世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

必見!課題の核心をついたオンラインムービー:オレオレ詐欺を防ぐのは、オレだ。It’s me who prevent “It’s me” fraud.

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今回は、とても感心した日本発のソーシャルキャンペーンをご紹介します。例えばマイナンバーなど、時節に合わせて繰り出される様々な手口で被害が一向に減らない「オレオレ詐欺」。それを防ぐには…?ということで、どうしてもお年寄りの無知をせめてしまいがちなこの犯罪について、その見方をガラリと変える素晴らしいスペシャルムービーです。クライアントはなんと、政府広報!こんなコンテンツが我が政府からも次々と出てきて、人々から評価されるようになればこの国の未来も明るいと思いました。さてと、親に電話しますか。

In Japan, there is a type of crime called “It’s me” fraud (“Ore-ore” fraud in Japanese). This fraud takes advantage of the lack of communication among parents and their children. The criminals pretend to be their children, and make a phone call to ask for money from “their” parents. This is an online movie by the Japanese government, aiming to diminish this crime – by targeting children of their parents.

オレオレ詐欺を防ぐのは、オレだ。 It’s me who prevent “It’s me” fraud.>

www.youtube.com

<English Translation>

Copy:My mother was swindled out of her money.

Son: Mom, I’ve warned you! I told you to watch out for a call from somebody, who pretends to be me. Why did you give him money? …Hey mom, are you still there?

Mom: Sorry... Maybe, I got too old. I just wanted to help you.

Copy:Why didn’t I call her more often.

Copy:It’s me who prevent “It’s me” fraud.

Son: Hi, mom. How are you?

Copy:Your everyday-call prevents“It's me” fraud.

Copy : The number of victims of “It’s me ” fraud keeps increasing. Call 188 when your family is in trouble.

<PR Office - Government of Japan> 

関連記事:政府広報オンライン(official site)

www.gov-online.go.jp

なるほど!理解されにくい難病の症状を可視化したソ−シャルキャンペーン:THIS BIKE HAS MS

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あけましておめでとうございます。久しぶりの更新ですが、今回はオーストラリアでつい先日発表された、多発性硬化症の患者を支援するためのキャンペーンをご紹介します。多発性硬化症とは中枢神経に起こる病変により、体にしびれや歩行障害、視力の低下などといったさまざまな障害が不規則に起こる難病。外見にも変化が起きず、他人がなかなか理解してくれないその辛さをわかってもらうために、ほとんどの人が乗ったことのある「自転車」にその症状を移植してしまいました。

Happy new year! As the first article in 2016, I feature the social campaign from Australia, which makes people understand the severe symptoms of multiple sclerosis, which are hard to imagine for general public. Please watch the casefilm of this clever campaign.

<多発性硬化自転車 This bike has MS>

www.youtube.com

<ビデオ和訳 *話者不明のところは#にしています>

ナレーター:これはとんでもない乗り物だ。ギアは不規則に変速し、車体のバランスはめちゃくちゃ。そしてブレーキも麻痺している。“このバイクは、多発性硬化症(multiple sclerosis以下MS)に苦しんでいる。”

神経学者「MSは脳と脊髄の情報をつかさどる部分に中枢神経を通じて影響を与える病気です。」

理学療法士「人により症状が異なるものです。」

#「実際にかかってみないと、この病気がどんなものかを伝えることは難しいと思います。」

患者の母親「一見、病気にかかっているようには見えないので、患者であることを理解してもらうことが難しいのです。」

ナレーター:MSと言う病気の理解を促進するために、パラリンピアンであるキャロル・クック(1998年にMSを発症)が、神経学者、理学療法士と自転車のメカニック、患者たちからなるチームを率いて自転車を作った。」

メカニックA「MSにかかった時に暮らしの中で起こる困難を再現するため、自転車を作り直さなければいけませんでした。まず最初に、フレームを歪ませることから始めました。」

