世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、時に和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたい人たちのヒントになれば幸いです。

全米の生産者に有機農業への転換を促した、ビール会社の勇気ある試み

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Photo by Melissa Askew on Unsplash

 

「広告では差別化できない時代」を代表するソリューション

私は広告業界で働き20年を超えますが、時代は大きく変わりました。この20年で大きく変わったのが、デジタルの進化による消費者たちの「調べる力」と「広める力」の飛躍的向上、そして昨今のSDGsムーヴメントが象徴する、今の社会のありように対する危機感です。

それに合わせてブランディングの力点も、「ユニークな広告表現などでいかにターゲットの心を掴むか」から「ターゲットが望む社会のために、いかにブランドが(嘘偽りなく)貢献しているか」という”リアル・アクション”に移ってきています。

今回は、ブランドによる見事なリアル・アクションの代表事例としてアメリカの有機ビールブランド"Michelob Ultra Pure Gold"による取り組みを紹介させていただきます。世界のクリエイティビティの祭典、カンヌライオンズのPR部門で今年、見事グランプリを獲得した作品です。

それでは事例紹介ムービーをご覧ください。

 

変革のための契約書(Contract for Change)

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【雑和訳】農家「農業はもはや品質を求めていない。求められるのはより多く、速く、安く作ることばかりだ」スーパー:我々は、我々の命を支える生態系を破壊している。農家「農家のほとんどは、自然な作物を育てることを望んでいる。だけどもう、抜けられない(大量生産の)トレッドミルに載っかってしまっているんだよ」

スーパー:アメリカ人の90%は、有機作物によるものを買いたいと望んでいる。しかし、有機栽培をしているアメリカの農地は、全体のわずか1%だ。農家「有機農業への転換には、3年かけて大きな投資をする必要がある。でも、転換したとして、買い手はおそらくいないだろう」

スーパー:有機ビールのリーダーとして。Michelob Ultra Pure Goldプレゼンツ ”変革のための契約書(Contract for Change)” スーパー:アメリカの農業の変革を促す、革命的な契約書。農家「私は今日、有機作物の買い手を3年後に補償してくれる契約書にサインしました」

ナレーション ”この契約書は、サインした農家が3年間で有機農業への転換を完了した場合、その有機作物に対し、Michelob Ultraが最初の買い手になることを保証する。必ず買い手がいる、という保証により我々は、農家の人々が有機農業に転換する際の一番大きな障壁を除去したのだ”

 農家「有機農業に移行する3年の間は、生産量が下がってしまうので収入が低下します」ナレーション ”この悩みもまた、全米の農地のわずか1%しか有機農業に活用されていない大きな理由のひとつだ。

この契約には、有機農業への転換期間中、(Michelob Ultraブランドを保有する)アンハイザー・ブッシュ社の他のビールブランドが有機作物でない、既存の作物を通常の価格より25%高く買い付ける、という条項も入っている。なので契約者は収入を保つことができるのだ。

さらにこの契約書には、主要な農業関連機関や組織を通じた、綿密なトレーニングも含まれている” 

スーパー:この契約は、全米の契約書に向けて告知された。ラジオパーソナリティ「すべてのアイダホの農家の皆様へ。もし有機農業への転換をお考えなら、ぜひ我々にお電話ください。ともに、あなたの農業の未来を変えていきましょう!」

スーパー:我々の声は、全米の農家に届いた。そして国中のメディアにも。スーパー:10万4,000エーカーの農地が転換中。有機作物の供給量の増加は、2023年までにMichelob Ultra Pure Goldを25%成長させるだろう。

ナレーション ”一度有機農業に転換すれば、農家はMichelob Ultra Pure Goldへの原材料だけでなく、他の何千ものブランドにも有機作物を提供することが可能になる” 

農家「農作地に生き物が戻ってくるのを見るのは本当に美しいです」スーパー:生物多様性は34%向上。農家「それが農家になった理由なのですから」

 

勇気あるリアルアクションがブランド力になっていく

いかがでしたでしょうか?これをご覧になった方の中には、今や、この有機ビールブランドを買い、応援することが、世界を変えるための素晴らしい行動に思えてくるのではないのでしょうか?

思えば今年のカンヌライオンズ受賞作は、単なる消費行動を、社会的に意義のある活動へと変えた素晴らしい事例に満ちあふれていたと思います。例えば、石鹸の購入を障がいを持つ人たちの社会進出応援に変えてしまったこの事例とか…

wsc.hatenablog.com

 

カンヌは世界から、これから日本に押し寄せるトレンドを先取りする場所でもあります。ぜひ、これらの先行事例をヒントに、みなさんの組織でも私たちの社会の改善につながり、あなたの組織に唯一無二のブランド力を与えるような素敵なリアルアクション、考えていただけると幸せです。

いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それではみなさん、また来週!