世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

同業者の命を守るために復活した「死んだはずのジャーナリスト」

Photo by The Climate Reality Project on Unsplash

ディープフェイク技術を見事に活用

さて、世界的クリエイティビティの祭典カンヌライオンズ2022まであと3週間。ということで昨年の受賞作をできるだけ記録に残すべく、今週もご紹介を続けてまいります。

昨年のカンヌライオンズでGrand Prix for Good(ソーシャルグッドな取り組みの中でのグランプリ)を受賞した、メキシコ発のアイデアです。

デジタルデータを活用することで、本物と見紛うリアルなアイコラ動画を作るディープフェイク技術。この技術を使って例えば、過去のスターを蘇らせる…というような取り組みは多いですが、このアイデアはその技術をメキシコ特有の社会的文脈と組み合わせることで、見事にそのインパクトを倍増させています。

ぜひ、以下の紹介ビデオをご覧ください。

「# StillSpeakingUp DeepTruth: #告発は続く/ ディープな真実」

youtu.be

【雑和訳】文字スーパー:ジャーナリスト ハビエル・バルデス 2016年10月 /ハビエル「メキシコの大部分の地域では、違法薬物のカルテルが跋扈しています。もちろん怖いですよ」

文字スーパー:2017年5月 /レポーター「作家でジャーナリストのハビエル・バルデスさんが殺害されました」「世界中あらゆる国の中で、ジャーナリストにとって一番危険な国は、暴力が日常と化しているアフガンでも、イラクでもなく、メキシコです」

文字スーパー:2020年の死者の日ーメキシコで死者が蘇るとされる1日ー /キャスター「ハビエル・バルデスさんが殺害されてから3年経ちました。そして今日、彼は蘇りました」

ハビエル・バルデスさん「アンドレアス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領、2017年の5月15日、私は殺されました。私の出版物を快く思わなかった、誰かの指示によって。…でもとにかく私はご覧の通りここにいて、あなたに話しかけています」

タイトル:# StillSpeakingUp(#告発は続く) 

文字スーパー:恐れを知らず、告発できるメキシコでただ1人のジャーナリスト…それは、死者。 

メキシコ大統領「あなたがたは良いジャーナリストであるだけでなく、とても用心深い人たちのはずです。なぜなら、度を越したら何が起こるか…わかりますよね?何が起こりうるか」 

ハビエル・バルデスさん「大統領、私は全く恐れませんよ。私を2度殺せる人なんていないのですから」

文字スーパー:私たちはディープフェイク技術をディープな真実のために活用した。そして、ジャーナリストたちを守るための政策に取り組むよう、政府に嘆願したのだ。

文字スーパー:オーガニックなメディア露出 - 3億4,900万インプレッション

メディアの人々「このキャンペーンには本当に体が震えました。革命的な出来事だと思います」「殺害されたジャーナリストは永遠に記憶されるでしょう。我々は正義を追い求め続けなければなりません」

文字スーパー:メディアからのプレッシャーにより、初めて6人の殺人者が有罪判決を受けた。

メディアの人々「これらの(殺害された)ジャーナリストたちは今も声を上げ続けています!」

ハビエル・バルデスのツイート "この捜査は市長が麻薬組織に便宜を図っていることを証明している #告発は続く"

ミロスラヴァ・ブリーチのツイート ”ナルコ・カルテルの違法活動にチワワ市長のファン・コルテスも関与 #告発は続く"

文字スーパー:”#告発は続く”、それは、ジャーナリストが死者のアイデンティティを使うことで、安全に告発ができるプラットフォーム。

ハビエル・バルデスさん「彼らが我々を黙らせようとしても、私は告発し続けます」

文字スーパー:#告発は続く ディープな真実

技術は道具、どう使うかにミソがある

いかがでしたでしょうか?ディープフェイク技術を使って死者を蘇らせる、というのはおそらく誰にでも思いつくようなアイデアなのですが、それをメキシコの人々にとって大事な「死者の日」と絡め合わせることでこのキャンペーンは俄然注目を浴び、メキシコ社会に大きなインパクトを起こすことに成功しました。

(推論ですが日本でいうと「お盆の日にあの人が帰ってきた…」という感覚に近いのかもしれません…?)

技術の進歩のおかげでやれディープフェイクだ、VRだとブームを呼ぶような仕掛けはこの世から尽きることはありませんが、結局技術は道具に過ぎず、それにどんなメッセージや社会的文脈を組み合わせることで無関心な人々を振り向かせるのか?

まさにその部分こそが人類特有のスキル、クリエイティビティの腕の見せ所なのだ、ということを思い出させてくれる、素晴らしいソーシャルキャンペーンでした。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!