メカニックB「めまいを起こすような変速ギアをつけて、乗ってて疲れてしまう、バランスの悪い自転車を作りました。ホイールも歪んでますし…。」

メカニックA「まっすぐ走らせるためには、常に集中していないといけません。特に重い部品を使ってたりするので、とてもしんどいです。」

メカニックA「すこし走らせると、自転車乗りが普段は使うことがない筋肉を使う羽目になります。」

メカニックB「リアのギアから歯車を欠けさせて、乗り手の意思に沿わない作りにしました。サドルもプラスチックのBMX用のものなので、快適なものではありません。」

患者の母親「単に物をつかむだけにしても、手の感覚を失ってしまうので通常よりも努力をしなければなりません。」

メカニックA「ハンドルのバーテープにも心地の悪い細い物を使い、中にベアリングの玉を入れ込みました。」

#「とてもではないけれども、長距離は乗りたくないバイクです。乗り心地がとにかく、ひどい。」

理学療法士「(この試みを通じて)医学の専門家と普通の人々がこの病気について、理解を深めることができたと思います。」

#「症状について理解が深まることで、この病気への医学的関心が促進されればと思います。」

#「MSという病気は隠れていて、人々はまだ理解できていないのです。」

<MS自転車 –MS メルボルンサイクル(Melbourne Cycle) 

 

関連記事:ADWEEK(英語)

www.adweek.com

謎のサンタが警察とコラボ。これぞアメリカ!な心温まるソーシャルキャンペーン

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社会のルール違反を取り締まるという役回りゆえ、どうしても嫌われ役に回りがちな警官たち。特に運転中、ケアレスミスで警官に車窓を叩かれた瞬間のあの「あぁ、やっちまった〜」という感情は苦いものです。

今回は、そんな感情に覚えのある人なら驚きもより大きくなる、アメリカのとある資産家が警察のイメージアップのために行った、クリスマスシーズンならではの粋な取り組みをご紹介いたします。以下のCBSニュースをごらんください。

<Unique traffic stops in Kansas City, Missouri bring drivers to tears. / ドライバーが涙した、カンザスのユニークな交通取締り> 

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

アンカー「本日の『オン・ザ・ロード』では交通取締の警官と、人々のユニークな交流をご紹介します。スティーブ・ハートマンのレポートです」

レポーター「今月上旬、ミズーリ州のカンザスシティではジャクソン郡の警官たちが交通取締りをしていました。獲物を見つけると、背後を走行。しかしその取締り方法は、他では見られないものでした」

警官「こんにちは。あなたたちを追っていたのですが」

市民A「どういうこと?」

市民B「サイテー‥」

レポーター「この取締りが違うのは、その背景にいる男」

赤い帽子の男「おはよう」

レポーター「赤い帽子をかぶったこの男の素性は、『秘密のサンタ』としか明かされていません」

赤い帽子の男「今日は特別なミッションに取り組んでもらう。取締りで、究極の優しさを振りまいてもらいたい」

レポーター「毎年、匿名のこの裕福なビジネスマンは総額10万ドル(およそ1,200万円)を100ドル札にして、通りすがりの人々に与えています」

赤い帽子の男「しかし、」

レポーター「しかし今年は、彼が自分で配る代わりに、警察官たちに代理をお願いしたのです。かくして100ドル札で武装した警官たちは、サンタからの任務を遂行しました。ターゲットはおもにこれらを喜んでくれそうな、でこぼこで、年季の入った車のドライバーたち」

