夏の終わりに、猫も杓子も氷水をかぶって大騒ぎのアメリカ実業界ですが、まだご覧になっていない方はまずビル・ゲイツ氏のこの姿をご覧ください。
Bill Gates ALS Ice Bucket Challenge - YouTube
これはALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療法研究の費用を集めるためのドネーションキャンペーンで、他人から指名を受けてから24時間以内に氷水をかぶるか、寄付をするか、さらには両方選ぶか、というチャレンジをしていくキャンペーンです。面白いのはチャレンジした人が、次のチャレンジャー3人を指名できること。ビル・ゲイツ氏もビデオの冒頭で、先に氷水をかぶったfacebookのザッカーバーグ氏から指名を受けて「僕ならもっといい方法でかぶれる!」と意気込んでいる様子が分かります。このキャンペーンの全容については以下の記事にうまくまとめられていますのでご覧ください。
クックCEO、ナデラCEO、コストロCEOも“氷バケツ”動画を公開 ビル・ゲイツ氏は? - ITmedia ニュース
そして、ここで終わらないのが「世界のソーシャルキャンペーン」。体の動く機能を徐々に破壊し、命を奪っていくALSや筋ジストロフィーについてはこれまでも、世界中の人たちがさまざまなキャンペーンを繰り広げています。今回はその中からふたつと、付録をひとつピックアップしてご紹介します。
1:「私はすでに死んでいます(I have already dead)」キャンペーン
I HAVE ALREADY DIED Titanium and Integrated ...
これはオランダALS財団が行ったCMやポスターのキャンペーンで、ALS患者たちがカメラに向かって同財団への寄付を募る、という内容のもの。これだけだと普通ですが、この企画のミソは、登場する患者が「すでに亡くなっている」こと。CMの最後に共通して本人たちの口から語られる「これは私のために言っているのではありません。私はすでに死んでいます」という言葉は衝撃的で、オランダでも遺族がトークショーで質問攻めにあうなど、かなりの論議を呼びました。ただ氷水をかぶるだけでなく、きちんとALSという病気についての理解を広めながら寄付金額の500%アップを果たした、質実ともに振り切れたキャンペーンです。
2:「最もパワフルな腕(The most powerful arm ever invented)」
The Most Powerful Arm Ever Invented ! - YouTube
一方こちらはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)という、先天性難病への支援を訴えるオーストラリアのキャンペーンです。ビデオに出てくるジェイコブ少年と同じ境遇の子どもたちを救うため、ジェイコブ少年が母の日のカードに書いた“人生最後の文字”を再現して書く「人工的な腕」を支援団体が開発。政府にサポートを訴える人々の署名を、その腕に書かせることで話題化に成功しました。考えてみると政府の人たちは日頃からさまざまな署名を当たり前のように受け取っている訳で、これは署名する側にだけでなく、受け取る側にもハッと、署名の重みを感じてもらえる素晴らしい企画だといえるでしょう。
<付録>マイクロソフト「勇気づけるもの(Empowering)」
最後に付録としてつけたのが、マイクロソフト社が今年のスーパーボウル(アメリカンフットボールの優勝決定戦。毎年大手メーカーが気合いを入れたCMを発表することで有名)でオンエアしていたCMです。元NFLプレイヤーにしてALS患者のスティーブ・グリーソン氏が視線の動きで打ち込んだ人工音声により、マイクロソフトがこれまで人類の課題克服のために取り組んできた、さまざまな取り組みが感動的に紹介されています。マイクロソフトはこのCMで紹介されているように以前から、難病や障がいについてさまざまなチャレンジを行ってきました。こういう積み重ねがあってこそ、ビル・ゲイツ氏の今回のデモンストレーションはユーモラスでありながら、誠実なものとして受け入れられたのだと思います。
今回の記事が氷水騒動を単なるネタとしてではなく、少し別の角度から見るきっかけになればうれしいです。以下に、日本でALSについて取り組んでいる団体のリンクも貼っておきますね。
それでは皆さま、よき月曜日を!
(今回は事例が盛りだくさんなので日本語訳は省略します。ご希望があればコメント欄で対応しますのでその旨コメントくださいませ。)