国境や時空を越え、今も人々の暮らしを揺るがし続ける薬物問題ですが、今回は昨年のカンヌ国際クリエーティブ祭で初めて見た時、あまりに革新的な提言内容のため理解しきれなかった衝撃的なオンラインムービーを訳してみましたのでご紹介します。
これはドラッグ戦争に実際に直面してきたメキシコやコロンビアの元大統領から国連総長、そしてなぜかヴァージン・グループの創始者リチャード・ブランソンまで、22人の世界的指導者や知識人から構成される「薬物政策国際委員会」なる団体が作った架空の国の物語なのですが、とにかく美しくスケール感のあるアニメーションで、最後まで思わず見てしまう仕上がりです。
ドラッグ(薬物)をもじった「ドラッゴ」というドラゴンと、かつて薬物戦争を仕掛け、失敗した様々な国の政府を象徴する「王国」の戦いはどんな道筋をたどるのか。そして22人の世界的指導者が提言する「これからのあるべき対麻薬政策」とは?世界の薬物問題に対するこれからのスタンスをおさえておく上でも、必見の良作です。
This is an impressive mythological movie which implies the past failure of the government against drug problems and advocates a better way to take control of them. Not only I was astonished by a message of this story, but also I was attracted by the art direction of this movie a lot.
<ドラッゴ戦争 - The War on Drugo>
<ビデオ和訳>
ナレーション:
昔々、とても強力な権力で王国を統治している王がいた。
その国には「ドラッゴ」と呼ばれるドラゴンがいた。
王国の市民たちはしばしばドラッゴと遊びふけった。しかし、中にはドラッゴと遊ぶことで現実逃避し、仕事や家庭を顧みなくなる人たちもいた。王は、罪を負うべきはドラッゴだと結論づけ、その討伐に打って出た。
やがてドラッゴは、王国最大の敵と位置づけられ、森の奥へと潜むことを余儀なくされた。
しかしドラッゴと遊びたがる市民は増える一方。いつしかそれに目をつけた武装集団が結成され、彼らに金を払わない限りはドラッゴと会うことは不可能になってしまった。
覇権をめぐる武装集団による犯罪や賄賂、訴訟が続発し、市民のドラッゴとの接触を一切禁じる法案が可決された。違反者は逮捕され、洞窟には囚人が溢れかえった。そこではドラッゴに依存していた人々を含む、多くの囚人たちが非人間的に扱われた。
王は大量の国宝をつぎ込み、ドラッゴとの全面戦争に打って出た。
そしてその時、人々は強く理解したのである。ドラッゴと戦えば戦うほど、それが強大になり、ギャングたちも残忍になっていくことに。
王国は暴力的な争いに震え上がった。そしてそれはやがて、周りの王国をも巻き込んでいった。戦争は40年以上に及び、数多くの死や貧困、破壊をもたらした。そして、王国の指導者たちはタブーを破ることにしたのである。
人々はついに、力や争いでは、ドラッゴを止めることができないことを理解しはじめたのだ。態度を変え、王国に受け入れることにすると、ドラッゴは昔の大きさに戻った。ギャングは影響力を失い、武器を置いた。
人々は恐怖に怯えることのない生活を取り戻した。ドラッゴを退治するために終わりのない戦争に巻き込まれていくよりも、ドラッゴに関するルールを守りながら生きていくほうが賢い選択であることを理解しながら。
この物語はここで終わらないし、また、全ての人が幸せに暮らしたわけでもない。ただ王国は気づいたのだ。ドラッゴのいない世界は絵空事かもしれないが、より暴力や犠牲の少ない世界は実現できることに。
<薬物政策国際委員会>