警官「メリークリスマス!」

市民C「なんなの?」

警官「これどうぞ」

市民C「え…ホントに!?うわー!」

レポーター「ほとんどの人たちは、歓喜に沸きました」

市民D「ありがとう!」

レポーター「そして、涙しました」

市民E「キャーー!」

レポーター「それらの反応は、彼らがいかに現金を必要としているかを示していました。取締りは、停車中の車にも…」

警官「すみません。」

市民F「(通話中で)ちょっと待って。すぐ出るつもりだから…」

警官「秘密のサンタが、これを受け取ってほしいと」

レポーター「3人の子持ちのジェシカ・ラドリゲスは警官に、あなたのおかげでクリスマスを乗り越えられると言いました」

市民F「子供に何もしれやれないと悩んでいたのよ…」

警官「いいクリスマスが送れるといいね」

レポーター「実はこのようなひと時が、このミッションの目的でした。今年は秘密のサンタに、秘密のミッションがあったのです」

レポーター「この取り組みを今回、警官たちにお願いした理由は?」

赤い帽子の男「喜びだよ。警官たちは報われず、かなり傷ついているからね」

レポーター「今年はいろいろな過ちを糾弾された警察ですが、ほとんどの善良な警官たちは、メディアに取り上げられることもありません。そこで秘密のサンタが、このような機会を警官たちにプレゼントしたのです。…警官と人々の関係性を変えるような。…ホームレスを実際に救うような。…みんなに感謝され、武力で両手を上げさせるのではなく、両手を上げて感謝されるような、素晴らしい機会を。たくさん抱きしめ合い、体に装着したカメラはへしゃげましたが、その価値はありました。人々はまた、信頼を取り戻しました。そして警官たちも…日々の苦労が報われたのです。以上、スティーブ・ハートマンがミズーリカンザスシティからお届けしました。」

アンカー「おー、わぁ‥。以上、本日のニュースをCBSからお届けしました。」

いかがでしたでしょうか?一部の警官の人種差別的な行いなどにより、イメージの悪化に苦しんでいたアメリカの警察。その改善のために、市民たちにサプライズかつ人間味あふれるきっかけを与える、というのはまさに意義のある取り組みだと感心しました。

このアイデアの素晴らしさを要約すると、以下の3点になります。

1:暮らしの中で避けたい瞬間のひとつに目をつけ、それを素晴らしい瞬間に塗り替えてしまったこと

2:クリスマスというフォーマットを活用し、警官と市民たちの交流を促すことで、警察に対して根付いてしまった不信感を解消させたこと

3:実際に寄付された金額以上の喜びと絆を、コミュニティ全体にもたらしたこと

並の人であれば寄付するだけで満足してしまうところですが、どうせ寄付するならもっといい方法で、というのはなかなかできるものではありません。この「善意を欲張る」という心意気は、アイデアを考えるものとしてぜひ見習いたいと思います。

そして最後に、「秘密の」と自称しておきながら、ビデオをよく見ると実はちょくちょく現場に顔を出している、お茶目な出たがりサンタさんに、拍手!

This is a great news of the holiday season from Kansas City, Missouri. This idea teaches us the value of money becomes “priceless” when people mix it with a great idea. Just amazing.  

すべてが規格外!世界食糧計画(WFP)が実施した「とんでも素晴らしい」ソーシャルキャンペーン

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広告の世界では数年前、街などで突然パフォーマンスをするフラッシュモブや、ありえない場所に広告を置く「ゲリラ広告」なるものが一世を風靡しました。(一般でも、集団でマイケルを踊るなどのムーブメントが盛り上がったのは記憶に新しいところです。)

今回はそれの進化版というか、ありえない!をなんども重ねることで物凄いことになってしまったソーシャルキャンペーンをご紹介します。

 

<805 Million Names (8億500万の名前)>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:2015年2月14日 パリ・サンジェルマン vs カーン

ナレーション:2月14日、パリ・サンジェルマンパルク・デ・プランスでカーンと対戦した。ほとんどの選手にとって、これは数ある試合の中のひとつ。しかしこの試合は、ズラタン・イブラヒモビッチ選手にとっては最も大事な試合のひとつだった。彼の服の下には、50もの新しい名前のタトゥーが刻まれていた。…それらは彼が会ったことのない、でも近くに感じていたい、今も飢えに苦しむ8億500万人もの人々を代表する名前だった。飢えは人々の健康を脅かす、世界最大の要因であるにもかかわらず、新聞の一面を飾ることはほとんどなかった 

