世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

スペインで人口70人の町を過疎から救った、シュコダ入魂の試み

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Photo by Eder Pozo Pérez on Unsplash

5年前にアップしておくべき記事でした

今週は前回の記事*がきっかけでこれまで、本ブログで取り上げていなかったことに気づいた、前回同様「自動車のブランディングで町おこしを実現した」過去の名キャンペーンをご紹介します。これまでお伝えしてきた世界的クリエイティブの祭典カンヌフェスティバルでも高い評価を得た作品で、2015年にPR部門で金賞を受賞しているものです。

*ちなみに前回の記事はこちら

wsc.hatenablog.com

個人的には「解決した課題の明快さ」や「商品特性と地理的条件との整合」、そして「時間的にこちらの方がオリジナルであること」の3点から、先週のアイデアよりも若干、こちらの方が強いのかなぁ…と感じています。

それでは早速見てみましょう。チェコの自動車メーカー・シュコダによる取り組みの紹介ムービーを(例によって)、私の雑な和訳付きでご覧ください。

シュコダ「70 Guardians of Winter(70人の冬の守護者たち)」紹介ムービー

vimeo.com

【雑和訳】[地方の人口減少により、スペインではこれまでに3,000の町村が放棄されてきた] [現在のペースだと、これからも毎年およそ100以上の町村が放棄され続けることになる]

[ヴァルデリナレス-スペインで最も標高の高い町] "ヴァルデリナレス。80年以上前には、このスペインで最も標高が高い町に、1,470もの人々が住んでいた。しかし今では、70人しか住んでいない” おばあさん「慣れないと、ここの冬は相当厳しいわよ」

”薬局もない。スーパーもない。病院とは20キロ離れている” "2014年の冬、学校は廃校の危機を迎えていた” 教師「家族が離れれば、子どももついて行く。そうして町から活気が失われてしまうのです」

"しかし住民たちは離れることを望んでいなかった" "彼らは70人の冬の守護者たち" ”そしてこれは、シュコダの新しい4X4がどのように町を過疎から救ったかについての物語だ”

”我々は家族を持つ人たちの関心を惹きつけるための、町の人々を使ったスポットCMを制作” 町の女の子「冬に備えよ。我々は今年も備える、あなたのために」 TVの人「素晴らしい取り組みです。シュコダは町の70人と一緒になってCMを作ったんです」

シュコダはこの4X4を街に来る新しい家族のための就職口に転換” 「街に移住してくれた人には、冬の守護者たちのためのドライバーになってもらう仕事を用意します」 "町の物語はドキュメンタリーとなり、人々がヴァルデリナレスや、70人の住民について学べるようウェブサイトが作られた"

”この取り組みは話題となり、600以上の家族が応募” "そして、この家族が選ばれた" [デイビッド&ベレン夫妻] "結果、ヴァルデリナレスの冬の守護者の数は今、75人に" "そして学校はたくさんの年数、運営を続けることができるようになった"

”結果。ブランド認知は25%向上。シュコダの売り上げは前年の同じ時期に比べ、21%向上した” "ヴァルデリナレスの検索回数は83%向上" "この冬は、新たに2つの町が、新しい家族を迎えるためにこのアイデアを活用した"

[70人の冬の守護者たち]

短期のビジネス目標と暮らしをどうマージさせるかが課題

いかがでしたでしょうか?前回ご紹介した電気自動車のアイデアが「田舎の村の人々全員に3年間の期間限定で、電気自動車を支給して暮らしてもらう」というものだったのに対して、この取り組みは「シュコダの4X4を使った運転手として、新たな家族を過疎の街に迎え入れる」ということで、過疎というその地域が抱える課題に取り組んでいるところが、私はより一歩踏み込んでいるな、と思いました。

とはいえ、これは5年以上前のアイデアです。今もこの家族が村に定着しているかわかりませんし、企業の動きとしてはどうしても「車が売れれば良い」ということになりがちなので、今もこの取り組みを受け入れた町とシュコダが丁寧なコミュニケーションを取り続けているかどうかはわかりません。

そのリスクを承知である意味「人々の一生を左右する」このアイデアを実施したことを企業として「勇敢だ」と称賛するのか、「蛮行だ」ととるかは意見の分かれるところでしょう。

個人的にはこのアイデアは素晴らしいと思います。ただし今の時代の尺度で見ると、企業活動という短期的なものを、人々の暮らしという区切りのないものとどうマージさせるのかの部分(例えば行政とどうコラボして、この取り組みをサステナブルにものに変えたのか、といった部分)までフォローされていれば、さらに素晴らしいアイデアになると思いました。

市町村の過疎化は日本でも長年訴えられながら、解決されてこなかった大きな課題です。このアイデアが行われた2014年とは違い、地方でもオンライン会議やeコマースを使いこなす人々はかなり増えました。今回のアイデアのフォーマットの上にこれらの社会的変化を載せれば、日本でも何かより、素晴らしいことができそうな予感がします。ぜひ、日本のあちこちでご参考いただければと思います。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆様、また来週!