突然のありえなすぎる”if(もしも)”をタイトルで投げかけてしまいましたが、実はこれ、2年前のインドで実際に起きた出来事なんです。詳しくはTechCrunchによるこちらの記事をご覧いただければと思うのですが、2019年8月5日、インド政府はイスラム教徒が多く住むカシミール地方の通信網を突然シャットアウト。以降、最高裁の判断により憲法違反と認められるまでの158日間、途中携帯での通信が再開されるなど、部分的な再開はあったものの、当地に住む人々はほぼ完全に「知る権利」を奪われてしまいました。
そこで立ち上がったのがエッジーな世界的デジタルメディア「VICE」。彼らはシャットアウトから142日後の12月24日、SMS(ショートメール)サービスへのアクセスが再開されたまさにその日に、ネット上のニュースをSMSでも読めるようにピクセルなどで”翻訳”。データ量を極端に減らした「8ビット・ジャーナリスト」として、カシミールの人々が知りたい情報を提供し始めたのです。
その概要を紹介するムービーが以下となります。最初は事故か何かかな?と思っていた通信網の遮断が50日・100日と長引くにつれて、焦燥感が増していくカシミールの一市民の気持ちが追体験できるような、巧みな構成になっています。「もし、自分の国でも同じことが起きたらどうなってしまうんだろう?」そんなことを考えながらご覧いただくと、この取り組みの意義がより一層、理解できると思います。
ネットの規制が解除されるまでの短い間(およそ2週間)の取り組みでしたが、このサービスにアクセスしたカシミールの人々はなんと120万人にのぼり、実に住民の86%がこのSMSによる記事を閲覧したそうです。
自分が絶対的に優位な立場にいる時、聖人君子でいられる人は残念ながらそんなに多くありません(むしろそれに近い人でも、大部分が腐敗していくのが世の常です)。近・現代史を見ても国民が知る権利を奪われてしまうことは権力側に絶対優位をもたらし、その暴走につながるケースがとても多いように見受けられます。
恥ずかしながら、このアイデアに出会うまで私もインドでこのような事態が起きていたことを全く知らずにいました。カシミールに住む人たちの安寧を祈りつつ、他山の石として、このアイデアをしっかりと記憶に刻んでおこうと思います。
あえてのローテクで権力に争い、人々に「知る権利」の小さな炎を灯し続けたこのアイデアに敬意を評したいと思います。
いやぁ、アイデアって本当にいいもんですね。それでは皆さん、また来週!
<過去記事より:ローテク通信(機器)を活用し、人々に喜びをもたらしたアイデア集>
↓2つ目のアイデア「Infection Alert System(感染警告システム)」をご覧ください。
wsc.hatenablog.com