イブラヒモビッチは、飢えに対してできることはわずかだが、世界中のあらゆるメディアの一面を飾る術は知っていた。

国連の世界食糧計画とともに作り上げたこのイベントでは、イブラヒモビッチに向けられた注目を、飢えに苦しむ人たちへの注目に変えることにしたのだ。

私たちのアイデアの成否は、イブラヒモビッチのプレイヤーとしての能力に大いにかかっていた。その日の試合に彼がゴールしなければ、キャンペーン全体がお蔵入りという状況だったのだが、その心配はすぐに吹き飛んだ。

アナウンサー「ゴールを決めました!」

イブラヒモビッチ「人々は僕の名前を聞くたびに、(飢えに苦しむ)人々の名前を思い出し、僕の姿を見るたびに、飢えに苦しむ彼らの存在をまぶたに思い描くのです。」

ナレーション:この瞬間、私たちのメッセージは世界のニュースになった。

アナウンサー:「8億500万人というビデオが公開されました。これは50人の子供たちを…」

ナレーション:このキャンペーンは非公開のポロボノで行われ、イブラヒモビッチもノーギャラで参加。大きな予算をメディアにつぎ込む代わりに、私たちは興味関心を喚起するため、イブラヒモビッチの名声を利用したのだ。メインのメディアじは、彼の体。キャンペーンのネタばらしは彼のソーシャルメディア上で行われた。

彼の有名な友人たちにより、この話題はさらなるリーチを獲得。

タイトル:トータルリーチ 8億7,700万人

<WFP 世界食糧計画>

 

さて皆さま、このキャンペーンを自分で考え、実行することをイメージできるでしょうか?このアイデアは、3つの「規格外(=ありえない!)」から成り立っています。

1:試合直前の選手の体に手を入れるという規格外

2:シュートを決める前提でキャンペーンを組み立てる規格外

3:イエローカード覚悟で実行する規格外

1は選手自身にとっては準備のルーチンを崩すことになるので難しいですし、2については、シュートを決めなければ全てがおじゃん、という計画が、クライアント的には受け入れがたいところです。また、3に至ってはチームが激怒するし、日本であればチームのサポーターが許さないのではないでしょうか?

…ということでこのどう考えても不可能なこのアイデアを、これら3者を納得させて(しかもほぼプロボノで!)実行してしまった、という背景には制作者たちの並外れた熱い情熱と、それが呼び込んだかなりの運があったのではないでしょうか。

ちなみにこの企画の成立に運を使い果たしたのか、試合自体は引き分けだったようです。

www.goal.com

でも、このリンクのように、きちんと日本でもニュースになっていますね。

ということで、このブログが標榜しているひとひねりの非常識どころではない、物凄い非常識でメッセージを伝えてしまった「規格外に素晴らしい」キャンペーンをご紹介いたしました。 

In this article, I featured WFP’s “805 million names” campaign because it consists of 3 miracles. How did they persuade Zlatan? How did they persuade WFP? And, How did they persuade PSG? This campaign tell us the importance of passion to execute the great idea, no matter how it seems impossible.

 

まさに三方良し!広告業界の求人と、社会貢献を両立させたベルギー発のソーシャルキャンペーン

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三方良し(さんぼうよし)、という言葉をご存知でしょうか?商売で「売り手良し」と「買い手よし」、「世間良し」の3つを心がけて成功した近江商人の心得なのですが、今回はそれを地で行くベルギー発のソーシャルキャンペーンを見つけましたのでご紹介します。

手がけたのはベルギーの広告業界を取りまとめている協会。同国の広告代理店が共通の悩みとして抱えていた「コピーライター不足」を解決すべく、彼らが仕掛けたアイデアとは?まずは以下のビデオをご覧ください。 

<Sell the Jobless 失業者を売り込もう>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

ナレーション:

ベルギー・コミュニケーション業協会(acc)は、ベルギー国内にあるすべての広告代理店が加盟する団体。彼ら共通の悩みは、コピーライターを志望する有能な人材の減少だった。業界内で人材募集の会を開いても、焼け石に水。

