世界のソーシャルキャンペーン WORLD’S SOCIAL CAMPAIGN

このブログではこれまでの常識に「ひとつまみの非常識」を加えることで世界中で話題となったソーシャルキャンペーン事例を、和訳文付きでご紹介。NPOや起業家等、社会をよりよくしたいすべての人のヒントになれば幸いです。

街の大気汚染を「可視化」と「カネのチカラ」でロンドン市民に"自分ゴト化"させたキャンペーン

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Photo by Benjamin Davies on Unsplash

産業革命当時は工場から出る排気で「霧の街」といわれたロンドン。技術革新や法制度の充実、産業構造の変化により当時に比べれば大気汚染は大幅に改善されていると思われますが、住民の視点に立てば、まだまだ改善の余地があるようです。

そこでロンドンのクリエーティブ業界が加盟する非営利団体COPI(Central Office of Public Interest)が立ち上げたイニシアティブがAddressPollution.org。彼らがこの試みで何をしたかというと…。詳しくは、以下の説明ビデオをご覧ください。

www.youtube.com

彼らはロンドン市内の600万にのぼるポイントから収集したデータを基に、ロンドン市街の大気汚染の状況を20平方メートルごとに区切ったグリッドで表示(=可視化)。のみならず、そのデータをそれぞれのグリッドにある不動産の資産価値と結びつけてデジタルプラットフォーム上で表示する事で、自己資産の価値に関心のある市民や、それを扱う不動産業の人々に大気汚染を自分ゴト化させることに成功しました。

家のアイコンと、色の使いわけにより大気汚染の程度をシンプルに示したデザインと、「子供の喘息や、肺の発達障害などを誘発しうる」「ここの大気汚染は不動産価値において20%のディスカウント要因となる」といった、リサーチに根差した率直なレポーティング、そして、そのレポートが自分の住む、または自分の不動産がある20平方メートルについてなされる、というこの試みは大きな反響を呼び、そのデータが一般的な不動産ポータルサイトの物件情報として活用されるようになったり、大気汚染について正しい情報を与えない行為が法律違反となるなど、不動産だけでなく行政にも具体的なアクションを促したそうです。

巧みなコンセプトやデザインによりなされた課題の「可視化」を、不動産ビジネスという「お金の流れ」と組み合わせる事でより現実的に事態の改善を促していこう、というこのアプローチは、理想論と建前の応酬になりがちでなかなか実際の成果に結びつきにくい、その他大勢の環境問題に取り組む人々にとってもヒントになるかと思いました。

ちなみにこのキャンペーンのウェブサイトは以下になります。

https://addresspollution.org

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ご覧のようにとってもシンプル。ちなみにここのウィンドウに、私の勤務先とネットワーク関係にあるロンドン拠点の郵便番号を入れてみたところ、以下のような結果が出てきました。

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私はロンドンに行ったことがないのでこの場所がどんなところかはわからないのですが、「DEMAND ACTION(改善の必要あり)」とのこと。画面では見切れていますが、左側のウィンドウを下にスクロールすると大気汚染に関する概況と健康、資産価値への影響が簡潔に書かれていて、私のようなノンネーティブでもとってもわかりやすいインターフェイスとなっていました。

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さらにいいな、と思ったのがこの機能。上述の「DEMAND ACTION」をクリックするとこの署名ページになり、ここでの署名はサイト運営者により取りまとめられ、そのまま行政や政治家へと手渡されるそうです。…うん、いいUIだ。

いやぁ、アイデアって本当にいいものですね。それでは皆さん、また来週!