーター・ブルワリー提供:

<食べられる6缶パックリング>

海の生き物たちを殺してしまう代わりに、彼らの栄養になる6缶パックリング。我々はこれを、ビールの醸造過程で発生する大麦や小麦から製造し、プラスチックの代わりになるだけでなく、海の生き物たちが食べられるものに仕立てたのだ。

技術責任者「自然の力で100%分解可能で堆肥にもなり、食べられるだけでなく、同時に6缶の重さをしっかりとホールドし、持ち運べる強さも必要なのです」

ナレーション:我々はこの6缶パックのリングを、あらゆる小売の現場に展開した。

女性「いいビールだし、海にもいいし、素敵なブランドよね」

男性「こんなにいい取り組みをしてくれるなら、少しぐらい値上げしたとしても買い続けるよ」

男性「大手のビール会社もこの取り組みを見習うべきだと思う」

男性「俺が食えるなら、カメでも食えるってことなんだな」

男性「なぁベイビー、ビールを楽しんで、海を守れちゃうってことなんだぜ。フッフッフッ」

ナレーション&タイトル:

これはビール業界で初めて実施された、100%生物分解が可能で、しかも食べられる6缶パックリング。

この技術は、既存の6缶パックリングとかわらぬ耐久性をもつ、効率的なものだ。

もしこの技術を他のクラフトビールや、もっと大きなビール会社が採用したら、その製造コストは下がり、今の6缶パックにかかるコストと変わらない、とても競争力のあるものになることだろう。

しかもその結果は、海に住む何千何百もの動物の命を救うことにつながるのだ。

ソルトウォーター・ブルワリー ブランド責任者「これは僕らのようなサーファーや漁師、海を愛する人々に支持されているブルワリーには大きな投資でした」

ソルトウォーター・ブルワリー 社長「私たちは(この取り組みにより)大きなビールブランドに影響を与え、ある意味インスパイアすることで、「海の命を守る」という航海に共に繰り出せればと考えています」

“食べられる6缶パックリング”

<ソルトウォーター・ブルワリー>