そこでaccは今年、広告業界の外にいるライターたちを魅きつける、意義深いチャレンジに取り組むことにした。

<失業者を売り込もう>

この取り組みは応募者たちに車やスマホ、デオドラントを売るための広告コピーを書かせる代わりに、より人間的で、切実な課題の解決を依頼した。

男性1「こんにちは、ミシェルです」

女性1「私はワーファーです」

女性2「こんにちは、エヴァです」

女性3「私はマリカ」

男性2「私はエリック。42です。アントワープに住んでいます。2009年から職がありません。」

ナレーション:

応募者たちには、これらの失業中の人々を売り込むための紹介状を書く、という課題が課された。結果、失業者が面接のチャンスを得た場合、その紹介状を書いた応募者もコピーライターとして広告代理店にリクルートされる、という仕組みだ。

テレビやラジオ、オンライン、新聞などによる告知の結果、あらゆるバックグラウンドの、あらゆるライターから何百通もの紹介状が寄せられた。

結果を出した紹介状を書いた応募者たちは、ベルギーのトップクリエイターたちによるコピーライター講座のマスターコースに招待され、最終候補者は、それぞれの代理店に採用された。

でも、最高の結果といえば・・そう。

この取り組みの期間中、協力してくれた失業者のうちの実に4割以上が、応募されてきた紹介状を使って就職を決めることができた、ということだ。

男性2「紹介状のサポートのおかげで、自分の人生を前進させることができました。仕事は暮らしに充足を与えてくれますが、失業中だとそうはいきません。何かが欠けている気がしてしまうのです。今では毎日、メリハリのある生活で仕事を楽しんでいます。私の銀行口座にとっても、人生にとってもとても効果的な取り組みだと思います」

ナレーション:

かくして<失業者を売り込もう>という取り組みは、広告業界の人材不足を解消した一方、失業者たちに仕事の機会を与えたのだ。

“言葉の大切さと、言葉がもたらす意義ある変化を感じよう。”

タイトル:

<失業者を売り込もう>

以上、いかがでしたでしょうか?私はこのアイデアについて、以下の3点が素晴らしいと思います。

1:広告業界に興味がなかった求職者を振り向かせた「つかみ」

自分の言葉が失業者を救う、しかも自分にも仕事のチャンスができる!となれば、広告に興味がなくても腕に覚えがある人たちは参加したくなるのではないでしょうか。

2:応募課題の適切さ

対象の特長を抽出して魅力的な言葉で売り込む、という技術はまさにコピーライターの作業そのもの。これをくぐり抜けた応募者たちはそのまま、代理店にとっても理想的な人材だといえます。

3:広告業界全体のイメージアップ

このキャンペーンに触れた人たちは、言葉の力で世の中の課題解決に貢献しているという、広告業界に対する新しい見方を手に入れることになります。

業界良し、応募者良し、失業者良しというまさに理想的な「三方良し」を実現したこのキャンペーン。どんな課題であれ、アイデアを考える際にはぜひ、参考にしたいと思います。

In this article, I featured this campaign because it realizes 'Sambo yoshi' (benefit for all three sides), a traditional philosophy of Japanese merchants. This campaign is great not only for the ad industry, but also for job applicants and the whole society.

 

電話で報道への政治介入を攻撃!マケドニアのテレビ局が放ったソーシャルキャンペーン

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自分たちにとって都合の悪いことを書かれたり、伝えられたりするのを不快に思うのは人の性。しかしそれと同じノリで、一国の政府や政治家たちが都合の悪い報道に対してあからさまに圧力をかけたらどうなるでしょう?

今回はそんな慣行がはびこるマケドニアの国営放送局TELMAが、報道への政治介入の実態と、それに対する姿勢を国民に見事に知らしめた、ちょっぴり過激なソーシャルキャンペーンをご紹介します。

<赤い電話 Red Phone> 

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:<マケドニア。20年以上、報道の自由が失われた国>

国境なき記者団による報道の自由度ランキングでは、34位から123位へと大幅にランクダウン>

報道の自由→自由への圧力>

与野党双方の政治家たちは、ニュースの編集に直接的に介入してくる>

<記者を名誉毀損や侮辱罪で訴え、拘留を行うことも>

<議会からの強制退去を命じることもあった>

記者「なぜ記者たちを追い出しているのですか?理由を教えてください!」

タイトル:<最近の盗聴事件では、政治家たちが複数の国営放送の放送内容に対し、直接的に介入してきたことが明らかになった>

<結果、マケドニアのほとんどの人々は、TVを信用しなくなっていた>

<そこで国営放送のひとつであるTELMAは、その独立性を宣言。「我々は今後、政治家たちの指示には従わない」という姿勢を明らかにすることにした>

<限られた予算で我々が編み出したのが…>

<“赤い電話”>

レポーター「マケドニアは政治の混乱を収束するため、EUの代表団を調停者として受け入れることを決めました。これはEUのヨハネス・ハーン委員が認めたもので、彼はマケドニア政府の次の動きを待っている、と述べています。同議員は…」

ガチャン!(鳴り続ける受話器を切る)

レポーター「私たちは政府だろうが、野党だろうが、政治的な圧力に屈しません」

タイトル:<これを本当の電話だと信じた各政党は、TELMAに対して「政治的圧力の証拠」を見せるよう要求>

<一方、人々はこのアイデアに熱狂した>

<24時間も経たぬ間に、この電話は様々なコンテンツとなり拡散>

<赤い電話自体が、ニュースとなった>

<この小さなアクションは、ネットやソーシャルメディアで拡散>

<直ちにバイラルコンテンツとなり、24時間で、10,000を超えるシェア数を獲得した>

アレフ「安心して、これ黒電話の方だから」

<ついには他のチャンネルの、他のアンカーまで赤電話を番組内に赤い電話を取り入れた>

<赤い電話はメディアの独立性と、痛切に言論の自由を求める市民運動の象徴となったのである>

<AGBニールセンのメディアリサーチによると、 TELMAの番組に対する評価は、2倍以上の伸びを示した>

報道の自由→自由への圧力>

報道に対する圧力は意外と目に見えにくいものなので、それを「赤電話」というアイコンで可視化・可聴化したのは素晴らしいな、と思います。ここまで直接的に権力にNoを突きつけるのは、日本だとなかなか真意が分かってもらえないとは思いますが、とにもかくにも、受話器を叩きつけるキャスターたちの力強さに、報道機関の意地と誇りを感じるキャンペーンでございました。

I featured this idea because it succeeded very well in visualizing “the pressure on freedom.” More than hundreds of thousands of words, this icon tells you a lot about the irritating pressure from politicians and their government. Well done.

ニッポンよ、これが街おこしだ!アメリカの個人商店を救ったソーシャルキャンペーン

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皆さまこんにちは。11月に入り、忘年会やクリスマスに向けて色々と買いだすものも増えていく季節ですが、皆様は買い物というとどんな場所を思い出しますか?デパートやアウトレット、ショッピングモール、といった大型施設を思い出す人がほとんどだと思いますが、一方で中小規模の個人商店の人たちは、客足の鈍化に悩まされつづけています。

そしてそれはアメリカも同じ。ということで、今回は時を超えて今もなお、私が素晴らしい取り組みとして記憶している企業発のソーシャルキャンペーンをご紹介しましょう。アメリカのクリスマス商戦(ホリデーシーズン)の幕開けを告げる11月の第4金曜日、みんなが大型施設に買い物に出かけるブラックフライデーにうま〜く乗っかり、その翌日を「個人商店で買い物する日」として定着させてしまった見事すぎるアイデアです。それでは早速、以下の解説ビデオをご覧ください。 

<Small Business Saturday スモールビジネスサタデー>

www.youtube.com

<ビデオ和訳>

タイトル:“アメリカの大統領が、特定のアイデアについてつぶやくことはそんなにない。”

バラク・オバマのツイート:今日は、地元のお気に入りの個人商店で買い物して、街のスモールビジネスをサポートしましょう。>

タイトル:“それは、こうして実現した。”

ナレーション:2010年、アメリカン・エキスプレス社はクリスマスの一ヶ月前、アメリカで最も盛り上がる買い物シーズンの幕開けを告げる「グラックフライデー」の翌日に「スモールビジネスサタデー」を開始した。

スモールビジネスサタデーは、不況に悩む個人商店に客足を取り戻すための試みだった。

そして2年目となる2011年の目標は、この一日をホリデーシーズンのオフィシャルな「個人商店買い物デー」として定着させること。

しかしアメリカン・エキスプレス社が一社で押し進めるのは難しいので、個人商店や消費者、行政などにサポートを呼びかけた。

まずアメリカン・エキスプレス社は個人商店のオーナーのために、手軽に活用できる販促ツールを提供した。

スローガン「SHOP SMALL」を記した缶バッヂやポスター、それにソーシャルマーケティングツールなど、彼らの商売のサポートとなるものを提供。

このデジタルツールキットでは、個人商店のオーナーが自分で広告を作るYouTubeの動画作成ツールが入っている。さらに、Facebookページ制作ツール。そしてfoursquareに、オンラインショップ情報を流せるツールも提要した。これらは50万人以上もの個人商店のオーナーに利用された。

次に、アメリカン・エキスプレス社は行政に働きかけた。アメリカ全土の自治体や州政府がこの運動に支持を表明した。さらに米議会上院でも「スモールビジネスサタデー」を公的な日として認める決議が採択された。・・全会一致で!

さらにアメリカン・エキスプレス社は何百万人もの消費者たちに呼びかけ、個人商店で買い物をするという誓いを立ててもらった。

少年「僕はここ、ビッグトップキャンディ店で買い物することを誓います。

男性A「アレンのブーツ屋で買います」

妊婦「ジュノのベビー店で買うわ」

男性B「個人商店で買うことを誓います。」

少女「買って〜。」

男性C「スモールビジネスサタデーに、個人商店で買い物しよう」

ナレーション:で、その反響は?

オーナーA「売上が20%も増えたよ」

オーナーB「30%ぐらいかな。」

オーナーC「去年に比べて、166%も増えました!」

ナレーション:Twitterでは、年間トレンドワードの総合トップ10にラインクイン。Facebookページも昨年の2倍以上となる、270万もの「いいね!」が集まった。しかし最も重要なことは、カリフォルニアからワシントンD.C.まで、アメリカ中の1億300万人もの人々が、個人商店で買い物したということ。

バラク・オバマ「スモールビジネスサタデーだから、今日はスモールビジネスを応援させてもらうよ」

ナレーション:以前にはなかった「スモールビジネスサタデー」は、今ではホリデーシーズンの中でも大切な買い物デーとして定着したのである。また来年!

皆様、いかがでしたでしょうか?日本でも企業がPRのために「ナントカの日」を作ることは多いですが、ここまで説得力を持ち、社会全体を変えてしまったものはないのではないでしょうか?そしてこの企画がさらに素晴らしいのは、これが普及した暁には、アメリカン・エキスプレス社に加盟する個人商店もきっと増えている、ということ。このソーシャルキャンペーンは、日本のシャッター商店街もよいアイデアがあればきっと救える!という希望と可能性を示しているといえるでしょう。

 (スモールビジネスサタデーについて、より詳しく述べているブログを見つけました。こちらを読むと改めてこのキャンペーンの仕組みの巧みさに、もっとうっとりします。)

ameblo.jp

年末に向けてワクワクしてくる11月。皆さまも近所の個人商店で、買い物してみてはいかがでしょうか?

In this article, I featured a legendary-successful social campaign by American Express, “Small Business Saturday”. This idea is a beautiful example of so called “win-win” situation between the credit card brand and small business owners. 5 years have passed since the campaign began but, it is still new and shining.